FC2ブログ

plumeria

plumeria

-
<side仁美>

つくしさんの居場所を教えるように、それが吉本の要求だった。

でも、それは言えない。
鎌倉につくしさんが居ることを知ってるのは美作の両親とあきらさんと私と小夜さん・・・この人には探しようもないだろうけど植物研究所の所長さんと、そして西門さんだけだ。
この中で誰が教えたかなんて調べられたら、1番始めに疑われるのは私のような気がした。

それにこの人がつくしさんをどうするつもりなのか判らない・・・ここまで探しに来るという事は愛情?それとも・・・まさか憎しみ?


「それは・・・」
「牧野つくしは美作には来ないのか?」

「え?えぇ・・・来ないわ。住所だって私には判らないわ。あきらさんが呼子で会ったって言う事は知ってるけど」


吉本はつくしさんが今でも美作に来ている事は知らないようだった。
じゃあどうして私を呼んだんだろう?お金でもなく、つくしさんの居場所を知らないとしたら・・・次に私に言う言葉は?

彼はベッドの縁に座り、私にもう少し中に入れと命じた。
「あんたに興味はないから」なんて、少しムッとする言葉も出されたけど今はそれどころじゃない。私の頭の中はパニックで真っ白・・・この人が何を言いたいのかがさっぱりだった。


「あの子達・・・可愛いよね」
「・・・え?あの子達?」

「あぁ、牧野つくしの産んだ子供だろ?よく似てるからすぐに判った」

「・・・・・・」

「あんたがそんな反応するのは判るよ。なんで俺が知ってるかって思ってるんだろう?」

「つくしさんが呼子に居た時には妊娠してたんだから子供が居ることはご存じでしょうけど、どうしてあの子達が彼女の子供だって言うの?似てるって言うのもたまたまじゃないんですか?」


その話にすぐに同意せずに言葉を濁したつもりだった。
でも紫音と花音が彼女に似てるのは誰が見ても判るぐらいだったから苦しい言い訳・・・そう思うけど、他にどう言えばいいのか判らなかった。

吉本はフッと嫌な笑顔を私に向けて、煙草を取り出してライターで火をつけた。
少しだけど無精髭なんて生やして服だってヨレヨレ・・・若いのに働いてないのかしら?と彼を蔑むような目で見てしまった。
そんな私の視線を感じたのか煙草の煙を私に向かって吐き出して、それに顔を背けたらクスクスとイヤらしい笑い声を出した。

気味が悪い・・・すぐにでもここから逃げなきゃ、そう思うのに足は床に吸い付くように動かなかった。


「だってさ・・・呼子での美作さんの態度を見てたら判るよ。牧野つくしの子供なら喜んで引き取りそうだったからさ。彼女の代わりに愛情注ぎたかったんじゃないの?」

「・・・え?どう言う意味ですか?」

「可哀想に・・・奥さんも知らないんだ。美作さん、唐津のホテルで牧野つくしと一緒に泊まってるんだよ?」


「・・・・・・あきらさんが?」

「そう。俺ね、それ確認したんだよね。それに彼女が住み込みで働いていた旅館・・・そこでも美作さんが無理言って特別室から彼女の部屋に移っていったのをさ」

「・・・嘘!」


あきらさんとつくしさんがホテルで一緒に過ごした?旅館のつくしさんの部屋に泊まった?あの・・・あきらさんが?
吉本の言葉に動揺して持っていた鞄を床に落としてしまった。

まさか2人が同じ部屋で夜を過ごしたなんて思わなかった。いや・・・でも、この人が言うだけかもしれない。私を騙すために嘘をついてるかもしれない。
だってあきらさんはそんな人じゃない・・・つくしさんを好きだったのは過去の話で今は違う。


そう思わないとあの家で暮らせない・・・確かに不安はあるけど今の暮らしを崩したくない!
落とした鞄を拾い上げて胸に抱きかかえ、吉本を睨みつけた。


「嘘だと思うなら電話してみたら?ホテルは流石に電話じゃ教えてくれないだろうけど、夢の屋って言う旅館だと喋ってくれるかもね。それにさ、牧野つくしがその旅館で倒れた時も抱きかかえて病院に連れてったのも旦那さん。そこで俺を追い出して2人っきりで病室に居たのもあんたの旦那さん」

「・・・・・・2人きり?」

「そう、自分の家族みたいに必死だったよ。仕事で来てるクセに役場に予定変更させて彼女に付き添ってたのもあんたの旦那さんの命令だ。病院で説明を聞いたのも、腹の中の子供の状態を聞いたのもあんたの旦那さん・・・それ、愛情がないと出来ないよね?」

「・・・そんな事までしたんですか?」

「そうだよ・・・俺が牧野つくしにプロポーズしていたのに美作さんが邪魔してくれたよ。それに病室で彼女が泣いたから慌てて入って行ったらあんたの旦那さん、牧野つくしを抱き締めてたよ」


「・・・抱き締めてた?」

「あぁ、凄い力で泣いてる彼女を抱き締めてた。その日の夜、何があったのかな・・・」

「・・・・・・やめて」

「だって妊娠してても、しようと思えば出来るんだろ?最後までいかなくたっていくらでも・・・」
「やめてって言ってるでしょう!!」


1番恐れていた言葉を聞かされた。
私の中で大事なものが音をたてて崩れていく・・・目の前が真っ暗になった。




*****************


<sideあきら>

その日は取引先との接待で遅くなり、屋敷に戻った時には子供達はもう寝ていた。

執事に聞けば仁美は夕方早くに戻って来て、子供達に約束した土産だと言ってケーキを買って帰ったらしい。変わった様子もなく、3人でケーキを食べて、夕食も少なめだったけどちゃんとダイニングには来ていたと。


「・・・そう言えば確かに若奥様がいつもお召しになってるような服ではなかったのかもしれません。お出掛けの時は被っていらっしゃらなかった帽子もお戻りの時にはありましたが、見たことのない物でしたね」

警備の人間だけじゃなく、執事も仁美の格好には違和感を感じたと言った。



すぐに自分たちの部屋に向かい仁美に今日の話を聞こうと思ったが、部屋の電気は点いていなかった。
僅かな灯りはベッド脇、ナイトテーブルの上のランプだけ・・・そのオレンジ色の光の下に彼女の寝姿があった。


「仁美・・・?もう寝たのか?」

ベッドに寝ている仁美に声を掛けたらモゾモゾと動き、気怠そうな顔を向けた。
驚いたのはそれが凄く妖しい美しさで、俺は一瞬息を飲んだ。

仁美がこんなに色香を纏って俺を見上げるなんて珍しい・・・滅多に見ない仁美の艶やかな表情に、自分が何を話したいのかさえ忘れそうだった。


「お帰りなさい、あきらさん・・・ごめんね、先に休んじゃった・・・」
「あぁ、構わないよ。随分遅くなったから・・・それに、今日出掛けたんだって?それで疲れたんじゃないのか?」

「・・・ん、そうかも知れない」
「何も言ってくれなかったから驚いたよ。友達とお茶だったんだって?いつの友達・・・」

俺が話し掛けてるのに急に伸びてきた仁美の腕・・・俺の首に巻き付けたかと思ったら縋るように抱きついてきた。


その行動にも驚いた。
彼女からなんて殆どなかったと思うのに、今日の仁美は凄く甘えてて大胆・・・つけている香りもいつもと違うのか、俺の鼻を擽って身体が熱を帯びてきた。


「どうしたんだ?友達と何かあったのか?」
「ううん、何もないわ。どうして?」

「いつもと違うから・・・この香りも初めて?今日買ってきたのか?」
「えぇ。ふふっ、こうするのはね・・・あきらさんが好きだから。それだけよ・・・」

「ははっ・・・それはどうも。その言葉、いつ聞いても嬉しいもんだな」
「ホント?嬉しい?」

「あぁ、仁美に嘘なんてつかないさ」


その日の夜の仁美は今までになく大胆で、俺の方が操られてるかのようだった。
月夜の中で浮かび上がる白い肌が腕の中で揺れ動くのを不思議な感覚で見ている俺・・・。


甘く切ない声で名前を呼ばれる度に、何故か不安の方が増していく・・・そんな気がした。





0271c05708ae2d141ec44240293e68f4_t.jpg
関連記事
Posted by