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スピンオフ②『イチゴノキモチ』




「はぁーーっ… 疲れた。」

部屋に入るなり、類は脱力したようにベットに仰向けに寝転ぶ。つくしはその隣に後からちょこんと腰掛けた。

「フフッ、でもすっごく楽しかったなぁ。磯貝さんのお陰でケーキも我ながら上手く出来たし、それに久し振りに、みんなにも逢えたんだもの。」

先程までのパーティーを思い出しているのか、すっかり寛いで暢気に微笑むつくしの横顔を、類は寝転んだままじっと見上げた。

つくしはそう言うものの、今日の誕生日は、類にとっては朝から実に大変な1日だった。
でもそれも、こんなに幸せそうな彼女の笑顔を見れば、全てが報われるというもの…。

─確かに疲れたけど…
なんだかんだで今までで、1番忘れられない誕生日だったかも…


「ん? なぁに?類」
「ん。何でもない」

答えた類にも自然と笑みが浮かぶ。
だって… 今はこうして、つくしが隣にいるのだから。

─うん。
やっぱり牧野がいれば、俺は幸せ…

改めて喜びを噛み締めつつ、類はふと呟いた。

「それにしても、今日は彼奴らにすっかりやられたな。約1名は居なかったけど…」
「ん?あぁそっか!類は会ってないんだよね。」

その一言に、類の眉がピクリと動いた。


「フフッ、でもご心配なく! 道明寺も変わらず元気そうだったよ~? アイツもここに来れたら良かったのにね!」

「まきの」

「何?」

「…司と会ったの?」

「うん!あのケーキの苺、アレすっごく高級なやつだったでしょう!! 大きさも甘さも、流石は道明寺だよねぇ~。あっ、そういえば苺狩りの時にね…」

しかしそれは、類にとってみれば今初めて耳にする話題。おまけにこちらの気持ちを知ってか知らずか、つくしはさも楽しげに、類にとっては聞きたくもない苺狩りの様子を事細かに話し続ける。

やがて、

「あれ? る、類??」

不機嫌な類の背中に、つくしはようやく気がついた。

「えっともしかして… なんか、怒ってらっしゃる?」
「…別に。」

だが言葉とは裏腹に、向けられた背中には明らかにただならぬオーラが漂う。


─あっ! そっか、あたしが道明寺の話ばかりしてたから…

程なく思い当たれば、改めて自分の鈍感さにも反省しつつ、それでもどこか嬉しさを隠せない自分がいた。

─クスッ。類ってば、今更道明寺とあたしが何があるわけでもないのに…

でもそうとわかれば、挽回あるのみよね!

心を新たに、つくしは再び拗ねた背中に話しかけた。

「でも苺狩りの間はね、ずっと類の事ばっかり考えてたの。だから、すっごく楽しかったんだ…」

「…… 」

「摘んだ大きな苺はどんな風に可愛く飾ろうかな、とか。どんなケーキだったら、花沢類が1番、喜んでくれるかな、とか… 」

類の機嫌が直るようにと願いを込めて、つくし自身のありのままの素直な気持ちをひたすら話し続ける。すると少しずつ、類の纏う空気も柔らかくほどけていく気がした。

─これはあと、もう一息…

「あっ、そうだ! せっかくだから今もう一度、お誕生日のフーッってしない?」

「…なんで?」

やっと類の返事が返ってきたことに、つくしはこっそりと小さなガッツポーズを作りながら

「だってせっかくの類のお誕生日だし、おめでたい事は何度やっても良いじゃない! それにさっきはあの二人に先にロウソク消されちゃったでしょ? うんっ!今なら二人だけだし…」

「…する。」

─おぉ、やった! ご機嫌回復っ♪

ムクリと起き上がった類に笑いを堪えながらも、つくしは早速リビングから一切れのケーキを運んできた。


─ホントに… こういうとこ、意外と子どもっぽいんだから♪

まだ少しだけ拗ねたような類に、つくしは精一杯の笑顔を向けて

「良かった!実はこれだけはしっかり取っておいたんだよね~。」

1本だけロウソクが刺してある、一切れのケーキを差し出す。

~『Happybirthday rui』~

つくし手作りのチョコプレートが純白の生クリームのど真ん中に添えられ、てっぺんの蜜がけされた真っ赤な一粒の苺は、今も艶々と光り輝いていた。

「大きいケーキも良いけど、これだけでも美味しそうでしょ? そうだ!せっかくだから電気も消して、っと…」

ウキウキとした足取りで部屋のスイッチを押せば、不意に訪れた暗闇の中に、ロウソクの炎がゆらりと揺らめく。

「フフッ、なんか雰囲気出るね。」

その炎を消さぬよう注意深く…
つくしはケーキ皿を手にしたまま、類の隣にそっと腰掛ける。


「えー、それでは改めまして!…花沢類、21才のお誕生日、おめでとう!!」

そのままいつロウソクを吹き消すのかと…つくしは何気なく隣の類を見上げ、思わず息をのんだ。


─わ… 綺麗…

浮かび上がる端正な横顔は、暗闇の中ほんのりとオレンジ色に照らされて…それがいつもの類とはまた違う趣で、思わずうっとりと見惚れる程の美しさを醸し出していた。
加えてつくしの大好きなビー玉の瞳は、揺れる光を映しながら、いつもよりキラキラとどこか神秘的な輝きをたたえている。


トクン…

─あ、あれ…。なんか、これって…

つくしは不意に頬の火照りを感じた。


「…何?」
「へっ!? い、いやその…」

─目、合っちゃった…///

慌てて類から視線を反らし、動揺を覚られぬよう再びロウソクを見ることに意識を集中する。

だが、時既に遅し────

この空間に今、類と“二人きり”なのだということを…つくしは改めて意識してしまっている自分に気づく。

─ていうかこれってそもそも…
実はかなり、照れくさい状況なんじゃ…

彼氏の誕生日の夜、暗闇にケーキとロウソクというシチュエーション。
更によりにもよって、今は二人して、類のベットの上に並んで腰掛けている。

─う、うわっ、どうしよう…



「プッ! あんた顔真っ赤だよ? なんか、この苺みたい。」
「!! だ、だって…あっ!」

慌てたつくしが手を滑らせる寸前、類の大きな手がスマートに支えた。

「っ!!」
「大丈夫?」

…ゴクリッ…

思いがけず類にもたれ掛かるような状態で、目と目が合う。


─…って、コレじゃあたしだけ…
変に意識してるの、バレちゃうじゃん…!!

だがいつの間にか熱を帯びた類の瞳に、つくしは釘付けになる。

─どうしよう…
今だってうっかりすると、このままこの瞳の奥に吸い込まれてしまいそうな…



「ね、まきの」
「な、何…?」

「クスッ、ほら… やっぱり今のあんた、この苺にそっくり…」

つくしの動揺を知ってか知らずか、当の類はといえば優雅な笑みを浮かべたまま…長い指先が、つくしの頬にそっと触れる。


「ひゃっ!?」

「ほら、 ここ赤いよ…?」


漂う甘い雰囲気にぼんやりと囚われたまま、類の言葉がまたつくしの耳を擽る。


「…ねぇ。もし牧野がこの苺だったら、なんて言うかな?」

「えっ!? イチゴっ? そ、そりゃ…」


─まさか、これも暗号か何かなのっ?
てか、それよりこの雰囲気と色気は…
だ、ダメだ… 頭が… ぐるぐる回りそう…

相変わらず煩い心臓の音と共に、極度の緊張から、つくしは自分が一体何を口走ったのかもわからなかった。


「そ、そりゃ苺なら、美味しく食べてね!とか…」


その瞬間、類の瞳が大きく丸くなる。


─…ん?

あれ… あたしってば、今何を……?


だが、

「そう… 凄く、美味しそう」

束の間の驚きから、類はすぐにつくしに向け極上の微笑みを浮かべた。


─…?
花沢類も、少し顔、赤い…??

だがつくしが確かめる間もなく、目の前のロウソクの炎は、突然フッと吹き消された。


「えっ?」

訪れた暗闇で、類によりケーキの皿は手から静かに奪われ、変わりにコトリとどこかに置かれる音がした。


─あれ? け、ケーキ食べるんじゃ…


「ホントだね…」

今度は急に耳元で囁かれて、つくしの背筋はゾクリと震える。

─ち、近いっ…


「凄く甘くて… 美味しそうだ」
「へ…///」

─お…美味しそう、って…
そ、それ… まさかあたしのことっ!?

流石のつくしもここまでくれば───
今やこの状況が一体何を意味するのか、少しは察しているつもりだ。
背中に全身で類の気配を感じながらも、相変わらず心臓は煩いくらいに鳴り止まない。
だが今は少し、心の何処かでこの先を期待している自分がいるのも確かで…。
加えてほのかに部屋に香る、甘酸っぱい苺の香りが鼻先を擽る。


「なんか、い、いい匂いがするね。」
「ん… そうだね。」

その時、不意に類の溜め息が聞こえた。


「な、何?」

「いや、なんかさ。改めて… あんたが無事で、本当に良かったなって…」


─類…

瞬間、つくしの中にとめどない感情が湧き出す。


─そうだった…
この人は、いつもいつも…

先ほどまでの緊張が、嘘のようにほどけてゆく。
ふわりと背中から優しく包まれた腕の温もり、そこに類の優しさを感じながら。

さっきのサプライズパーティーでは、友人達から口々に面白おかしく語られた、つくしの知らない本日の”類の活躍”。それは端から聞く分には、とても楽しそうなエピソードに聞こえたけれど───

でも一方で、類はずっと…今日1日、自分の事をひたすらに心配し続けていてくれていたのだということに、つくしは今、ようやく思い当たったのだ。



─あぁ、そっか…

「誕生日なのにね」

一方、知らぬとはいえ1日かけてのほほんとケーキ作りをしていた自分。
それなのに類は、そんな自分でさえも一切責めることなく、いつものように優しく受け止めてくれている。


「ハハッ、どうしよ… 胸の奥、苦しいかも…」
「えっ… 何? 急にどうしたの? 牧野」

─ほら。
今だって、また私の心配ばかりして…

溢れた気持ちは、まだ明らかに説明足らずなのに。また自分ばかりを気遣い、おろおろと戸惑う類が、やはり愛しくて、つくしは思いたって身体の向きを変え、類と向き合う。


「まきの?」

─あぁ、どうしよう。
この気持ち、どうやって今類に伝えようか…


「あのね、類。」
「大丈夫? どこか具合悪い?」

「ううん違うの。…ただあたしはやっぱり、類が大好きだな、って…」

こうして改めて言葉にするのは、やはり恥ずかしい。
それでも、どうしても今、伝えたかったのだから。

─変に、思われるかな…


不安は一瞬。
すぐに杞憂に終わる。


「ハハッ、そっか、なら俺も」

すぐに重ねられた言葉と共にギュッと全身を抱き締められれば、身体の大きな類の腕の中に、小さなつくしは全部おさまってしまう。
つくしの頬に、柔らかな類の髪がふわりと触れる。


「俺も牧野が大好き… 好きだよ。」
「うん…。」


─うわ… あたし今、幸せだ…

身体の奥がキュンとして熱くなる。
大好きなこの人と同じだけ、大切な想いを分かち合う喜び。

どちらともなくコツンと額を合わせれば、互いにまだ照れながらも、もうすっかり暗闇に慣れた目で見つめ合い、自然と微笑み合う二人。

そのままつくしから、思いきって類の唇に触れるだけのキスをする。


「えっ…」

途端にいつものポーカーフェイスが崩れ、それが堪らなく愛しい。

「フフッ、たまには良いよね? お誕生日、なんだし…///」

更に驚いた類の顔は、きっと一生忘れないだろう。
勿論、つくしに余裕のあったのはそこまで───
そこから先は全て、類に翻弄されっぱなしだったけれど。

やがて訪れた初めての二人の夜は、どこかほんのりと甘い、苺の香りがした。





fin





À la prochaine. Aujourd'hui 21:00


↓おまけつきです♪
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Posted by

Comments 2

There are no comments yet.
キャロット  

凪子様♡ お話ありがとうございました。
やっと二人だけの甘いシーンが読めて
とってもしあわせでした❤
司の話を聞いて、拗ねちゃった類くんでしたが、
つくしの言葉で、少しずつ機嫌をよくしていく様子が可愛かった。
暗闇の中、オレンジ色に光る類くんの横顔
揺れる光をたたえ、神秘的な瞳の類くん・・・素敵❤
うおーーっ!・・・息のかかる距離で見たいであります!
そして「もし牧野がこの苺だったらなんて言うかな?」問答。
つくしに「美味しく食べて?」と言わせた類くん、、お見事でした。
改めて気持ちを確かめ合ってた二人
類くん、いちばん欲しかったものがもらえてよかったね❤
そしてその後の小甘話
桃伽奈様♡ありがとうございました。
苺を食べる甘いシーン・・・
苺連続5個投入の濃厚ストロベリーキス
美味しゅうございました❤
あれ?・・・でもちょい短くね?(笑)
え?まだスピンオフがあるから待て?
了解。
未来のつくしが抱いているものは
類くんとのベビちゃんかしら?
お話ありがとうございました♡

2019/03/31 (Sun) 16:25 | EDIT | REPLY |   
凪子♪  
キャロット様♪

初めまして&
コメントどうもありがとうございます。
やっと来た(?笑)甘い展開、お楽しみ頂けたでしょうか。
暖かな蝋燭の炎に照らされた、類の美しい瞳… うふ。お気に召して頂き何よりです。
が、凪子は絶対に緊張し過ぎて振り向けない自信がありますが(←ヘタレ笑)
そうそう、長いことみんなにいいように振り回されてきたので、寝室に二人きりなら、策士類が逃すわけありませんね。
美しい仮面の下には、きっともう我慢のきかない狼が…(笑)
そしてこの後は、キャロット様のお望みの、とびきり甘い苺ジャム級のお話が…❤
……出てくるかな?(笑)
どうか楽しみに、お待ち下さいね♪
お付き合い頂き、どうもありがとうございました♪

2019/03/31 (Sun) 17:21 | EDIT | REPLY |   

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