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アルフレッド・エバンスが花沢に来たっていう日から数日後、その連絡は急に入った。

俺も母さんも知らないうちに父さんが江本の持って来た例の話にGOサインを出したって・・・それを聞いたつくしが専務執務室に飛び込んで来た。
・・・って言うか、走るのダメだって言ってるのにっ!まずはそれを怒ったら「えへっ!」ってまた笑ってたけど。


「本当に?俺には何も言って来なかったけど?」
「本当みたい。さっき江本課長に『エバンスのアシスタント、宜しくね』って言われたわ」

「くそっ・・・俺に話が来ると思ったのに!」

まさか父さんが俺に黙って了承するとも思わなかった。
急いでつくしを連れて社長室に向かったら、既に父さんの前には母さんが居て仁王立ち・・・父さんは顔面蒼白だった。その様子からしても俺と同じ用件だと思い、急いでデスクの前に行って母さんと並んで父さんを睨んだ。


「どういう事?どうして俺に何も言わずにOK出したの?」
「そうよ!独断ってのが気に入らないわ。つくしちゃんの事なのよ?花沢家の嫁なのよ?」

「ちょ、ちょっと待ちなさい!独断って言うけど私のところには専務の許可も出ているって言われて計画書の提示があったんだよ?しかも海外事業部長が持って来て、つくしちゃんの上司が本人の同意を得てるって言ったんだよ?」

「俺の許可?そんなもの出してないし!」
「つくしちゃんの同意って、エバンスが目の前に居る時の言葉でしょ?そう言うしかないじゃない!」

「エバンスは今後の重要取引先だって君も言ったじゃないか!まぁ、今回は小さな案件だったが、これをきっかけにして取引を拡大するって海外事業部も言ってたし、つくしちゃんも軌道に乗るまでのクライアントの話し相手にってぐらいの内容だと聞いたからいいと思って・・・」

「あのさ!その軌道に乗るまでのつくしのストレスで具合が悪くなったらどうしてくれるの?」
「そうよ!私だってストレスで早産しかけて入院したじゃない!あなた、その時に病院でわんわん泣いて『沢山仕事させてすまない』って言ったわよね?類に同じ事をさせる気なの?」

「・・・いや、俺は仕事させてないし」


父さんが慌てて俺達の前に出したのは海外事業部が持って来た事業計画書。
それを見たらつくしが聞いたのよりは花沢に利益が出そうな試算だった。しかも内装だけじゃなく建築デザインから基礎工事なんかも花沢に任せると言う、割と規模の大きなホテル建設に変わっていた。


「・・・思っていたより大きなホテルね。これならやってみてもいいのかしら」

「ただ大きなホテルだが他にも作る予定などなさそうだったから単発な案件だろうとは思うよ。それでもこの先協力企業として付き合うのなら丁度いいかと思ったんだ。
類とつくしちゃんと年も近い責任者だろう?上手くいけばこれ以外の事業に発展するかもしれないし」

「確かにうちは金属機械分野、 化学品、エネルギー分野に強いけどインフラ分野には今1つノリが足りないもんね・・・」

「類、仕事をノリでやるのは止めてちょうだい」


いや、つくしを狙った人間なのに信用出来る訳がない!
だけど社長が1度承認したものを即時撤回するのは企業としても、父さんの判断能力にしても聞こえが悪い。「せめてアシスタントはつくし以外で」と伝える事で、エバンスとの共同事業を受ける事には渋々納得した。


「やっぱり私では無理なのかしら?」
「え?!ダメだって言ったでしょ?」

「だってあの時よりもちゃんと纏まった話になってるし、これが完成したら花沢にもメリットあるんでしょ?」
「そうだけどダメ!どうせここまで規模が大きいなら初めの打ち合わせの段階であんたは産休に入っちゃうから」

「・・・そうなんだ。でも、私の仕事はクライアントの女性とのコミュニケーション作りなんでしょ?それなら・・・」
「何回言ってもダメなものはダメ!今は平気でももっとお腹が出てくるんだよ?あんた、食欲だって抑えられないのに」

「・・・・・・そっか」
「そう!」


「ねぇ、パパ・・・もしかして類って意外と亭主関白なのかしら。こんなに言い切る類も珍しくない?」
「ホントだねぇ。どっちかって言うと尻に敷かれて大人しくしてるかと思ったのに」

「私も!だってパパだってそうだったじゃない?私がバンバン話して動いて働いて、パパは黙って後ろに居たもんね!」
「・・・だから入院は私のせいじゃないと思うんだけど・・・」



ゴチャゴチャ言ってる両親を放っておいて、今度は海外事業部に向かった。
江本に直接俺から言えば・・・そう思ったのに!


**


「あぁ、専務!これから執務室に行こうかと思っていましたよ」

「・・・何をしに?つくしの事なら例の件から外してもらいたいんだけど」

海外事業部に入ってすぐに出くわしたのは江本で、その表情はにこやかだった。
それに比べて俺は多分相当不機嫌な顔のはず・・・それなのに気にする様子もなく、不貞不貞しい態度で顎を上向きにして俺の前に立った。


「外す?そんな事は考えていませんよ?ちゃんと社長の許可ももらっていますし」
「そもそも俺が許可したなんて誰が言ったの?」

「それは花沢さんがご主人に話しておきますから、と言ったので許可されるものだと思っていましたが?本人が出来ると言ったんですよ?」
「いくら本人がそう言ったからって俺の許可にはならない。そう言うなら今から撤回するからつくしをアシスタントから外してもらおうか」

「そうはいきませんよ、もう動き始めてるんですから」
「動き始めた?何が?」


江本はここで不敵な笑みを浮かべた。
何だか同じ会社の人間とは思えない、まるでライバル会社の営業と話してるような感じだ。

つくしも俺の後ろから不安そうに覗き込んで俺達の会話を聞いている。スーツの背中を掴んでるのが判るから、相当ビビってるんだろうと思う。
だからって訳じゃないけど、ここでは専務と言うより「夫」・・・妻を守らなきゃ!って気持ちで江本を睨み返した。


「社長から承認を頂いたのですぐにエバンスホールディングスに伝えたところ、随分と喜ばれてですね。もうクライアントの女性が日本に向かってるんですよ」

「え?!もう日本に・・・って、ホテルは日本に造られるんじゃないのに?」

「えぇ、日本贔屓の方ですからこちらで会いたいと言われましてね。もう花沢さんを交えてのお食事会の準備も進めているようですよ?日本のお嬢さん・・・まぁ、奥様ですけど女性と話すのを楽しみにしているとたった今連絡があったのでお知らせに行こうかと思ったところです。奥様をお借りするのですから専務にもひと言言わないといけないでしょう?」

「・・・随分と手際がいいようだけど?」

「うちがと言うよりエバンスが張り切ってるんですよ。それがいけませんか?花沢をパートナーに選んでくれたのですから喜ばないと・・・そうじゃないですか?」


それにしても素早すぎる。
父さんの承認は数時間前なのに、もうクライアントを来日させるだなんて・・・初めから予定していたとしか考えられない。

他にアシスタントになれる女性も居ないと言い張るし、何よりつくしを指名しているからと江本はまるで俺の言う事なんて聞こうとしなかった。
それなら海外事業部長に話をしようと江本に背中を向けたら、今度はつくしが俺の袖を掴んで引き止めた。


「る・・・専務、私、頑張ってみます!」

「えっ・・・あのね、何度も言うけど・・・」
「うん、判ってます。無理はしないし無茶もしない。でも、産休に入ったら暫くお仕事出来なくなるし、今のうちに少しぐらい役に立ちたいの。大丈夫、そんなに長い期間じゃないでしょ?」

「・・・・・・役に立ってないとでも思ってるの?」
「う~ん、どうかな?でも、私の言葉で打ち合わせがスムーズに行くのなら協力したいから、やっぱりやってみる!これを出産前の最後の仕事にするから。お願いします、専務」


にっこり笑ってペコッと頭を下げて・・・そんな事されたら頷かなきゃいけなくなるのに。


「・・・もう1度帰ってから話あおうか」

「専務・・・?!」

素直に「判った」なんて言えない。
あんたのお腹には大事な宝物が居るし、それ以上にあんたが大事なのに・・・それなのにあんな男と仕事なんてさせる訳にはいかないんだって!


困った顔のつくしを海外事業部に残して自分の執務室に戻った。





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2019/05/09 (Thu) 00:46 | EDIT | REPLY |   
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2019/05/09 (Thu) 06:52 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

オレンジ****様 こんにちは。

凄い呼び方(笑)私、初めは誰のことかと思いました(笑)

そうそう!イメージはそんな感じです♡
ついでに池の水に映った自分を見てうっとりしています。

お風呂上がりには全身を鏡で確認・・・その後で前のめりで○○ビデオ見ています(笑)←作者の妄想


どんなイメージだ?(爆)

2019/05/09 (Thu) 10:44 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

そうですね・・・怪しい男に大変身。
ヤバい事に足を突っ込みそうですが・・・またまた言いますよ?このお話しはComedyです。
事件は起きても(起きるんだ)難しくならないと思います。

むしろ「そんな馬鹿なーーっ!!」って言われるかも?

類君のイメージをガクッと下げてしまう危険な私・・・(笑)まぁ、お許しください。


昨日は私に事件がありました。
なんと車で走っていたら何処かから猫の声がしたんです。

「花沢城の書きすぎかなぁ?」なんて思いながら信号待ちしていたら、やっぱり「にゃあ~」と・・・。

流石に怖くなってコンビニで停まってボンネット開けたら・・・真っ黒なデッカい猫がエンジンの上にいました💦
良かった~!!無事でっ!って思ったら飛び出て行きました。

お願い・・・そんな所に入らないで。

2019/05/09 (Thu) 10:52 | EDIT | REPLY |   

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