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plumeria

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急いで支度をしたのにお休み・・・いつの間にそんな手配をしたのかと呆れたけど、本音を言えば助かった。
身体中が痛い、それは本当だったから。
とてもこの状態でホースを引き摺って歩くなんて出来ない・・・そう思っていた。

脱力して倒れそうになった時に西門さんに抱き締められて、その胸に思いっきり身体を預けた。


もう少し早く言ってよ・・・!って心の中じゃ呟くけど声には出さない。
温かい胸の中はそんな気分を一気に幸せなものに変えてしまうから・・・でも、同時に不安との闘いも始まったんだ。


奥さんが居る人と一夜を過ごした・・・本人達の気持ちがどうであれ、これは罰を受ける行為だから。



「何考えてんだ?」
「ん?・・・何でもない・・・気が抜けただけだよ」

「ははっ!そうだろうな。牧野、汗かいただろうからシャワーしてこい。俺もお前の後に使うから」
「・・・そうね、本当はそうしたかったの。じゃ、行ってくる」

「あ!その前に・・・」

彼の腕を離して背中を向けた途端に引き戻されて、片手を回されて抱きかかえられた頭・・・そして重なった唇・・・。
昨日あれだけキスされたから唇が腫れてる気がするのに、お構いなしに入って来る舌を立ったまま受け入れるなんて思わなかった!
それにさりげなく動かしてるもうひとつの手・・・それが腰の辺りをサワサワと・・・

ペシッ!と叩くと唇まで離されて「なんて事すんだよ・・・」って凄く不機嫌な顔をされた。


「あ、朝だから!朝からそんな所触っちゃダメでしょ!もうっ・・・」
「時間って関係あんの?俺は朝でも昼でも全然OKだけど?」

「私はその時間帯は受け付けていませんっ!油断も隙も無いんだから!」
「夕方ならいいのかよ・・・」

西門さんは私に叩かれた手を摩りながらニヤッと笑ったけど、私は怒ったフリして内心怖かった。
明るい時には無理・・・ただそれをいつまで拒めるかなんて、この人相手に自信なんてなかった。この関係を続けていたらいつかはバレてしまう。

・・・そんな気がして怖かった。


その後、私も西門さんもシャワーで汗を流して、遅めの朝食を食べた。
疲れすぎてたから簡単にトーストと珈琲、それにフルーツがあったからヨーグルトに混ぜただけ。
しかも珈琲は西門さんが淹れてくれたもの・・・お茶だけじゃなくて珈琲も彼が淹れてくれたら美味しく感じる。そう言うと得意気に「当たり前だろ?」って目を細める・・・洗いたてのまだ濡れてる髪にドキッとしてせっかくの珈琲を溢して睨まれた。

その間に回ってる洗濯機。恥ずかしいぐらい汚してしまったシーツを洗って庭に干して、それを見る度に昨日の事を思い出すから顔が熱くなった。
夕方までに乾くかしら・・・小夜さんに知られたらと思うとドキドキした。


その後はリビングのソファーを背凭れにして、ラグの上に並んで座っていた。


特に何も話さない・・・ただ、彼の肩に頭を乗せてウトウトしていた。

西門さんも何も言わない。
私の肩に腕を回して支えてくれて、彼も目を閉じて私の頭に自分の頭を乗っけていた。


今日は西門に帰るんだ・・・そう思ったら時間が止まればいいのに、なんて考えていた。




*******************




殆ど寝てなかった俺は牧野を抱きかかえて爆睡・・・時間こそ短かったが久しぶりに幸せな眠りだった。

目が覚めたのはもう昼過ぎで、牧野も殆ど同時に目を覚ました。
時計を見て慌てて起き上がり「ご飯の支度するね」なんてエプロンをつけた。その後ろ姿・・・これが自分の家だったらな、と思わずにはいられない光景だ。


「適当でいいぞ。さっき朝飯食ったから」
「ダメだよ、朝は簡単に済ませたんだからお昼ぐらいはきちんと作らなきゃ」

「くくっ、そういう所変わってねぇんだな」
「普段は小夜さんがしてくれてるんだけどね。私はお手伝いぐらいだよ」

「そう言えばどうして小夜ってヤツと同居してるんだ?お前、なんでも家事は得意だろ?」

「・・・・・・え?」


包丁を持っていた牧野の手が止まった。
そして少しだけ振り向いて俺を見ようとして・・・すぐに止めた。

また手を動かし始めて味噌汁のいい香りが部屋に広がる。でも、さっきの質問には答えなかったから、何か不都合な事を聞いたのかと牧野の後ろ姿を見つめていた。


「美作さんにも心配しなくていいって言ったのに、私が何処かに行くと困るから監視役みたいなものなんだと思う。監視役って言っても仲はいいの。お姉ちゃんみたいでなんでも相談できるし、一緒に居て楽しいのよ。
それに私が車の運転出来ないから運転手もしてくれてるの」

「・・・そうか」

「うん、相変わらず私に信用がないのよね!」


答えるまでの時間はなんだ?
どうして俺の方を見て話さない?・・・それも子供の事と何か関係があるんだろうかと気になったがそれ以上は聞かなかった。


「はい!お待たせ~!」
「お!美味そうだな。牧野の飯も久しぶりだな・・・懐かしいわ、この庶民食!」

「うわっ、嫌味・・・美味しかったら文句ないでしょ?」


炊きたての白い飯に具だくさんの味噌汁。
ほうれん草の胡麻和えと柚子の香りがする大根の浅漬け、それに豚の生姜焼き。
手の込んだ和食づくしの西門じゃ食えないものばっかりだけどすげぇ美味かった。勿論世間に言わせりゃ西門の調理長の方が断然腕はいいんだけどそういう意味じゃない。

俺が最高だと思える味がこいつって事だ。



「・・・お料理、上手なの?」

牧野が俺の顔を見ずに飯を口に運びながらそう言った。

「食ったことない。って言うか、作れねぇと思うけどな」
「え・・・そうなの?」

「多分、嗜みとして料理ぐらい仕込まれてるだろうけど、俺はあいつが作ってる姿も厨房に入ってる姿も見たことはない。珈琲なら淹れてもらったことあるか?・・・それも覚えてねぇし」

「・・・作る必要がないからだよね。あははっ、だって西門だもんね」

「関係ねぇと思うけど?俺、お前だったら作らせるぞ。料理長よりこっちの方がいいし」


ピタッと止まる箸・・・顔を見たら悲しそうに俯いていた。
仕方のない事だけど、紫の存在がある限りこいつは自分が浮気相手だって思ってしまうんだろう。そして罪悪感でいっぱいになって自分が「悪者」だと思い込んでしまう。

再会する前なら母親としての哀情だけだったかもしれないのに、出会ってしまったら自分の立場にも苦しむ。
4年間の間、その小さな身体にどれだけの悲しみを詰め込んだのかと思うと、過去の自分の苦しみなんてものはどうでも良くなった。

急いでやらねぇとな・・・それしか頭になかった。


昼飯が済んだら牧野の部屋に戻ってベッドに寝転んでまた昼寝・・・しっかり繋がれた指が時々ピクッと動いてた。

牧野はぐっすりなのに相変わらず眠たいのに寝られない俺・・・隣にこいつが居ると思えば当然熱を持つ身体が、牧野の寝息を聞く度に疼いて堪らなかった。
だからつい眠ってるこいつに悪戯のキス・・・そいつがどんどんエスカレートして本気になったら牧野も目を覚まして大慌て。


「うわっ・・・ちょ、何してんの?西門さん!」
「我慢出来ない。お前の寝顔が悪いんだって・・・俺を煽るからこうなるの」

「煽ってないっ!ただ寝てただけ・・・だめ、明るいから・・・」
「布団被ったらいいんだろ?判ってるって・・・歳とったら恥ずかしくなったんだな」

「誰がそんなっ・・・それに歳とったって・・・やぁっ・・・んっ」


今だけ知らねぇフリをしてやる。
気が付かないフリしてお前の希望通りにしてやる・・・だから大人しく抱かれてろ。


カーテンを引いて薄暗くしたベッドの中で、再び牧野を抱き潰した。
せっかく替えたシーツなのにあっという間にぐしゃぐしゃにして、2人の愛液で汚して乱れて・・・この時間も狂ったように求め続けた。


もうすぐ俺は東京に戻る・・・それまでの時間の総てをこいつとの行為に溺れていた。





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