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次の日にはウィンリー夫人を連れて料亭に行った。

勿論類から言われてるとおり夜じゃなくてお昼ご飯。なんでも食べられるって言うから和食を中心に創作フレンチも出してくれるお店を選んで特別室を予約した。

ご機嫌はと言うと・・・昨日の事なんてすっかり忘れたのかハイテンション。
午前中の打ち合わせはとてもスムーズだった。特別室に向かう途中も私と手を繋いでルンルンしちゃって、昨日の事を「ご希望に添えず・・・」なんて謝ってるのに「何の事?」だって。

今日は類も同行して、むっつり顔のまま私の横に座ってる。
でも、これは海外事業部の接待だから余計な口出しはしないって言う約束で、私の護衛とウィンリー夫人の攻撃が始まったら援護するためだって言ってた。

一体誰となんの闘いをしているんだか・・・。


『ウィンリー夫人、本当に食べられないものとかないですか?日本食は外国の方からみると不思議な食材もありますから遠慮なく仰ってくださいね』

『えぇ、私はなんでも食べられるから大丈夫よ。ありがとう、つくしさん』

『それは良かったです。どうぞ日本の味を楽しんでくださいね』



用意された会席料理の内容は・・・

八寸に鴨とさつまいものレモン煮、茶碗蒸しに蟹餡 いくら。椀物は季節のお野菜でお刺身の盛り合わせ。しかもこの中には珍しいスッポンが入ってるらしい。
それに季節野菜の天婦羅と豚肉の西京焼き。天然鯛のお茶漬けに香の物がついて最後にデザートが用意された。


『あら、思ったより美味しい!ウィンリー夫人、このスッポン美味しいですよ?是非食べてみて下さい!』

『スッポン?』

『えぇ、スッポンにはアミノ酸やコラーゲンが豊富に含まれてるから美容に良いんですよ~』



それの殆どを美味しそうに食べて満足そう・・・ここでは上手くいったみたいでホッと胸を撫で下ろした。
勿論私も完食。それには隣の類が眉を顰めてた。

「あんた、体重の話してなかったっけ?」
「・・・・・・う、うん。そろそろね・・・考えないと」

いや・・・美味しかったのよ。


食事が終わって珈琲タイムになるとウィンリー夫人の「ご希望」という話で盛り上がった。


『歌舞伎というものに興味があるの。だからホテルの中に歌舞伎の専用舞台を作りたいの。なかなかいいでしょ?最近じゃ日本から公演に来てるしウケると思うのよ』

『歌舞伎の舞台というのは本格的に作れば結構複雑で特殊ですわ。普通の劇場にして歌舞伎以外の上演も出来るようになさっては如何ですか?』

『・・・私は専用って言葉が好きなの。それだけの為に作ったものに価値があると思ってるの。いけない事かしら?』

『いえ、いけないと言う事ではありませんわ。でも、一年中歌舞伎を演じるわけではありませんし、空いた期間が長ければ勿体ないでしょう?オーケストラやオペラなども観られるようにすれば・・・』

『・・・このホテルのオーナーはいつから花沢になったの?』
『いえ、申し訳ありません。出過ぎた事を申しました』

『判ればいいのよ、判ればね』



私も詳しくは無いけど、この人が「和」に拘って作りたいと言ったから調べていた。

歌舞伎の舞台には様々な仕掛け、というか構造があって色んな演出を可能にしている。
役者との親近感をもたらす為の観客席を縦に貫く花道や、素早い舞台転換を可能にする回り舞台・・・セリと呼ばれる舞台の床の一部分を切り抜き、その床を昇降させる装置。それが花道にあるのがスッポン。

そんなものを専用で作るほどシンガポールに歌舞伎は浸透してないし、興味本位で1度見ても日本のように通うとは思えないんだけどなぁ?

でもまたご機嫌を悪くさせたら怒られる。黙って俯いたらテーブルの下の私の膝の上、そこに類の手が伸びてきた。
それに驚いて隣を見たら・・・「あんたが正解」ってウィンクされた。

くすっ・・・変な励まし方。




*******************




つくしとウィンリー夫人のやり取りを聞いていても、相手に営業的というか経営者的な部分を感じなかった。
手元にある資料を見てもそんなに業績の悪い企業でもない・・・本当にこの女性が代表者なら、もう少しアドバイスを聞き入れても良さそうだと思うし、ここに来てまだその程度の知識なのかと呆れてしまった。

本当にそれで日本を感じさせるホテルになると思ってるんだろうか。

確かに歌舞伎は「ザ・日本」だけど役者の事まで考えてるんだろうか・・・わざわざここで日常的に歌舞伎を演じる役者がいるとも思えないし、まさかと思うけど舞台だけ歌舞伎風で素人に演じさせるとか無いよね?
・・・そう思ったけど約束だから黙っておいた。


『舞台の話は建設担当者に任せるからいいわ。それ以外に何かないかしらねぇ・・・』

『従業員さんに華道や茶道を覚えてもらって、ホテル内で実演とか如何ですか?華道は日本式フラワーアレンジメントですから豪華にロビーに飾ることも出来るかと思いますし、お茶は飲みにくいかもしれませんが日本を感じるには丁度いいかと思います。和菓子の専門店もあればいいかも・・・和菓子は見た目も美しいですし』

『そうねぇ、いいかもね!何処かでそれを見ることは出来るかしら?』

『はい!!お任せ下さい、適任者がいますわ!』



はっ?!今なんて言った?
華道に茶道に和菓子・・・その説明は良いとして、適任者って誰?!まさか・・・まさかだけど。

「・・・・・・つくし」
「なぁに?類」

「適任者って誰のこと?」
「西門さんに決まってるじゃない。昨日もお話ししたけど相談に乗ってくれたもん」


総二郎に・・・?総二郎にこのおばさんの面倒を見ろって?!

た、確かにグラマーだけど、好みじゃないと思うんだけど。でもって、気難しい女性なんてあいつ、大っ嫌いだと思うんだけど?
自分の手の中で遊ばせる事が可能な美人・・・そうだと思ってたから麻生ルミ子は簡単だったと思うのに?!

手強そう~・・・大丈夫かな、総二郎。


この後社に戻ってもつくしは夫人の話し相手をしていた。

見る限りでは機嫌は良さそうだ。
だから取り敢えず自分の執務室に戻ろうと踵を返すと、目の前に居たのはアルフレッド・エバンス・・・パーティーの時のように不敵な笑みを見せていた。


「わざわざ奥様のお守りですか?花沢専務」
「お守り?失礼な言い方だな・・・いや、今は協力関係者・・・でしたね、エバンスさん」

「はは、アルフレッド・・・アルフィーでいいですよ」
「そこまで親しくなるつもりもないから」

そんな風に言い返しても鼻で笑うだけの彼はすぐに視線をつくしに移していた。
その後ろから「やめてください!」みたいなジェスチャーで俺を睨むのは江本・・・・・・お前はどっちの社員だ?💢


「やはりあなたの奥様のコミュニケーション能力は凄いですね。あの御夫人は簡単に人を寄せ付けるようなタイプじゃないのです。ですからこれまでも相手をする企業が少なくてね。ホテル建設の件も施工主が現地で見付からなかったのでエバンスに話を持ち込まれてきたが、とても手に負えなかったので花沢物産に協力いただこうと思ったんだが・・・正解でしたね」

「いくらつくしにコミュニケーション能力があっても身体との相談だから。昨日も随分ストレス溜めて帰ったみたいだし、だからこうして体調を見てるだけ。それをお守りだと言うのなら別に構わないよ。俺にとって1番大事な人だからね」

「成る程、そう言う意味ですか。奥様も大変だ・・・息が詰まりそうな生活なんでしょうね」

「大事に思うことと束縛は違う。つくしはちゃんと理解してるから問題ない」


なんなんだ!この男・・・わざと俺を怒らせようとしてるのか?
そんな言葉で怒りを顔に出すほど子供じゃないけどね・・・。

俺の怒鳴り声を聞きたいのかもしれないけど、そんな事になる訳がない。


アフルレッドの横まで進み、お互いに鋭い視線を絡ませて通り過ぎた。そしてすぐに役員フロアに向かい、自分の執務室に戻った。



「あぁ、お帰りなさい、専務・・・」
「ただいま!!何?この部屋!空気が悪いんだけど?!
ちゃんと換気してるの?!」


「はっ?何を怒ってるんですか?空気が悪い・・・私しかここに居なかったんですが?」
「藤本!!珈琲!1番上等なヤツを淹れて!」

「えっ?!ここには1銘柄しか珈琲置いてないので選びようがないんですが・・・?」
「五月蠅い!早くして!
仕事が遅れてもいいの?!」



「・・・充分遅れてますからね」


・・・俺は怒ってない!

全然怒ってないからっ!!ふんっ!





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2019/05/13 (Mon) 06:50 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、おはようございます。

いやいや、そんな人が転がったら怖いですって(笑)
ちょっと想像してしまった💦

きっと誰も起こさないんでしょうね・・・いや、起こせないのかも(笑)

総ちゃん・・・なんかキレそうですよね💦
ここはイギリスからあきら君を呼んできましょうかね♡私の設定では45~6歳なんですが・・・あきら君、ダメかなぁ?


う~ん(笑)
オープンして半年後にはCLOSEしてるかもしれませんね💦
それにしても私がシンガポールに行ったのはすっごい昔・・・このお話の為にシンガポールを調べたのですが大都会になってて驚きました。
お洒落なホテルでしたが、朝食に出てきたご飯がタイ米でしたね。
日本のお米に慣れているので、それだけがダメでした。

1番楽しかったのは動物園!!(笑)鳥に囲まれて幸せでした♡
楽しかったなぁ・・・今のシンガポールに行ってみたい~!!

2019/05/13 (Mon) 09:10 | EDIT | REPLY |   

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