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plumeria

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「つくし、どうした?誰からだ?」
「ん?美作さんから・・・何だろう?ちょっと待ってね、出てみるから・・・もしもーし!・・・・・・ん?どうしたの?」

キッチンで飯の支度をしようとしたつくしは急に鳴ったあきらからの電話に出た。
俺には背中を向けているからその表情は判らないが、こんな時間につくしに電話することもあるんだ・・・そう思うと、やっぱり気に入らない。
どんな用件かは知らないが、俺と出会ったんだから俺に言えよ・・・ぐらいの気持ちでつくしの背中を見つめていた。


「・・・えっ?うそ・・・」

そんな声が聞こえた次の瞬間、つくしが持っていたおたまが床に落ちた。そこで甲高い音をたてて転げていき、それでもつくしの手はピクリとも動かなかった。
その様子に驚いてソファーから立ち上がり、慌てて傍まで近寄って顔を覗き込んだが、つくしは目をデカくして唇を震わせスマホを持つ手もガタガタと揺れていた。


「・・・そ、それで・・・あの、まだ見付からないの?ねぇ!どういう事!」
「どうした?!つくし!」

つくしが震えながら大きな声を出したから、つい真横から俺までデカい声を出したら『総二郎が居るのか?!』と、あきらの声が漏れ聞こえた。
それと同時に俺を見上げたつくし・・・恐怖に怯えた目をして潤んでいた。


それを見たら我慢出来ずにこいつからスマホを取り上げた。
つくしはその拍子に蹌踉めいて、すぐ後ろのテーブルにぶつかりそのまま座り込んだ。だが動揺が激しくて両手を床に付けたまま、ガタガタと身体全体が震えてる。
俺もしゃがんで右手でつくしを抱き寄せ、左に持ったスマホであきらに話し掛けた。


「あきら?!俺だ、どうした?!何があった!お前、つくしに何を言ったんだ?!」
『・・・総二郎、お前が居るとは思わなかった・・・』

「俺が居たら不味いのかよ!てめぇ・・・まさかつくしに妙な事を・・・!」
『馬鹿な事を言うな!そうじゃない・・・そうじゃなくて!』

「なんだよ、はっきり言え!!あきら!」


なんだ・・・?電話の向こう側が騒がしい。
美作の家から掛けてるんじゃない・・・そして会社からでもない。
あきらは何処から掛けてるんだ?それに誰かが泣いてる・・・その泣き声は女?女が泣いてるのなら嫁さんか?
『もう1度3階従業員用通路の映像を!』『南側駐車場はまだか!』・・・その声は誰だ?何処の通路だって?何処の駐車場の話をしてるんだ?

腕の中で俺の服を掴んでいるつくしは顔面蒼白・・・瞬きもせず、視線は俺を素通りしてリビングを見つめているがその目には何も映ってはいない。
ただ俺を掴む指先の力がすげぇ強くなってきた。


「あきら!どうして黙ってるんだ!」
『・・・いや、悪い、驚いただけだ』

「つくしがこんなに怯えてるんだ、何を言った!!」


『・・・うちの事で申し訳ない。牧野も仲が良かったから電話したんだが・・・紫音と花音が居なくなったんだ』


何だと?子供達が・・・居なくなった?!




*********************


<sideあきら>

牧野に電話しても吃驚させるだけだと思ったが知らせない訳にもいかない・・・そのぐらい時間が経っていたから掛けたのに、そこに総二郎が居るだなんて思わなかった。
だから言葉を探しているうちにあいつを苛立たせ、俺は「うちの事で申し訳ない」、そんな言葉を前置きにして紫音と花音の事を伝えた。

『・・・えっ?!紫音・・・って、双子が居なくなったって、どういう事だ!』

総二郎が今度は大きな声を出した。
双子が居なくなったからってすぐに牧野に掛けたことをおかしく思わないだろうか・・・そんな事を考えたが、事実それどころじゃなくなっていた。
こうやって話している最中でも監視カメラの確認は進み、どれも「該当無し」の返事しか返ってこない。

そして警備室に飛び込んで来たのはお袋と帰国していた親父。
お袋は泣き崩れている仁美の背中を支えて「しっかりしなさい!」と叫び、親父はデパートの支配人から事情を聞いていた。


『おい、あきら!つくしは話せる状況じゃない!もう1度俺にも説明しろ!』
「・・・判った。実は俺も仕事で出掛けていた時に連絡を受けたんだが・・・」

牧野に話したことをもう1度総二郎にも伝えるとこいつも黙った。
その時に『いやだ・・・いやだ!どうしようっ、どうしたら・・・』、そんな牧野の声が聞こえてきて『落ち着け!今、俺が聞いてるから』と、総二郎が叫んだのが聞こえた。

こっちも騒然として誰が何を話してるのかよく判らない。
ただお袋と親父が俺の指示と同じく、捜索を美作で行うと言い始めた。


「総二郎、また掛けるから牧野を頼む!」
『どうした?何か判ったのか?!』

「いや、そうじゃない。これからの捜索について検討中だ、それが判ったら電話する!」

俺の名前を叫んでいる総二郎だったが無視して1度電話は切った。
そして仁美を抱きかかえているお袋と、その横に立ってる親父のところに行くとその話が始まった。


「ごめん、親父、お袋。こんな事になって・・・」
「いや、仁美さんもわざとじゃないんだ。少し油断してしまったと言えばそうだが今更言っても仕方がない。それより今後の捜索は自宅でしよう。その方がいいだろう?あきら」

ここでは言葉に出せないが美作が持ってる極秘情報システムを使った方が都内の捜索は早い。もし車で移動をしていても追跡出来るだけの装備はあるし、飛行機に乗ったとしてもそのシステムに入り込むことも出来るかもしれない。

それにもし、美作の子供だと知っての誘拐なら身代金の要求があるはず・・・いつまでもここに留まるのは不味いと言う話になった。


「あの!美作様、部長様の指示でまだ警察には通報していないのですが、どのように致しましょうか?」

支配人がオロオロしながらそう言うと、お袋がそれには答えた。


「この先は美作家で対応致しますから通報しないでちょうだい。それがどうしても必要だと判断したら私達で行います。その時だけ現場として対応してくだされば結構です。そして絶対に外部に漏らさないで。いいわね?」

「畏まりました。でも、こちらの奥様のご様子を見た人も居ますが・・・?」

「そのぐらいの事で美作だと判らないでしょう?とにかく従業員の口から噂が漏れ広がらないようにしてちょうだい。売り場やテナントのスタッフには話してないわね?」

「はい!ここの警備室の人間だけです」

普段のほほんとしているお袋も、こういう時には凄く強く頼もしい存在になる。
親父よりも鋭い目付きでここの職員に指示を出し、泣き崩れている仁美を慰めたりはしない。むしろ「泣いても見付からないわ。何でもいいから思い出すことに専念しなさい!」と叱っていた。


「それと子供達が居なくなった時の館内の監視カメラの映像を全部こちらに渡してもらおうか。その作業を大至急頼む。それで費用が掛かるというなら幾らでも請求して構わないから」

「いえ!そのような事はございません。データは今すぐには難しいのですが、明日には美作様にお届けいたします!」


デパート内に美作の人間を数十人配備し、今夜は夜通し捜索させることにして俺達は撤退。
錯乱して歩くことも出来ない仁美を抱きかかえて車に向かい、自宅に戻った。




*******************




美作さんからの電話は、仁美さんとお買い物中に双子だけがいなくなってしまったと言う衝撃的な知らせだった。

『牧野、ごめん、落ち着いて聞いてくれ』
「ん?どうしたの?」

『双子が・・・紫音と花音がいなくなった。仁美と買い物に出掛けてる時、立ち寄ったトイレで双子だけが姿を消したらしいんだ。今、美作とデパートの連中で捜してるんだが何処にも見当たらない。もう2時間・・・あいつらがいなくなって2時間経ってるんだ』

「・・・・・・えっ?うそ・・・」

『双子が勝手に出歩いたのか誰かに連れ去られたのか、監視カメラにも映ってなくて何にも判らないんだ。連れ去られたとしても美作の子供だと知って事なのか、そうじゃないのか・・・ごめん、全然判らないんだ』

「・・・そ、それで・・・あの、まだ見付からないの?ねぇ!どういう事!」
「どうした?!つくし!」


手から何かが落ちた・・・総が後ろから走ってきた。
私の耳にはスマホが押し当てられていたけど、美作さんの言葉より総の心配そうな顔の方に目がいった。


そんな・・・そんな、馬鹿な!

あの子達がいなくなっただなんて、そんな事があるわけがない。
美作さんの冗談だ・・・きっと私を驚かせようとして冗談言ってるんだ。

そんな風に考えたけど、この電話の向こうから聞こえてくる色んな声や音はそれを現実だと教えているようだった。

『水族館の方も見たか?!』
『見ましたが再度捜索中です!』

『まだ小さいのだから思いがけない場所に居るかもしれん!見落とすな!』・・・紫音、花音!本当にいなくなったの?!


何も言わずに総がスマホを取り上げて、座り込んだ私の身体を腕の中に引き寄せてくれた。
私はその腕の中でただ震えることしか出来なかった。


「あきら!どうして黙ってるんだ!・・・つくしがこんなに怯えてるんだ、何を言った!!」
「・・えっ?!紫音・・・って、双子が居なくなったって、どういう事だ!」
「つくしは話せる状況じゃない!もう1度俺にも説明しろ!」

「どうした?何か判ったのか?!」
「おい!あきら?!あきら・・・切るな、あきら!!」



嫌だ・・・双子が消えてしまったなんて悪い冗談だ・・・!
返して・・・この人の子供を私の所に返して!!


頭の中には泣き叫ぶ2人の姿しか思い描けない。その恐怖に耐えられなくて総の腕を力一杯掴んでいた。




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