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plumeria

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つくしの部屋に入ると小夜が居て、丁度目を覚ましたところだと言われた。
まだ目が腫れてるし顔色も悪い・・・だが、ここはつくしに頑張ってもらわなきゃいけねぇから、つくしと並んでベッドの端に座り、さっきの電話の話をした。

「・・・うそ!吉本さんから電話があったの?総、子供達は?!あの子達は大丈夫だった?!」
「子供達の声は聞けなかった。遊んでるって言ってた。飯も食ってよく寝たらしい」

「・・・・・・そう。あの、それで吉本さんの目的・・・聞いたの?」


自分で尋ねておきながら、つくしはここで俯いた。

吉本があきらから子供を奪う理由、それは1つしかないからだ。
それを俺に知られたんじゃないかと思って顔があげられなくなった・・・可哀想にこれまでで1番震えていた。

だからつくしの左手を引き寄せて俺の右手と指を絡め、強く握ってやった。その行動にビクッとしたこいつは目を伏せながらも顔を向けた・・・でも、睫が震えてる。
下唇をギュッと噛んで、俺の言葉を恐れてるようだった。



「ばーか・・・俺を誰だと思ってんだ?気が付いてた・・・お前と再会して初めて鎌倉に泊まった時にはな」

「・・・えっ」

「・・・いや、本当言えば初めて双子を見た時にも何かを感じた・・・ってか、ちっさいつくしが居るって思った。あいつらに触れた時にはすげぇザワザワして変だった。その時にはもう自分の『血』を感じてたのかもしれねぇな・・・」

「・・・総、ごめ・・・」


つくしの目から大粒の涙が溢れて、言葉を出すことも出来なくなった。
握られた手を離そうとしたから余計に引き寄せて力を込め、震える身体ごと抱き締めてやった。そうしたら俺の胸に顔を埋めて声をあげて泣き出した。

つくしの涙と吐く息ですぐに熱くなる俺の心臓辺り・・・泣きじゃくりながら背中に回した手はすげぇ力で服を掴んでる。

それは長いこと溜め込んだこいつの叫び・・・妊娠が判ってから今日、俺に知られるまでの長い時間、1人で抱え込んできた罪悪感にも似た感情。

こんな状況で俺に伝わるなんて思いもしなかっただろうから、つくしは謝りながら泣き続けた。


「お前の腹の傷に気が付いたけど知らん顔したのにはちゃんと理由があるんだ。先ずは西門を片付けてから・・・それが終わったら紫音たちの事をお前と話して美作に頭を下げようと思ってた。
つくしがこの話を隠し続けたのは俺が西門を飛び出ないためだって思ったからな・・・だから自分の事を先に終わらせようと思ったんだ」

「・・・・・・で、でも、本当は・・・」

「あぁ、さっき聞いた。お前の病気の事・・・俺の報道が原因だったんだって?ごめんな・・・あんな姿見せちまって・・・」

「・・・・・・違うの、自分が弱かったんだよ」
「逆だっての!弱かったら1人でどっかに行かねぇし、さっさと俺に縋って助け求めてるって!まぁ、それでも良かったけど、お前が強すぎて1人で頑張りすぎるからだって。
でも、もう心配すんな。全部判ったんだから、もうお前は迷わなくていい・・・もう何処にも逃げ隠れ出来ねぇから病気にもならない」

「・・・・・・うん、判った」

「俺達の子供を取り戻しに行くぞ、つくし!」


まだ泣き続けているつくしの身体を離してから、吉本が起こした行動を説明した。
それを戸惑いながらも静かに聞いていて、逃走にフェリーを使ったこと、今は徳島に居て間もなく北九州に向かうだろうということ、吉本の要求が自分自身だと聞いたら驚いていた。

これは夢子おばさんと執事、俺とあきらが吉本から聞いた内容であり、仁美さんは部屋で寝込んでいると言えば彼女の心配をしていた。まだ、そこに仁美さんが加担しているとは気が付いていないようだったが、そのうち判るだろう。
混乱しまくってるつくしにはここで説明はしなかった。


「わ、私が行けばいいの?行けば子供達を帰してくれるの?」
「帰してくれるって言うか、あいつの願望はつくしと子供との生活だ。帰してくれるがそのまま九州の何処かで暮らそうと思ってるのかもしれない」

「・・・そう言えば最初からそう言ってた。私が佐賀に居た時からお腹の子供の父親になりたいって・・・絶対に愛情持って育てる自信があるって・・・そんなの私の方が考えられないって毎回断わってたのに」

「監視カメラで双子が楽しそうにしてただろ?多分、お前が居るところに連れていくとか言って騙してるんだろうと思う。楽しい遠足くらいに思ってるから怖がってないんだ。それに2人だからな」

「そんな・・・でも、痛い思いも苦しい思いもしてないのね?」

「そんな事をしたらこの先一緒に暮らせないだろう。だから恐怖心を与えないようにしてるんだ。それだけは安心していいと思うが、時間が経てば流石に不安になるだろう。だから急いで九州に行くぞ!」


ベッドから立ち上がると俺達は手を繋いだまま階段を駆け下りリビングに向かった。
そこでは夢子おばさんが飛行機の手配をしてくれていて、北九州ですぐに車が使えるように手配してくれていた。それに関する連絡先や電話番号を教えてもらい、つくしには子供達の着替えを手渡していた。

「つくしちゃん、お願い・・・無茶は嫌だけど頑張って2人を連れて帰って!たとえ事実が総二郎君に判ったとしても、あの子達は私の大事な孫に変わりはないわ!頼んだわよ!」

「はい!夢子おば様・・・必ず助け出します。必ずここに連れて帰りますから待っててくださいね!」

「仕事のことは気にしないで。あなたは紫音と花音の事だけ考えて!それ以外のことは帰ってからよ?!」

「・・・判りました。行ってきます!」


空港まではあきらの運転で行く事になり、もう玄関前でエンジンをかけて待っていた。
それに飛び乗ると見送るおばさんや小夜に手を振る暇も無く、車は美作の屋敷を出て行った。




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「今から北九州に向かえば19時前には現地に着く。ホテルは車を用意する小倉の人間が予約してくれてると思うからそこは自分たちで探せよ?」
「あぁ、判った。早朝新門司までだったな・・・どのぐらいでそこまで行けるんだろう?」

「それも現地の人間の方が詳しいだろう。この度の事件のことは説明してないから不思議がるだろうけど何でも聞けばいいさ」
「判った」

「それとこれは無線機だ。牧野しか吉本の傍に行けないだろうからコートにでも付けて、総二郎は離れた場所から会話を聞け。その状況次第で取り押さえろ」
「サンキュ、あきら」


車の中でも総と美作さんの話は続いていた。
私の手はここでも総にしっかりと握られてて、恐怖心からその手をキツく握り返してる・・・唇が乾くから何度も噛み締めて、そこが痛むぐらいだった。
泣きすぎて目も痛い・・・鼻は真っ赤だし、髪もボサボサ。

全身ボロボロの私の身体を総はずっと支えてくれていた。


「牧野、吉本が言ってた『思い出の場所』って心当たりあるのか?」

不意に美作さんがそう聞いて来た。
総から聞かされた時から不思議だった。そこで待ってるって言うけど、私と吉本さんには思い出なんて無い・・・何処にも2人で出掛けたことはないから、実はさっぱりだった。


「それが判らないの・・・まさか、あの時の場所?でも思い出じゃないし・・・」
「あの時って何だ?」

「・・・美作さんが旅館に来た時、変に私達のことを勘繰ってね、それで・・・襲われたの。その時に連れて行かれた唐津の公園・・・呼子を2人で離れたのってその時だけなの」

「でも何も無かったんだろ?襲われたって、お前妊娠してたんだから未遂だろ?」

「えっ?う、うん・・・勿論よ!」


キスはされたけど・・・でも、それは思い出じゃない。
無理矢理であって総に話せる内容じゃない。私の動揺に嫌そうな顔を見せた総だけど「思い出したくないんだもん」って言うと何も聞かなかった。


「・・・紫音、風邪引きかけてたからな。大丈夫かな・・・」
「そうなの?咳とかしてたの?」

「あの子は熱を出しやすいんだ。温かくしてるといいけど、安物の服に着替えさせられてたしな・・・」
「・・・心配だわ」

「花音、何食ったんだろう・・・好き嫌いが多いから、あいつ」
「そんなに?」

「あぁ、人参とかピーマンとかネギ系もダメだし魚もイマイチだしな。甘いものばっかで虫歯の心配をしてたよ。3歳なのにヤバいだろ?」
「・・・困った子だね。おば様のケーキが美味しいから・・・」


総はそんな私達の会話を黙って聞いていた。
父親になれなかった時間は取り戻せない・・・凄く悔しそうに見えた。



羽田に着いたら美作さんはもう車から降りなかった。
私達に「双子を頼んだからな!」って、ここでもやっぱり彼はお父さんだった。


ごめんね、美作さん・・・あなたに甘えてこんな事になって、辛い思いをさせて。

きっと、待ってる間も何も手に付かないだろうと思うと申し訳なくて涙が込み上げた。


「馬鹿!泣いてる場合じゃないだろう!しっかりしろ、つくし!」
「は、はいっ!!」


総の声で我に返って、私達は急いで搭乗手続きに向かった。




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