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plumeria

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急に停めてくれと言われた花屋に財布だけ持って飛び込んで行くと、数分後に茶色い紙袋に入れた「何か」を持って嬉しそうに出てきた。

てっきり花を買うんだろうと思ったのにそんな感じのものじゃない。
だからってイチイチ「何を買ったんだ」って聞く権利もないし興味もないから、助手席に戻って来ても何も聞かなかった。でも、時々袋を開けてみてはニヤニヤしてる・・・その笑顔が気持ち悪かった。

花屋で買う=植物・・・それなのに笑うってどういう事?
植物なんて話が出来るわけでもないし、感情そのものがない・・・そんなものを見て笑える?俺には全然理解出来ない。



自宅に近づいたのは午後1時半。
牧野も景色からそれを感じたのか窓の外を見てソワソワし始めた。
今度は何を考えてるんだ?って思ったら、真面目な顔して運転席の俺を・・・睨んだ。


「・・・なに?」
「あのさ、もうすぐお屋敷だよね?実はさ・・・」
ぐ~きゅるるるるるるる・・・

「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」

「・・・今の何の音?」
「お、お腹の音・・・そう言う事だからコンビニに寄ってもいい?お昼ご飯食べてなくて・・・」

ここまで来たのに今度はコンビニ?!さっき一緒に言えば良かったのに!
このまま自宅に戻っても食べるものぐらいいくらでもあるだろうけど、牧野がそう言うから車をUターンさせて再び大通りへ・・・コンビニを探してウロウロした。

「あっ!見付けた!」って声で車を停め、今度はダッシュで入って行き、すぐに小さなビニール袋を引っ提げて帰って来た。
花屋を出て来た時とは全然違う笑顔・・・そんなに笑ったり困ったりして疲れないんだろうか。その表情の変わりように驚くばかりだった。


今度こそ自宅に戻って車を駐車場に入れたら、何故か俺まで牧野の荷物運びをさせられた。
運ぶといっても使用人達の通用口までで、それが全部終わったらやっと俺は玄関から帰宅・・・そうしたら加代が慌てて奥の方から出てきた。
その加代の後ろには牧野がバツの悪そうな顔して立ってて、叱られたんだなってすぐに判った。


「類様、牧野さんのお手伝いをされたんですって?」
「・・・・・・別に何もしてない。荷物運んだだけ」

「まだお昼だってお召し上がりでは無いのでしょう?お部屋に何かお持ちしましょうか?」
「・・・要らない。別に空いてないし・・・」

「いえ!そういう訳にはまいりません。軽食をご準備致しますからお待ち下さいませ!」
「・・・・・・いいのに」



自分の部屋に戻ったらバサッと上着をソファーに放り投げてベッドに倒れ込んだ。
いつもと違う行動をしたら凄く疲れる・・・それがよく知らない人間と一緒だと余計に疲れる。
それでも頭の中に浮かんでくるのが不思議と牧野の目まぐるしく変わる表情で、考えたくないのにアパートからここまでの出来事を思い出してる。

バカバカしい・・・そう思って身体の向きを変えても同じ。枕で顔を隠しても同じ。
気が付いたらあの子の笑った顔が瞼の裏のド真ん中にあった。



「類様・・・」
「うわあああぁっ!!」

「そのように驚かれるほど恐ろしい顔はしておりませんわ!ノックしてもお返事がなかったので失礼しましたの。昼食をお持ちしました。ごゆっくりお召し上がりくださいませ」

「・・・・・・判った。ありがと」


急に頭上から聞こえたのは加代で、それまでに思い出していた映像を覗き見されたのかと思って焦った・・・。

加代はすぐに出ていったけど、テーブルの上に置かれていたのはサンドイッチと珈琲。
それを見ても食べたいとは思わなかったけど、目の前まで行ってみた。そしてサンドイッチを1つ、手に持ってみた。

どうしてそう思うのか判らなかったけど、牧野がさっきコンビニで買った「何か」の方が美味しそうに感じる。
それを手に持ってる人間の違いだろうか・・・そんな事を思いながら口に入れようとした瞬間、トントントンとノックの音がして俺は口を開けたままドアを見つめた。


凄く嫌な予感がする・・・もしかしたら牧野だろうか。

食べようと思ったサンドイッチを皿に戻してドアまで行き、そっと開けて見たら・・・やっぱり立っていたのは牧野。その手に持っているのは花屋で買った茶色の紙袋だった。
俺が超不機嫌な顔で見下ろしたら「へへへ・・・」って笑って頭を掻いて「入っていい?」なんて聞いてきた。


「加代に怒られたの?」
「う~ん、怒られたというか、早くスマホを持ちなさいって。連絡がつかないと困るからって」

「・・・今の時代そうだろうね。それだけ?」
「うん。後は『類様に荷物を運ばせたのはあなたが初めてです!』って。次にやったら減給ですって言われたわよ」


その会話の途中、許可もしてないのに牧野はズンズン部屋の中に入って行くと、今朝抱えて来たキャビネットに紙袋を置いて中の物を出した。
それは何かの鉢植えの植物。綺麗な緑色で大きな葉が数枚見えた。


「・・・何してんの?」
「これ?ふふふ、この部屋に置こうと思って買ってきたの」

「・・・もう1回言うけどここ、俺の部屋だけど?」
「判ってるよ?花沢類がモノトーンの部屋でしか生活しないってのも聞いたよ」

「じゃあ勝手な事するなよ。他人に色んなものを置かれるなんて凄く嫌なんだけど」
「・・・でもさ、世の中には折角『色』ってものがあるんだから、先ずは緑から置いてみない?これ、私からのプレゼントだから。子宝弁慶草って言ってね、凄く良く増えるからお得な植物なの」


真っ白なキャビネットの上に白い鉢に植えられた鮮やかな緑・・・一瞬、それが光ったように感じた。


「うわぁっ!!」
「今度は何?!」

「美味しそう~!!えっ・・・まさか、花沢類もお昼ご飯まだだったの?」
「・・・・・・そう。今から食うところであんたが入って来たんだ」

「きゃああぁーっ!なになに?このサンドイッチ!やぁ~ん、いい香りーーっ!」
「・・・・・・・・・」

「これ何かしら・・・エビ入ってる?こっちはふわっふわの卵サンド?どうやったらこんな風に作れるんだろう~!今度教えてもらおうかなぁ・・・」

牧野はテーブルの上に並べられたサンドイッチを真上から見下ろして目をキラキラさせてる。
それを見るとやっぱりこのサンドイッチが美味そうに見えてくるから驚きだった。そしてこの光景を見たら誰でも絶対に言うと思う・・・。


「・・・・・・・・・食ってもいいけど」
ほんとっ?!!あっ、じゃあ、ちょっと待ってて!」


そう言うと凄い勢いで部屋を出ていって、今度はノックもせずに部屋に戻ってきた。
その手に握られてるのはコンビニの袋・・・さっき買ったものをここで一緒に食べるのかと思って、仕方なく珈琲を牧野にも淹れてやった。

何で俺がこんな事してるんだろう・・・加代が見たら怒鳴りそうだと思うけど、振り向いた時に見た牧野の表情は今日1番の笑顔だった。


「卵サンドは判るんだけど、ねぇ、これなぁに?」
「ビーフカツサンド」

「こっちは?緑色のなに?」
「ベーグルサンド。緑色してるのはアボカド」

「へぇ!アボガドなんて食べたことない!じゃあ花沢類、これ食べる?」
「・・・なに?」

「コンビニの梅おにぎり!」
「要らない」


自分で食べるんじゃなくて俺がコンビニの食事?!
どうやったらそんな発想が出来るんだ?って呆れて牧野を見ていたけど、彼女は俺の視線なんか気にもせず、大きな口を開けてビーフカツサンドを頬張った。
そして半泣きで「美味しいーーーっ!!」と握りこぶしまで作って喜んで、当然そのあとにタマゴサンドもベーグルも完食した。


「それじゃあご馳走様でした♡また夕方バイトに来ますね~!色々ありがとう、花沢類!」
「・・・・・・・・・」


牧野が部屋を出ていったあと、俺の前に残されたのは梅おにぎり・・・それには手が出せずに置かれたままだった。


ふと窓に目をやるとさっき置かれた植物がカーテンからの日差しを受けてる。
それに近づいて見たら・・・何だか不思議な形をした葉っぱだった。


子宝弁慶草・・・そう言ってたからネットで調べたら、育て方が書いてあった。


「日光が好きな植物なのでなるべく日当たりの良い場所で管理・・・ただし夏の直射日光は強すぎるので半日陰。良く日光に当てて乾燥気味に育てる。
蒸れに弱い植物なので風通しの良い場所に置く・・・冬場はなるべく10度以上の気温を保ち、暖かく明るい室内へ取り込んで育てる・・・へぇ」

それ以外にも水切れに弱いとか、水を与えすぎるのも根腐れするとか、水が葉っぱにかからないように土だけに静かに注ぐのがポイントだとか。

子宝ってついてるだけに繁殖力が強いらしい。
葉に付く子株がこぼれ落ちて一年中勝手にどんどん増えていく・・・・・・いや、冗談じゃないし!!


でもこの「緑」が俺の部屋がモノトーンの世界になってから、初めて入って来た色だった。




mineral-water-1532300__340.jpg
子宝弁慶草のフリー素材がなかったので、気になった方は検索してみて下さい(笑)
可愛いけど、不気味な形してますよ~❤
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2019/07/03 (Wed) 07:10 | EDIT | REPLY |   
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2019/07/03 (Wed) 12:08 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様こんにちは!

逞しいでしょう(笑)なかなかご主人様のご飯を食べられないと思うんですが💦

類君に梅干し・・・(笑)
私も色々類君には食べさせてきましたが、梅干しは初めてかしら?
でも、食べていませんけどね!

子宝弁慶草は私が育てております。
でも、丁度いい感じで子株が出来てなかったので写真に撮れませんでした。

昔から好きなんです、子宝弁慶草。
本当にドンドン増えるんですが、私は同じくらい枯らしてしまうので沢山は育ってないんですが💦

深い意味はないですよ❤

2019/07/03 (Wed) 14:52 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんにちは。

あらら、何がいけないんですかね?
色々複雑だから判らないですよね~💦

たまに記事も読めないってコメント来たりするんですが、後でやったら読めた、とか。

私はパソコンとは全然関係ないんですが、ブログそのものを削除するって言うのをポチッ!とした事があります(笑)
『本当に削除しますか?』って出たのでビビって「はい」を押すのか「いいえ」を押すのか判らなくなって大慌てしたことがあります。

ふふふ、馬鹿でしょ?(笑)
ネットの摩訶不思議じゃなくて、プルのクソ馬鹿な話でした(笑)あはは~!

拍手コメントの方はS様にもG様にもお伝えしてます。
いつもありがとうございます~❤

2019/07/03 (Wed) 15:01 | EDIT | REPLY |   
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2019/07/06 (Sat) 11:08 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは。

あれぇ?!やっぱりそう感じました?(笑)
全然深い意味はなかったんですよ。

私が好きだから選んだだけで、初めはサボテンにしようかと思ったけど「トゲ」があるからヤバいかと思って。
手間の掛からない植物が好きでしてね。

放っておいたら増えてる!って言うのがいい所です。
(放置プレイですよね!」


梅干しおにぎり(笑)
梅干し食べたことあるんだろうか・・・ないでしょうね!
(また歴史に名を残そうと考えている女・・・類君に梅干し食べさせる💦)

2019/07/06 (Sat) 14:40 | EDIT | REPLY |   

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