FC2ブログ

plumeria

plumeria

夕方5時になったら部屋のドアをノックされた。
やっぱりそれには答えなかったけど、静かにドアが開いて、制服に着替えた牧野が掃除用のカートを押して入って来た。
そしてドアを閉めたら両手を前で組んで一礼・・・それをいつものようにベッドに寝転んで、本を読むフリをして見ていた。


「類様、ただいまよりフロアクリーニングとベッドメイキングをさせていただきます・・・そ、それと・・・何だっけ・・・」
「・・・・・・」

加代に言われた午後の仕事だろうけど、覚えてないのかここでもカンニングペーパー登場・・・それを見ながら次の仕事内容を読み始めた。

「バスルームのお掃除!を・・・させていただきます・・・ね?」
「好きにしたら?」

「はい!それでは先ずはカーテンを閉めます!」
「そんなのイチイチ言わなくてもいいから黙ってやれば?」

「はい!」

今朝ぐちゃぐちゃに開けたカーテンを今度は閉めていくけど、これがなかなか重労働。
朝と同じく、4つの窓のカーテン全部で8枚だと終わる頃にはクタクタになってる。案の定、牧野も最後の方は真ん中まで持って来れず、カーテンに縋り付いて倒れそうになってた。

どうしよう・・・教えてやろうか。


「はぁ、はぁ・・・なかなか動かないこのカーテン!どうして・・・こんなに重いのよっ!」
「・・・・・・言ってもいい?」

「はい?!何でしょう、類様」
「実はそれ・・・リモコンで自動開閉出来るんだけど」

「・・・・・・はい?」


俺が指した方を目で追っていく牧野・・・その先、ローボードの上にカーテン用のリモコンがある。
それを見た瞬間凄く怖い顔して俺を睨みつけた!
『朝の時点で言いなさいよっ!!💢』・・・彼女の心の声が聞こえた。


「・・・教えてくださってありがとうございます。明日からはこのリモコンでさせていただきます!では床の掃除を・・・本日はモップだけですので失礼致します・・・!」

「・・・どうぞ」

ムスッとした顔で今度はカートからモップを出して床を拭き始めた。

俺はベッドの上に寝転んだまま本を読んで・・・いや、眺めていた。
視界の端に入って来る牧野は、小柄な身体に似合わない大きなモップを持って端から端まで黙々と拭いてる。それが終わったらテーブルの上をクロスで拭き、同じくローボードの上を拭き、ソファーの上も専用のクロスに変えて拭いていった。

ただしずっと怒ったまま・・・口を思いっきり「への字」にして目尻が吊り上がってるのには笑いが出そうだった。


「類様・・・」
「・・・なに?」

「退いてもらえますか?」
「はっ?」

「だってベッドメイキングしないといけないんですもの。そこに居たら邪魔です」
「・・・・・・・・・」


確かに牧野の言うことは正解だろうけど、邪魔って言われたのは初めて・・・「シーツ交換を致しますので・・・」ぐらいしか言わないと思ってたのに「退け」とか「邪魔」とか、それって使用人が雇い主に対して使う?
そう思ったけど、さっきのカーテンの件でまだ機嫌が悪い牧野は全然悪いとは思ってないようだ。

如何にも邪魔!って感じで新しいシーツを持って来て、まだそこに寝てる俺をジロッと睨んだ。


「えーと、どうやるんだっけ」ってここでも何かのメモを見ながら持って来たものと見比べてる。
そしてブツブツ言いながら今まで使っていたものを剥ぎ取って床に置き、新しいベッドパッドを敷くのを、すぐ傍のソファーに座って見ていた。

凄く手際も悪くメイキングシーツを掛けて、他の人間ならピシッ!と仕上がるはずがシワシワ・・・それでも顔だけ真剣だから何も言わなかった。
今度は羽毛インナーをデュベカバーの中にセットしてるけどカバーの中で偏ってるのかモコモコに・・・そんなので終わらせるのかと思ったら、本当にそのままベッドに掛けて上からパンパン!と叩きだした!

そんな事した人も初めて・・・「出来た!」と言われたベッドはかなり歪な形になってた。



「それではバスルームのお掃除してきます・・・」
「どうぞ」

次は部屋の奥にあるドレッシングルームとバスルーム、そっちに牧野が消えて行ったらソファーで寝そべっていた身体を起こした。読んでいたはずの本なんてそこら辺に放り投げて、俺もバスルームの入り口まで行ってみた。


そしてバスルーム手前の壁に凭れ掛かって考え込んだ。
何故この子に限ってこんなに興味が湧くんだろう?これまでの使用人と行動と反応が違いすぎる・・・からか?

それとも変な夢のせいか?そう思っていたらバスルームから悲鳴が上がった!


「きゃああああぁーっ!!」

それに驚いて「どうした?!」って飛び込んだら・・・頭っから水を被ってる牧野が居た。

ザーザー出てる天井からのオーバーシャワーの真下・・・普通のシャワーからも水が出ていて、そのシャワーヘッドを両手で押さえ、制服もびしょ濡れにしてバタバタしながら大声出してる。
一瞬何が起きたのかと思って目がテンになった。


「何やってんの?掃除するのにずぶ濡れにならなくても良くない?」
「そっ、そうじゃなくて!!いやあああぁーっ!助けてよ、これ止めてぇ!!」

「・・・壁にスイッチがあるでしょ?先ずはオーバーシャワー止めたら?」
「判んないんだってば!急に水があちこちから出始めたんだからっ!お願い、止めてーーっ!!」

「・・・仕方ないな・・・」

ペタペタとバスルームに入って行き、両方のシャワーを止めた。
そして水が出なくなったシャワーヘッドを押さえ込んでた牧野が、ヨロヨロとその場に座り込んでゼィゼィ言ってる・・・もう髪の毛もびしょびしょで、洗剤のボトルまで流されて遠くにあるし、掃除道具を蹴り飛ばしたのか散らかってるし。

はぁ・・・とため息をついてこの信じられない光景を眺めていた。


「はぁはぁ・・・驚いた・・・良かったぁ、花沢類がいてくれて・・・」
「・・・(呼び捨て?)掃除しに来たの?汚しに来たの?それにまだ寒いんだから水被るのには早くない?」

「誰が汚しに来るのよ!はっ・・・失礼しました!ごめんなさいっ、類様!」
「・・・(もう遅いけど)どうしてこんな事になったの?」

「・・・掃除しようと思って洗剤撒いてブラシで擦ったまでは良かったんだけど、水で流そうとしたら何処にも蛇口がなくて。それで色んなものを触っていたら急に天井から水がザーーーーッ!!って降ってきたの。それに驚いて壁際に逃げたら今度はシャワーがバーーーッ!!と・・・流れて来たんです・・・」


蛇口・・・確かに蛇口じゃない。
総て壁埋め込みのタッチパネルだから。
運悪くオーバーヘッドシャワーのスイッチに指が触れて、驚いて今度は普通のシャワーまでスイッチを入れたと・・・?


「もういいから着替えたら?あぁ・・・待って、バスタオル持って来るから」
「・・・すみません・・・」

いや、仕方ない・・・と思う。
あのアパートにシャワーがあるとは思えない。恐らくこの歳になるまでシャワーなんて使ったこともないんだろう・・・って、そんな家があるのか?って思ったけど、実際目の前で見たんだから。

ドレッシングルームでバスタオルを取って、もう1回バスルームに戻ったら牧野は立ち上がっていた。

でも、その姿を見てドキッとした。顔には・・・出してないけど。


濡れたスカートが足にピッタリくっついてるし、制服は黒だったけど白いエプロンもびしょ濡れだから腕や胸のラインが少しだけ判る。勿論透けたりはしてないけど、濡れた髪が頬に掛かってる女性なんて初めて見た。
って言うか、見ちゃいけない気がした。

だから急いで横を向いてバスタオルを持った手だけ伸ばしたら「ありがとうございます」と、小さな声で受け取って肩から掛けた。


「制服の替えは?」
「・・・えっと、これ1枚しか・・・だって今日からだし」

「加代を呼ぶから待って・・・」
「・・・はい」


バクンバクン言ってる心臓・・・そいつを抱えて部屋まで戻り、内線で加代を呼んで事情を説明。すっ飛んできた加代の手には新しい制服が握り締められていた。
暫くしたら髪にだけタオル巻いた牧野が真っ赤な顔して新しい制服に着替えてて、加代と一緒に頭を下げてた。


「申し訳ありません、類様。まさかそこまで知らないとは思わずに・・・ちゃんと教えておきましたのでお許しくださいませ」

「・・・・・・・・・」

「さっ、牧野さんからもひと言お詫びを!」
「・・・申し訳ありませんでした・・・ックション!!」

「・・・もういいから髪、乾かしたら?」



この後の夕食時、髪も乾かした牧野がすっかり立ち直って、また俺の横の方からジーッと見ていた。
でも俺もこれが今日初めての食事と言ってもおかしくないぐらい食べてなかったから、流石にこの時間は食事に集中した。
時々鼻を啜る音や「ックシュン!」って聞こえる度にビクッとしてナイフとフォークが止まるけど、顔を見合わせたら何を言うかわかんない・・・。

食べた気は全然しなかったけど、兎に角胃の中に料理を流し込んだ・・・そんな感じだった。




fruit-basket-1841317__340.jpg
関連記事
Posted by

Comments 6

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/07/04 (Thu) 06:59 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

ははは!気になって仕方ないんですね❤
きっと持ってる本だって逆さまになってるんですよ(笑)

そうそう!つくしちゃんはプールのシャワーしか知らないんだと思います。
一般家庭の(一般じゃないけど)オーバーヘッドシャワーなんて考えもしないでしょうね💦

自家発電は有るんじゃ無いかな?防犯設備がバッチリでしょうし❤
そんなお屋敷では働けません・・・自分の家に帰ったら虚しくなりそう(笑)



2019/07/04 (Thu) 14:55 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/07/04 (Thu) 18:14 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

mizutama様、こんばんは!

あはは!笑っていただけているのなら良かったです❤
いやいや、めっちゃ真面目に書いてはいるんですけどね💦

何故か今回もつくしちゃんがパワーアップして「天然ちゃん」になってるようでして。

まさに「地球外生物」でしょうね(笑)

まだまだとんでもない事もするんですが、少しずつLOVE度をあげていけたら良いんですけどね~💦
それは少し先になりそうです。

巫山戯た話ですがのんびりとお付き合い下さいませ❤
コメントありがとうございました♡

2019/07/05 (Fri) 00:00 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/07/06 (Sat) 11:13 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは。

はい!ご希望のバスルームシーンでしたぁ♥
・・・・・・・・・ん?違うって?

これではダメかな・・・。一応2人で入って濡れてるけど。
・・・・・・・・・ダメですかね。


そうじゃない・・・あら、そうですか。(1人ツッコミ💦)

2019/07/06 (Sat) 14:43 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply