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plumeria

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28日・・・この日はもう仕事納めだった。

それに西門さんが来てくれる。
だから朝から浮かれすぎてミスの連発・・・また先輩達に呆れられたけど、私が元気だからなのか笑って許してもらった。

「何か良いことでもあったの?」
「あはは、いえ・・・何にもないですけど」

「明日からお休みだもんねぇ!彼氏とデートでもするの?」
「えっ?あぁ・・・はは、少しだけ・・・かな?彼、忙しい人だから」


彼・・・なんて誰かに言ったのは久しぶりで恥ずかしかった。
多分耳まで真っ赤になってるはず!凄く熱いし、汗かいてる・・・口に運んだご飯を落としそうになるぐらい動揺してしまった。それを見て先輩達がからかってくる。私に『恋バナ』なんて似合わない、なんて失礼な発言も許せるぐらい気分はハイだった。

そして仕事が終わり「良いお年を~!」なんて声を掛け合って別れた。

西門さんが手配してくれているタクシーは今日も研究所から少し離れた所で待機していて、私は急いでそれに乗り込み家に戻った。

「今日はお買い物はしなくていいんですか?」
「はい、今日は真っ直ぐ家に帰ります」

「はい、了解しました」


今日は何も作らなくていいって言ってくれた。
『自分の誕生日なんだからのんびりしろ、その代わり仕事が終わったら急いで自宅に戻れ』って・・・。

もしかしたら何か買ってきてくれるのかな?なんてちょっとウキウキしちゃう。
豪華なものなんて要らないけど、そう言ってくれるだけで嬉しい・・・それがたとえコンビニのおにぎりだって凄く嬉しい。もう真っ暗な窓の外の街灯が流れていくのを見ながら、窓ガラスに写ってる自分の顔が笑ってるのを見て恥かしかった。

もう1度こんな顔が出来るだなんて・・・少し前までは無理して笑う事の方が多かったのに。


そして家に着くとそこには1台の車が停まっていた。

誰だろう・・・こんな時間に訪ねて来る人なんて彼以外にいないはずなのに。
不思議に思いながらタクシーを降りて、その車の横を通って玄関に向かった。そうしたら窓が開いて「美作さんのお宅ですか?」なんて言われた。

「はい、そうですけど・・・?」
「良かった!お留守かと思いました。ディナーのデリバリーでこちらの住所を指定されていたんですよ」

「え?ディナーの・・・あっ!すみません!」


西門さんが私の為にそんなものを注文してくれてたんだ!疑われないように牧野じゃなくて美作で。
急いで玄関を開けたら、車から降りてきた2人の男性が大きなケースに入れたお料理を運んでくれた。

でも、その量が半端ない!
しかも本格的なフランス料理で彩りも鮮やか・・・お肉やお魚は温めやすいように個別に包んであった。前菜やデザートまで綺麗に並べられた容器もお洒落で上品。とてもデリバリーで頼んだものとは思えなかった。

「うわっ!これ全部ですか?」

「はい、そうですよ。こちらの容器は返却されなくていいので、もしも雰囲気を出したいならご家庭の綺麗な食器に移し替えて下さいね?それとこちらはスープです。お鍋に移して温めてお召し上がり下さい」

「は、はい!」
「こちらは当店からのサービスのワインでございます。どうぞ楽しいひと時をお過ごし下さいませ」

「ありがとうございます」


凄い・・・コンビニのおにぎりどころじゃなかった!




*******************




鎌倉に着いたのは7時少し前。

車を停めたら玄関の内側の電気が点いた。
だがここでは出迎えも見送りも玄関の内側と決めているから牧野は出てこないと判っていた。

でも、今・・・あの向こうでソワソワしながら待ってるんだろうなと思うと笑いが出る。
焦らしてやろうと少し車から様子を見ていたら透かし硝子の向こうに黒い影が行ったり来たり・・・そのうち玄関じゃない出窓のカーテンの隙間から牧野の顔が見えた。

くくっ・・・全然秘密になってねぇじゃん!って思うんだけど?


少しだけそんな牧野で遊んだら、車を降りて玄関のドアを開ける。
牧野はやっぱりそこに立っていて「どうしたの?」って泣きそうな顔してやがった。


「ん?何でもねぇよ。お前の影が見えたから面白くて眺めてただけ」
「えっ!ひどーーい!どうして降りてこないのかと心配したのよ?」

「ははっ!悪い、遊んじまった!」
「もうっ・・・驚いた!」

ぷぅっと膨らませた頬を隠しもせずに俺に見せて、怖くもないのに腕組みする・・・3週間ぶりに会う恋人はやっぱり可愛かった。

「ほら!怒んなって・・・来い、牧野」
「・・・・・・やだ!」

「くくっ、いいもんやるからさ」
「えっ?!ケーキかな?」

「そう、俺からの・・・」


途端に嬉しそうな顔して目の前に来るから、手に持ってたもんはチラッと見せただけで玄関横のカウンターに置き、すぐに思いっきり抱き締めてキスをする。
不意を突かれた牧野は驚いたように俺に身を預けるけど、やっぱりすぐに背中に手が回る。

お互いの存在を確かめる方法がいきなりのキスだなんてどうかと思うけど・・・自然とお互いに求めていた。


「・・・も、もうっ!すぐそうなるんだから!」
「嫌がってなかったくせに。で、キスの次に欲しがってたもん」

「・・・あ、ありがと!それと・・・あれもありがと・・・」

牧野が真っ赤な顔して片手でケーキの箱を持ち、片手で指さしたのはリビングのテーブルに並べられた料理。
予想通りのものが色鮮やかに並んでいて「すぐに温めるね」ってその中から幾つかをキッチンに運んでいた。俺もキッチンに入ってワインを物色。
「これ、貰ったよ」なんて安物のワインを出すから「あきらならもっといいもの持ってるから」って、ここのワインセラーから極上のものを出した。


料理も準備出来たらまずは乾杯。

「誕生日おめでとう・・・牧野」
「・・・ありがとう」

「で、こいつがプレゼント。手、出せ」
「・・・手?」

右手を出したから首を振ったら左手を出した。
こんな時、本当はきちんとケースから出すんだろうけど小っ恥ずかしいのと、まだ正式に言葉に出せねぇからポケットからそいつを取り出し、こいつの左手に・・・プラチナにゴールドのラインが入った普通の指輪。


「・・・・・・あ、あの・・・でも」
「俺は茶を点てるから普段は指輪は出来ない。確かにあいつとの指輪も持ってるし、式を挙げたときに1度ははめたけどそれっきりだ。次にはめる時があるとしたらお前と揃いの物にしようと思ってるから・・・だから、こいつは普通のファッションリングだって思っとけ」

「・・・いいのかな」

「特別な思いは込めてるんだ。裏、見てみ?」

そう言うと1度はめた指輪を外してリングの内側を見た。


「・・・裏?あ・・・れ?裏に石がある」

「それはラピスラズリ。願いを現実にする奇跡の石と呼ばれてるヤツだ。その望みもたった1つだけ叶えてくれるとされてて、1度願いをかけたら同じ願いを他の石にしちゃいけねぇんだ。
で、その願いが叶うまで人の目に触れないようにすること・・・そう言われてる。だからわざわざ裏に埋め込んだんだ」

「1つの願い事?」
「そう。自分で決めて、そいつにその願いを込めとけ」

「なんでもいいのかな・・・」
「お前が1番願うこと、それでいいから」


そう言うと自分の左手を大事そうに抱えて胸に押し当てていた。
まだ少し悲しそうな微笑みだけど、それも仕方ない・・・小さな声で「大事にするね」なんて言いながら目を細めていた。


「・・・それと、これ・・・あきらからだってさ」

「え?美作さん?」

「あいつ、何考えてんだか!常識で考えたら俺に渡さねぇと思うんだけど!」
「あはは!本当だね」

今度は笑いながらあきらのプレゼントの包みを開けていた。
俺も少しは気になる・・・だから牧野の反応を横目で見ていた。すげぇ喜んだらどうしよう、なんて考えながら・・・。


「・・・あれ?これは・・・もしかしてペア?」
「は?誰とペアだよ!」

「だって、ほら!」


それは小さなケースに入れられた二組のピアス・・・1つはスイングタイプの女性用で1つはスタッドピアスの男物・・・しかも両方につけられてる石はタンザナイト。12月の誕生石だ。

あいつのしそうな事だと笑いが出た。





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