FC2ブログ

plumeria

plumeria

窓から彼の車が出ていくのを見送った。
今日は隠れたりしなくて、カーテンも全開して手を振って・・・花沢類も1度振り向いて片手をあげて、そのまま車はアパートから見えなくなった。


「ピピッピ・・・ピピ」
「あっ・・・ハク、ごめんね、忘れてた」

急いでハクに掛けていたカバーを外したら、嬉しそうに止まり木を行ったり来たり・・・その場に座り込んでる私の動揺なんてお構いなしに朝の囀りを繰り返してた。

今頃になってまたドキドキしてきた・・・昨日の夜を思いだして顔が火照る。身体の何処が凄く熱を持って、心臓がバクバク言ってる。花沢類の手が私の身体に・・・あんな事を・・・


「うわあぁっ!やだっ・・・どうしよう!まさか、こんな事になるなんて・・・ど、どうしたらいいの?」
「ピピピ・・・ピピ!」

「鳴いてる場合じゃないわ、ハク!私、今日からどうしたらいいんだっけ・・・はっ?引っ越し場所って探すの?探さないの?花沢類、何て言ったっけ・・・・・・晩ご飯食べに来るって言った!!」
「ピピ!ピピピピ!」

「でも、何作るの?・・・いや、それよりもお洗濯でしょ!!」


急いで立ち上がったら腰がっ!お腹がっ!・・・そこも痛いけど背中や腕まで痛い。どうしてこうなったかは考えない事にして、ベッドまで行くとそこにはぐちゃぐちゃのシーツが丸まってる。
それを抱えて洗濯機に放り込み、急いでスイッチを押した。

部屋の窓を全部開けて、何となく夜の匂いが残ってる部屋の空気を一新して、それでも真っ赤な顔は戻らない。
頭の中には色っぽい花沢類の顔が蘇って来て、ブルンブルンと振っても消えやしない!急いで次の家事をしようと思ったら段ボールの角に小指をぶつけて悶絶した。


「ダメだ・・・お買い物に行こう。部屋から出て気分変えなきゃ・・・」

こんな時間から楽な格好で買い物に行った事は殆ど無い。サングラスも帽子も被らずにセーターとジーンズとスニーカー・・・昔のように歩くのは久しぶりだった。
太陽が東側にある時間のお出掛け・・・懐かしいなぁ、なんて思いながらスーパーに向かった。


「何作ろうかなぁ・・・花沢類の好きなもの?出汁巻き卵以外全然知らないんだけど。でも、私の作ったものでいいんだよね?」

頭に浮かぶものは色々あるけど纏まらない。
花沢家はフレンチのイメージだけど私にはハードルが高い・・・庶民食ならお任せだけど花沢類が食べられるの?それなら中間を取って中華?イタリアン?それとも、それとも・・・

ぶつぶつ言いながら買い物籠の中に食材を入れていく。
気が付いたら持てないほど入れていて、お店の人がカートを待ってきてくれた。それに慌てて頭を下げたらニッコリと笑われ「おはようございます!」と挨拶された。


「お客様、お久しぶりですね。その方がお似合いですよ?」
「・・・は?」

「いつも帽子にサングラスだったでしょう?笑顔も素敵なんだし、その方がいいと思いまして。失礼しました、余計なことでしたかね」
「・・・私、笑っていました?」

「はい。とても嬉しそうに笑っておいででしたよ」


ヤバい・・・無意識のうちに笑ってたんだ?
料理も決まって無くて内心凄く焦ってるのに笑ってたなんて・・・恥ずかしくなって急いで買い物を済ませ、レジに向かった。そして何度も休まなきゃいけないほどの大荷物を持ってアパートに帰ったのは午前11時。
階段下まで戻って来たのにハァハァ言いながら荷物を置いて休憩していたら、ガラリと窓が開いて1階のおばさんが顔を出した!

こっちもヤバい!
私も驚いてすごい顔になったけど、このおばさんも驚いたみたい。でも、何故かこの人の方が先に赤くなった・・・かも?


「あ、あら、牧野さん!昨日は何事?すごく五月蠅かったんだけど?!」
「あっ・・・ご、ごめんなさい」

「ホントに最近の若い子は羞恥心ってものが無いのね!あっ、とか、やだっ、とか耳障りだったわよ!見て判るだろうけど、このアパート古くて筒抜けなのよ?あ・・・あなたのベッドがある部屋、うちの寝室の真上だって言うのに!ギシッ、ギシッて気になって寝られないじゃないの!」
「そうですよね・・・あの、何と言っていいのか・・・」


「今日も・・・じゃないでしょうね」
「ははは・・・ど、どうかな・・・」

「次に五月蠅かったら夜中でも文句言いに行くからね!あ、あの彼に言っといて!」
「・・・・・・すみませんでした」


花沢類っ!!もうっ・・・どうしてくれるのよっ!!




******************




「類様!連絡もなしに外泊されるだなんて初めてじゃございませんか?外泊はお咎めしませんけれど、ひと言ご連絡下さいませ!お屋敷内でもそれなりに情報が無いと困りますから」

屋敷に戻ったらご機嫌斜めの加代に大きな声で叱られ、執事にも「お珍しい」と苦笑いされた。
そして足元に纏わり付くのはあいつ・・・一晩帰らなかったからって興奮して暴れてた。

「くすっ、悪かったね。今度遊び相手を連れて帰るからさ、楽しみに待ってな」

「まぁ!また犬を拾ってくる気ですか?」
「ううん、拾ってこないよ。それよりさ、加代に頼みがあるんだけど」

「はい?何でございましょう?」

「あのね・・・」


加代にはある頼み事をして、そのあと大急ぎでシャワーを浴びて会社に向かった。




執務室に入ったと同時にやってきたのは開発グループのエンジニア達。
昨日の常務や本部長のように何度も頭を下げられ「総責任者」としてチームを纏めて欲しいと言う言葉を出してきた。

「とにかく頭を上げて下さい。私は何もしてないんです。道明寺サイドが訂正してきただけでしょう?特別な事はしていませんので礼など無用です」

「いえ、本当に失礼いたしました。根も葉もない噂に踊らされ、同じ社の人間でありながら罵詈雑言の数々、どうぞお許しください」

「もういいから・・・それよりも開発の方を宜しくお願いします。我が社がこの分野でも道明寺に引けを取らない技術があることを示してください。期待しています」

「はい!お任せ下さい!」


手のひらを返したような態度・・・まぁ、いいけどね。これで仕事が上手く進むのなら。
今度は勇ましくこの部屋を出ていく後ろ姿を、藤本と見ながら呆れたように笑った。

その後、彼が淹れてくれた珈琲を飲みながらメールのチェックをしていたら、父さんからは「後継者らしくもっと気を引き締めろ!」の文字。俺に隙があるから変な誤解をされるんだと説教めいた言葉が並んでいる・・・それには返事もせずに他の仕事を片付けていった。


「専務、ご報告します」

秘書席から身を乗り出した藤本が、眼鏡に手を掛けながら真面目な声を出した。

「なに?いい話なら聞くけど」
「いい話・・・仕事の話です。アメリカの人工知能搭載最新型エコカーの開発についてですが、先日花沢を外して始動したと言いましたよね。あそこから再度要請があり、最終的に当社も加わることになったらしいですよ」

「・・・そうなの?まさか・・・道明寺が?」
「さぁ?それは判りません。ただ、アメリカ支部の方では専務が提案したイギリスの新型軽量スーパーカーのプロジェクトチームに加わりましたから人手が足りないそうで、急遽日本からも人員が派遣されるそうです」

「ふーん・・・忙しくなるね」
「因みに海底資源開発事業は来週から本格的に動くそうです。勿論、当社は参入してますけど」


「気に入らないね、道明寺が口を出すと動き始めるってのは」
「お顔は笑ってますよ、専務」


うちの情報部から司のプライベートジェットが日本を飛び立ったと連絡が入ったのはその日の昼前だった。


「藤本、お昼食べに行こうか」
「えっ!!専務とですか?」

「うん、この近くにロシア料理の店が出来たらしいから奢ってやるよ」
「・・・・・・何かウラがあるんですか?本当にご機嫌いいですよね」


「別に何もないよ。身体が軽いだけ」
「・・・・・・」


くすっ、牧野は大変だろうけどね。





35ec45619dc87e33f4eafdc012f94101_t.jpg
関連記事
Posted by

Comments 4

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/04/22 (Mon) 06:55 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、おはようございます。

そうですねぇ♡
身体は痛いでしょうが、顔はニコニコだったのかもしれませんね!
私、そんな初々しい気分はとっくに忘れたので思い出せませんが・・・。

下のおばさん(笑)

実は私が新婚の時に2階建てのアパートに住んでで、1階のおばさんがすごく意地悪だったんですよ(笑)
勿論深夜の騒音なんかはありませんでしたが、旦那がバイクだったので五月蠅いとかインコを飼っていたので五月蠅いとかをドアに貼っていくんです(笑)
引っ越しのご挨拶にも応じてもらえなかったので顔は知らないんですが、とにかく貼っていくんです(笑)

それを思い出したので登場させたおばさんです。

類君も楽しそうでしょ♡
今回はこれでめでたしめでたし・・・って事で間もなく終了です♡

2019/04/22 (Mon) 09:51 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/04/22 (Mon) 12:07 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは!

爆笑!スマホ見ながら笑ってはいけません(笑)
それはただの変態ですよっ!!

覗かれたらどうするんですか?もしも万が一・・・いや、字までは見られませんかね(笑)

私も会社勤務の時は皆さんのコメントを昼休みに読んでいたので結構ニヤニヤしていたそうです。
若い子によく言われてました・・・「気持ちわる~」(笑)


今夜も・・・どうかな?(笑)
って、もうありませんから。

もう1回言っとくね?

もうありませんから(爆)

2019/04/22 (Mon) 17:45 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply