FC2ブログ

plumeria

plumeria

-
<side仁美>
大雪が降った2日後・・・今度は凄くいいお天気だった。

今日、あきらさんは千葉に仕事で行くと言った。
だから昼間は東京にはいない・・・帰ってくるのは夕方遅くになってから。今週彼が東京を離れるのは今日しかなかった。

午前中、私はいつものように自室で過ごし、子供達は最近始まった英語の家庭教師と遊びの延長のような授業を受けていた。ただ家庭教師の言葉を真似て遊ぶだけ・・・それでもすぐに双子はいくつかの英単語を覚えてしまった。
それを少しだけ見学した時、私に得意気な顔をするのを微笑ましく見ていた。

英会話が終わったのはお昼前。
義両親も出掛けてるから3人で昼食を食べて、今日の授業の話を聞いていた。


「お花はね、Flowerっていうんだって!」
「かのん、じょうずっていわれたぁ!」

「そうなの?英語、楽しい?」
「「うん!たのしい!!」」


本当に楽しそうに笑うのね・・・つくしさんそっくりの笑顔で。
その笑顔を真っ直ぐ私に向けるのね・・・私の気持ちなんて知りもしないで。

でも、その笑顔を見るのは今日で終わりかもしれない。だからニコニコする紫音と花音をジッと見ていた。


いつものようにお昼寝して、起きたのは午後2時半・・・少し早めのおやつを食べ終わった後から「彼の計画」が始まる。

凄く不思議だったけど、私は冷静だった。
自分でも怖くなるぐらい落ち着いていた。


「紫音、花音・・・お買い物に行きましょうか?」
「おかいものぉ?」
「どこに?」

「いつも行くデパート。新しいおもちゃ見に行かない?ほら、いつも家まで持ってきてもらうじゃない?だからたまには自分たちで選びたいでしょ?」
「うん!!いくぅ!」
「うわぁ~い!ママとおかいものぉ!」

おやつも食べ終わってないのに喜んで飛び上がり小夜さんに叱られたけど、そのまま着替えさせるように頼んだ。
人混みでも見付けやすいようにお揃いの青いコートにするように頼んで、小夜さんは私の言う通りそれを着せてくれた。
「お供致しましょうか?」と言われたけど、この場合は警護が必ずつくから問題ないと断り、私の運転ではなく美作の車で行くことにした。


「若奥様、気をつけて下さいませね」
「あら、小夜さんも心配性なのね?うふふ、大丈夫よ。この子達は良い子だからちゃんと言うこと聞いてくれるし」

「そうですけど、あまり人混みに慣れていらっしゃいませんから興奮しちゃうと大変ですよ?3歳って結構力が強くなっていますし、花音様は足がお速いから・・・」
「そうね。手を離さないようにするわ」

「ママァ!早く早く!」「しょん、手ぇつないで!」・・・双子は私を置いて先に車に走って行った。
妹なのに花音の方が行動的で、手を繋いでって頼んだくせに紫音を引っ張って行く。長くなった黒髪を左右に揺らして、紫音に当たってるんじゃないかしら。
そんな紫音は黙って引っ張られていく。でも本当は急ぐ花音を押さえているのね・・・転けたりしないように。


よく目立つブルーのコートを着て走って行く後ろ姿・・・本当に大きくなった。ここに来た小さな赤ちゃんだった時が嘘みたい、そんな事を思っていた。

あきらさんの希望通り、あの時は本当に自分の子供として育てようと思った。私も彼に喜んでもらいたかったから・・・だから必死で良い母親になろうと思った。
結果・・・あの子達は私の宝物になったのに・・・。


「若奥様?どうされました?」
「え?あぁ・・・何でもないわ。行ってきます」

「いってらっしゃいませ」


男女2人の警護と共に美作を出たのは午後3時10分・・・・・・あの約束は午後5時だ。



***



デパートに着いたら少し離れて警護の人間がついてくる・・・それをチラッと横目で確認しながら2人と手を繋いで店内を彷徨いていた。
紫音が行きたいと言った併設の水族館に行ってクリオネを見て大騒ぎ。花音もペンギンに触ると言って私を困らせる・・・この我儘な表情も何回見ただろうと苦笑いしか出なかった。

「ママァ、抱っこぉ!」
「あらあら、仕方ないわぇ。でも今日はパパがいないんだから1度には無理よ?」

「そっかぁ・・・じゃあ、ぼくがまんする」
「・・・かのんもやめる!もうあかちゃんじゃないもん!」

「そう?ふふっ、お利口さんね」


2人は私の手を離してリクガメを覗き込み、アザラシに手を叩いた。
周りの人達もこの子達のことを振り返りながら見ている・・・双子だからと言うのもあるだろうけど確かに幼いのによく目立つ。この華やかさは西門さんの血を引き継いでるからなのかしら。
何故か目を向けてしまう独特の雰囲気がある。

それは少し前から感じていた。
大人になったら凄く格好良く、可愛らしくなるんだろうなって・・・あきらさんに見せてもらった西門さんの写真を見て思った。そして本人を見たら余計にそれを感じた。

あぁ、これが紫音の将来の姿かなって・・・。


紫音にはどのぐらいバレンタインのチョコが来るのかしら。
花音にはデートの誘いが毎日のように来るんじゃないのかしら・・・危ない目に遭わないようにしなくちゃ。

でも、そんな事はもう考えなくていいんだわ。


チラッとまた時計を見る・・・時間は午後4時15分。慌てないように悟られないように移動しなくちゃいけない。警護の人が今、何処で見てるのかなんて探っちゃいけない。
私は極普通に買い物に来ているの・・・そう見えるように「演技」しなくちゃ・・・。


「ねぇ、ママ!お空にペンギンさんがいるよ?行ってもいい?」
「えぇ、いいわよ。でもここで遊ぶのはあと少しだけ。もう夕方だから中に入って早めにお洋服とおもちゃを見ましょうか?」

「うん!ちょっとだけ見てくる!しょん、行こう!」
「ママ、ここにいてね!」

「えぇ、待ってるわ」

子供達がペンギンを見るのを少しだけ離れて見ていた。
ここでは水槽が上部に作られているから、ペンギンが空を飛んでいるかのように見える・・・それを紫音が指差しながら、花音がジャンプしながら喜んで見上げていた。


可愛いなぁ・・・それは本心だ。

でも、それ以上に苦しい・・・飛び跳ねる2人を見ながら涙が溢れそうだった。


その涙は子供達の「この後」なのか、自分の事なのかさえ判らない。
ただ、胸が苦しくて苦しくて張り裂けそうだった。


「ママァ!たのしかったぁ!」
「おもちゃやさんに行こう!」

「くすっ、はいはい。何買おうかしらねぇ」

「ねぇ、ママ!また今度ここにこられる?」

「・・・・・・えぇ、また来ましょうね」

「やったぁ!」ってニコニコの花音・・・少し前を小走りで行く紫音の後ろを追いかけて行った。


「あっ!待って、紫音、花音!」、私が呼ぶと2人が立ち止まって戻って来た。
「どうしたの?」って無垢な笑顔で聞いてくる・・・時間は午後4時55分。目的地に着いてしまった・・・。


「先におトイレに行きましょうか?ママ、行きたいの。ついてきてくれる?」
「おトイレ?うん!いいよ」
「えっと・・・ぼくは?」

「うふふ、紫音も一緒に行きましょう?大丈夫よ、女の人のおトイレでもまだ誰も気にしないわ」



そして中に入って10分後・・・私の目の前から双子の姿は無くなった。






2131e39584d9629a8b6fe37e62627aa6_t.jpg
関連記事
Posted by