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plumeria

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12月29日・・・冷たい空気の中で目が覚めた。

つくしはまだぐっすり・・・疲れきった顔で小さな寝息をたてていた。
気が付かれないようにそっと布団の中に手を入れてこいつの身体に触れると、一筋の傷跡のようなものが指に当たる・・・それを感じると、どんな風に紫音と花音が産まれたかを想像して苦しかった。

つくしは1人で産んだんだろうか。
それともあきらが傍にいたんだろうか・・・あいつが双子を抱きかかえたのはいつだ?産まれてすぐにあきらの腕に抱かれたとしたらそれもすげぇ悔しい。


そんな事を考えながらつくしの寝顔を見ていた時、近くに置いていたスマホが光っているのに気が付いた。
着信の覚えはない・・・それならメールか?つくしと一緒に居ることが西門にバレたのかもしれないと、瞬間焦って急いでスマホを手に取った。

やっぱりSNSのメッセージ・・・だが、相手はあきらだった。


「・・・驚かせやがって!ここに居ること知ってるクセに何だよ・・・」

その画面を開いて見たら『忙しいのに悪い』で始まっていた。
忙しいのが判ってるなら後でもいいんじゃね?ってムッとした!絶対に俺の反応を想像して遊んでるな?あきらのヤツ・・・。


『閉店した明日香堂の件だが、先月母親が亡くなってて息子についての確認が出来なくなった。それで同級生ってのが数人東京に居るらしいからそっちに探りを入れた。また詳しい事は直接話す』


明日香堂の件?父親は先代が亡くなる前に既にこの世を去っていたが、今度は母親が・・・?
何となく気になって、つくしの横をそっと離れてベッドから抜け出した。
急いで服を着てリビングに移動したが時計を見ればもう10時半・・・あきらはまだ仕事なのか休みに入ってるのか判らなかったが、一応電話をかけてみた。


『・・・あぁ、俺。メッセージ見たのか?』
「あきら、まだ仕事か?」

『あぁ、明日まで急ぎの用件があるから社には出てる。年末から1週間ドバイに行くけど』
「仕事中に悪かったな。そのメールの中身の件だけど・・・やっぱ今は話せねぇか」

『いや、今は部屋に誰も居ないから大丈夫だ。・・・で、牧野は?』
「よく寝てる。起きないから大丈夫だろう」

『・・・・・・無茶しやがって!』
「くくっ、仕方ねぇだろ?で、明日香堂の話だ」


不機嫌になったあきらだったが、この後美作の情報部が調べた内容を教えてもらった。


息子の名前は香月真一。
今年で45歳になるこの男の行方が判らなくなったのは18年前、真一が27歳の時だと言う。

大人しい性格で内向的、ゲームばかりして引き籠もりの時期もあったらしい。一人息子で家業を継いでもらいたい両親は何とか宥めて専門学校に入学させた。
鑑定力は追々備わってくると見込んで、まずは工芸学、経営学を学び、海外との交渉のための語学力、交渉力、骨董品のクリーニング、保存に関する知識等その内容はかなり特殊だ。

学ぶ事も多いのに、元々が面倒臭がりだったからその専門学校も中退。
結局は親の庇護の元、のんびりと店番をしているような生活だったようだ。


『もう明日香堂自体は店が無いから、当時隣にあった土産物屋の店主に確認したんだが、真一が1人で店番をしてる時に西門の先代が来たようだな』

「うちの先代が?そこで何かあったのか?てか、よく覚えてるな!」

『どうやら真一は何も判らずに、親父さんが手に入れた樂茶碗を見せて売ったらしい。そいつが京都の資産家の注文品だったみたいで、それを知らずに売って大騒ぎになったから記憶してたんだってさ。ただ西門の先代もその樂茶碗を気に入ったもんだから、資産家に詫びを入れて西門が買い取ったらしい』

「・・・好きだったからな。樂茶碗」

『明日香堂もその後に何度か西門に品物を買ってもらったもんだから、その大騒ぎを逆に良かったと漏らしてたみたいだし、真一はその後も西門の先代に可愛がられてたようだ。何も判らない男だったけど、色々覚えればこの仕事もいい金になると思ったんだろう、その頃から骨董品に興味を持って勉強して西門との関係を続けたみたいだな』

「うちの先代、騙されてたんじゃねぇの?でも目利きの腕はあったんだけどな・・・」

『殆どは父親が手に入れたもんだからな。そいつに関する資料だけ覚えたんだろう。流石に偽物だと判ってるものを西門には出さないだろ』



そんな真一がある時、親父さんが手に入れた国宝級とも言える茶碗をうちの先代に教えた。
和物が好きだった先代はすぐに明日香堂に行き、そいつを確認。その時に東京にこの茶碗を見せたい人物が居ると言い、そこで真一の情報は途切れた。

これまでの内容から考えても相手は宝生の先代の可能性が高い。


『この真一ってのと仲の良かったヤツなんて地元に殆ど居なくてさ、特に高校までの友人なんて見付けられなかったけど、専門学校の時の同級生が数人東京に居るらしい。行方不明の時期にこっちに来てるし、何か知ってるかもしれないしな』

「そうだな・・・遠回しのようでムカつくけど仕方ねぇか・・・」

『あのなぁ?!お前が調べろって言ったんだろ?文句言うな!』

「怒んなよ・・・寝たのも明け方でまだ頭がすっきりしねぇんだから」

『お前、一晩中・・・!牧野が倒れるまでか?!』

「・・・まぁ、それも怒るな。俺もストレスが溜まって我慢出来ねぇんだって」


どっちにしても正月が過ぎねぇと話は進まない。

だが正月が過ぎると俺の披露宴の話が本格的に始まる。
もう招待状だって準備出来ていて、正月明けに送りつけるらしい。その返事を待たなくても粗方の客の数も把握してると親父は言っていた。
そんなものは形だけだから最悪するしかねぇけど、つくしと再会したんだ・・・子供の事は後からでも、紫の事を解決させて中止に追い込みたい、そう思っていた。


「あ、そうだ・・・あきら、お前に確認しておきたいことがあるんだけど」
『何だ?牧野になら手を出してないぞ?』

「そうじゃねぇよ!子供の事、類と司には話していいのか?」
『・・・え?あいつらに・・・』

もしかしたら正月には日本に帰って来るかもしれない。逆にあきらは毎年日本から離れてる。
俺に文句の1つも言いたい二人に呼び出しされる可能性は充分にあった。

その時につくしの事を説明してもいいが、当然そうなるとあきらの話にもなる・・・子供の事はまだ知られたくないのなら、その部分は話さないが、俺と同様あとから知ったら怒鳴られるぞ、と言えば黙り込んでいた。

結局出した答えは「話してもいい」だった。
「俺、司や類にも殴られるのかな・・・」なんて呟いて電話は切った。

あいつらも最終的に全部を知ったら腰抜かすだろうな・・・なんて、俺も呟きながらつくしの部屋に戻った。




「・・・ん?総・・・起きてたの?」
「あぁ、もうすぐ昼だしな。大丈夫か?」

「うん・・・少し、お腹が痛い・・・総のバカ・・・」
「くくっ、そりゃ悪かった。ほら、こっち向け、つくし」


まだ目を閉じてるつくしに目覚めのキス・・・あんまりにも可愛らしかったから、このまま抱いてしまいたかったが部屋が明るい。
きっと意識がはっきりしたら慌てるんだろうから、すぐに解放してやった。




*******************




お休みを取ってくれた総は夕方までここに居るって言った。
だからお昼ご飯の準備・・・だけど、腰が痛くて真面に立てない!それをリビングから眺めながらクスクス笑っていた。

「もうっ!少しは考えてよね?何処かの関節が外れたかと思うような痛さなのよ?!」
「ははっ!大丈夫だって、夜中はよく動いてたし」

「なっ、なんて言い方するのよ!動いたのは総だけだって!私はただ・・・も、もういいっ!」

こんな喧嘩したって勝てる訳がない。
それに調子に乗ってすぐに触ってきたり抱きかかえたりするから危ない・・・お昼にはそんな雰囲気に持って行く事は出来ないもの。

昨日の夜、真っ暗な部屋を素直に許してくれた総には驚いたけど、いつ気持ちが変わるか判らない・・・この関係を続けていくのに、それがいつまで通用するのかしら。

そう考えたら手元が止まってしまう・・・。
いつの日かこの傷に気が付く?それを出産と結び付けないように何か病気したことにする?

でも、今更だ・・・再会した時にはそんな話をしていないのに、後から付け加えても総にはバレる・・・?


「つくし、どうした?何か焦げてねぇか?」
「・・・え?ああっ!!きゃああぁーっ!焦げてる!!うわっ、熱ーーっ!」

「は?火傷したのか?」
「だ、大丈夫、少しだけだから」

「馬鹿!それでも痕が残ったらいけねぇだろうが!」


総が走って来て私の指を水道水で冷やして・・・その手をずっと持っててくれた。
指先がジンジンして痛いのに、何だか嬉しくて総の片腕に凭れ掛かる・・・その真上にある彼の呆れた笑顔を見上げながら「ありがとう」って呟いた。


火傷の事じゃなくて・・・今、私の傍に居てくれてありがとう・・・。





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