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その週の土曜日、類は珍しく休日出勤で会社に出掛けていた。

アメリカとのテレビ会議があるから絶対に休んじゃダメ!って藤本さんに言われたらしく、朝早くに起きてブツブツ言いながら着替えて出ていった。

それを見送ったらお義父様、お義母様との朝食。

話題は子供の事ばっかり。
既に気分はお爺様、お婆様になってるけど、絶対にグランパ、グランマと呼ばせるって言ってた。そしてまだ産まれてもいないのに遊びに行く場所を決めてるし、習わせるものまで考えてる。

男の子でも女の子でもピアノは絶対!類がバイオリンを弾くから協奏させるのが夢だそうだ。
それ以外では弓道とフェンシングで意見は分かれ、デッサンとプログラミングで意見は分かれ、フィギュアスケートとモトクロスで意見は分かれ・・・ってか、なんで変わったものばかり選ぶのかしら、このお2人は。

「語学はつくしちゃんが教えたらいいから助かるわぁ!」・・・だって。

そしてお屋敷内に遊具部屋を作るんだと言って、お義母様はそのレイアウトに夢中。私には判らないけど毎日何処かから色んな物が届いてるみたい。加代さんがそれに困って頭を抱え込んでいた。


そんな話題になると止まらないから聞いてるだけで面白かったけど、どれだけ甘やかせる気なのかとちょっと悩んでしまう。

自分の小さい時とは大違いな環境になりそう。
類も厳しくなさそうだし、ここは私が厳しくするしかないな、と目の前の楽しそうな2人を見ながら思っていた。


「そうそう!つくしちゃん、どうなの?エバンスとの仕事・・・揉めてないの?」
「え?あぁ・・・揉めてはないんですけどねぇ・・・」

「海外事業部からは順調に打ち合わせが進んでるって報告だが?」
「はい。多分ホテル建設の方は大丈夫じゃないかと思うんですけどね・・・問題はクライアントのウィンリー夫人がなかなか・・・」

「あら、つくしちゃんでも手を焼く強者なの?」
「ははは!お義母様ったら!確かに少し変わった方ですね。あんなに自分の気持ちと意見がコロコロ変わる方も珍しいと思います。でも、昨日は何とか上手くお話出来ましたけどね。週明けにはどうなってるか・・・」


西門さんに連絡したら「空いてる時間ならいいぞ~」って軽く言われたから、その時間に夫人を連れて西門に行く事にしてるんだけど、それも果たして予定通りに行くのかしら?

まさかと思うけど急に「抹茶なんて飲めないわ」とか言って、西門さんの前で足を投げ出したりしないよね?西門さんと夫人の口喧嘩になったら誰が止めてくれるのかしら・・・類まで入って大騒動になりそうで怖いなぁ。
確かにアレは初めてだと苦くて飲めないし、類だってミルクの要求するぐらいだもの。

華道も実演してくれるって言ってたけど、剣山で喧嘩始めたら流血の大惨事だわ!

はぁ・・・ってため息ついたら心配そうなお義母様と目が合った。


「つくしちゃん、6ヶ月になるとママの体にはマイナートラブルが現れやすくなるのよ。大きくなった子宮による腸の圧迫とか便秘とか、体重増加で下半身の血流が悪くなって足がつったりむくんだりってあるの。自分が元気だからって無理しちゃダメよ?」
「はい、気をつけます。類にも毎日言われますから」

「そうよねぇ!あの子がこんなに心配性だったなんてホント意外だわ!鬱陶しいでしょ?」
「えっ?いや・・・あはははは!」

実の親を目の前にして「鬱陶しいです!」なんて言えないでしょ!実際ちょっと鬱陶しいんだけど。


「赤ちゃんは今からどんどん動きが活発になるわ。それが周期的になってくるから決まった時間によく動いたりするのよ。類は朝早くにゴロゴロ動くから目が覚めちゃってねぇ・・・。お腹に居た時に早起きだったから、生まれてきてから寝坊助になったのかしら」
「・・・お義母様、そんな・・・」

「冗談よっ!でも一説じゃママの声も聞こえてるって言うから沢山話し掛けてあげるといいわ♡」
「はい!それは大丈夫です!」


**


朝食が終わって少し休んだら梅三郎達の所に遊びに行った。


こんなお腹だから仕方ないけど、類が「今は遊んじゃダメ」って五月蠅いからお散歩にも行ってない。たまに桃太郎達に会うと喜んで力任せに飛びついて来るんだけど、以前類がそれを見て凄い勢いで桃太郎と引き離してた。

いくら「大丈夫だって!」って言っても聞いちゃいない。
桃太郎が叱られてるのを見て菊次郎が犬舎から出なかったんだもん・・・梅三郎なんか川本のお爺ちゃんの後ろで震えていたし。


だから今日みたいに類が居ない日はこっそり遊ぶ事にしていた。

「川本のお爺ちゃん、おはようございます!みんなと遊んでいい?」
「あぁ、つくしちゃん。いいのかい?旦那に叱られるぞ?」

「あはは!今日は居ないから大丈夫だって!お爺ちゃんも一緒に遊んで?私1人だと怖いから」


私の姿が見えたら桃太郎と菊次郎が興奮して犬舎の中を動き回り、飛び出た時の事を想像して怖かった。
だから先に梅三郎を出して抱っこしたままベンチに座り、突進してきても倒れないようにスタンバイ!それを見た川本のお爺ちゃんが扉を開けたら、思った通り2匹が飛び出てきて私の身体にどーんと体当たり!

お腹は梅三郎でカバーしていたから大丈夫だったけど、2匹同時に乗られた太股は痣が出来るぐらい痛かった・・・。


わんわんわん♪わんわん♪

「判った!判ったからまずは私の足から降りて、桃太郎ーっ!菊次郎、あんたもそんなに舐めないでっ!うわっ!!」

わんわん!!わん!!

「梅三郎、あんたまで暴れちゃお腹がっ・・・きゃはははは!やめてぇ!」


前と横とお腹の上で3匹が大暴れ!
何とか川本のお爺ちゃんが引き離してくれて、梅三郎も落ち着いて、やっと呼吸が出来るようになった。

でも加代さんにバレたら怒られそうなくらいスカートが泥だらけだった。
ここに初めて来た時もこうやって泥だらけになって叱られたなぁって・・・汚れた自分の服を見てクスクス笑った。


「大丈夫かい?儂の責任になったら嫌だからなぁ・・・」
「大丈夫よ、お爺ちゃん。ちゃんとお腹はカバーしてるし、走ったりもしないから。じゃあ芝生に行きましょ!」


私が立ち上がったら嬉しそうに桃太郎と菊次郎が芝生に向かって走っていく。
梅三郎は私の足元をコロコロ転がるようについてくる。あんまり近づき過ぎるから、前足の端っこ踏んじゃって「キャン!」って鳴かれちゃった。

前みたいに芝生の真ん中でフリスビーを投げて、それを桃太郎と菊次郎が奪い合うように取りに行く。殆ど互角だけどほんの少し桃太郎の方が足が速いから、3回に2回は桃太郎の勝ち。
菊次郎は穏やかな子だから悔しがったりはしない。毎回楽しそうに走りまくって、取れてないのに嬉しそうに戻ってくるのが可愛かった。

「はい!頑張ったねぇ、桃太郎。菊次郎もよく走ってるよ?元気そうで良かったぁ!」

わんわん!わん!・・・わん?!


桃太郎の動きが止まった。そしてすぐに菊次郎の動きも止まって、2匹が同時に門を見た。
その動きはあの時と似ていてドキッとした。

五十嵐浩司さんがここに来た時・・・あの時もこうやって遊んでいたらあの人が現れたんだ。


わんわん!わん!!

「梅三郎、おいで」


桃太郎と菊次郎同様、梅三郎も門を見て吠えた。だからすぐに抱っこして、ドキドキしながら門の方に身体を向けた。
その門の向こう側に立っていた人は・・・アルフレッドさん?!

休日だからなのかスーツじゃなくてカジュアルな格好で立っていた男性が彼だとすぐに判った。
類よりも明るめな金髪なんて滅多に見ないもの。


わんわん!!わん!

「あっ!桃太郎、菊次郎!川本のお爺ちゃん、あの子達を犬舎に戻して!」
「あぁ、判った。あんたは走るなよ」

門が閉められているからいきなり飛び付いたりはしないし、あの2匹は人を噛まないように躾けてある。だけどあんな大型犬が走って行ったら流石に怖いだろうと思ってお爺ちゃんに2匹を頼み、私はゆっくり門に向かって歩いて行った。

見たら2匹は門の前まで行って左右にウロウロして威嚇してる。
アルフレッドさんは怖がっていないようだったけど、その目は犬が嫌いだと訴えていた。凄く冷たい、怖い目でこの子達を睨んでいたから。


桃太郎達も判るんだ。だからあんな風に威嚇してるんだ。


「こんにちは・・・どうしたんですか?どうしてここに?」

「こんにちは、つくしさん。いえ、近くまで来たので寄ってみただけです。花沢邸がこの辺りだと聞いていましたのでね」
「そうですか・・・でも、ごめんなさい。今日は類が不在なのでお通しする訳にはいかないんです。そう言われていますから」

「・・・ははっ、構いませんよ。あなたの顔を見られただけでも嬉しかった。とても可愛らしい笑顔でしたね」
「ずっと見ていたんですか?」

「・・・えぇ、そうですよ」


川本のお爺ちゃんがリードを付けて引っ張ろうとしても2匹が動かない。
梅三郎も何故か震えながらだけどアルフレッドさんに顔を向けて鼻に皺を寄せてる・・・凄く怒ってるみたいだった。


「失礼ですが、犬はお嫌い?」
「えぇ、嫌いです。飼い主に忠誠心がある事を必死に訴えるでしょう・・・それにウンザリするんですよ」

「・・・そう、ですか」
「見ていて嫌悪感以外の何も感じませんね」


そう言うとにっこり笑って帰って行った。

すぐ傍に停めていた車に乗って、窓から軽く振られた手・・・私はそれに答える事も出来なかった。




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2019/05/14 (Tue) 07:23 | EDIT | REPLY |   
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2019/05/14 (Tue) 08:42 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは!

桃太郎達、つくしちゃんと遊びたいのに類君に叱られて(笑)
類君の方がイライラMAXですよね~!

絶対に会議だって真面に聞いてないと思います・・・困った専務さんですね💦

私は大型犬・・・って言うより犬がダメなんですけど、義姉の飼ってたラブラドールは大人しかったので触れました。
でも、あんなのに走ってこられたら、私ならいくら門があっても逃げます!!

子供の習い事の家にトイプードルが居たんですが、それすら逃げましたからね(笑)
でもね、憎いとかはないんですよ💦ただ怖いだけなんです。

鳥なら何でも大丈夫なんだけど・・・。

2019/05/14 (Tue) 13:38 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは!

あっはは!門の外ですからねぇ💦出現ぐらいは許してください(笑)
入ってきたら怖いけどね。

あっ!そうそう・・・この前は我が家に侵入者がいたんですよ!💢
仕事が休みの日、家で寝てたらチャイムが鳴ってね・・・つい、居留守したんです(笑)

そうしたらね、どうも庭の何処かで足音がする・・・そのうちガタガタ音がしたから不審に思って外に出てみたんです。
(ノーメイクだったのにっ!!)

で、勝手口の方に回ったら・・・おじさんが家の壁の何かを測ってるんです。メジャー持って。
だから「何してるんですか?」って声掛けたら慌てて出てきて「間違えました!!」って言ったの!!

何をどう間違えたらそうなるんだ?ってめっちゃ怒ったんですよ!
今度塗装に入るから測りに来ましたって。
「頼んでもないのに勝手に入って測るんですか?」って言ったらね、チャイムならしたけど出なかったからって。
「具合が悪くて寝てたんです!!そっち不法侵入でしょ!」(本当は居留守だけど)

・・・・・・怖い世の中です。

「住所をグーグルで調べたらここだったので」って言うから、「その家の名前は?」って聞いたら「知りません」って!!

そんな訳ないだろーーーっ!!💢

「あなたの会社は塗装予定の家の名字も知らないのに勝手に来て測るんですか?!」って相当言ってやりました。

その後、1ヶ月ぐらい経つけど近所で塗装なんてやってないし!
あいつ・・・アルフレッドだったのかも?!(そんな馬鹿な。日本のおじさんでした)


あっはは!カメムシ・・・実は昨日の夜から窓に1匹居ます・・・。
この前のは何処かに行ったみたい・・・今居るのは新しいカメちゃんだと思います。

やれやれ・・・田舎は困るわぁ(笑)

2019/05/14 (Tue) 13:52 | EDIT | REPLY |   
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2019/05/14 (Tue) 15:53 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは!

えっ!そうなの?
我が家が古いからリフォームの下調べを勝手にしてるのかと思ったんだけど、そういう事も考えられるの?

そうそう!書類を持ってないのかって聞いたらね「タブレットしかないから何も書類はない」って言われたの。
そして、そう言う人は絶対に名刺忘れましたって言いますよね(笑)


何だったんだろう・・・怖いですよね。


そう言えば数年前の夏の夜に、我が家の前で車のエンジン掛けたままずーーーーっと寝てる人が居たんです。
それがあまりに五月蠅くて(夏だからエアコンつけてるし)、「文句言いに行く!」って言ったら旦那に「刺されるから止めとけ!」って言われたので警察呼びました(笑)

そうしたらパトカーが来るのかと思えばチャリのお巡りさんが来てくれて、その車に乗ってる人に「五月蠅いから動かしなさい」って言ってくれましたよ。
でも、旦那はその人の報復で家に火を点けられるかもしれん!って暫く怯えてました。

うちは旦那の方がビビりです(笑)

2019/05/14 (Tue) 21:24 | EDIT | REPLY |   

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