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plumeria

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総が突然来てくれた次の日のお昼、今度は小夜さんが研究所に来てくれた。
おば様が焼いたケーキを持ってきてくれたっていう理由だったけど、もしかしたら小夜さんの心配が酷いもんだから夢子おば様がそうしたのかもしれない。

「社長のお使いの人が来たから田中さんは暫く会議室に居るからね」、なんて所長がみんなに言って、私達2人はお弁当をもって小さな会議室に入った。
「話が終わるまでどうぞ」なんて言われたけど、お給料もらってるんだからそんな事も出来ない。

お昼休憩の間だけって事で小夜さんとお喋りすることになった。
でも小夜さんはウズウズしてて何も言わない・・・逆に顔を真っ赤にさせて美作から持って来たお弁当を口に運んでた。


「やだなぁ、どうして黙ってるの?」
「えっ!いや、別になんでも・・・元気してるのかなって思って」

「くすっ、元気してるけど淋しいよ。そんなには会えないしね・・・」
「でも、昨日も・・・でしょ?」

「・・・え、知ってるの?」
「だって西門様、あきら様をアリバイ工作に使うからさ・・・私達にも一応連絡があるのよね」

あぁ、そう言う事?って今度は私が真っ赤になる。
「それにさ・・・赤くなってるよ」って小夜さんが小さな声で言ったから、慌てて首元を押さえたら「冗談だよ!」って今度は大きな声で笑われた!

「あっ!酷い、小夜さん!もうっ・・・驚くじゃないの」
「あははっ、仲良くしてるんだねぇ?すぐに手で押さえるって事は自分でもそう思ったんでしょ?」

「知らないっ!だって総、止めてって言ってもすぐに無茶するんだもん!」
「総?名前で呼んでるの?」

「あっ!うん・・・お誕生日からね、そうしてるの」


「良かったね」って、やっと普通に笑ってくれた。
それからは昔みたいにゲラゲラ笑いながら話をした。スーパーの特売日に1度も行けてないこと、行っても売り切れてて何も買えないとか、そこのイケメン店員さんの話とか、魚屋のおじさんが渋いとか。
別荘近くに凄く可愛い女の子が住んでるけど、その彼氏が驚くほど野獣みたいな顔しててアニメみたいだとか、美作に最近入ってきた若い使用人の言葉が通じないとか。

「だってね?私が教えたのに判んなかったら『メグちゃん、ヤバみ~』って言ったのよ?有り得ないでしょ!『ヤバみって何よ』って聞いたら馬鹿にした目で見られたし!庭師のお爺ちゃんと話してる時も「あ~ね」とか「それな!」とか言うの!酷い時には『判りました』って言わずに『りょ!』で終わるのよ?」

「あはは!本当に最近の子だねぇ~!でも、面接して入れてるんでしょ?見抜けなかったのかな?」

「それがさぁ、奥様達の前だと全然違うの・・・変わり身早いのよ・・・」
「それはご苦労様!先輩、ちゃんと指導しなきゃだね!でも、仁美さんに言えば注意してくれるんじゃないの?」

「・・・あぁ、若奥様ね・・・」


急に小夜さんの声が小さくなった。
それに食べかけのおかずもお弁当箱に戻して・・・それから深い溜息をついた。

「どうかしたの?」
「うん・・・それがね、若奥様の様子がおかしいのよ」


その言葉にはドキッとした。
仁美さんの様子がおかしい・・・?何が、どう言う風にだろうと思ったけど聞けなくて、私の箸も止まってしまった。

もしかしたら双子の事?それとも美作さんの事・・・?まさか、総に再会したから私が双子を引き取ると思ってるんだろうか・・・それとも大きくなってきて自分たちに似ていない双子を見るのが嫌になったとか?

いや、仁美さんは双子を大事にしてくれている・・・このまま平和に暮らしたいって思ってるはず。
私も総との事はどうなるか判らないけど、双子にはこのまま幸せに暮らして欲しいと思ってる・・・仁美さんに不安を抱かせる態度は取っていないと思うんだけど。


「紫音と花音が関係してるのかしら・・・」
「ううん、そうじゃないと思う。仁美様のご性格なのかもだけど、思い込みが激しいんじゃないかしら。私が見る限りじゃ、あきら様も若奥様を大事にしていらっしゃるけど、若奥様の方が何かに怯えてるのよね」

「美作さん、何か変わった?」
「ううん、あきら様も昔と同じよ。でも、確かに西門さんとつくしちゃんが再会してからはあきら様も何故か静かなのよね。あまりお屋敷でも喋ったりしないかなぁ・・・。それによく知らないけど西門様と何かを調べてるんじゃないの?最近もそんな感じのお婆ちゃんが美作に来たのよ。あきら様、会社を早退してまでその人の話を聞いてたけど、ほんの少し聞こえたの・・・西門様のお名前がね」

「お婆ちゃん?そうなんだ・・・」


多分、それは紫さんについての調査だ。
紫さんが何故家元夫人の地位や西門家に拘るのかを調べていて、それには美作さんの力を借りるって言ってたから。
でも、それについては総に任せてあるから、私からは聞かない事にしていた。聞けばその後が知りたくなる・・・それが不安になって1人で寝られなくなる。

何かがあればちゃんと私には報告してくれると信じているから何も聞いたことはなかった。


「それにさ、最近お屋敷の周りをウロウロする人が居るみたいで、若奥様はそれが凄く怖いみたいなの」
「ウロウロする人?」

「うん・・・何度か庭を警備員が走ったし、若奥様がお子様を連れて公園に行くのも警護がついてるわ。あぁ、念の為よ?あきら様がそうしろって指示してるから」

「そうなんだ・・・少し怖いね」
「うん。でも今までも何度かあるわ。こんなに長いのは初めてだけど」

「そんなに前から?」
「年末からかな?お正月にもご家族で旅行中なのに来てたみたい。なんだろうね?不気味だわ~」


それを聞いて何となく私も不安になった。
もちろん仁美さんもだけど紫音と花音に何も起きませんように・・・そう願った。

随分前に聞いたことがある・・・道明寺にしても花沢類にしても、あれだけ護身術を身に付けてるのは誘拐の危険から自分の身を守るためでもあるって。
常にそう言う危険とは背中合わせだって4人共が言っていた。

でも紫音と花音はまだ3歳半、自分の身を守るなんて事は出来ない。
不審人物がその目的で彷徨いてるなんて決まってるわけじゃないけど、心の中がザワザワと五月蠅くなって落ち着かなかった。


「あっ!ごめんね、つくしちゃん。変な話しちゃって」
「・・・ううん、大丈夫。小夜さん、双子の事宜しくね。あんまり行けないからまた様子を教えてね」

「うん!今度電話するね」
「ありがとう・・・」


お昼休憩、5分だけ超過しちゃった。
だから急いで午後の仕事をしに温室に走って行った。

胸の中に残る不安を消したくて、全速力で走った。




*****************


<side仁美>

あきらさんも仕事に行って、子供達は使用人が庭で遊ばせてくれている。
部屋で1人きりになった私の手には例のメモがあった。

・・・今でも掛けようかどうしようかと悩んでる。


でも、あきらさんの事も、子供の事も知っている人物・・・このまま無視する訳にはいかない。警備の人に相談すればいいのだろうけど、そうしたら真実は聞けない・・・。

何度も部屋の中を歩き回って、漸くスマホを握り締めた。
そして書かれてる番号を押した。


コールは数回・・・無言で誰かが電話に出た。


「もしもし・・・」
『お電話下さったんですね。良かった・・・掛からないのかと思いましたよ』

「主人が居る時には掛けられないわ・・・それで、どう言うお話しですの?」
『電話なんかで話しませんよ。そちらの様子が判らないんだから誰かに聞かれてるかもしれないしね』

「誰も居ないわ。あまり変な事言うと私は動きませんよ?」
『別に構いませんが、ご主人のスキャンダルが世間に流れるだけです。それでもいいならこのまま切ったらいい』


あきらさんのスキャンダル?
それを聞いた時、頭にはつくしさんが浮かんだ。

頭を横に振りながらその妄想を打ち消し、また私はスマホを耳に押し当てた。


「判ったわ。何処に行けばいいんですか?」
『T街のビジネスホテル朝日の203号室に来てもらいましょうか。あなたのような人には抵抗あるでしょうが、俺はこのぐらいのホテルじゃないと泊まれないのでね』

「・・・名前は?そのぐらい教えてくれてもいいでしょう?」


『・・・吉本・・・と言います』





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