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私のバイト終了は夜の9時。
花沢類が夕食を食べ終えてからは何をするのかを加代さんに確認してみた。

「先ずは類様にお仕事があるかどうかを確認してください。それと仕上がってるクリーニングのお片付けとお部屋のゴミ捨て、明日のスケジュールでお伝えすることがあったらこの時間にして下さい。
何もないと仰ればお屋敷全体のお掃除等をしていただいて、9時になったら自分のお部屋に戻って結構です」

「判りました。それでは類様に確認して参ります!」

「くれぐれもご機嫌を損ねないように」

「・・・はーい」


加代さんの心配も尤もだ。
確かに夕方のシャワー事件は私だって驚いたもん。

だからってこんな割のいいバイトを辞めるわけにもいかない・・・花沢類が卒業するまで頑張らなきゃ! 両方の手で拳を作って、それをブンブン振ってクリーニングを保管してある部屋に行き、彼の物を持って部屋に向かった。


類の部屋に行ったら先ずは呼吸を整えて上品にノックを3回・・・トントントン、としてみた。
でもこれには殆ど反応は無いって聞いていたから「失礼しまーす」と囁いて部屋の中に入った。


「あれ、いないの?・・・類様?」

部屋の中は照明が薄暗くなってて人の気配がしない・・・恐る恐る足を進めて見たら、またベッドの上でスゥスゥ寝ていた。

うそっ!まだ8時前なのに?
世間一般のお爺ちゃんだってこんな早い時間には寝ないわよ?!


もう1歩近づいて見たけど・・・やっぱり完全に爆睡。
仕方ないから持って来たクリーニング類をクローゼットに入れさせてもらおう・・・しまう場所は判らないから起きた時に聞こうと思って足音を立てないようにそこに入った。

そこも人感センサーで勝手に照明が点くみたい。
私が足を踏み入れたらパッと明るくなって、瞬間目が眩んで瞑ってしまった。

そして目を開けたら・・・そこには驚くほど服が並んでいたけど、その全部が白・黒・グレーで驚いた。


「何これ・・・本当に着る物もこの色だけなの?
すご・・・ってか、違いが判るのかしら。全部同じに見えるんだけど・・・?」

シャツやジャケット、コートなんかはちゃんと仕分けされてるみたいだけど、掛かってる横から見ただけじゃデザインの違いなんて解らない。
手に持ってみたらその違いがわかる・・・少しだけ柄があったり地模様があったり、襟のデザインが違ったり袖のデザインが違ったり。グレーだけが少し色がバラバラ・・・白に近いグレーか黒に近いグレーか。

それをぐるっと見回して・・・持って来たものを隅っこに置いてクローゼットから出た。
どうしてだろ・・・凄く哀しい気分になってる。


「いやいや、これはお仕事!気にしちゃダメ・・・こんなのは人の好みだもん、私が哀しくなる必要はないのよ!」

きっと初めて男性のクローゼットなんて見たから驚いただけ。
女の子なら兎も角、男の人ならこう言う事もあるわよ。むしろ花柄とか水玉模様の服で埋め尽くされていたらヤバいかもしれないけど、モノトーンが好きな人なんて何処にでもいるわよ!

ただ枚数が常識の範囲外って事だけよ。うん、そうだ!それだけだ!!


無理矢理そう思うことにして花沢類のベッドの傍まで戻った。
でもやっぱり爆睡中・・・これじゃあお仕事が有るかどうかなんて聞かれない。だからベッドの横に座り込んでどうしようかと考え込んでいた。


「はぁ・・・本当に変わった人ねぇ、こんなに綺麗な顔してるのに」

起きそうにもなかったからベッドの端っこに両手を置いて、そこに自分の顔も乗っけて彼の寝顔を見ていた。
睫、ながっ・・・それに腹が立つほど高い鼻・・・絶妙なバランスの顔面パーツの配置にムカッとするぐらいだ。女性だってこんなに整った人は珍しいと思うのに。

それにこの肌のきめ細やかなこと。思わず自分のガサガサのほっぺたを触ってしまった。


「見るだけなら天使だわ・・・話したら・・・意地悪・・・・・・だけど」


余りにも気持ち良く彼が寝てるからって、まさかここで・・・この部屋で自分まで睡魔に襲われると思わなかった。





*********************





夕食後、いつものように睡魔に襲われたからベッドに倒れ込んだらそのまま完全に爆睡した。
でも、それも僅かな時間・・・何となく誰かの気配を感じて目を覚ましたら・・・・・・真横で牧野が寝てた。

しかもまだ制服のまま、俺のベッドの横で座り込んで、顔だけ布団の上に乗っけてる。
そして完全に熟睡してるのか、気持ち良さそうな寝息まで聞こえる。


「・・・・・・マジで?いつから居るの、この人」

触ってもいいんだろうか・・・牧野の肩まで手を伸ばしてから止まってしまった。
まさかここで触ったからって悲鳴あげられて、屋敷の連中に俺が襲ったみたいに思われないよな?いや、判らない・・・たった1日で何回この子に叫ばれた事か!

先ずは声だけで・・・そう思って顔を近づけた瞬間、いきなりガバッ!!っと起きられて、俺の顔と牧野の顔の間が10㎝ぐらいにまで接近していた!
牧野の瞳の中に自分の間抜けな顔がある・・・そしてやっぱり!


「きゃあああぁーーっ!!なんでそこに居るのっ!!」

「・・・・・・・・・💢」

自分で叫んでおきながら自分の口を両手で塞ぎ、慌てて部屋を見回してる。
そして自分の姿と場所を確認・・・漸く自分が職務中に居眠りして、雇い主の部屋で寝ていたことに気が付いたようだ。

「はっ?!」「えっ?!」「おっ?!」って・・・その落っことしそうな目を俺に向けるの止めてくれるかな・・・💢


「・・・・・・あっ、あはは!ごめん・・・失礼しました!!」
「・・・凄い度胸だよね、あんた。今までここで寝た使用人は流石にあんただけだよ」

「ははっ・・・ですよね~!って言うか、何か御用がありますか?」
「はぁ?!今まで寝てた癖に聞くの?!」

「だって9時までが勤務で・・・あっ、もう10分過ぎてる!なんだ、終わったんだ!」
「終わったんだって・・・あんた、ここで居眠りしてたのも勤務時間に入れるの?」

「・・・そっかぁ、じゃあ・・・お掃除します!多分1時間ぐらい寝てたから10時まで!それでいいですか?」
「はぁ?!」


床とバスルームは夕方掃除したからって、それ以外の所を片付けると言いだした。
こんな夜に迷惑な・・・そう思ったけど、これも仕事なら仕方ない・・・俺は黙って寝てればいいと思って知らん顔した。
そして何をしたのか判らないけど、1時間経ったら額に汗かいて奥の部屋から出てきた。


「はぁ、疲れたぁ!ミニキッチンがあったからそこをお掃除しました。でも、あんまり使わないんですね、綺麗なままだったわ」
「・・・年に数回お湯沸かすぐらいだから」

「うわっ!勿体ない!うちのアパートのよりずっといいキッチンなんだから使えばいいのに!」
「・・・いつ使うのさ。もういいよ、終わったんでしょ?」

「あっ!そうだった。今から勉強しなくっちゃ!類様、それでは失礼いたします。お休みなさいませ!」


また挨拶と同時に頭下げるから、「お休みなさい」は床に向かって叫んでる。
そして夜とは思えないぐらいの元気のいいドアの閉め方・・・バタン!って大きな音を立ててパタパタと走る足音まで聞こえてきた。次には向かいの部屋のドアが閉まる音がして、すぐ近くに居るんだと思うと少しモヤッとした気分になった。


「・・・本当にここでバイトするのかな、あの子。ま・・・続かないだろうけどね」


ベッドから降りてバスルームに向かい、今日も頭っからシャワーを浴びた。
でもその時にさっきここで全身ずぶ濡れになった牧野の事を思い出して「くすっ」と笑いが出た。

・・・あれ、笑った?


この俺が思い出し笑い・・・それに驚いて、急いでシャワールームから飛び出した。

そしてバスローブ1枚でいつものように頭からタオル被ってソファーに座り、酒とグラスを取り出した。その時に目に入った緑色・・・この部屋に唯一ある「色」を見つめた。

不思議な形の『子宝弁慶草』・・・これを抱えて花屋から出てきた牧野の嬉しそうな顔が頭に浮かんだ。


「勉強・・・あぁ、そう言えば英徳の1年になるんだったっけ・・・外国語学科って聞いた気がする」

第一外国語は英語と決まっている。それ以外に第二、第三までその他の語学を選択するはずだけど、何を選ぶんだろう・・・ふと、そんな事が気になった。
もしかしたらフランス語だったりして。

いや、そうだったらどうだって言うんだ?
俺には関係ないし!


罪もない子宝弁慶草を睨みつけた後、グラスに酒を注いで1人で飲んだ。
いつもより数倍動いた1日だった・・・それをまた思い出しながら顰めっ面で飲んでいた。





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2019/07/05 (Fri) 00:17 | EDIT | REPLY |   
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2019/07/05 (Fri) 07:06 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

桜姫様、こんにちは。

うふふ、おバカなつくしちゃんで申し訳ありませんが許してやって下さい💦
こんなお手伝いさん、困りますけどね~!

くすっ、と笑っていただけることが何よりです❤
後はこれだけ天然にしたつくしちゃんとの恋バナに持って行けるのか?って事でしょうか。

じつは既に「やり過ぎたか・・・」と反省しております。
ヤバい・・・どうやったら恋人になれるんだろう?💦

また長編になったらどうしよう~💦
・・・・・・気長にお付き合いいただけると嬉しいです(笑)

2019/07/05 (Fri) 12:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

今度は寝てしまいました・・・。
次はなんだ?って感じでしょう?実はこんなに書いてて、花沢家の2日間ぐらいなんですよ。
いい加減日にちを進めなきゃ・・・って焦ります。

大学に行けるようになるのは何話目だろう(笑)
それまでに事件は起きそうです・・・ははは!

2019/07/05 (Fri) 12:07 | EDIT | REPLY |   
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2019/07/06 (Sat) 11:29 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは。

ははは!ベッドの横ですけどね。
気が付いたら布団の中だったらめっちゃ怖いけど。

そして類君が無意識に・・・いやいや、まだ早い💦
この様子だと相当先だと思う・・・(そもそもあるのかどうかも疑問)

2019/07/06 (Sat) 17:36 | EDIT | REPLY |   

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