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plumeria

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仕事先から帰って早々に家元夫人がその顔を歪ませたまま俺の所にやってきた。
そして今日の出来事を説明しながらもの凄い剣幕で怒り出した。


「牧野が花を・・・ですか?どうしてそんな事を・・・」

「それはこちらが聞いているのです!私の嫌いなカサブランカを山のように持って・・・!気分が悪かったわ!
二度とそんな事をしないようにあなたからもお伝えしてちょうだい!」

「・・・わかりました」

なぜ、牧野がそんな事を・・・俺はそんな事をしろなんて一言も言ってないし、あいつも自分から
そんな事をするとは思えない。何か理由があるはずだが全く思い当たらなかった。

気になって連絡を取ったら、随分と気落ちしたような声の牧野が電話に出た。


「今日、何があったんだ?どうして花なんか持ってきたんだ・・・俺はそんな事を牧野に頼んだことはないだろ?」
『・・・ごめんなさい。そのことはもう・・・』

もうすでに泣いているのかもしれない・・・牧野の声は掠れていてとても小さかった。

「責めてるんじゃねぇよ。お前が進んでやったとは思ってない・・・誰の指示だ?誰に何を言われた?」

『・・・それは、綾乃さんに言われたのよ。西門さんが頑張って説得をしているから私にも何かやった方がいいって。
それで、あの花がお母様のお好みだから持ってきたらどうかって・・・西門さんには内緒で後で驚かそうって・・・』


やっぱりそんな事か・・・綾乃のヤツ、わざと牧野の印象を悪くするようなことしやがって・・・
わかってるからな・・・どんな手を使ってもお袋は綾乃の方を信じるってことを!

「そんな事だろうとは思ったが、お前の事だから疑わなかったんだろ?まったく・・・お人好しなところは昔のままだな!
綾乃が言うことはもう聞くなよ・・・何かあったらすぐ俺に話してくれ。1人で抱え込むなよ」

『うん・・・ごめんなさい。私がいけないんだよ。西門さんがいないときに行ったりするから・・・』

「そんなんじゃねぇよ。・・・気にすんな。一回ぐらい失敗したってそのうち笑い話で終わる。
言っとくけどこんな事でまたどこかへ消えていなくなったりしたら、そっちは許さねぇからな!」

『え?・・・ふふっ・・・そんな事はもうしないよ。良かった・・・もっと怒られるかと思った』

「ちょっとは怒ってるさ・・・俺に隠し事なんかすんな!どうせ、牧野はそんな事下手なんだからバレるんだよ!
それより、もう少ししたら地方回りが増えるんだ。会えない日が多くなるから明日にでもメシ、食いに行こうぜ」


最後の方は普通の声に戻った。
牧野の事だ・・・綾乃に騙されたとわかっても、きっと自分を責めてるだろう。

こんな事は何でもないと思わせてやらないとこいつは一晩中泣いてるかもしれないから。
綾乃の動きは気になるが、今牧野が涙を流しているかの方が心配だった。


「いいか、牧野。・・・迷ったら何度でも俺に話してこい。その度に俺が正しい方へお前を連れてってやるよ」

ラピスラズリに込めた俺の想いだ・・・。
あの石がお前を守ってくれるようにとあの日渡したピアス・・・。
早くあの石の意味に気が付いて、お前が身につけてくれるのを待ってんだ。


次の休みに食事に行こうと約束をしてこの日は電話を切った。


******


次の日に綾乃は何食わぬ顔して西門にやってきた。

「おい!綾乃・・・お前なんで牧野をハメるようなことしてんだ?手を出すなって言っただろう!」

「あら、総二郎お兄様。そんなに怖いお顔で怒らないで下さいな。綾乃は昔おば様がお好きだったと思っただけですわ。
でも、よく考えたらカサブランカのような花はこのお屋敷には似合いませんものね。香りが強すぎて・・・。
禁花もご存じないとは思いませんでしたし。・・・ご迷惑かけましたわね、謝りますわ」

言葉ではそう言うが、何一つ悪かったとは思っていないだろう!
今日もまるで西門の身内であるかのように着物で現われ、弟子の挨拶なんて無視しやがって・・・!


「牧野の電話番号はどこで手に入れた?」

「あきらお兄様が教えて下さいましたわ。ホントにご親切な方ですわね。それも、いけませんでした?
あきらお兄様も私から彼女にこの家のことを教えてあげたらって・・・そう言われましたの」

「牧野にこの家のことを教えるのは綾乃じゃねぇだろ!まだ、あいつには時間をかけてやりたいから何も
言ってないだけだ。余計なことは言わないでくれ!はっきり言うが迷惑してんだよ!」

あまり煩く言ったことにない俺から文句を言われてその顔を曇らせているけど、そんな事はどうでもいい!
この家のことでは、まだ牧野に何かを押しつける気なんてなかった。

牧野が本気になってくれたら俺も本気で教えてやる。
そのくらいじゃないとこの世界は辛いだけだ・・・俺がそうだったように。
押しつけて覚えさせても身につかない・・・茶については俺が修行を重ねればいいことだ。
牧野が覚えなくてはならない西門の取り纏めや事務的なことはあいつの頭ならこれからやっても
十分間に合うと信じている。この家が受け入れてくれさえすれば問題はないんだ。

それにしてもあきらがそんな事をしたのかと思うと忘れかけていた不安が蘇ってきた。
あきらは今まで一度も西門の家のことで口出しなんかしたことないのに・・・


この俺に怒鳴られても何とも思わねぇのか、綾乃はいつものすました顔に戻って俺のすぐ横に近寄ってきた。
帰って俺の方が拍子抜けしてしまう・・・全く何を考えているのかわかんねぇ女だ!

「ねぇ、総二郎お兄様・・・そういえば私ね、先日京都でこのお茶碗を見つけましたの。見て下さる?」

そう言ってスマホの画面を見せようとした。そこにはいくつかの茶碗の写真・・・
つい茶碗と聞いて興味が湧いた俺は綾乃の肩に手を掛けてその画面を覗き込んだ。
もちろん綾乃に女なんか感じちゃいねぇから出来ることだけど。
どれだけ近づこうがこいつを意識なんかしたこともなかった。そのぐらいどうでも良かった。

「はぁ、これは唐物じゃん。結構古いもんだな・・・この手のものはあんまり好きじゃねぇな。天目茶碗なら
興味あったけど・・・ちょうど京都で展覧会があったけどそれか?」

「えぇ、こっそり撮ってしまいましたわ。見つかったら怒られますわね!」

すぐに綾乃からは離れたが、この一部始終を遠くから見ていたのが後援会の古株だとは、この時の俺は
もちろん気が付いてなかった。
この行動が綾乃の思い通りだったことも、お袋がそう仕向けたことも・・・。


それは後援会の今井副会長・・・家元の同級生で西門ではかなりの重臣だった。


「家元夫人・・・あちらのお嬢さんはどちらの?随分若宗匠とは仲がよろしいんですな」

「あれは京都の藤崎家のお嬢さんで私の遠縁に当たる家の子ですの。なかなかいいお嬢さんでしょう?
総二郎さんにどうかとは思っているんですけど、こればっかりは本人同士の気持ちも考えませんとね」

「京都の藤崎家とは旧名家ですな。西門のお相手としては申し分ないですな」

「ほほ・・・そうですけどね。まぁ、そろそろ総二郎さんも落ち着かせないと・・・」


俺の知らないところで動いている思惑・・・
それが少しずつ俺と牧野の歯車を狂わせていく。

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Comments 4

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2017/05/19 (Fri) 13:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは

えみりん様~!こんにちは~!

退院しましたよ~!手を振ろうにもナースステーションに
人がいませんでした!!爆笑!


で、もしかして同類?ちょっと楽しくなりましたか?
さて、どうしましょうか・・・。

桜子、実は好きです。優紀ちゃんが苦手です。
だからあんまり出てこない。( ̄∇ ̄)

実際にこんな子いないでしょ?綾乃ちゃん・・・。
だから楽しいのかもしれませんね。
でもね~いま、少し先を書いてるでしょう?

自分で怖くなっちゃった!
このお話、マジでハッピーに持って行けるのか?

頑張れ!総二郎!自分でなんとかしてくれ~っ!!

・・・今日もありがとうございました!

2017/05/19 (Fri) 13:37 | EDIT | REPLY |   
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2017/05/19 (Fri) 15:15 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

花様、こんにちは~!

誰でしょうねぇ・・・。救世主・・・。
楽しいでしょう?こんなわかりやすい子!
どこまでアホなことさせようかなぁ~( ̄∇ ̄)
いつでも倒せそうですけど、倒れないんですよ。
でも、あんまりやってると騙される総二郎が気の毒に
なってくるんですよね。

また、言われますよ・・・ホントに好きなんですか?って・・・!


花様、どうしてもあきらを腹黒にしたいんですね?
ふふふ・・・。
やっぱりあきらに呪い殺されますよ?
いま、最初考えた終わり方が崩れかけてます・・・。

総二郎の救世主より、私を助けて欲しい・・・!

この先を見届けてくださいねっ!花様!

2017/05/19 (Fri) 16:34 | EDIT | REPLY |   

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