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「少しは落ち着きましたか?」
「・・・はい、何とか」

奥の応接間のような所でお茶を出されて、大きなソファーに埋もれるようにして座っていた。
目の前には加代さんと田村さん・・・怖い感じの人達じゃないけど、この応接室が怖かった。

何処を見ていいのか判らない・・・ここの天井もシャンデリアで、高級そうなローボードの中には何処の国の物か判らない置物が綺麗に並べられてて、上にはやっぱり花が飾られている。
壁の時計だってアンティークな感じだけどお洒落・・・素敵な絵が飾られていたけど、もしかしたらパリの風景?何処かでこんな写真を見た事があるけど、それすら思い出せない。


「少しですが野々村さんから牧野さんのお話を聞きました。英徳大学・・・特待生なのですね?つまりお休みは出来ないと言う事ですね?」

「はい、そうなんです。出席率も条件の1つですから」

「でしょうね・・・成る程。特にサークル活動などに興味は?」

「あっても参加できません。勉強と同じくらいバイトしないとアパート代で全部消えちゃいますから」


ここでも田村さんが不思議そうな顔して加代さんにボソボソ言ってる。加代さんも「その方がいいかも・・・」なんて返事したけど、もしかしたら不合格なのかしら。
こんなお屋敷で働くのに貧乏人はダメって事?悪いけど、貧乏してたって余所様の物に手を出したことはないわよ?
清く正しく・・・これしか自慢できないんだから、この手はめっちゃ綺麗よ?!

言葉では出せないから目で必死に訴えていたら、田村さんからの言葉は全然違うものだった。


「今のお住まいは・・・あぁ、ここなのですね?ふむふむ・・・ここに通うには少し離れていますね・・・」
「そんなの大丈夫です。1時間も歩けば通えるでしょ?朝は何時からですか?夜だって雨さえ降ってなければ歩いて帰ります!」

「いや、それは危ないでしょう?お年頃のお嬢さんなんだから。ねぇ、田村さん」
「それもそうですが1時間では・・・」
「そういう時にはこの子供っぽい見た目が役に立つんです!どれだけ歩いても襲われない自信ならあります!」

「ん~・・・では先ずはこちらに住み込みで働いてみますか?」
「はいっ!!頑張りますっ!・・・えっ!住み込み?」


住み込み・・・つまりこのお城のような豪邸に住んでアルバイト出来るって言う事?
いや、待って・・・住み込みって家賃取るのよね?こんな所だったら1ヶ月何万円取る気なの?!


「あ、あの・・・住み込みじゃなくてもいいんですけど。私、今のアパートより100円だって高い部屋には住めませんから」
「住居費は要りませんよ?ただし住み込みの場合は1ヶ月の食費として2万円だけ納めていただきます。それで朝食と夕食は付きますが?」

「・・・・・・ホントに?」
「嘘ついてどうするんです」


家賃も払わなくていい上に食費も2万円だけ払えば後はお昼だけでいいって事?そんなウマい話がこの世にあるのかしら?!
いや、って事は相当子供の相手が難しいのね?家庭教師はいいとして運動音痴も治して欲しいとか、超我儘な子供の好き嫌いを無くせとか?

でも、こうなったらやるしかない・・・4年間、頑張ればいいんでしょ?そうしたら楽しい生活がやってくるはず!
それに4年経てば悪ガキだって少しは成長するでしょ!


「それで、どんな事をしたらいいんでしょうか?このお屋敷のお坊ちゃまのお世話だと聞きましたが」

「はい。お世話・・・には間違いないのですが、規則正しい生活が出来るように行動改善をしてほしいのです」

「・・・は?規則正しい生活?」

「はい。朝決まった時間に起きて食事をとり、同じ時間に学校に行き授業を受け、自宅に戻ったら夕食を食べてお風呂に入り寝る・・・この流れを作りたいのです」

「・・・・・・」


ちょっと待って?

朝決まった時間に起きる・・・目覚まし掛けたらいいんじゃないの?それで起きなかったら自分の事だよね?
朝ご飯を食べる・・・育ち盛りの子供なら朝、食べないと動けないでしょうっ!しかも子供なら食べたいはずよ?
同じ時間に学校に行く・・・これも遅刻したくなかったら当たり前じゃない?しかも授業を受けるって、学校に行ったら自動的に授業を受けるんじゃないの?
夕食を食べる・・・夕食は1日中遊んだ子供なら最高の楽しみじゃない?しかもこんな家で食べるんなら漬物だけって事はないでしょうに!
風呂に入って寝る・・・だから、これも当たり前だって!


「あの、質問していいですか?」
「どうぞ」

「お坊ちゃま・・・何歳ですか?」
「この春で大学2年生、3月で19歳になられますが」

「・・・・・・大学生?」
「はい。英徳大学、国際経済学科2年生でございます」

「・・・・・・・・・」

「あっ、丁度坊ちゃまがお戻りになられてるようですね、お会いになってみますか?」


なんだって?!英徳大学の2年生?!
それなのに行動改善と生活指導をしろと?!



19歳にもなって他人に世話してもらわないといけない男ってなんなの?!どれだけ甘やかされて育ってんのよ!
そんなのの相手をしなきゃいけないの?冗談じゃ・・・!!


「どうします?働いていただけるのであれば坊ちゃまに紹介しに行きますが?」
「はい!!頑張りますっ!」


牧野つくし、18歳・・・住居・食事付きの高額アルバイトに負けてしまった・・・。



**



応接室を出て、このお屋敷の2階の奥の部屋・・・田村さんと加代さんにくっついてそこに向かった。
大理石の階段は滑り落ちそうで上がりにくい・・・磨き上げられた廊下も自分の顔が映りそうで怖いぐらい。オドオドしながら坊ちゃまの部屋の前に行くと、田村さんがコンコンコンとノックをした。

「このお部屋をノックする時は3回ですから覚えておいて下さい。プロトコール・マナーでは4回とされていますが五月蠅く感じられるようなので3回・・・宜しいですね?」

「プロトコール・マナー?」

「プロトコール・マナーとはマナーについての国際標準です。2回はトイレの空室確認、3回は親しい間柄の入室確認、4回が正式な入室確認 となります。ノックも連続ではなく、トントン、トントンとするのがマナーですの」

「はぁ・・・」


ヤバい・・・アパートで進がトイレを占領してた時10回ぐらい叩いて急かしたけど、国際マナーには反してたのね?牧野家のルールでは全然OKだったのに。


田村さんがノックをした後、返事があったのかどうかわからなかったけど静かにドアを開けた。

そして一歩入って一礼・・・そのまま静かに部屋の奥へと進んでいった。
私もその後に続いた加代さんにくっついて行ったけど・・・この部屋は驚くほど殺風景だった。


大きな部屋なのにガランとしてる。家具だって僅かで大きなテレビがあるだけ。それにソファーが1つとローテーブルが1つ。
何もかもが白か黒かグレーで統一されててモノトーンの世界だった。

そして見えてきたのはこれも真っ白なベッド・・・そこに寝転んでる男の人の足が見えた。
確かに大人の足・・・男の人にしては綺麗な足だなって思ったけど、加代さんの背中で上半身は見えなかった。


「・・・と言う訳で明日からこちらで働くことになった者でございます」
「・・・・・・いいのに・・・」


田村さんが私の事を紹介してるみたいだけど、どうやらこの坊ちゃまはお手伝いさんなんて欲しくないみたい。面倒臭そうな返事、しかもボソッと言うからなんて言ってるのかさっぱり!

そこは仕事と割り切って、どんな坊ちゃんだろうと我慢したらいいのよ!
何とかなる・・・何とかしてみせる!命までは盗られないわよね?!


「それでは牧野さん、こちらが当家のご子息、花沢類様でございます。ご挨拶を・・・」

「はい!・・・あれ?類って何処かで・・・」
「ま、牧野さん!呼び捨てとはなんですか?類様です、さぁ、ご挨拶を!」


加代さんがサッと移動してベッドで寝転んでる坊ちゃまが姿を現した。


それはあの時に見た茶髪のイケメン・・・「あきらと総二郎と、それから類」の・・・類だーーっ!!





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2019/06/25 (Tue) 06:59 | EDIT | REPLY |   
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2019/06/25 (Tue) 10:56 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは!

随分困った大学生ですよね~💦
自分の子供だったら放置しますけど(笑)

さて、つくしちゃんの思い通りに類君が動くかどうか・・・?
振り回されるのはどっちなのか?

それとも一気に恋が始まるのか?!(これは無さそう💦)


私の所はやっと明日か明後日に梅雨入りするみたいです。
そうなったら暫く雨みたい・・・土砂降りじゃなかったらいいけどなぁ、と思いながら天気予報アプリで確認してます(笑)

2019/06/25 (Tue) 19:13 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは!

あっはは!毎回面白い発想ですねぇ!
ポテトかいっ!みたいな(笑)総ちゃんのコーラは何となく判る!

住み込み・・・それはねぇ、お互いにその気がないと起きないでしょう?
この類君がそんな風になるのに時間が掛かると思いません?

そうなったら・・・ぐふふふふ、だよね!!
やっぱりそのシーンは必要な気がしてきました(笑)


そうねっ!類君の反応・・・今までにない台詞なのよ(笑)
さて、どんな台詞でしょ♡

2019/06/25 (Tue) 19:18 | EDIT | REPLY |   
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2019/06/25 (Tue) 20:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

mizutama様、こんばんは!

ご訪問&コメントありがとうございます~!お久しぶりです♡

あっはは!またまた巫山戯たお話しを初めてしまって(笑)
格好いい類君が書けなくて申し訳ないのですが、こんな彼で良ければ笑ってやってください💦

やっと出てきたと思ったら足だけ、みたいな(笑)


今はまだモノクロの世界でゴロゴロしてますが、
少しずつ色気(笑)が出てくる類君・・・どうぞ宜しくお願いいたします♡

2019/06/25 (Tue) 22:33 | EDIT | REPLY |   

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