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「西田……そろそろだな」
「……さようでございますね」

「よし!海岸沿いにテントを張れ!
で、つくしをそこに呼ぶぞ。手配しろ!」



夏の終わりの砂浜。
ロープを張って保護している場所にもうすぐ…って気配を感じて俺はつくしを呼ぶ事にした。


**


あれは今から2ヶ月前のこと。

西田を伴って海洋資源の調査に自ら出向いたその帰り道、もう暗くなった海岸沿いをリムジンで走っていたら砂浜の真ん中で動くものを見付けた。


「西田…車を停めろ」
「はい?どうかされましたか?」

「何かが砂浜で動いてる……なんだ?」
「……あぁ、あれはウミガメでございますね」

「カメ?!カメがあんなにデカいのか?!」
「ウミガメは大きいものですと2メートル近くになります。
恐らくこの辺りで見掛けるとしたらアオウミガメでしょう。大きさは1メートルと言ったところでしょうか」


「……乗れるのか?」
「……1人なら何とか……乗りたいのですか?」

「いや、何でもない」


何となくあんな大きさを見たらつくしが乗りたがるかと思っただけ……。
俺が乗りたがってると勘違いしてる西田は『乗っても早くはありませんよ?』ってな顔で見てやがった。


「で、なんでこんな夜中に歩いてるんだ?」
「歩く……そ、そうですね。
今はウミガメの産卵時期ですので卵を産みに来たのでしょう。
それ以外でウミガメが陸に上がって来ることはございませんから」

「産卵……西田!見に行くぞ!!」
「はっ?!司様、見るんですか?!」

「勿論だっ!!」


何故かすげぇ興味が湧いて急いで砂浜に向かった。

『道明寺、動物好きになったのね!格好いい♡』……なんか、これって良くね?
『あぁ、人間と一緒でカメの産卵も神秘的だったぜ?』……つくしに自慢してやろっ!

…………人間の産卵なんか見たことねぇけど。いや、出産か?どっちでもいいか!



車から見えたデカいカメがゆっくり砂を掻き分けて、草が生えてる近くまで行くと前肢で穴を掘り始めた。

「西田……あいつは何をしてるんだ?」
「まずは自分の身体ぐらいの穴を掘るのですよ。
それからまだ下の方に卵を産むための穴を後肢で掘っていきます。
深さは全部で60センチぐらいになるそうですよ」

「……まだ終わらねぇのか?」
「司様……まだまだです。
先ほど掘り始めたのでこれから1時間ぐらいでしょうか?」


俺達が見ているにも関わらず懸命に穴を掘る姿に何故か感動した……。
よく判んねぇけど感動した。

そして今度は後ろ向きになって穴を掘り続け、そのうちカメが身体をそこに沈めた。

「西田……おい!こいつ、泣いてるぞ?!い、痛いのか?」
「はい。カメは産卵時に泣くと言われておりますが、実は身体の中の塩分を出してるんです。
痛いから泣いてるわけではないと思いますが……」

「そうなのか……」
「はい。生き物の不思議でございますね」


どうして俺まで息を止めてしまうのか……
西田とジッとその光景を見ていたら、やがて這い上がって今度は砂を掛け始めた。

「……終わったのか?」
「はい。終わったようです。ご苦労様でした、ウミガメさん」

「……万ちゃん、だな」
「は?万ちゃん……ですか?」

「亀は万年って言うからな。あいつは道明寺 万だ!」
「…………す、素敵な名前ですね」


何やら誇らしげな万ちゃんは疲れ切った様子で海に戻って行った。
西田が言うには産まれてくるのは約2ヶ月先……俺はその姿も見たくなった。



**



「テント……しかし、司様。
こう言ってはなんですが、つくし様がお一人で来られるとは思えません。
漏れなく類様がついて来られると思うのですが?」

「……チッ!そうだな。あいつはつくしから離れねぇからな」
「ご夫婦ですから……」

「何処までも邪魔なヤツめ!」
「……ご、ご夫婦ですから邪魔なのはむしろ……」

「何か言ったか?」
「なんでもございません」


仕方ねぇ……類にも見せてやるか。




***花沢城***



「類様……何やら道明寺様から招待状が届いておりますが?」
「招待状?なんの?」

「さぁ?『誕生を祝う会』……と書いてありますが?」
「えっ!道明寺、赤ちゃん産んだの?!」

「つくし……あいつには産めないから」


また、何を考えてるんだろう。てか、誰の誕生?
司からの招待状を開いて見たら……場所が道明寺海岸の南側テント?
そんな所に花沢国国王夫妻をご招待?!

馬鹿じゃないの?!!


「何だかよく判らないけど、行ってみようよ、類!」
「え……行くの?」

「だって最近美作城にも西門城にも行ったもん!道明寺城にも行ってみたいわ♡」
「……いや、海岸だよ?」


………はっ!まさかのまさかだけど、つくしの水着姿を拝みたいとか?
九月だよ?……いや、司の所はまだ暑いし、

『つくし、お前本当に白いな♪』
『いゃん、道明寺。どこ触ってんのよ♪』

『いいじゃねぇか♪』
『もうっ、ばかぁ~』

冗談じゃないぞっ!水着とか水着とかっ!
触るとか……無しだしっ!
絶対、ダメだからっ!!


「類ぃ~、聞いてる?」
「………………」

「類ってばっ!」
「……ぁ……」

「もう、聞いてる?ここ、ほら時間と注意が書いてあるわ」
「あ、あ、うん」

「夜は、少し冷えるかもしれないから羽織るものも忘れない様に、ですって♪」
「……ん?冷える?」

「海岸のテントで誕生を祝う会って、何かしら?」
「さぁ~?」


**


『誕生を祝う会』当日。
約束の時間に合わせて、お昼過ぎに花沢を出発。
何時もの様に 田村と桃、菊、珀、ハル、
三人と四匹の道中だ。

招待時間がゆっくりだから、ぼっち目覚めは回避できたが、

…………何?そのおやつの量……

遠足じゃないんだからっ!って何度言っても聞きゃあしない。
終いには、「途中でお腹が空いたら、どうしよう……」なんて、真剣に悩んでたっけ。

司が指定した海岸の南側テントに着いたのは、真上にあった太陽が大分傾いた頃だ。
砂浜なんてめったに来た事のない四匹は、砂だらけになって、駆け回っている。


「おぉ、来たかっ!」
「道明寺、お招きありがとう♪」

「……で?何の誕生を祝う会なのさ、これじゃ判んないよ…」
「ん?あれ?書くの忘れたか?…亀だよウミガメ」

「「……ウミガメ?……」」


言われて砂浜を見れば、とある一画にロープが張ってあり、そこに、温度計を刺して西田さんがソワソワしている。


「司様、既に孵化は始まってる思いますので砂浜の表面温度が下がれば出て来るかと……」
「おぉ!そうかっ!いよいよだな」


詳しく聞いてみると、2ヶ月程前の偶然の出逢いを話してくれた。


「……で、そろそろって事?」
「ウミガメの赤ちゃんが出てくるの?」

「本当に今夜なの?」
「間違いねぇ、西田が観察日誌を付けてるからな♪なんと言ってもカメちゃんの飼い主と、俺様の勘だ」

「「……………………」」

「まぁ、お茶して食事もして気長に待ってようぜ♪」


テント内のテーブルを挟んで、一休み。
その間も、司なりに色々と調べたり考えたりした事を話してくれた。

ウミガメは、砂浜に産み付けられた卵が孵化して海に帰って行く事。
卵を産みに戻って来るのは、勿論 メスだが、オスは二度と砂浜に戻らない事。
産まれた子亀の生存率は極めて低く、大人になるのは1000匹中 一匹位だという事。

司の話を、笑いながら、時には涙ぐみながら聞いているつくしの横顔が綺麗だった。

気が付けば、太陽は沈み少し気温が下がって来たみたいだ。


「満潮のウチに出て来ると良いんだがな」
「………そうだね、少しでも海に近い方が良いわよね」


テーブルの上には、キャンドルが二つのみ。
子亀が出て来たら、直ぐに消せるように…、
と言う事だ。

夜、地上に出て来た子亀達は、明るい方へ進むのだそうだ。
夜は地上より、海の方が明るいのだと言う。


「……なんか……司が大人に見えて来る…」
「そうよねっ!あたしも思ったっ!」

「ちっ、失礼な奴だな。俺は大分前から大人だっ!」


「司様っ!どうやら始まったみたいですっ!!」


田村さんの声にキャンドルの灯りを消して、つくしが転ばないように手を取って外に出た。そんな俺を横目で見て、ふんって言いながら司も外に出てくる。

って…なんかおかしくない?
俺の方が『ふんっ!』なんだけど?


「あっ……あっ……類っ 見て見て!!
なんか…砂がもこもこ動いてる~!」


つくしはいつも通りの反応を示してじっとそこを見てて、司はそんなつくしを鼻の下を伸ばして見てる。もちろん間に割り込んで邪魔したけどさ。

「………あっ…あっ!出て来たよ!ほらっ、あそこっ!」
「すごいね」
「やっとだな」


一匹目が出て来たらその後はわらわらと砂から這い出して来てて、気付けば海に向かうカメの赤ちゃん達で砂浜はいっぱいになってた。


「こんなの初めて見た……」
「ほんとだね」

「すげーだろ!つくしは絶対に好きだと思ったんだ♪」

「道明寺、ありがとね♪♪」

「ふっ。これで終わりじゃねーぞ!
こいつらがデカくなったらここに戻ってきて、竜宮城に連れてってくれるんだからな♪」

「へっ?……竜宮城……?」
「…………」


象の次は亀?
……司ってほんとにバカなの?


「……司…これって助けた事になるの?……いや 百歩譲って助けた事になるとして………この亀が乗れるくらい大きくなるのにどれくらいかかるか知ってる?」
「はっ そんなの知るか!
この俺様に見守られて海に帰ってくんだ!特別な亀に決まってんだろっ」

「………」

「……司………ほんとにバカだね…」
「はあっ?類っ てめーっ!」

「道明寺!うるさいってば!」
「つくしは俺様の味方だろ?!」
「そんなわけないじゃん。やっぱりバカ?」

「💢💢💢」


こんな神秘的な光景を見ながらこんな話……?
でもまあ俺達らしいのかな?


その後もこの日最後の亀が海に帰るまでをじっと見守ってた。



その日の別れ際。


「道明寺、今日は招待ありがとね♪」
「おぅ。今度は竜宮城だな♪」
「…………」


竜宮城は……無理だろうけど、立派に成長して元気な姿がまた見れるといいな♪





おしまい




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皆様、こんにちは~!
今日は司君でウミガメさんです♡海洋生物第二弾!ですね。

お話しの中には書きませんでしたが

S「いつか行けたらいいわねぇ、竜宮城」
P「片道1億だよ、司」

G「はっ?余裕だろ!つくしの分も出してやるぜ♪」

てな会話もありました(笑)
いやいや、司君・・・竜宮城には行けないからさ・・・。

そしてS様は必死にお調べになるのですが

「ウミガメの甲羅って1年で2㎝しか大きくならないんですってよ」的発言が・・・。

なかなか竜宮城には行けないわね・・・(笑)
万ちゃんが産んだ赤ちゃんが竜宮城に連れて行ってくれる(甲羅が1メートル)前に全員お爺さんとお婆さんになってるね~って盛り上がりました。


あっ!そうそう、念の為(笑)
本文中に司君が「なんと言ってもカメちゃんの飼い主」って言ってるカメちゃんはカメレオンです♡
万ちゃんの事ではありませんからねぇ~♡


それでは本日のお遊びコーナー!

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なんかちょっと切ないんだけど(笑)自力でオトナになって下さい💦

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私がどんよりしてる時に「これでも見て浮上して」ってS様が作ってくれました♡
浮上するのも花沢城で・・・(笑)うん、嬉しかったです。


それではまた来週お会いしましょう~!!
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Comments 6

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2019/09/03 (Tue) 18:47 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

でしょ?こう言う発想が似合うのは司君ですもの!
他の人だと「は?」って思うけど、司君だと微笑ましくなるんですよね!

うんうん、こう言う司君は好きです❤
そのうち本当に竜宮城に行く計画を立てそうで怖いけど・・・。

その時はまず、一人で行ってもらいましょう。生還を祈ります・・・。

2019/09/03 (Tue) 20:00 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/03 (Tue) 20:16 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは!

おおっ!感動して下さったんですか?(笑)
いやいや、嬉しいですねぇ~♡

うんうん、S様も「泣ける」って言われてました。
調べたら結構生存率が低いんですよね、ウミガメって。

あの大きな身体になるまで天敵から身を守れるのはホントに極僅かだそうです。
自然界の厳しさですよね・・・。

って、こんな巫山戯た話を書いていますが、途中はかなり真面目にやってるんですよ💦


花沢城にやってきた野生の鶴が千ちゃんなので、やはりここは・・・「万ちゃん」でしょう★!

来週はあきら君です。お楽しみに~!

2019/09/03 (Tue) 23:47 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/05 (Thu) 11:51 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

キュンとした女様、こんばんは。

あら・・・意外と皆様感動したのかしら?おかしいわ・・・花沢城なのに(笑)

でもこの司君、可愛いでしょ?
カメに乗って竜宮城に行くんですよ~♡カメに乗って・・・ね。


類君の○○○の話だけど、空さんがね

「準備出来てます。いつでも来い!しっかり支える!」

だそうです。

・・・・・・どんな妖精やねん!(笑)

2019/09/05 (Thu) 22:16 | EDIT | REPLY |   

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