FC2ブログ

plumeria

plumeria

-
「・・・・・・あ・・・あれ?」

「起きたか?身体、どうよ?」


薄く目を開けたら目の前に居たのは西門さん。
ぼんやりと明るい部屋・・・温かいお布団の中で黒い瞳を細めて微笑んでる。そうだ・・・昨日一緒に過ごしたんだって・・・まだ信じられない気がした。

夢なら覚めないで欲しいなぁ・・・そんな事を考えていたら鼻の頭をカプッ!と噛まれた!


「きゃああぁーっ!なにすんの!」
「質問してんのに返事がねぇから。身体、動かせるのか?」

「えっ?あっ・・・い、痛い!腰がっ・・・腕が・・・っ!」
「お前、いいのか?そのままで」

「はっ?!」

言われて自分を確かめたら・・・素っ裸のまま西門さんの前で上半身を起こしてた!でも、お腹はしっかりお布団の中・・・慌ててまた頭から布団を被って隠れたら大笑いされた。
隙間から見たらこの人はもう服を着てる・・・いつの間に?って布団から顔だけ出して睨んだら、昔のようにニヤッと笑われた。


「俺はもう随分前に起きて水分補給したんだよ。誰かさんが離してくれねぇから暑くて堪んなくてさ。それも覚えてねぇの?」

「・・・全然気が付かなかった。今、何時?」
「もう8時だけど」

「・・・・・・・・・えっ?」
「だから8時だけど?」


うそ・・・っ!
今から支度して逗子の研究所まで・・・はっ!小夜さんが居ない!って事はバスと電車?!
それだともう出なきゃ間に合わない!急いで支度をしたいのに西門さんは隣で笑ってるし、私は素っ裸だしで、布団を被ったままアタフタしていた。
そうしたら澄ました顔して彼がスマホを取り出し、何処かに電話を掛けていた。

「・・・あぁ、俺。悪いけど頼みがあるんだわ、あきら」

はっ?!美作さん・・・彼に何を言うの?
西門さんはベッドから立ち上がって部屋を出て行きリビングの方に移動した。そっとベッドから出てそれを確認してから、急いで服を着替え髪を梳かした。
鏡で見たらすっごいクマ・・・それに身体中がベトベトしてる。服は着たものの本当言えばお風呂に入りたい・・・。


でも、そんな事を言ってる場合じゃなくて急いで顔を洗いに行った。




*********************




牧野の寝顔を見ながら考えた。
こいつが必死に考えて出した結論なら・・・今は受け入れようと。

ただし俺の推測が正しいのならあの子達は西門の血を引き継ぐ者・・・いずれは美作と話合い西門に連れ帰ろうと思った。


牧野は西門にあの子達の存在がバレたら自分から奪い取られると思ったんだ。
そして俺と紫の子供として育てられる・・・紫の元で育てられると考えただけで恐怖だったんだろう。

経済的にも牧野1人じゃ子供2人を抱えては暮らしていけない・・・佐賀であきらに見付かった時は腹がデカかったのかもしれねぇな。だからあきらもそんな牧野の必死の願いを聞くしかなかった。
俺に話してしまえば西門を飛び出すのは目に見えていたから止めたんだろう。

あきらに会わなかったらどうするつもりだったのか、なんて納得出来ねぇ部分もあったけど、それがこいつの出した答え。
最終的には子供達を尤も安全な場所で平和に暮らせるようにと願ったんだ。


だからあきら達も全部判った上で西門の子供を引き取った、そういう事だと自分に言い聞かせた。


俺に出来ることは一日も早く紫の事を片付けること、それだけだ。
そして紫が西門から手を引いたら、何を言われても牧野を迎え入れる。その時にあきらと話し合おう・・・そう決めた。



牧野が目覚めた時も極普通にしてやった。
自分が何も身に付けてないと判った時、1番始めに腹を隠したのも見て見ぬフリ・・・自分の出勤時間で慌てるこいつが面白くて見ていたかったけど、俺が居たらベッドからも出られないんだろうからリビングに移動した。


「・・・あぁ、俺。悪いけど頼みがあるんだわ、あきら」
『・・・お前、今何処だ?』

「は?鎌倉に決まってるだろ?牧野が今まで起きられなかったんだよ」
『お前っ!そんなになるまで・・・・・・話合いじゃなかったのかよ!』


お前はホントにお節介でお人好しで、相変わらず世話好きな奴だな・・・で、本当は牧野の事を今でも特別に想ってんだな?
『幼馴染みの親友より、友達以上の女の心配かよ』、なんて言葉に出してしまいそうだった。


「そう怒鳴るな。あのさ、牧野が動けそうにもないんだよな」
『総二郎!まさか一睡もさせてないんじゃ・・・』

「バカ言うな!朝日が登る前には止めたって」
『は?・・・何時まで・・・!いや、いい・・・で、なんの頼みだ?』


それは「兄貴」としての心配か?それとも・・・ヤキモチか?
電話の向こうのあきらの狼狽えた姿が想像出来て面白ぇ。いや、この心配の中に子供の事を俺が知ったかどうかも入ってんのかもしれない。

今じゃすっかり父親気分・・・3年も育てればそうなのかもしれねぇな。


「牧野の職場、おばさんの会社だろ?悪いけど今日休ませたいんだ。あいつにそう言っても無理して行くって言うだろうし」
『・・・それならもう連絡済みだ。昨日は美作に遊びに来てて夜に発熱、医者の診察で風邪って事にしてある。そろそろ牧野に連絡しようと思ってたところだ』

「おっ!流石だな。じゃあもう一つ頼んでいいか?」
『まだあるのか!』

「同じ手を西門に使っといてくれよ。自分の誕生日会をそこでやって大暴れして転倒、大事を取って美作の病院に入ってるけど人目につくから見舞いに来んな、とかさ」

『この俺に西門を騙せって言うのか!』

「いいじゃねぇか、このぐらい。頼むわ、あきら。今日の夜は戻るからってさ」


朝っぱらからあきらの怒鳴り声を聞いて、それを適当に流して電話は切った。


何かドタバタ音がすると思ったら牧野が仕事に行く準備で大慌てしている。
目の下にすげぇクマ作ってチグハグな服着て、洗面所とキッチンを行ったり来たり・・・マジで見てて飽きねぇ女だなって、ソファーに座ったままそれを眺めていた。

「西門さんっ、こ、珈琲だけでいい?!」
「あぁ、俺が淹れてやるよ」

「ホント?!じゃあ頼んだ!えっと・・・あーっ!トーストあったっけ?!」
「・・・俺ならいいぞ?腹減ってないし」

「あっ、あっ・・・お、おにぎりしようか?でも待って!先にお化粧・・・!」
「落ち着けよ、怪我するぞ?」


そう言ったと同時にドアを開けてないのに突進して顔面をぶつけた・・・くくっ、昔と変わってねぇな。



だけど本当は脆い部分がある奴だ。
涙を隠そうとするだけで、わざと明るくしようとするだけで、人一倍我慢する奴だ。

子供を手放した時はどんだけ泣いたんだろう。
この家で小夜って使用人相手に大泣きして暴れたのかな・・・それとも1人で声を殺して泣いて、また人前では空元気出してたのか?

3年間・・・あの子達があきらの嫁さんを「ママ」って呼ぶのを聞いてたのか?そんな思いをしても成長を見たかったのか?


目の前ではそんな事を感じさせない牧野が走りまくってる。
そうこうしてるうちに支度が出来上がったのか、殆どスッピンだと思える顔で俺の前に飛び出してきて息を切らしていた。


「ご、ごめん!西門さん!下のバス停まで送ってくれない?」
「いいけど、お前今日は仕事休みだぜ?」

「そうなの?判った!いいから車を・・・はっ?!」
「あきらがそうしたってさ。だから今日はお前は休み・・・因みに俺も夕方までフリーだから」

「・・・はぁっ?!!なんでそんな事になってるの?!」
「いいじゃん、ゆっくりしようぜ?身体が痛いんだろ?腰が曲がったお前見てたら面白かったわ」

「なっ・・・!」


ソファーから立ち上がって固まってる牧野の所に行った。
そしてこいつの身体を抱き締めた・・・抱き締めたらすげぇ切なくなった。


バカだな・・・ホント。

お前も俺も・・・大馬鹿だ。


それでも俺はお前を離せない・・・漸くこの手に戻って来たお前だけは離せない。


待ってろ、牧野。
いつかあの子達を迎えに行って、今度は4人で暮らせるようになるまで・・・俺は絶対に諦めねぇから。




<第二章 再会 終>




f88065db953f4a6b406271aa49865e80_t.jpg
関連記事
Posted by