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カサブランカの件があってからしばらくは西門さんのマンションにも行きにくくて会わない日が多かった。
西門さんも地方での仕事が多くて電話でのやりとりばかりが続いている。

『まだもう少し地方回りが続くんだ・・・今度からお前連れて行こうかな・・・退屈だし!』
「えっ?私は退屈しのぎなの?随分な言い方ね!そんな事言ってるともうアパートに入れないから!」

この前の事を忘れさせてくれようとしているんだろうな・・・いつも電話では冗談ばかり言ってくれた。
そんな出来るわけないことをすごく簡単なことのように話してくる。
西門に対する恐怖心を少しでもなくそうとしてくれているような気がした。


そして、今日も仙台の方まで行っている。
夜になって電話があったけどその声が疲れ気味で様子がおかしかった。

「西門さん・・・どうしたの?声がおかしいよ?風邪引いちゃったんじゃないの?」

『ん~どうだろうな。滅多にそんなもん引かないけどな・・・毎日休みなく移動してるから少し疲れただけだろ。
明日は東京に帰るんだ。お前のメシ食いに行くから待っといてくれよ・・・』

「うん。わかった。待ってるね・・・着く前に電話してね」

明日になったら会える・・・そう思うと料理の献立を考えるのも楽しかった。
疲れがたまっているようだったから、胃にやさしくて疲労回復になるもの・・・

西門さんの風邪が酷くならないようにと願いながらベッドに入った。


*******


今日は土曜日で会社が休みだから朝から掃除に洗濯にと家事を済ませて、夕食の買い出しも早くに済ませた。
そして夕方になる頃にはすっかり準備も出来たんだけど、西門さんからの連絡がない。
今までこんな事はなかったからすごく気になったけど、仕事から帰ってくるって言ってたから電話をかけても
いいのかどうかを悩んでいた。

夜になって時間だけが過ぎていく・・・料理もすっかり冷めてしまった。


「どうしたんだろ・・・まさか事故?とかじゃないよね?」

テーブルの並べた2人分の夕食・・・それを前にして私もうたた寝をしてしまうぐらい遅い時間になってから
西門は電話をかけてくれた。その声はもう誰だかわかんないくらいひどくかすれていた。

「もしもし・・・西門さんなの?その声!・・・やっぱりひどくなったの?」

『あぁ・・・やっぱり熱が出たみたいでさ・・・自宅に戻されたみたいだ・・・ごめん、行けなくて・・・
気が付いたらもうこんな時間になっちまって・・・』

もう息が荒いまま話すからこっちまで喉が痛いような気がする・・・こんな病気の声を聞くのは初めてだった。
でも妙に色っぽい声になっててドキドキしてしまう・・・。


『なぁ・・・牧野、今何時だ?・・・もう、会えないかな・・・』

「もう9時過ぎてるよ。そんな事言ってないでちゃんと寝て早く治してよ。そうじゃないと会えないよ?」

『お前が泣きそうな声出すなよ・・・そこに行くたくなるだろ?・・・でもさ、今は・・・立てなくて』

あまり話してるとキツそうだったから、熱が引かなかったら私が会いに行くと言ってこの夜は電話を切った。
作った食事は次の日には残せなかったから、ほんの少しだけ自分で食べた。

昔は慣れていた1人での食事が、西門さんといるようになってからはすごく寂しいことに感じる。
誰もいない自分の隣の席を見て、大きくため息をついてしまう。


******


次の日にまだ熱が下がらなかった西門さんのお見舞いのため久しぶりにお屋敷を訪ねた。

西門さんが話しをしてくれていたから、この前の件があったけどお弟子さんはすんなりとお部屋まで
通してくれた。相変わらず迷子になりそうな複雑な作りの家・・・お弟子さんが案内してくれなければ
まだ西門さんの部屋に1人でははたどり着けない。

そんな事にもこの家との距離を感じてしまう。


お部屋に入ると西門さんはベッドに寝たままで、まだ顔も赤くて額には汗をかいていた。
そこに置いてあったタオルでそっと汗を拭いていたら、薄く眼を開けて私の方を見た。
病気の時は誰でもそうなんだろうけど、西門さんも普段は見せないような泣きそうな笑顔・・・

「悪いな・・・俺、マジでこんな熱は久しぶりでさ・・・カッコわりぃな・・・」

「病気に格好いいも悪いもないわよ!何か欲しいものある?果物とか・・・まだ無理?」

「牧野のキス・・・くれよ」

病気で寝てるくせになんて事を・・・!!そういう所だけはちゃっかりしてるんだから!

「ベ・・・別にいいけどさ・・・」
「はは・・・冗談だって・・・牧野に風邪、移したくないから・・・」

こうやって同じ場所にいるだけでも移るときには移るよ・・・。
普段自信満々でカッコつけてる西門さんでもこんな時は弱っちゃうんだね。
しばらくベッドの隣に座ってその手を握っていた。けっこうまだ熱い・・・そしてそのまま彼は寝てしまった。



突然、ノックも無しに西門さんの部屋のドアが開いた。


「あら・・・牧野さん。いらしてたの?総二郎お兄様のお風邪がうつりますわよ?」

入ってきたのは今日も和服を綺麗に着こなしている綾乃さん。
この前の事なんてまるでなかったかのように話しかけてきて、むしろ私を迷惑そうに見ている。

「いいえ・・・大丈夫ですから」

私は西門さんの手だけを離して、綾乃さんの方を見ないようにした。
その綾乃さんの強い視線が苦手・・・なんで、私のことをそんな眼で見てくるんだろう。

綾乃さんは私が側を離れないのが気にいらない様子だった。

「牧野さん、よろしかったらご一緒していただけないかしら。お兄様の朝食がまだここにあるわね。
調理場の方に下げましょうか。私はこのお水を新しいものと交換してもらうわ。どうぞ・・・こちらよ」

確かに机の所に食べられなかったんだろうけどお粥のようなものが置かれたままだった。


「わかりました。では、ご一緒に・・・」

2人で並んで部屋を出たけど私の少し後ろを歩く綾乃さんが私を睨んでいるのがわかる。
刺すような視線が痛かった。
私は西門さんのお屋敷の作りはよくわかっていないから、綾乃さんに言われるまま廊下を歩いていった。

そして、あるドアの前で立ち止まった。


「ここのドアを開けて下さらない?すぐそこが調理場ですのよ」

にっこりと笑う綾乃さん・・・なぜかすごく嫌な予感がした。
でも、早く終わらせたくてそのドアをノックもせずに開けてしまった。

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Comments 2

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2017/05/20 (Sat) 12:35 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは

えみりん様、こんにちは❗

楽しい子でしょう?
色んなことしてくれますよ。やることはアホなんですけど、綾乃ちゃんも一生懸命なんですよ。

みんな、がんばれー🎵

今日は朝からお出掛けしてます。
暑いです‼死にそう❗

いつの間に季節が変わったの?

えみりん様、よい休日を~❗

2017/05/20 (Sat) 15:25 | EDIT | REPLY |   

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