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朝食が終わると奥から1人の男性とさっきの女性が現れた。
そして私の両脇に立ち上から怖い顔で見下ろしてる・・・それに負けまいと、唇を噛み締めてアルフレッドさんを睨んだ。

「くすっ、本当に見た目と違って勇ましい方ですね。調査によるとあなたのご実家も会社経営されているとか?日本の地方都市で小さな会社を持ってるんですね。少し良くない評判も聞きましたが・・・」

「小さくて悪かったわね。でも今は真面目に頑張ってます。確かに不正を行った過去もあるわ・・・だから随分と業務縮小しなくちゃいけなかったんです。エバンスも同じようになりたいの?」

「ははっ!世界的企業のエバンスをあなたのご実家と並べるのは無理があるでしょう?それに、あなたの行動次第ではお父上と弟さんが泣きますよ?」

「・・・何ですって?!瀧野瀬にも手を出すって言うの?!」


ガタンと席を立ったら横に居た女性に肩を押さえられ、それを撥ね除けると反対側から男性に腕を掴まれた。
「離して!」と言うと1度は離してくれたけど、その手はすぐにでも私を押さえ込めるようにと構えられていた。

でもここで暴れちゃいけない・・・自分が1人じゃないって言い聞かせながら、また椅子に座った。


「ご主人が来たら冷静に話し合いましょう。何が1番得策なのか、彼なら優先順位は決まっていそうですけどね」
「・・・類を馬鹿にしないで。彼は私も助けてくれるけど花沢も守るわ。何度もそう言ってるでしょう?」

「私もこう見えて必死なのです。手荒なマネはしたくありませんが、あなたが妙な事をするとお腹のお子さんが無事かどうかの保証はしませんよ?」
「・・・私の事も馬鹿にしないで。私はこの子の命を守るわ。それが私の1番の仕事だもの」


「子供を守る・・・そんなに大事ですか?」

「当たり前です。自分の事よりこの子の事を考えるわよ、彼の子供なんだから!」


子供の事となるとアルフレッドさんの表情が苦しそうに見える。
この人が子供の頃にあまり良い待遇を受けなかったから・・・それが彼を今でも苦しめてるんだろうか?

だからって不正は許せない。

私もお爺様と五十嵐さんの犯した罪で苦しんだんだもの、誰かを陥れてまで手に入れる「財」なんて価値がない・・・その思いに変わりはなかった。


「まぁ、いいでしょう。あなたには暫くあの部屋で待機していただきます。万が一具合が悪くなったら言って下さい。監視を付けますが病院ぐらいは手配しますから」

「いつまでここに閉じ込めるつもりなの?今すぐ解放してくれたら何も聞かなかった事にする・・・だから変な考えは捨てて契約通りの仕事をしませんか?花沢じゃなくてもいいわ、本当にホテルを建てる計画があるならウィンリーコーポレーションの依頼に応えるべきじゃないかしら」

「そんな心配はしなくてもいいんですよ、つくしさん。あなたはただの材料です。大人しくしていて下さい」


アルフレッドさんはそこまで言うと私の両隣の2人に目配せしてダイニングから出て行った。
私は逃げられないようにと女性に片腕を持たれ、さっきの部屋まで連れて行かれた。

別に荒っぽい扱いじゃない。
確かに腕は持たれてるけど階段を上がる時にも「足元に気をつけて」と小さな声で話し掛けられた。男性も怖い顔だけど静かにドアを開け、私が中に入ると丁寧な英語で話し掛けてきた。


『私達はここで待機しています。何か足りない物があったらいつでも声を掛けて下さい』
『この部屋には生活用品のほぼ全てが揃っていますから不自由は無いと思いますが、日本と使い方の違う家電品もあるでしょうから、そんな場合でも聞いて下さいね。着替えは幾らでも使って下さい。それと暑いからエアコンはずっと付けてますが身体を冷やさないようにね』

『お気遣いありがとう。それよりも早く日本に帰してとアルフレッドさんに伝えて欲しいわ』

『伝えるだけなら幾らでも。ただし、彼がそれに応えるかどうかは別だと思って下さい』
『ごめんなさい、私達は社からの命令ですので』



それだけ言うと軽く頭を下げられ、2人は部屋から出て行った。



・・・類、今頃何処で何してるんだろう。
私の頼んだ伝言は2つとも彼に届いたのかしら・・・追加のバイト代、払ってくれるかなぁ?

昨日の夜は暗かったから判らなかったけど、窓を開けたら確かに小高い場所にあるこのお屋敷からは遠くに高層ビルが見えて、横には緑溢れる植物園らしき広場があった。


「・・・はぁ、ホントにここ、外国なんだわ」

私の初めての海外が、まさか誘拐だなんて思わなかった。

お昼はこの部屋に食事を運ばれ、午後も誰とも喋らずに部屋の中・・・何にもする事がなくて、ただぼーっと窓から南国の木々を見ていた。




********************




ウィンリーコーポレーションからの連絡が無いまま時間だけが過ぎた。

午後になってスマホが鳴ったから慌てて見れば、その名前は藤本だ。
頼んだ事のどの報告かと急いで電話に出てみれば・・・


『・・・もう1度言いますが、専務のお仕事の中で私に出来る事から片付けていかなきゃいけないんですよ?はっきり言って仕事溜め込んでたのは専務でしょ?!』
「そうだけどこの状況なんだから仕方ないじゃん!」

『言われた事は進めていますが、リスク管理室なんて私じゃハードル高いんですよ!海外事業部だって専務のウケが悪いから秘書の私まで嫌われてるし、スムーズにはいかないんですって!』
「・・・出来るだけでいいから急いで。それでなんの用事?」」

『あっっ!忘れるところでした。笹本さんに変わりますね』
「・・・は?」


笹本?なんでこのタイミングで笹本が出てくるの?
まさか「今日のお昼はどうしますか?」とかじゃないよね・・・そんな内容だったら帰国した時に殴りに行くけど・・・。

超不機嫌な藤本に何故か叱られた後、電話口で聞こえた声は確かに笹本。

『あっ、専務!海外出張、お疲れ様です』
「・・・・・・なに?」

『実はお願いがあって電話したんですが、琥珀なんですけど・・・』
「うん、判った。好きにしていいよ」

『えっ!まだ何も言ってないんですけど?』
「琥珀の事でしょ?笹本の好きにしていいよ。それじゃあ忙しいから切るね!」

『あっ!専務?せん・・・』ブチッ!


こんな非常事態なのになんで豆柴の話を国際電話で聞くのさ!
自分の犬なんだから好きにしたらいいんだよっ!


それよりもウィンリーコーポレーションは何をしてるんだろう?!
イライラしながら部屋中を歩き回り、ギラギラした常夏の大都市をホテルの上層階から見下ろしていた。



そして総二郎がホテルに来たのは夕方遅く。
ノックされたからドアを開けたら、冬用のコート片手に桃太郎と菊次郎を連れた総二郎が恐ろしい顔して立っていた。


「・・・怒ってるの?」
「これが怒らずにいられるか?桃太郎って誰かと思ったら犬だとは思わなかったぜ」

その言葉が終わるかどうかって時に、もう我慢出来なくなった桃太郎と菊次郎が俺に向かって突進!至近距離での頭突きに負けて、後ろに弾き飛ばされた!

「ワンワン!」
「ワンワン!ワンッ!」
「うわぁーっ!判ったから落ち着け、桃太郎!菊次郎っ!!」

「ワンワン、ワォ~ン!!」
「耳元で吠えるな!Silence!(静かに!)」

飛行機で来たクセにこんなに元気がいいとは思わなかった!
さすが道明寺のプライベートジェット、乗り心地が良かったのかな・・・って、2匹を撫でていたら急に胸ぐらを掴まれて持ち上げられた!!


「うわっ!何すんのっ!」
「そいつはこっちの台詞だ!何考えて急に人を海外に呼び出すんだよっ!隣町に呼ぶのと訳が違うだろうが!」

「ゴホッ・・・説明するから離せって!」
「お前、俺を何だと思ってんだ!」

この後ソファーに放り投げられて、また総二郎は俺の前に腕組みして鼻息荒く見下ろされた。
そしてここに来るまでの経緯を捲し立てられた。


「類に言われて花沢家に行ってみりゃ、加代さんにいきなりこんなデッカい犬を2匹も渡されて『これも宜しく!』って餌まで背負わされて、類の着替えも入ってるなんて言われたんだぞ!訳も判んなくてこんなのと一緒に成田に行ったら、今度は司んとこの奴等に離陸準備完了ー!って叫ばれて、この犬と一緒にジェットに放り込まれたんだ!
そりゃ中は広いし、犬が喜んで走りまくっても誰も止めねぇし、少しでも動いたら飛び付かれて舐められるし!!
シンガポールに着いたら勿論誰も迎えになんて来ないから自力でここまで来たけど、この2匹がいたらタクシーには敬遠されるし、どうにも出来ないからすげぇ現金チラつかせて無理矢理1台捕まえたんだっ!」

「あっ!現金持ってきてくれた?200万円」

「へっ?・・・あぁ、持って来たぜ。ほい、これ。身代金にしちゃ安くねぇか?」


持ってたコートの内ポケットから200万円取り出してテーブルに置き、流石に暑かったのか長袖も脱ぎ始めた。
初めからシンガポールって言ったのにそんな冬支度で来なくてもいいのに・・・これを言ったら殴られそうだったから黙っておいた。


「で、なんで身代金持って来るのが俺だったんだ?」
「身代金じゃないし。お前にはまたバイトしてもらおうかと思って」

「なんだ、そりゃ」
「日本人が好きなんだって。しかもアイドル級のイケメンじゃないとダメなんだ。総二郎なら引き受けてくれるよね?8700万円の事もあるし」

「・・・それ、元々は花沢の奴等が騙し取ったんじゃね?」
「いいからいいから。じゃあ200万円、払いに行かなきゃ」


「類・・・お前、昔っから説明下手だよな。やっぱり全然判んねぇわ!」

「うん、車で話そうか」
「俺も行くのかよ!!」


加代が持たせてくれた着替えの中からTシャツを総二郎に貸してやって、こいつはやっと涼しい格好になった。

その後、桃太郎と菊次郎とホテルに残してタクシーでつくしの立ち寄った場所に向かった。
運転手にわざわざ日本語が判るかどうかを確かめて、判らないって答えた人を選び、『Thomson Medical Centreの近くのコンビニまで』・・・200万円の中から1枚出してそう言うと、にっこり笑ってを車を発進させた。


「コンビニ?シンガポールまで来てコンビニに行くのか?」
「そこで金払わなきゃいけないんだ」

「なんで?まさかコンビニでつくしちゃんが捕まってんのか?万引き・・・じゃねぇよな?」
「つくしがそんな事する訳ないでしょ!」


「やっぱり先に説明しろ。頭が痛い・・・」
「・・・だね」




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2019/05/24 (Fri) 07:46 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、おはようございます。

怒り心頭の総ちゃんが南国にやってきました(笑)いやいや、暑そうですねぇ💦
まぁ、1人よりは2人・・・ふふふ、類君も冷静になってくれることでしょう。
総ちゃんにはご苦労様としか・・・💦

まさかの笹本(笑)
あはははは!五月蠅い飼い主がいない間に楽しむようですよ?
だって梅ちゃんが可哀想なんですもの(笑)

因みに豆柴でも多かったら1度に5匹生まれるんだそうですね(笑)
本当に花沢城になりそうです💦

2019/05/24 (Fri) 08:27 | EDIT | REPLY |   
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2019/05/24 (Fri) 13:16 | EDIT | REPLY |   
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2019/05/24 (Fri) 13:51 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: こんにちは🎵

meimei様、こんにちは~!

はいはい!元気に頑張っていますよ(笑)

ええっ!!それはねぇ・・・内緒です♡
ここでは書けませんよ~(爆)

そうそう、総ちゃんね!もうねぇ・・・総ちゃんのこんな台詞書くと嬉しくなるんですよ。

ね?判るでしょ?!フフフフ、そっちも書きますから待っててくださいね!
類君の応援、宜しくです!

2019/05/24 (Fri) 17:03 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは!

あっはは!そうよ、こちらは類君のお話ですってば!

類君の応援頼みますよ💦頑張ってるのよ、類君だって(爆)


しかし、最近の総ちゃんったら変態になったり悲劇になったりでいい場面がないからねぇ・・・。
それなのに、まさかここでおばちゃんの相手に・・・ひえぇ~💦

仕方ない・・Secret書こうか(笑)

6月まで待ってね💦

2019/05/24 (Fri) 17:07 | EDIT | REPLY |   
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2019/05/25 (Sat) 08:48 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、おはようございます。


・・・・・・・・・・・待っててくださいね(笑)

もう1回言ってもいい?こっち、類君のお話だから💦

2019/05/25 (Sat) 09:21 | EDIT | REPLY |   

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