FC2ブログ

plumeria

plumeria


2019BD_04_plumeria_01.jpg



第4話




「寝てる場合じゃない、起きろ!今度は西門に向かえ!」
「はっ、はいーっ!!」

大河原邸のガレージでシートを倒して寛いでいた運転手は慌ててハンドルを握り締め、今度は西門に…!
俺の形相がそこまで恐ろしかったのか、こいつは既に顔に血の気がない。でも、そんなの構っていられなくてここでも大声で出したのは「とにかく急げ!!」のひと言。
危うく解を大河原に置き忘れる所だった。

「ここからだと西門まで何分?!」
「が、頑張れば30分ぐらいで到着するのではないかと!」

「そんなに掛かる?!20分で行けるよな!」
「…………!!」


西門に着いた時、運転手はもうハンドルに伏せて肩で息してた。
解は「大丈夫ですか?少し待っててくださいね?」なんて、どっから持ってきたのか栄養ドリンクなんて渡してる…

って、そんな事どーでもいいって!

大急ぎでドデカい門をくぐり中に入ると、玄関前では西門の使用人頭、志乃さんが箒を持って立っていた。今日も着物姿で柔やかにしてるけど、この人が掃除なんてするの?って一瞬考えた。

いや、だからこんな事もどーでもいいって!
その時に後ろでザザッ、ガシャ、バタッ!!と音がしたから振り向いたら、解が玉砂利に躓いて顔面から転けてた。

何やってんの、こいつ…!


「あら、いらっしゃいませ、花沢様」
「志乃さん、牧野来てるよね?」

「は?牧野さん……いえ、牧野さんは知りませんけど?」
「…じゃあ総二郎は?」

「総二郎様はただいま奥の茶室で後援会の方にお茶を点てて居られます。申し訳ございませんがお呼びすることは出来かねますが?」
「そこを何とか出来ない?急いでるんだけど!」

「そう仰られても……ちょっとお待ち下さいませね」

「い、急いでるんだけど!」ってもう1回叫んだ俺の声なんて聞こえてないみたい。
どうして西門に来るとこうも調子が狂うかな…この家、時間の早さが世間とそれとは違うんじゃないの?って思う緩やかさなんだけど!

その時にチラッと時計を確認する解。

「どうかした?気になることでもある?」
「いえ、何もございませんっ!時間なんて全然気になりませんから!」

気になってるみたいに答えるの止めてよね……余計イライラする!


そのうち志乃さんが戻ってきて、またもやニッコリ笑った。

「花沢様、それではこちらにどうぞ。総二郎様は手が離せないのでお茶室で『頑張ってくれ』との伝言でしたわ」

「はっ?!茶室で頑張れ?何それ」
「さぁ?私には判りませんけど、こちらですわ」

志乃さんについて行って通されたのは総二郎がいつも使ってる茶室。入ってみたけどそこには何にも変わったものはなかった。畳にも炉にも茶棚にも壁にも掛け軸にも。


「牧野?何処に居るの?…まーきーのーっ!」
「花沢様、どう考えてもこの六畳間に人は居ないような気がしますが……」

「判ってるよ、そんな事!」
「……失礼しました」


「それではどうぞお座りくださいませ」
「はっ?!」

「総二郎様に言われましたの。お二人にお茶を点てるようにと。ですからお座りくださいませ。私の点前で申し訳ございませんが心を込めて点てさせていただきますね。あなた様も花沢様のお隣にどうぞ」

「は?私もですか?はいはい…では」
「待って、志乃さん、あのさ……」

「花沢様、ここは茶室です。心穏やかにお願い致します。まずは落ち着いて座りましょう?」

こんな時にお茶?!しかも総二郎の指示で?
ハッと隣を見たら解が大人しく座って差し出された桜餅食べてる…何考えてんだっ!って睨んだけど「なかなか美味しいですよ」とニッコリされた。

こいつ……さっきプレミアム信玄餅食べなかったっけ?

「これって有名な『秋色さくら餅』ですよね?蕾をイメージしたって言う?」
「はい。そうですわ。そのお店の娘さんが『お秋ちゃん』って呼ばれていたので創業者の方が秋の色を加えたんだそうですの。形も変わってますでしょ?」

「成る程~!納得です!」

いや…いいから。
『小春ちゃん』だろうが『千夏ちゃん』だろうが『冬美ちゃん』だろうが桜餅の話はいいから!
解も自分の役目、忘れてないか?

志乃さんは何にも知らないから釜で湯を沸かしてるけど、それ、待たなきゃいけないの?
ポットのお湯でも全然構わないんだけどっ?!マジ、イライラするっ…!

膝の上で指がとんとんとんとん……


「さぁ、どうぞ」

「ありがとうございます。うわっ!本格的なお抹茶ですねぇ!」
「ほほほ、ここは西門でございますから」

俺の前には茶碗に入った深緑色の液体…このままだと飲み難いんだけど。総二郎なら怒るかもしれないけど志乃さんなら入れてくれるのかな……とにかく早く飲まないと次にいけそうにないし!


「志乃さん、ミルク入れてもらっても良い?」
「ダメです。総二郎様から花沢様がミルク入りをご希望になった場合は断わるように、と…そう言われましたので」

チッ!総二郎のヤツ……お前の目の前で飲まないんだからそのぐらい許してくれてもいいのに!

「それではごゆっくりなさってくださいね」
「えっ?!志乃さん、ここでは何もないの?」

「何がでございますか?私はお茶をお出ししたら下がるように言われておりますのでこれで失礼します。何か判りませんが頑張って下さいませね」

そう言って志乃さんは茶室から出て行った。


おかしくないか?今までだともうこの辺で何かの暗号が……いや、待てよ?
やっぱりここが最終地点だから何もないって事もある。じゃ、こんな所に座ってないで牧野を捜さなきゃ!

暢気に茶なんて飲んでる解を放っといて俺も茶室から出ようとしたら、急にこいつが大きな声で叫んだ!

「あああーっ!」
「なにっ?!何だよ、急に!」

「茶碗の底から文字がっ!」
「……はっ?底から文字?」

飲み終わった解の茶碗を覗いて見ると……





何これ。7の文字が縦に二つ……?いや、もしかして7じゃなくて「へ・へ」……へへっ?馬鹿にしてんの?
ってか茶碗に油性マジックで落書きする茶道家って総二郎ぐらいじゃないの?


「もしかして花沢様の茶碗にもあるのでは?」
「はっ!まさか……解、飲んで!」

「えっ!私はもうタポタポです!大河原様のお屋敷でもたっぷり飲みましたから」
「くそっ……!」

仕方なく俺に出された抹茶を一気飲みしたら確かに文字が現れた。しかも今度は漢字の「上」?!
茶碗には正面がある…それを確かめたらやっぱり「上」だ。って事は、解の茶碗の向きからして数字の方が正解らしい。


上?上って何?
うえ、それともかみ?……上手、上座、上様、だからサマはもういいって!

「文字じゃなくて動作とか?」
「動作?上を向くとか?……上には何にも……あれ?解、何かある」

「何処ですか?あっ、あれは……天井の模様に似せてますけど封筒じゃないですか?封筒が貼り付けてあるようですね!」
「だよね?解!馬になって!」

「はいっ!いや、届かないでしょ」
「じゃあ肩車!俺を上げてっ!」

「無理です。花沢様がいくら細くても私の方が全体的にミニサイズですから私が上に登りましょうっ!」

……この俺の肩に乗るっての?いや、でも考えてる時間が惜しい!
仕方なく解を肩に跨がらせて立ち上がったら、意外と天井までが高くて手が届かない!こいつ…マジでミニサイズ!
最終手段で「肩の上に立っていいから!」って言うと「失礼します!」と言って本当に肩に足を乗せられた。

そうしたら今度は頭を天井にぶつけて落っこちた!


「何やってんのさ!取れなかったの?」
「いたたた……褒めて下さい、花沢様!落ちる瞬間に取りましたーっ!!」

解が握り締めてた封筒を取り上げたら中から出てきたのは1枚の絵葉書……勿論宛名なんて何も書かれてない。
書かれていたのは……

『CMHMAOCOEOETNE』、その下に『横向き』。

またアルファベット?!
まさかあきらの家の暗号と同じとかじゃないよね?今度は「坂」じゃなくて「横」?

俺の真横から覗き込んだ解がその文字を見て、言う前にさっとペンとメモを差し出した。
もう無言でそれを奪い取ってあきらのと同じように解いてみた。

アルファベットを逆さまに……「XNSNZ……」既に何のことだか判らない。


「でもこれ、何文字あるんですか?」
「え?文字数?…14だけど」

「14ですか……あっ!花沢様、これは何か意味があるのでは?」
「なに?」

そう言って解が見せたのはさっきの自分の茶碗……確かに7・7で足したら14だけど。

ん?じゃあこれを二つに分ける?
『CMHMAOC』と『OEOETNE』、こんな英単語なんてないし、その他の国の単語でも見た事ないけど?

並べ替えても思い付かないし、あぁーーっ!気が狂いそうだっ!


「花沢様、よく見てください。私の茶碗、7の文字が縦です!」
「でもこっちには横って書いてあるし!」

「でも7は縦なんですよっ!」
「……ってことは」

『CMHMAOC』
『OEOETNE』、……だから?縦にしたって単語は変わらないし。


「他に隠された文字とかないんですか?」
「隠された文字?そんなものは…」

まさか何か透かし模様があるとか?
俺が絵葉書を持ち上げたら、その裏面を見た解が「あっ、これ……!」

こいつが俺の手から葉書を取って、裏返して見せたのは絵葉書の写真。何処だか判らないけど線路が葉書の上下に向かって伸びてるだけの写真。
それをクルッと横向きにさせた。

「それが何?」
「いや、『横向き』って書いてあるからですよ。文字は縦なんだから、葉書が横向きでどうかなっと」


そんなのただ2本のレールに枕木が写ってるだけで……ん?
2本のレール?2本……このアルファベットが上下に2本。

それに枕木……2本を繋ぐ枕木?

上下を繋ぐ……繋ぐ?!もしかして!

『CMHMAOC』
『OEOETNE』をこのレールみたいに考えて上下を読んでいったらどうなる?

C・O・M・E・H・O・M・E・A・T・O・N・C・E……

コメホメ……じゃない!これはホントに英語か?
COME…Come?じゃあ、次は…HO…home…

『Come home at once』……はっ?すぐ家に帰れ?!



「解、すぐ自宅に戻るよ!」
「はいっ!花沢様!!」

茶碗も葉書も投げ出し、茶室を飛び出て磨き上げられた廊下を猛ダッシュして玄関へ!!


「あら、花沢様、もうお帰りですか?お気をつけて~」


再び箒を持ってニッコリ笑った志乃さんと、転げそうになりながら玉砂利の上を走る解がお互いにVサインしてたなんて知りもしないで車に向かって走った。





Rendez-vous demain...


↓おまけつきです♪
web拍手 by FC2
関連記事
Posted by

Comments 2

There are no comments yet.
キャロット  

Plumeria様❀お話ありがとうございました。
「秋色桜餅」 さすが西門、素敵なお菓子を出しますねぇ・・・
13歳で才能を開花した、女流俳人の秋色女「お秋ちゃん」(笑)
蕾という可愛らしい形に、愛情や歴史を感じますね。
「小春ちゃん」「子夏ちゃん」(笑)
なんかそんな名前の飴なかった?
あ、あれは「小梅ちゃん」か。
類くんトントンしながらイライラ
志乃さん、炭おこしからやってたら、類くん完全ブチ切れてましたね。
「志乃さん!俺の食べたい蕾は、その蕾じゃないっ!」・・・的な
大正解(おおなりかい)・・・オリキャラでありながら、
類誕という祝いの席で、
類の肩に立ち乗りした男、
しかも茶室で(爆笑)
Plumeria様・・・またも歴史が。
いくら解がミニサイズ(笑)だからってまさか乗るとは・・・
「ドリフかよ!」誰もがツッコまずにはいられない名場面でした。
そんな中でも、つくしへのヒントを知ろうとする必死な類くん・・・
素敵でした❤(涙)
私もミニサイズになって、類くんの肩に乗りたいです!(ピカチュウのように❤)
類の肩に乗れるモンスターは次の通り。
(聖チュウ、空チュウ、りおチュウ、桃チュウ、凪チュウ、キャロチュウ)
あっ!あんなところに、肩だけで満足できず、
類の膝に乗り怪しげなダンスをしているモンスターが!!
その名はPluチュウ。おそるべし。
総ちゃん、茶碗に油性マジック!
ダメでしょー!
私は「愛」って書いた茶碗でお願いします❤
そして類くん、今回の問題もかなり難しかったのに、
しっかり謎解き完了、お見事でした。
考えてる時の類くんって、無性にそそられますよね❤
枕木で結びつけるとは驚きでした。
私は、「ハメハメハ大王(ハワイ)のコメ〇(珈琲)に来い!」としか思いつきませんでした。
そして今回の作戦会議楽しかったですね。
司の呟きに、ツッコむ桜子
そこで無言になる司が可愛かった。
さあ明日はいよいよ類くんの誕生日。
サプライズはうまくいくかな?
続き楽しみにしてます。

2019/03/29 (Fri) 17:16 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
キャロット様

初めまして♥ご訪問&コメントありがとうございます。
秋色桜餅・・・素敵でしょう♡
えぇ、私も食べてみたいです~。桜餅好きなんです~♡
関西方面の「道明寺桜餅」にしようかと思ったんですが(笑)
司君に怒られそうだったので止めました💦
蕾・・・なんの事かしら。
私、童話専門ですから類君が何の蕾を食べたいのか判りません・・・今度、教えて下さいね!
あはは!茶室で肩乗りっ!
何処まで天井が高い茶室なんでしょうねぇ💦
本当は茶室って狭いはずですけどね💦そこは・・・ねぇ、西門家ですから許していただきたいと思います!
(出た!テキトー発言!!)
ドリフかぁ!懐かしいですねぇ!
類君が長助さんで・・・いかんいかん、想像してしまう。
ちょっとっ!!(笑)
チーム類メンバーをモンスターにするとはっ!(笑)
それに「あれ?私が居ない・・・」って思ったらっ!
膝の上でダンス?ダンスだけですか?・・・・・・・・・そこで何もしないのかしら。
もう少し上によじ登って・・・いかんいかん、童話専門だった💦
総ちゃんの油性マジック・・・私ならキャロットさんに「変態」って書いてあげますよ~♡
それでは明日のお話し、ついに類君が自宅に戻ります・・・どんな結末かしら?(笑)
最後まで楽しんでくださいね♥

2019/03/29 (Fri) 19:40 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply