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plumeria

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やっと巡り会えた牧野を腕に抱いていたが、気持ちが昂ぶって眠る事なんて出来なかった。
逆に牧野は久しぶりの行為で疲れ切って爆睡・・・俺が髪を触ろうが頬にキスしようが起きる気配なんて全然無い。

昔より小さくなったような気がする顔・・・西門を恐れて震えながら暮らしてたんだと思うとすげぇ悔しかった。



まだ夜が明け切ってない薄暗い部屋の中、昨日からの出来事をぼんやりと考えていた。

何とか冷静にはなったけど衝撃的な事ばっかりだ。
両親のついた嘘、牧野が美作に匿われていたこと、あきらに双子の養子が居たこと、こんな近くに住んでいるのに何も知らなかった俺・・・納得しようと思いながらも何処かで何かが引っ掛かる。

まだ何か隠されてることがあるような気がしてならなかった。


それは牧野が見付かった後の2人の行動。何故かこの4年間の牧野の逃亡が、俺の将来を気にしただけじゃなく、他にも理由があるような気がした。
何よりあきらが・・・あいつがここまで牧野を匿う理由がイマイチピンと来ない。

あきらは紫がどんな女か知っていたんだ。
あんな女と俺が結婚させられるのを黙って見ていたのはなんでだ?
いくら牧野が頼んだからって、もう少し早く俺に伝えていればこの結婚を止める事も出来たんじゃないのか・・・昨日から何度も同じ事を考えてしまう。

おじさん、おばさんも牧野の味方になってくれたんなら、それこそ美作の養女って事にして親父達と話合い、西門に嫁がせてくれても良かったんじゃないのか?
それを誰も思い付かなかったって事があるんだろうか。むしろ、あきらなら真っ先にそいつを提案しそうだけどな。


それにあきらの養子って双子・・・何故かすげぇ気になる子供達だった。

初めて見るのに初めてじゃない感覚。そして牧野に懐いてるって事は相当前から牧野と会ってるって事だ。それなのに公にしていないのは何故だ?
それなら牧野にも会わせないんじゃないのか?会ったとしても誕プレまで寄越す仲になる必要はなかったんじゃないのか?

美作商事としてもこのやり方はどうなんだ?
今が3歳って言った・・・だとすれば英徳の幼稚舎に入るんなら2年後だ。急にその時に発表する気だったのか?流石に幼稚舎に入れてしまえば美作に子供が居る事が世間にはバレてしまう。


その時にあきらはなんて説明する気だったんだ?
その考えもあいつらしく無い気がして腑に落ちなかった。


養子には反対しない。それはあきらと嫁さんが決めること。
それに口出しはしないが何処か順序が違うような気がするのは俺だけか?それとも相談されなかったから僻んでんのか?

俺だけが毎回泣き言言ってたのに、あきらにもそんな厄介な問題が起きていたと知らなかったことで腹が立つのか・・・よく判らない感情でモヤッとしていた。


取り留めも無くそんな事を考えていたら窓の外が随分明るくなってきた。
ベッド横の窓のカーテンを少しだけ開けるともうすぐ日の出・・・そんな空の色だった。


「・・・ん・・・」

「牧野?起きたん・・・・・・じゃねぇのか」


俺の腕に抱かれてた牧野が寝返りを打って身体の向きを変えた。
慌てて少しカーテンを引き、牧野の顔に外の明るさが当たらないようにした。まだ全然起きる気配無し・・・スゥスゥ寝息をたてて気持ちよさそうだ。

この明るさのおかげで部屋の様子も判るようになって、暖房で逆に暑いぐらいだ。
喉が渇いていた俺は水でも飲もうと、そっと腕を外して牧野の頭を枕に乗せ布団も静か持ち上げた。その時、こいつも暑かったのか寝たまま布団を足で退かし、白い身体が俺に丸見え・・・。

それに一瞬ドキッとして焦ったが、流石にここで飛び付くわけにもいかない。
身体を起こした俺は見たいのを我慢して布団を掛けてやろうとして・・・やっぱり目を向けてしまったが、そこで牧野の腹にある1本の傷跡を見てしまった。


「なんだ?この傷、手術痕じゃね?何でこんな所に・・・こいつ、病気してたのか?」

腹の下の方に横についた傷跡・・・その様子からして最近じゃない。数年経ってるように見えた。
それにこの長さだと結構な開腹手術だ。何故それを俺に言わなかったんだろう・・・一体何の病気・・・・・・


その時、クローゼットの隅の縫いぐるみを思い出した。

まさか・・・この傷・・・



取り敢えず牧野には布団を掛けて、服を着て俺は部屋を出た。
キッチンに行って冷蔵庫からミネラルウォーターを出しひと口飲んで・・・そのままリビングのソファーに座った。



・・・・・・俺の頭の中で、ある出来事が浮かび上がっていた。

もしかしたら・・・そういう事なのか?
それなら話が合うのか?あきらの行動も納得出来るのか・・・あきらがどれだけ説得しても牧野が俺を避けたのはこのためなのか?


守りたかったのは俺の事だけじゃなく・・・あの子供達って事か?

俺があの子達を見た時に感じたものは「親子」だからか。俺の中の「血」が何かを感じさせたのか?


牧野と再会した時と同じぐらいドキドキしてる。
指先が震えてる・・・背中にも汗が流れる。瞬きも出来ねぇ・・・水を飲んだはずなのに喉が乾いてる。


言われてみたら似ているのかもしれない。牧野に似てるとは思ったが、俺の面影もあるのか・・・?
それに3歳・・・牧野と会わなくなって半年ぐらい経った時に産まれていたとしたら一致する。俺は子供が出来ても構わないと思っていたから避妊しなかった。

妊娠していても不思議はない・・・。


総てが合致しないか?

牧野とあきらの態度、双子には多いって言う帝王切開、あの子達の懐きよう、隠された縫いぐるみ、そして一緒に入れない風呂、暗闇じゃないとイヤだと言い張った昨日の夜・・・あの傷を見られたくなかったのか?


あきらのスマホの「田中 春」・・・あれは牧野のことなのか?


もし、この仮定が当たっていたとしても何故美作に養子に出した?
あきらが欲しがったのか・・・それとも牧野が無理を言ったのか。

それに養子に出したのにああやって会うのか?普通は2度と会わないんじゃないのか。その理由は本人に聞かなきゃ判んねぇか・・・。美作が公表しないのは出来るだけ時期を遅らせて双子の出生を調べにくくしてるのか?


真実は何も判らないのに想像だけが膨らんでいった。
そして昨日のあきらの言葉を思い出していた。


「知ってる人間で身元は確かだ。その人が妊娠中から見てるからな」

「親戚でもないから美作の血はないな。それでも構わない・・・俺達は大事に育ててるから」

「差し出したなんて言い方はよせ!育てられない状況だったから引き取らせてもらったんだ。喜んで譲ったわけでも喜んで引き取ったわけでもない!お互いにそれが1番良いと判断して、何度も話し合って決めたことだ!」

「誰が好き好んで自分の子供を養子に出すんだよ!それだけ切羽詰まった事情があったんだって思えよ!」




西門がそんなに怖かったのか・・・。

どうして言ってくれなかったんだ・・・これが本当なら、俺はどんなことがあってもお前達を守ってやったのに!

茶なんてどうだっていいじゃねぇか。
何処でだって心1つで茶なんて点てられるんだって・・・西門流なんてお前達に比べたら・・・比べたら・・・!!


美作で育ててもらわなきゃいけねぇ程の事がお前に起きてたのか?
俺はそんなに頼りない男だったのか?

紫が居たからか・・・そんなの俺が家を捨てりゃ良かったじゃねぇか!そうしたらあの女だって俺の事は手放すんだから!

俺は何にも知らされねぇで・・・ただ闇雲にお前を探してたのに、その間にこんな事が起きてたなんて・・・。



牧野・・・どうしてだ?



まだ眠ったままの牧野の傍に戻った。
あどけない顔して疲れ切って・・・まだすげぇ秘密を抱え込んでるなんて思えないぐらい幸せそうな寝顔だ。

確かなのは俺の事をまだ想ってくれているって事と、必死に守った命だって事・・・。


そうなんだよな・・・?




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