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plumeria

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「はぁ・・・お腹が邪魔だなぁ」

なんて類が聞いたら怒りそうな台詞をいいながらデスクでひと休み。
本当は3時のおやつの金平糖だけど、それを口にポイッと放り投げて抹茶ラテをコクンと飲んだ。

今日は類と一緒に出勤したけど、この後すぐに横浜に行くって言っていた。
だからお土産に「パンダまん」と「フカヒレまん」を頼んだんだけど、随分嫌そうな顔してたなぁ・・・この前『黒ぶた侍に似てる!』って言ったから怒ってるのかしら。

ちゃんと買って帰ってくれるかな・・・なーんて、お腹が出てるのにお土産の事を考えてて顔がニヤける。目の前を通った江本課長にクスッと笑われて慌ててパソコンの画面に目を向けた。


「よしっ!仕事しなくちゃ!」

もうすぐ産休に入るから今のうちに残ってる仕事を片付けないと。最後の一粒をカリッと食べてから姿勢を正し、メール受信箱を開こうとした瞬間、私のデスクの内線が鳴った。
ディスプレイを見たらその内線番号は・・・受付?どうしてそんな所から掛かったんだろうと思いながら受話器を取った。


『奥・・・いえ、花沢さんですよね?』
「はい、花沢です。どうかしましたか?」

『お客様がお見えですけどどうしましょう?そちらをご案内しても宜しいですか?』
「え?私にですか?る・・・専務じゃなくて?」

『えぇ、そうなんです。海外事業部の花沢さんと言われましたので』


類じゃなくて・・・私?
でも私にはそんなお客さんが来る予定も状況でもないのに?それなのに来るって事は余程・・・・・・


「まさか、女性ですか?!」
『男性ですよ?アルフレッド・エバンス様です』

「・・・あっ!そうですか・・・」


驚いた・・・「私の類を返して!」って怒鳴り込んで来るような人が居るのかと思った。


・・・・・・・・・えっ?!今、アルフレッド・エバンスって言った?

この前のパーティーで私にキスした・・・じゃなかった、私にエバンスに来いって言ったあの人?その人が何で私に・・・?
まさか、この社内で引き抜きの話をするつもりなのかしら?!


『どうします?アポは取っていないと言われてますので無理なら丁重にお断りも出来ますよ?』
「あっ!いえ・・・大丈夫です。海外事業部の応接室でお話します」

『判りました。ではご案内しますね』


どうしよう・・・類に相談した方が良いのかしら。
そう思って電話してみたけど、電源が落とされているのかコールしなくてアナウンスが流れた。どうしても電話が不味い会議中ならそれも有り得る。
それなら誰かについて来てもらおうとフロアを見渡したら、江本課長と目があった。


「あの、江本課長、少し宜しいですか?」
「どうしたの?そんな怖い顔して」

「実は私宛にお客様らしいんですけど、応接室にお通ししたんです。お時間があったら同席願えませんか?」
「・・・誰が君に?」

「エバンスホールディングスの方らしいんですが、何故私なのかも判らなくて・・・ダメですか?」
「エバンス?この前のパーティーの企業だね。そこが専務じゃなくて・・・君に?」


類が知ったら怒るかもしれないけど1人で会う勇気も無い。
だから江本課長と一緒に彼が待っている部屋に向かった。



**



応接室に入ると待っていたのは彼とその秘書と思われる男性だった。
私を見ると先日の事もあってかにっこり笑ってる・・・その笑顔は穏やかで優しそうに見えるけど、何を言われるのかと私の顔は引き攣っていた。


「そんなに怯えないで?花沢つくしさん、先日は失礼しましたね。ご主人にも不快な思いをさせてしまって」

「あ、いえ・・・それは大丈夫です。多分、もう忘れてると思います」

いや、本当は全然忘れてないと思うんだけど、ここは会話をスムーズにさせるために気を遣っただけ。同じ話をされたらどうしようかと内心ヒヤヒヤしていた。
断わるのは簡単だけど、そのせいで花沢に不利な状況を作る訳にもいかない。そういう意味では私は素人で、とてもこの人達に言葉で勝てるとは思えない。

そんな会話になったら助けてくれるよね?と江本課長を見上げた。


「こちらは?」

「私の上司で江本と申します。ごめんなさい、私1人でお会いしても判らない事があるかもしれないので同席してもらいました。それで、私にどんなご用件でしょう?」
「初めまして・・・と、言いますか、先日のパーティーには私も出席をしておりました。お話しする機会はありませんでしたね」

「あぁ、そうなんですね?それは失礼。本日伺ったのはあなたをエバンスに・・などと言う話ではありませんからご安心を。実は仕事をご一緒にどうかと思いましてね」

「はっ?仕事・・・それなら私ではなく、やはり江本にお話しいただけませんか?」


私の引き抜きじゃないことで安心したけど、次に言われたのは共同事業についてだったから余計に驚いた。私は通訳兼アシスタントであって営業じゃない。
どんな話を持ち出されても、そんなの纏める事も指揮する事も出来ないし!

一体何を考えて私を指名したのかと呆然としてしまった。


「あぁ、言葉が足りなかったようですね。あなたに営業責任者になって欲しいと言うわけではありません。ただ、相手がシンガポールの”WINLEA.PTE.LTD”と言う企業でしてね。そこの代表者は気難しい御夫人なものですから、あなたのようにお話し上手な方がついてくださると嬉しいなと思っただけです。
ご存じかもしれませんがエバンスはまだ不動産関係に若干弱い部分がありましてね、今度はその苦手分野での仕事なのです。是非あの時に知り合いになれたのですから、これを機会に仕事で手を組んでみませんか?」

「私の業務はあくまでも海外営業部のアシスタントです。海外の企業が花沢と組んで事業を行うことの補佐が殆どですから、会社として今のお話しが纏まったのであれば喜んでお手伝いしますわ。
ただしこれからのお話でしたら私はご覧の通りの身体です。長い期間のアシスタントは出来ませんけど?」


私が業務出来るのは最大であと2ヶ月・・・類は明日にでも産休取れって言うぐらい心配してるから無理だと思うけど。
せっかく話を持って来てくれたエバンス社には悪いけど、他のアシスタントの方が役に立つだろう、そう思ってやんわり断わったつもりだった。


「それなら産休に入る直前までって事でお受けしたらどうだろう?」
「はっ?江本課長、本気ですか?」

「勿論、私も可能な限りでいいですよ?やはり取引は1番初めが肝心です。第一印象というのは大事だし、明るい話題が作れる人は貴重です。是非、お願いしたいですね。これは花沢物産にもいいお話しだと思いますよ?
花沢はフランスで強いがエバンスはイギリス・・・そのうちヨーロッパでもご一緒に仕事が出来るかもしれませんね」

「は、はぁ・・・でも」
「花沢専務には私から話してあげるから大丈夫。君に無理はさせないし、あくまでもアシスタントだ。これまでの仕事と変わりはないよ?」


本当にそんな事でいいんだろうか。

よく判らないまま応接室の椅子に座って、今度は本格的な打ち合わせをアルフレッドさんと江本課長が始めた。

どうやらシンガポールのクライアントが現地で新しく作るホテルの内装を日本風にアレンジしたいと言ってるらしい。そこには歌舞伎なんかも上演できる設備を作ったり、日本庭園を造ったりと希望が多いそうだ。
花沢に協力して欲しいのはその和風アレンジのデザインや設計、資材の準備が中心らしい。

その代表者は女性で日本贔屓だけど、とにかく気難しくて気分屋。その日の機嫌で契約内容がガラリと変わるような少々面倒臭い人なのだとアフルレッドさんは苦笑いだった。


「御夫人はとにかく『和』がお好みなのです。つくしさん、あなたのような人が好きだと思うのですよ。お力を貸してくださいね」

「・・・判りました。私でお役に立てるのでしたら、その分野で頑張ります」

「あぁ、良かった!それでは江本さんも宜しく。つくしさん、ご主人にも宜しくお伝えください」

「はい、本日の件、必ず伝えておきます」
「それでは彼女はこのまま部署に戻しますので、お見送りは私が・・・」


江本課長がそう言ったから私は応接室の前でアルフレッドさんを見送った。
エレベーターに乗り込んで下まで見送りに行った江本課長・・・何だか凄く嬉しそうだったけど、この話・・・そんなに花沢にメリットがあるのかしら?

そこまで魅力を感じないのは私だけ?
花沢が得意な分野だとも思わないけど、それは私では判断出来ないって事なのかしら・・・。


「ホテルや劇場を花沢の名前で造るんなら話は別だけどなぁ・・・まぁ、いいか!営業は本職に任せようっと!」


もう降りてしまったエレベーターのランプを見ながら、それが1階に着いたら私は自分の仕事場に戻った。



*******************



「専務、起きてください。寝てたでしょ?」
「・・・ん?会議終わった?」

「とっくに終わりました。もうこの部屋に残ってるのは私達だけですよ!」


藤本に言われて回りを見たら本当に会議室には誰も居なかった。
まだ席について会議資料を手に持ってるのは俺・・・藤本はその横で腕組みしながら睨んでいた。

「しかしまぁ・・・よくそうやって目を開けたままの状態で資料見ながら寝ますよね?ページを捲らないからおかしいと思ったら!」
「・・・捲ってくれれば良かったのに。ふぁ・・・よく寝た!」

「いくら出席するだけでいいって言った会議でも、内容ぐらい聞いて下さいよ!」
「聞くだけなら聞いてたよ?もう抜けちゃったけど」

「・・・もう、いいです。帰りましょ!」
「うん、中華街に寄ってね。お土産頼まれてるから」

「・・・・・・」
「スマホに着信が残ってる。きっとつくしがお土産忘れないでねって電話したんだと思うんだよね」


会議中だったから電源落としていたけど、不在着信につくしの番号が残されていた。

電話なんかしなくても忘れないって!
「パンダまん」と「フカヒレまん」、ついでに「ゴマ団子」も買って帰ろうかな・・・おまけが付くと子供は喜ぶもんね!

ちゃんと覚えていたって言いたかったからつくしに折り返しの電話もせずに藤本を連れて中華街に出掛けた。


まさか、あの男がつくしに会いに来ていただなんて考えもせずに・・・。





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2019/05/07 (Tue) 06:44 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、おはようございます。

やっと旦那がお仕事に行ってホッとしている私・・・私が仕事だったのに10連休した旦那は嫌々出勤しました(笑)
私は今日がお休み❤のんびりします~!


さて、お話し・・・江本、どうなんでしょうかね(笑)
でも前作同様、こちらのお話しもComedyですから事件が起きても怖くはないと思います(事件ww)

そしてその商品、いただいたことがあります!!
前の会社の時に出張した人が買ってきてくれました♡

いいなぁ・・・私の住んでるところにはあんまり有名な物がないのですよ(あるけど普段食べられない💦)

なのでいつもお出掛けした人のお土産を楽しみにしていました。
好きなのはね・・・

北海道の「レーズンサンド」(六花亭)
長崎の「よりより」(これ、ハマる!)
中津川「栗きんとん」
広島「桐葉菓」
京都「チーズケーキ」(娘が買ってきてくれるんだけど何処のだろう?行列らしいです)

誰か送ってくれないかなぁ(笑)

2019/05/07 (Tue) 08:36 | EDIT | REPLY |   

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