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plumeria

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一睡もする事なく地下室でモニターを見ていたが流石に限界・・・つくしを連れてリビングに戻ったのは朝日が眩しい時間帯だった。

そこには夢子おばさんが居て、おじさんは既に会社に向かったと聞いた。
あきらには休暇を取らせる分、休む訳にもいかない。それに美作商事に対して誰かから連絡があるかもしれないと言って出掛けたと聞かされた。


「・・・何も連絡は無かったわね・・・やっぱり金銭目的の誘拐じゃ無いって事よね」
「判らないな。仁美は?」

「まだお部屋なの。あきら君、悪いけど呼んできてちょうだい。こうして心配してつくしちゃん達も来てるんだから」
「・・・あぁ、行ってくる」


つくしは自分の足で立つのがやっと・・・俺が手を離せばすぐに倒れそうなほど精神的に疲れ切っていた。それを見ておばさんが「座らせなさい」とソファーを指さしたからそこに座らせ、俺もその横に座って支えていた。

泣き過ぎて目が真っ赤に腫れている。
血の気の無い青白い顔をしているのに、小さい声で子供達の名前を何度も呼んでいた。


「本当にごめんなさいね、心配掛けて。何かあったら連絡するからつくしちゃんは鎌倉にお帰りなさい。研修所には欠席するとうちから連絡入れておくわ。総二郎君、あなた送っていける?」

「あぁ、俺は行けるけど・・・」
「・・・嫌です。ここに居ます・・・紫音・・・紫音君達が見付かるまでここに居ます。おば様・・・お願いします!」

つくしは消え入りそうな声を絞り出し、それでも最後の「お願いします」はすげぇ強い口調だった。

夢子おばさんも俺が一緒だからそう言ってるんだろう。
戸惑いを隠せない感じでリビングを彷徨き、大きくため息をついたら「好きなようにしなさい」と・・・それだけ言うとダイニングの方に入って行った。


屋敷内は使用人がウロウロしていて落ち着きが無い。
誰もが辛そうな表情で受け持ちの仕事をしていき、俺達を見ても無言で頭を下げるだけだった。

いつもなら紫音と花音の笑い声で1日が始まるんだろう。それなのに重すぎる空気が屋敷全体を覆っていて、日差しに反して息苦しかった。



俺達の前には珈琲とサンドイッチだけが出され、つくしに勧めたが首を横に振った。
子供の行方が判らないのに自分だけ食事なんて出来ない、そういう意味だろうが昨日の夜も何も口にしていない。このままだとつくしまで倒れてしまうから強引に手に持たせた。

「気持ちは判るが食わねぇとお前が倒れる。倒れた時にあの子達の事が判ったらどうする?そんなんじゃ動こうと思っても動けねぇぞ?!少しでいいから食え!そうじゃないなら強引に鎌倉に連れて帰る!」

「・・・総」

「変な方向に考えるな。絶対に戻ってくるって信じてやれ。笑って迎えてやらないと帰りにくいだろうが!」

「・・・うん、判った」


気を利かせてひと口サイズにしてあるサンドイッチを1つ摘まんで口に入れた。泣きながらそれを飲み込むようにして食って、次を持たせたら首を振る・・・俺が睨むと震えながら受け取ってまた食った。
俺もそれを見ながら隣で同じ物を食って、何も喋らずに朝食を済ませた。


苦しいのは俺も同じだ。

俺はまだ数回しか会ってねぇんだから。
まだ抱き締めたこともねぇし、「親父」と呼ばれたこともないんだ・・・それを奪われて堪るか!と込み上げてくる怒りを抑えながら食った。


「牧野、総二郎・・・少しは食えたか?」

あきらが後ろに仁美さんを連れて降りてきたのは飯を食い終わった頃だった。
仁美さんも殆ど寝ていないのか真っ青な顔で疲れ切っている。昨日の格好のままなのか皺だらけの服で俺達の前に現れ、あきらに支えられて俺達の前に倒れ込むようにして座った。

「ひ、仁美さん!あの、あの・・・どうして・・・」
「・・・ごめんなさい、私がついていながら・・・ごめんなさい・・・」

つくしが出すに出せない言葉で仁美さんを問い詰める・・・仁美さんは両手で顔を覆ってまた泣き出した。


「少し仁美と話したんだがこんな調子なんだ。今は混乱が酷くて何も思い出せないらしい。その時の事で思い出した事があればすぐに話すように言ってあるから責め立てないでやってくれ」

「・・・・・・は、はい・・・」
「そうだな。母親なんだからショックは当然だ。無理に降りてこさせて申し訳なかったな。部屋で休ませてやれよ、あきら」

「いや、そう言う訳にもいかないからここに居るよ。そっちこそ自分の仕事を優先させてくれよ?西門に睨まれるのは御免だからな」
「気にすんなって言ったろ?お前1人より俺が居た方が心強いと思っとけ」

「・・・あぁ、確かにな」


そう話した時に玄関先が慌ただしくなって、執事が厳重に包まれた封筒を持って駆け込んできた。

「あきら様!!」
「どうした!」

「昨日の店舗内全部の監視カメラのデータでございます!万が一の誤送信を考慮して支配人様がお持ち込みになりました!」
「判った、すぐに解析ルームに持って行く!」


あきらがその封筒を受け取り地下室に向かうと同時に、俺もつくしも席を立ちあいつの後を追った。
仁美さんは俯いたまま、その場を動こうとはしなかった。



**



地下室の大画面のモニターを4分割して様々な箇所の映像が映し出されていた。
それにデパートの見取り図も取り出してあきらと俺が食い入るように見つめていた。つくしはその横に立ってやっぱり画面に釘付け・・・だが冷静になれないのか落ち着きなく手が動いてる。

「つくし、お前は座ってみてろ。動くと気が散る」
「あっ、ごめん・・・」

「いや、怒ってんじゃねぇ。いいから座っとけ」
「・・・牧野も気がついた事があったら言ってくれ。どんな小さな事でもいいからな」

「わ、判った!」


あきら達が現地で何度も見たと言ったが、3人で入ったトイレからは絶対に出ているはず・・・そこからもう1度見ようと、モニターにはその出入り口が録画された映像が映し出されていた。
時間も夕方の5時ちょっと前、3人が入って行くところから目を凝らして見ていたが、何人か出入りした後で仁美さんが慌てて飛び出してくる場面に変わった。

初めに映った鮮やかなブルーのコートは確かに映像の中でよく目立つ。だが、その色が出ていく場面はない。


「別の出入り口のも見ようか。今の映像には子供すら映ってなかったよな」
「あぁ、そうだな。現地でも何度も見たから・・・でも、出ていかないと行方不明にはならないんだから・・・」

「清掃員もいなかったよな?」
「あぁ、この時間に清掃は入らないそうだ」

「大人のコートの中に2人も隠すなんて事は・・・女じゃ無理か?」
「女性用トイレだ。男が侵入してそんな事したらその時点で騒ぎになってるだろう」

「通路に出ない状態で男性用トイレには・・・あぁ、行けねぇのか」
「そうするんならこのカメラに映るはずだ。パウダールームから外部に繋がった通路なんてないし、ここの清掃用具が入れてあるロッカーも確認済みだが子供2人が隠せる広さはない。身障者用の内側から自動ロックされるトイレにも勿論隠れてなかったしな・・・」

「排気口から・・・」
「総て金具で固定されていた。外してそこから外に出るなんて事は出来ない」


仁美さんが出てきたのとは反対側の出入り口の映像に切り替わった。
そこには若い女性が2人、帽子を被った女の子を2人連れた主婦らしい女、派手な服装の婆さんと姉弟連れの男性なんかが映っていた。
姉弟連れの男性に目が行ったが明らかに女の子の背格好が小学生高学年・・・変装させたとしてもあんな身体にはならねぇし。

「もう1度見ようか」
「くそっ・・・なんでこの10分足らずで見付けられねぇんだ?」

もう1度映像を戻してモニターに表示させた時、つくしがガタンと立ち上がった。


「あの人・・・あの人じゃないかしら」





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