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急いで階段を駆け上がってドアを開けたら、正面につくしが座っていて傍にはアルフレッドがいた!
当然「つくし!無事?!」と叫んだのに返ってきた言葉が・・・


「類!!・・・遅いじゃないのーーーっ!!!

「えっ?!あんたが黙って居なくなるからだろ?!しかもスマホをまた忘れてるし!どうしてそんなに忘れ物するかな!」
「持ってたって電池切れてたもん」

「それも何回やったら気が済むの?前の夜に充電しときなっていつも言ってるのに!」


それが海を渡って助けに来た夫に向かって言う言葉かな!ってムッとしたけど、その時にアルフレッドがつくしの座ってる椅子の後ろから彼女の肩を押さえ込んだ。
それにビクッとしてつくしが見上げると「少しお黙りなさい」と・・・そしてこの男もいつの間にか手には小型拳銃を持っていた。

ゆっくりそれをつくしのこめかみに押し当て、ニヤリと笑って俺を見た。


「そろそろ限界だと思って連絡するつもりだったのに、よくここが判りましたね。何処を調べても住所なんて載せていない屋敷だったのに」

「うちには優秀な人材がいるからね。色んな情報を集めればそんなに苦労はしなかったけど?」

「ふん・・・まぁいいでしょう。どうせここに呼ぶつもりでしたから。日本だとすぐに邪魔が入りそうだったのでね」

「世界中の何処に行っても邪魔は入ると思いな?つくしを攫うなんてどんな罪より重いってこと、教えてあげるよ」


振り向きはしなかったけど頼んだ通り廊下に総二郎と2匹が来てる・・・それは気配でわかった。
あいつも部屋の様子を窺って、入るタイミングを見計らってる。今は廊下で待機してアルフレッドを興奮させない方がいいと判断したようだった。

それよりも驚いたのはつくし・・・自分のこめかみに拳銃が当てられてるのに顔色ひとつ変えずに真っ直ぐ俺を見ていた。
それは「信じてるよ」って言葉の代わりみたいで、俺の方が緊張する。
でも、両手でしっかりと腹を抱えていた。

俺達の大事な宝物・・・それを守るように、抱き締めるようにして座っていた。


「見たら判りますよね?君が動けば彼女の命がどうなるか・・・おもちゃじゃないって事を先に証明しようか?」

「あんたの要求は何だ・・・俺の命?それなら奪えばいい。つくしと引き換えなら惜しくないけど」
「類!なんて事言うのっ!馬鹿ぁ!!」

「お静かに、つくしさん。花沢類君・・・君の命が欲しいなんて思っていないよ。むしろ君には生きてもらって、私の為に働いて欲しいぐらいだ。素敵なお友達も多いみたいだからね・・・その人脈を利用して会社を大きくしてくれれば言うことは無い」

「俺は自分の大事な人の為にしか動けないんだ。だから無理・・・あんたの為になんて考えられないけど?」
「どうしてそんな言い方すんのっ!もっと上手に言えないかなぁっ!」

・・・って言うか、もっと上手に「人質」出来ないかな・・・。
総二郎にも言おうとしたけど、あんたのこめかみに当てられてるヤツ、多分本物だよ?

余りにもつくしが普通にしてるもんだからアルフレッドの方が驚いてる。それもそうだろう・・・普通なら助けてくれと泣いて騒ぐ場面なのに大声張り上げて怒鳴ってるんだから。


でも俺にはちゃんと判ってる。
こう言う時にはありったけの根性を出して「負けない!」って強がるんだ。独りぼっちだった昔の自分に戻らないために・・・。



「やれやれ、少しご自分の状況を判らせてあげましょうか」
「へっ?きゃっ・・・!!何するのっ!」

アルフレッドがそう言ってつくしの首に腕を回した。
そしてこめかみに当てていた拳銃を今度はつくしの腹に当てた!そうすれば嫌でも目に入る・・・流石につくしは大人しくなった。


「こうすれば少しは判るでしょう?私は本気なんですよ・・・花沢物産を手に入れる事が出来るのならね」
「花沢物産を?あんた、本気で買収しようとしてるの?」

「買収・・・まぁ、簡単に言えばそうですが、もっとソフトな言い方にすれば抵抗ないでしょう?我がエバンスホールディングスの傘下に入り、あらゆる権利をいただきたいだけです」
「・・・そうすればつくしを解放するって事?」

「そうです。つくしさんにもお話しましたが、決して社員を路頭に迷わす事なんてしませんよ?会社は継続するし雇用は保証されるし、花沢の関連企業も親会社が変わるだけです。何も不都合無いでしょう?
花沢家の方々には企業トップの座からは降りていただきますが、役員として残っていただく・・・そこまで生活に影響はないと思いますよ?あれだけの豪邸を維持出来るかどうかは疑問ですが」

「そんな事調べにわざわざうちまで見に来たの?ご苦労だね」


吸収合併なんて経営者とはいえ個人の判断だけで決定なんて出来る訳がない。
会社全体の問題として社内各機関の承認が必要・・・取締役会、株主総会、その他にも手続きは山ほどあって数日間で出来る問題じゃない。しかも承認って事は各機関に認めてもらわなくては進まないんだから。

それに吸収合併したら一方の会社が消滅する。たとえ名前が残ったとしてもこれまでの「花沢物産」ではなくなれば、株主や債権者は当然心配になり、パニックが起こる。

実際こんな事を行う企業は水面下で数年掛けて調整するぐらいややこしいのに、ある日突然俺達が会社を手放すような発言を企業内部に向けてするとでも思ってるんだろうか。


いや、その為の誘拐・・・って事か。

確かに花沢物産全体を捨ててでもつくしの命は守らないと・・・だけどね。


「具体的には何をすれば解放するって言うんだ?」
「類?ダメだよ、そんな事言っちゃ!」

「流石、世間でも有名な愛妻家ですね、花沢専務。
書類上の手続きに時間が掛かることは判ってますのでいいんですよ。確実にエバンスに実権を譲るとお約束いただけたら、合併そのものが数年先だろうが問題ないのです。あなたにはそれを行うという念書を書いていただきたい」

「悪いけど俺は社長じゃない。父さんに頼んで書かせる気?」

「いえ、あなたには相続放棄していただいて後継者としての地位を降りていただきます。あなたが相続放棄すれば花沢家には絶縁状態の社長の弟さんが居るだけで身内は誰も居なくなる・・・そうなれば色んな部署から不安が広まり、そのうち土台が緩んで経営が怪しくなるでしょうね。大企業と言ってもそれなりに抱えている債務も大きい・・・1度崩れ始めると止まらなくなるんですよ」


詐欺による契約の無効・・・それに当て嵌まる内容だけど、多分アルフレッドは証拠がないと言い張るんだろう。

つくしをここまで連れて来たのはウィンリーコーポレーションに謝罪するため。
俺が念書にサインした理由なんて何とでも言える。それこそ家族揃って田舎暮らしでのんびりしたいとか?

ウィンリーコーポレーションとの和解でエバンスに感謝した俺が、こんな世界から逃げたくてアルフレッドに花沢を任せたいと言いだして相続放棄・・・そんなシナリオだろうか?


・・・馬鹿じゃないの?!


・・・って言いたかったけど刺激するから止めておいた。
ここは1度サインしておいて相手を油断させ、隙を見て念書を奪い消滅・・・まずつくしの身の安全確保。

兎に角拳銃を突きつけてる状況だと何も出来ない。
怪我をさせたらどうなるかぐらい判ってるだろうけど、ヤケを起こした人間ほどタチの悪いものはない。アルフレッドが自暴自棄になってつくしを傷付ける可能性は捨てきれない。

どうにかしてつくしをアルフレッドから引き離さなきゃ・・・それだけを考えていた。


「・・・書類、何処?」
「類ーっ!!ダメだって言ってるでしょ!!何考えてんのっ!」

「嬉しいですよ、花沢類君。事が全部終わるまで私はこの人から離れるわけには行きません。そのテーブルの上に封筒があるでしょう?自分で開けてサインしてください」

「だめぇっ!!自分の会社でしょうっ?!死に物狂いで守りなさいっ!こらっ、聞いてんの?!この馬鹿ぁ!!」

「つくしさん、静かにしないとお子さん、怖がりますよ?」



馬鹿って・・・あんた、子供に拳銃突きつけられてるのによく言うよね。

もう少し待ってな、絶対に助けるから。


あんたも・・・会社も・・・勿論俺の未来も!





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2019/06/03 (Mon) 07:23 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

あっはは!まぁ、こんなお話しですからねぇ💦
おバカちゃんですが真剣なんですよ。

ただ実際に後継者問題での合併はあるようですよ?その場合は両社納得のうえ進めていく、良好な吸収合併だろうと思います。

私の働いていた会社も所謂大企業でしたが、数年前に吸収合併されてしまいました。
社員の待遇面が変わったのは2年後でしたね。それまでは事務手続き上、前の会社の規則でお給料や休日が決まってまして、完全移行した時はやはりパニックになりました。

それまで使ってた社内のネット環境も全部変わりますし、ボーナス月が変わったり。
給料が上がった人も居れば下がった人も居て、辞めていく人が多かったなぁ。

アルフレッドさん・・・簡単に考えてはいけませんよ?(笑)

2019/06/03 (Mon) 11:39 | EDIT | REPLY |   

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