雨の降る日はそばにいて (24)

この前初めて西門さんの家に・・・自宅というエリアでご両親とお会いした。
体調を崩していたお家元はそうでもなかったけど、家元夫人の方は・・・お母様は私のことをあまりよくは
思っていないようだった。

「まぁ、無理もないよね。あの家に受け入れてもらうのに一回で・・・ってことはないもんね」

西門さんの言うとおり、時間をかけるしかないんだって・・・ゆっくり慣れればいいんだってそう思うしかなかった。

ぼんやりとそのことを考えていたらスマホが鳴った。
でも、それは登録してない・・・知らない番号。間違い電話かな?そんな気持ちで電話をとった。


「もしもし・・・?」

『牧野さんですわよね・・・わかりますか?綾乃です』

かけてきたのは綾乃さんだった。何故綾乃さんが私に電話を?

「え?綾乃さん?・・・どうして私の電話番号を?」

『総二郎お兄様が教えてくださいましたの。もっと牧野さんと仲良くなって欲しいから時々電話してくれって・・・。
ご迷惑でしたかしら?突然ですもの、ごめんなさいね』

西門さんが?今まではそんな事一度もないけど・・・むしろ人に教えるなとは言われたことはある。
それは男性相手にって感じだったから、綾乃さんならよかったの?

「いいえ・・・そんな事はないですよ。どうしたんですか?」

『実はね・・・』

綾乃さんは家元夫人がとても好きな花があって、それを持って家に来るように言ってきた。
西門では一番にご機嫌を取らないといけないのは家元夫人の方だから、喜ばせてあげて欲しいと・・・

『総二郎お兄様も牧野さんのことを認めてもらおうと一生懸命ですわ。ですから牧野さんもお兄様のためと
思って・・・綾乃も考えましたのよ?お二人のために。それとこれは総二郎お兄様には秘密よ?
牧野さんが頑張ったことを後でびっくりさせてあげましょうよ!』

「そうなんですか?・・・わかりました。じゃあ、そうしますね」

西門さんが私もことを認めてもらうためにって?
そんなに焦っている様子なんて見たこともないけど・・・もしかしたら私の知らないところで頑張ってくれてるのかと
思って綾乃さんの申し出を受けた。
秘密にするようなことなのか疑問はあったけど・・・。


******


「カサブランカでよろしいですか?では・・・こちらですね」

うわっ・・・けっこう凄い香り・・・こんなに強い香りの百合なのね。

綾乃さんに聞いた家元夫人が好きだというカサブランカの花束を持って西門さんの家を訪ねた。
西門さんは今日は仕事で東京にはいなかったけど、家元夫人の都合が今日しかないというので
仕方なく綾乃さんの言うとおりにした。
それに、もう私が来ることを伝えてあると言うから断ることも出来なくて・・・

本当に西門さんがいないときにこんな事をしていいんだろうか・・・
自宅に着いてもそれがずっと心に引っ掛かったままだった。



「牧野と申します。家元夫人はご在宅でしょうか?お約束をしていたのですが・・・」

そうお弟子さんに言うと不思議な顔をされた。・・・と、いうより困った顔?

「・・・少々お待ち下さいませ。お呼びして参りますから。あの・・・申し訳ございませんけどこちらから・・・」

お弟子さんは中央の廊下ではなく少し遠回りで客間の方に案内してくれた。
そこに行くまでに廊下がいくつもあるなんて・・・どこまで広いお屋敷なんだろうかと感心する一方で
さっきのお弟子さんの態度が気になった。

私のどこか変だったのかな・・・不安な気持ちで客間に通された私は家元夫人の到着を待った。


「お待たせいたしましたね。・・・あら?これは・・・」

しばらくして入ってきた家元夫人と綾乃さん・・・家元夫人は入るなり眉間に皺を寄せている。
それがどうしてかわからなかったけど、慌てて席を立って挨拶をした。

「こんにちは。いきなりで申し訳ありません。あの・・・家元夫人がこのお花をお好きだとお伺いしましたので・・・
よかったらこれを・・・」

そう言ってカサブランカの花束を差しだしたが、返ってきた言葉は信じられないものだった。


「牧野さん・・・でしたわね?私はね、香りのキツいお花は嫌いなのです。特にこのカサブランカのような強い
香りは大っ嫌いなの。部屋中にこの匂いがついてしまうわ!申し訳ないけどそのお花、お持ち帰りになって!
お気持ちだけいただくわ。・・・失礼!気分が悪くなりましたので」

「あっ・・・あの、家元夫人!」

声をかけたけど、振り向いてももらえずに部屋を出て行かれた。
側にいた綾乃さんはその家元夫人の出て行ったドアを見ながら呟いた。

「あら・・・どうしたのかしら?おば様、昔はお好きだったのに・・・お好みが変わったのかしらねぇ。
ごめんなさい、牧野さん。かえって嫌な思いをさせてしまったかしら?」

「いいえ、私もこんなに香りのキツいお花だとは思わなくて・・・」


綾乃さんは何故かその時に、小馬鹿にしたように横目で笑ってきた。


「茶道ってね・・・香りを嫌いますの。茶花でも香りのキツすぎるものは禁花っていいましてね、避けますのよ。
ご存じではありませんでしたの?総二郎お兄様の恋人なのでしょう?」

「すみません・・・でも、茶道のことはまだ何も知らなくて・・・」

「あら、そうなの?総二郎お兄様は教える気がないのかしら?ふふっ・・・」


綾乃さんもその綺麗な顔に笑みを浮かべながら客間を出て行った。
1人取り残された私はその花束を抱えて呆然と立ち尽くした。


なぜ、こんなにも悲しい気分になるの・・・。
綾乃さんだよ?・・・この花を持って来いって言ったのはあなたなんだよ・・・?

もしかしたら綾乃さんは私にわざとこんな事をさせたの?・・・初めから家元夫人に嫌われるように?



西門さんの家を出たときにぽつんと雨が私の顔に落ちた。
多分・・・これは、雨だ。涙じゃない・・・


涙なんかじゃない・・・。


西門で処分すらしてもらえないカサブランカの花束を、偶然見つけた道ばたのお地蔵様にお供えした。


これは西門さんに相談しなかった自分のせいだ・・・
だんだんと強まる雨に濡れながらアパートへ戻る。

このことを西門さんに知られてしまう・・・それが一番怖かった。


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花より男子

4 Comments

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2017/05/18 (Thu) 13:29 | EDIT | REPLY |   

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2017/05/18 (Thu) 17:43 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: こんにちは

えみりん様~!今晩は!

まあまあ、落ち着いて?
こんなのまだまだですから。
私の作る谷は深いんですよ。今回は深い上に自分で
複雑にしたので困っております。

こんな人、現実では会いたくないけど書くときは早いですよ~!!

私にストレスがたまってるんだろうか?

会社・・・走るほど広くもないくせに無駄な動きが多いんでしょうね。
剥離骨折は2回目です。アキレス腱も切ってます。

怪我なら任せてっ!!

と、言うことで今日もありがとうございました!

2017/05/18 (Thu) 19:26 | EDIT | REPLY |   

plumeria  

Re: タイトルなし

みわちゃん様、今晩は!

始まったばかりですから!多分、呼んでる人が思うのは
「気がつけよっ!このくらいっ!」
と、総二郎とつくしとあきらに言いたくなることでしょう。

そんなアホな!って事がドンドン起きてきます!

楽しんでくださいね!( ̄∇ ̄)フフフ・・・

今日もありがとうございました!

2017/05/18 (Thu) 19:31 | EDIT | REPLY |   

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