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plumeria

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あきらから京都の明日香堂の息子に関する情報が入ったという事で連絡があり、スケジュール調整出来そうになかったから急遽俺の仕事先で会う事にした。

その仕事先はMホテル・・・人気女優との対談という面倒臭い仕事が入り、ここの一室でそれが行われた。
丁度終わったのが昼時だったことからあきらと展望レストランに行き、そこで飯を食いながらの報告。

同行していた弟子達とは別に特別席を取り、話の内容は聞かれないように・・・でも紫やお袋達から怪しまれないように、会ったのはあきらだと言うことを見せるために個室は取らなかった。
それを感じ取ったのか、やってきたあきらは苦笑い・・・「ご苦労だな」と肩をポンと叩かれた。


「・・・うるせぇな。変な勘ぐりされないようにしてんだよ!」
「バレてもいいって言わなかったか?」

「出来るだけ騒動起こさねぇようにしてるだけだ。バレた時には2人で逃げても良いが、俺も欲張りだからな・・・多少揉めても最後には西門に牧野を迎えてやりたいんだよ」

「・・・そうか」


2人だけなら逃げても構わない。それは本当だったが子供の事を考えたら迂闊な事が出来ない。
難しいかもしれないが紫との関係を出来るだけ穏やかに終わらせ、つくしが西門に入りやすい環境を整えたかった。いずれ、あきらとも話し合わなきゃいけない事だが、今はそれより紫の身辺を探ることに集中しなくちゃならない。

急がば回れ・・・俺の性分には全然合わねぇんだが仕方ない。
正面から突っ込んでもあの女には通用しない。何か「証拠」を目の前に出さないと何も喋らないだろうから。


テーブルにランチが並べられ、周りに人が居なくなってからあきらは話し始めた。

「香月真一の同級生2人と連絡が取れた。もう古い話だったからあんまり記憶にも残ってないみたいだったけどな」

「それで?行方は判りそうか?」

「いや、それは判らないが東京に来た時、西門が用意すると言ったホテルには気疲れするから泊まりたくないと言って友人宅に泊まったようだ。その時に西門の事だろうけど『金儲けが出来る』だなんて言ったらしい」

「金儲けねぇ・・・でも、最後の茶碗はまだ買ってなかったんじゃないのか?」

「それも友人じゃ判んないだろ?ただ『茶道の爺さんが紹介してくれる人は絶対に買うに決まってる。そこには金以外にも良いものがあるんだ』って言い残してる。それがなんなのか判らないんだが、相手の事を『ほうせい』って呼んでたんだってさ」

「ほうせい?なんだ、そりゃ」

「・・・宝生の事じゃないのか?」

「・・・・・・そうか、そう読めるか。じゃあやっぱり先代は香川を宝生に連れて行ったんだ?」

「だと思う。それでだ・・・その金以外の良いものって気にならないか?」


宝生の家に金以外の良いもの・・・東京にも詳しくなくて、そこまで知恵も回らない男が良いと思うもの?
宝生は企業家としてと言うより不動産なんかで財産を得ているはず・・・土地って事か?でも、初対面で当時30前の男が宝生家に対していきなり不動産や土地の話をするとは思えない。
しかも京都の骨董品屋の息子だ・・・東京にそんなものを持ってどうする気だ?不動産売買なんて出来る資質はなさそうだし?


「・・・何かあるのか?」

「それが香月の趣味にゲームがあったって聞いてるだろ?要するにネットの中で生きてるような男なんだってさ」

「だから?宝生からどんどん離れてるような気がするけど?」

「・・・その趣味って言うのが『女』なんだよ。ネットでそう言うものばっかり観ていたらしい。で、特に好きなのがかなり幼い子の映像だったそうだ」

「はぁ?!そんな趣味があったのか?!」
「声がデカい!!」

少し離れて座っていた弟子達がこっちを見た。
コホンと咳払いをして何でもないフリをしたが、驚きすぎて目の前の料理の皿を落としそうになった。


「落ち着けよ!俺の方が驚いた・・・!」

「悪い・・・俺には理解出来ねぇ世界だからビビっただけだ」
「俺もだ。年上は平気だが自分より年下ってのには限度がある」

「・・・因みにどのぐらい下まで大丈夫なんだ?」
「・・・3つぐらいかな・・・」

「ま、普通だな」
「だろ?」


1つ下のつくしは充分射程距離内・・・いや、そんな事は考えないけど。

真一の友人の話だと、この男は専門学生の頃から女が出てくるようなゲームを好み気持ち悪がられていたようだ。それが実世界でも比較的童顔の小柄な子を狙ってストーカーのような行為をしたり、痴漢行為を働いて警察に捕まった事もあるという。
ただ事件にまでは発展せず、当時は相手の被害届もなかったから厳重注意でその時は自宅に戻されたとか・・・。

それまで大人しくて引き籠もりがちだと思われていた男に意外な一面があったって訳だ。


「・・・まさか、紫達が襲われたってのがそいつの仕業とかじゃねぇよな?」

「俺も一瞬それを考えたけど、もしそうなら誰が宝生に女の子が居るって情報を香月に漏らすんだ?しかもその時に紫は7歳か8歳だろ?香月が狙っていたのは1番年下で中学生ぐらいらしいぞ?」

「じゃあ違うのか・・・まぁ、そうだよな。その想像だとうちの先代がバラしたみたいじゃん。それはねぇな・・・先代は堅物だったから女をチラつかせて何かを企んだりしねぇし」

「それにタダで貰うって話じゃない。西門にしても宝生にしても金を払って買うわけだから女性を紹介する必要がないだろ?明日香堂は売り渋っていたわけじゃない。自分たちからその樂茶碗を西門に見せてるんだから」

「そうだな・・・じゃあ、なんだろう?」

「それがよく判らないけど」


骨董品屋の息子が宝生から何かを買い取りたいって話なら判る。
それなら「良いもの」がそこにあるって意味に取ることは出来るが、香月真一にそこまでの熱心さがあったような話は聞かない・・・それに、もしそうならさっさと京都に戻って「良いもの」の買い手を探すはずだ。
行方を眩ましても得にはならない・・・そもそも、今何処に居るんだ?


「今回の交渉が終わったら飲みに行こうなんて言ってたらしいが、結局それから音信不通だそうだ。気になって当時、京都に連絡してみたけど東京に行ったまま帰ってこないとお袋さんが心配していたらしい。
で、この2人は最近俺達が聞いてくるまで香月の事なんて頭になかったそうだ。その程度の付き合いだったって事だな」

「・・・何かが起きて逃げる必要があったって事か・・・」

「それか逃げたくても逃げられない状況か・・・って事だな」


「・・・・・・怖いな、あきら」

「可能性はあるぞ」


それは”生きているのか・・・そうじゃないのか”って意味だ。



**



その日の夜、ゲストルームからつくしに電話をかけた。
スマホから聞こえる元気な声は、昼間の重たい話を吹き飛ばしてくれるようだった。


『この前ね、佐賀の旅館に電話してみたの。女将さん・・・戸惑ってたけど喜んでくれたよ』

「そっか・・・挨拶に行きてぇけどな」

『うん・・・いつか総と行きたいって思うけど、まだ出来ないもんね。いつか女将さんの顔を見に行ってみようと思ってるけど、1人でも平気だから気にしないでね』

「俺が気になるんだって!お前が世話になったんだから」

『・・・うん、ありがとう、総』


牧野の両親も怒ってるって聞いたばかり・・・つくしは詳しく言わなかったけど、その女将さんって人にも反対されたんだろう。
佐賀に来てもいいけど、その時は全部を解決させてから・・・今の状況で顔なんて見せるなって怒鳴られでもしたんだろうか。

それをこいつはどう返事したんだろう。
でも、それを聞くことも出来なかった。


この後も呼子の事を思い出したのか、俺の判らない話を延々と聞かされた。
これまでも少しは聞いていたがまた別の話・・・でもそれを聞いてるとこいつの住んでた環境が頭の中に浮かんでくるようだった。それは寂れた風景だけど、すげぇ温かい場所だったんだろう・・・そう感じていた。


『やっぱりもう1回行きたいなぁ・・・楽しい事ばっかりじゃなかったのに変だよね。半年ちょっとしか居なかったのに懐かしくて堪らないのよね』

「それだけいい人が居たって事だろ?待っとけ、絶対に連れて行ってやるから」

『・・・楽しみにしてる』


誰の目も気にせずに並んで歩ける日・・・それがいつだろうなんて事も口には出せなかった。

今はまだ宝生と先代、紫の心の中に何が隠れているのか見当もつかない。あきらが続けて調査すると言ってくれた宝生の古い使用人の証言・・・その返事を待つ以外になかった。





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