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plumeria

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「まだ消えない・・・もうっ!総のバカ!」

31日の朝、鏡の前で自分の首元を確認・・・少しは薄くなったけど、まだあちこちが赤黒かった。
誕生日に総がつけた「印」。もう仕事が休みになったからって、こんなに沢山残さなくてもいいのに!

着る服で誤魔化せばいいし、ここには誰も来ないからいいけどさ・・・なんて呟きながらハイネックのセーターを選んで着た。

洗面所に置いてる歯ブラシ・・・総のブルーの歯ブラシが増えたことに少しだけ照れちゃう。
ドレッシングルームに作ったのは総の着替えを入れてる引き出し。まだ少ししか入ってないけど。
ここに総の物が増えるんだろうか・・・それは嬉しいけど、やっぱり切なかった。総の物を洗ったとしても外には干せないんだもんね。



今日は大晦日・・・明日のお正月はどうしようかなって思いながらぼんやり窓の外を見ていた。

おせち料理だって要らない。
大掃除なんてするほど汚れていない・・・それに夢子おば様の別荘だから定期的にメンテナンスは入る。自分の部屋だけ片付けるのに1時間もあったら終わっちゃう。

去年までは総の事を思い出すだけで良かったけど、今は違う・・・色々知ってしまったから、あの人がどんな気持ちで過ごしてるのかを考えてしまう。
それに紫音と花音は美作さん達とドバイに行っちゃった・・・凄いなぁ、3歳なのにドバイでお正月だよ?

はぁっ・・・って深いため息。
どんよりした雲が広がってて、今にも雪が降りそうな天気は私の気分と同じだ。

「でも、買い物はしなきゃダメだよね。お正月だからってお店は閉まったりしないけどさ・・・」


お財布を握り締めた時・・・両親の顔が浮かんだ。

これまでは西門に見付かっちゃいけないからって連絡をしなかった。もう4年間・・・1度佐賀から電話を掛けたっきりだ。
だけど今は総に会ってる・・・西門家も総が結婚した事で私の事なんて警戒してないかもしれない。

それなら1度帰って総の事を話してみようか・・・そう考えてた時に彼から電話が入った。
すごいタイミング!私の思ってることが伝わったのかとドキドキしながら通話をタップした。


『・・・俺。今、何してんの?』

機械を通して聞く総の声・・・いつもより少し低めに聞こえる。
総の事を考えてたんだよって言いたいのを我慢して、淋しかったのを我慢して元気よく答えた。

「今から買い物に行こうかと思ってお財布持ったとこ。久しぶりに歩いてスーパーまで行こうかなって」

『そうか、気をつけて行けよ』
「うん。総は?今日は宗家の行事が忙しいんでしょ?」

『まぁな。茶を点てる仕事なんてないけど客が途絶えねぇし、弟子は少ないしで面倒だ』
「くすっ、仕方ないね。そう言うお屋敷だもんね・・・」


何処から掛けてるの?なんて聞かない。
きっとあの大きなお屋敷の何処かでこっそり電話してるんだって思うから。それをわざわざ口に出すのは「秘密」を強調しそうで怖いから・・・だから、わざと聞かなかった。


「ねぇ・・・相談があるの」
『ん?どうした?』

「・・・あのね、1度実家に帰ってみようかと思って・・・」
『あぁ・・・そうだな。そうしてやれよ、安心するだろうから』

「総の事は黙っとく?」
『いや、話していい。だけど俺は西門の事が片付かない限り挨拶に行けねぇから、それでも良ければ話して構わない。電話でも良いのかもしれないけど全部が終わって直接挨拶したいから、そう言ってくれるか?』

「・・・うん、そう言っとく」
『悪いが頼む。良かった・・・少し心配してたんだ。お前が1人で年越しすんのは辛いなってさ』


実は毎年そうだったって言えば驚いたみたい。
「小夜さんも流石に里帰りだよ」って・・・そうしたら言葉を詰まらせていた。
いつものタクシーを呼べって言う彼に「電車で帰るよ」って言えば今度は機嫌が悪くなる。少しでも楽をさせてくれようとしてるみたいだけど「タクシーで帰ったりしたら逆に驚くよ」って。

何度も気をつけろって繰り返し言われて電話は切った。



**



買い物に行くつもりで服を選んだのに、今度は少しだけ着替えを準備して小さなボストンバッグを抱えた。
その足で別荘から一番近いATMに行き、貯めていた貯金を少しだけ引き出した。お父さん達、きっと今でも年越しするのに困ってるんだろうと思うから。

これは紫音と花音の為に少しずつ蓄えたもの・・・でも、あの子達は幸せだし、この先だって私の援助も必要はない。判ってるけどコツコツ貯めたものだ。
そこには誰にも言えない自分の願望がある・・・だから貯金することも止められずにいた。


そして電車とバスを使って実家に向かった。

こんな移動は久しぶり・・・そして実家に帰るのは数年ぶり。
大学在学中、いつが最後だっけ?ってバスに揺られながら考えたけど思い出せない。そのぐらい自分の家族と会ってなかった。

だから少し怖い気がする・・・総が私を探しに実家に行ったことは聞いていたから、嘘ついたのバレてるし。


実家の近くに着いたら、まだ営業してるスーパーでおせちの材料を買った。
少しぐらいは用意してるだろうけど、私が買ったからって余るわけじゃない。進もいるし、2~3日食べるぐらいあればいいだろうって思いながら、適当にカゴに入れていった。

でも流石に年末だから値段を見るのも怖い。レジに行ったらいつもの10倍ぐらいの金額になってて驚いた!


それを抱えてゆっくり歩いて向かったら、懐かしいボロボロの一軒家が見えてきた。
家は古い借家だけどその周りは綺麗に掃除されてて、玄関には小さな注連飾りが付けられてた。それを見たら懐かしくて・・・懐かしくて涙が出てきた。
まだ、誰にも会ってないし家の中にも入ってないのに涙が出てきて景色が歪んだ。

「家族」の所に帰って来たんだって・・・そう思ったら嬉しいのに悲しくなって、紫音と花音の顔が浮かんだ。


本当ならお父さんはお爺ちゃんで、お母さんはお婆ちゃんで、進はおじさんなのに・・・それを伝えられない悔しさが胸に溢れて涙が止まらなくなった。
でも、買い物袋が3つもある・・・その涙を拭うことも出来なくて、ポタポタと地面に落ちていった。

その時・・・


「お父さーんっ、そろそろ進が帰ってくるからさぁ、半額になった食品買いに・・・・・・」

お母さんがエプロン姿で玄関から飛び出してきて、私が立ち竦んでいた道に出てきた。そして言葉の途中で私に気が付いて・・・そのまま固まってしまった。
凄く驚いて目を見開いて・・・エプロンの前側で手を拭いてたのにそれも止めて、冷たい風で髪の毛が乱れても押さえもせずに。


「もう少し後でも良くないかい?少しでも遅い方が安いと・・・」

今度はお父さんが出てきた。
この寒いのに薄いジャンバーしか着てなくて、肩をすぼめて現れて・・・お母さんと同じように私を見付けて固まった。

「つ・・・くし?」
「つくし・・・かい?」

「・・・ごめんなさい。長いこと連絡しなくて・・・ただいま」


何をどう言えばいいのか判らなくて、そんな言葉しか出なかった。
そうしたら急にお母さんが走って来て私の目の前に立ったと同時に、その手がバシッ!と私の頬を打った!

「お母さん!」って叫びながらお父さんも走って来たけど、もう1回打とうとしたお母さんの手を止めていた。


「このバカ娘!!今まで何処に行ってたの!どれだけ心配したと思ってんの!つくし、あんたって子は!!」
「お母さん、止めなさい!」

「・・・・・・」
「お父さん、離して!もう1回ぐらい叩かないと気が済まないんだから!」
「いいから落ち着いて!」


「うっ・・・バカ、つくし・・・っ!バカだよ、あんた!」
「・・・ごめんね、お母さん・・・お父さん」


今度はお母さんがお父さんの腕を振り切って私を抱き締めてくれた。

お母さん・・・こんなに小さかったっけ。




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