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勢いよくドアを開けて、息を整える間も無くベッドに向かった!

そこには「遅い!」って怒鳴る母さんと「早かったですね!」と言う加代・・・どっちなのさ!って思ったけど2人を無視してつくしの傍に走り寄った。

つくしは母さんに背中を摩ってもらいながら薄ら汗をかいて眉を寄せてる。少しばかり不安そうな引き攣った笑顔を見せて、片手で自分の服を握り締めていた。
「少し前に陣痛があったものですから」って加代の言葉に頷きながら、母さんと位置を交代してもらった。


「つくし・・・大丈夫?!」
「類、ごめんね、お仕事だったのに・・・いたたっ」

「仕事はしてないけどお土産は買ってきたから。無事に産まれたら食べさせてあげる、なんだっけ紅芋タルトとマンゴープリンと・・・兎に角沢山買ってきたから!」
「あははっ、楽しみだなぁ~!でもね、まだもう少し掛かりそうなの。いたたたっ・・・」

「そうなの?いつ頃になりそうなの?」
「真夜中か明日・・・かもって」

「えっ!そんなに掛かるの?判った、頑張る!!」
「・・・・・・類が何を頑張るのよ・・・」


そんな俺達を見て母さんと加代は「類に任せましょうか」「はい。あちらで珈琲でも」、と隣の控え室に入っていった。


「はぁ、落ち着いたぁ」ってニッコリ笑って身体の力が抜けるけど、10分もしたらまた全身に力を入れて痛みに耐えてる。その度に慌てて腰を摩って「頑張れ!」って声を掛けることしか出来ない俺。
落ち着いたら水分補給させて、兎に角リラックス出来るように楽しい会話をしようとするけど、こういう時に限って何も頭に浮かんでこない。

結果・・・黙って見つめ合ってるうちに次の痛みが襲ってくる。
本当に役立たずだな、とかなり落ち込んだ。


「はぁはぁ・・・今、赤ちゃん何してるんだろう・・・ね。早く出てこないかなぁ・・・いたたた!」
「た、多分産道って1つしか無いから迷子にはなってないと思うけど」

「・・・ありがとう、類。そんな馬鹿な事言ってくれて・・・」
「いや、それほどでも」


そうして俺が戻って来て1時間後、宮崎からつくしのお母さんが駆けつけて来た。
この人も慌てて来たのかチグハグな格好で、バッチリメイクの母さんに比べて中途半端な化粧・・・ベッドで寝ているつくしの傍まで転げるようにやって来て、心配そうに見下ろしていた。

そしてすぐに俺の前に来て頭を下げ、身内が揃って上京できなかった事を詫びていた。


「花沢さん、私だけでごめんなさい!会社が再出発してから漸く軌道に乗り始めたので、主人も進も手が離せなくて。あの、つくしの祖父ももうあまり動けなくて・・・よ、宜しくと申しておりました」

「お義母さん、わざわざ遠いところからありがとうございます。実のお母さんが傍に居てくれるだけでつくしも心強いと思います。もう少し時間が掛かりそうですがこの部屋で寛いでいて下さいね」

「はい!お言葉に甘えて・・・あっ、これ宮崎のお土産です。皆様で召し上がって下さい」


差し出されたのは「なんじゃこら大福」・・・思わず叫びそうになった。


「つくし・・・!頑張るのよ!」
「お母さん、わざわざありがとう・・・うん、頑張るよ!類も帰って来てくれたし・・・はぁ、結構・・・辛いのね、陣痛って」

「そうね、母親になる1番初めの試練だからね!でも、これを乗りこえたら可愛い我が子に会えるからね!」
「うん、そう・・・ね・・・痛いっ・・・ううーーっ!」

「つくし!」
「つくしちゃん?!」
「つくし、そろそろじゃないの?」

「看護師を呼んで参ります!!」


つくしの陣痛間隔が随分短くなって痛みも強くなったから、ここで予定より早く分娩待機室に入った。
俺が立ち会うのはもう少し後・・・廊下で待つように言われて、3人はソワソワしながら椅子に座っていたけど、俺は立ったままドアの外でつくしに「頑張れ・・・!」と言葉を掛け続けた。


どのくらい経っただろう・・・1分が1時間みたいに長く感じられてイライラしながら中の気配を感じていたら、急にドアが開けられた。

「お父様、お立ち会いいただけますか?」、看護師のひと言と同時に渡された白衣。
それをバサッと着たら3人に「倒れないでね!」と同時に言われ、俺はそれに頷いて案内されたドアから中に入った。


消毒を済ませてその部屋に入るとつくしが分娩台に居て、真っ赤な顔して息を荒くしていた。

「お父様は頭の方で支えてあげて下さい!」

そう言われてつくしの頭の方から顔を覗き込んだけど、本人はもうそれどころじゃなくて痛みのあまり顔を歪めまくり・・・俺の方を見る余裕もなかった。
「つくし、頑張れ!ここに居るからね!」、その声に軽く頷くだけで会話にはならない。


それでも両手を伸ばしてつくしの腕を持つと、つくしはサイドのバーから手を離して俺の手を握った。

「る、いっ!!ううーーっ!」
「つくし、つくし!」

他に何を言えばいいのか・・・!頭が真っ白になって名前しか呼ぶことが出来ない。つくしも呻き声の他には俺の名前をたまに呼ぶだけで、涙なのか汗なのか判らないものでぐちゃぐちゃだ。
本当は俺がすればいいんだろうけど、つくしが腕を離さないから看護師が彼女の顔を拭いていく、その時に「もうすぐですからね」と耳元で囁いて行った。


もうすぐ・・・もうすぐ会える。
そう思うと俺自身も緊張して身体が強張った。

何処にこんな力があるんだってぐらいつくしの指が俺の腕に食い込んで、そこに痕が残るほど!燃えるような熱い手が汗で滑るけど、それを何度も掴み直して歯を食いしばっていた。


やがて医師が現れて最終段階に入り、つくしの苦しそうな声と「頭が見えてきました!」の声・・・!

「花沢さん!大きく息吸って!呼吸法習ったわよね?行くわよ!」
「はぁはぁ・・・はぁ、はいっ!」

「力を入れ過ぎないでゆっくり息を吐いて・・・赤ちゃんはすぐそこまで来てるわよ!はい、もう1度!」
「うううっ・・・!ああっ、あああぁーーっ!!」

「そう!大丈夫・・・頭が出たわ!」
「つくし、頑張れ!」


・・・ふぉぎゃあ・・・
    ふんぎゃああーーっ!!おんぎゃああーーっ!!



可愛い産声が分娩室に響いたのはその直後だった。
次の瞬間、つくしの身体からガクッと力が抜けて、俺の腕は軽くなった・・・でも、俺は体勢を変えることも出来なくて、呆然とその光景を見ていた。


看護師の腕の中に赤味がかった肌の子供がいる。
その子が凄い勢いで泣き出して、この部屋から拍手が起きる。

つくしが泣いてる・・・真っ赤な顔して、それこそ子供みたいに泣いてる。
俺だけが動けずに両手をつくしに差し出したまま突っ立ってる・・・でも、頬には何かが流れていった。


「おめでとうございます。男の子ですよ」

「・・・男・・・男の子?」


俺の腕に渡された小さな「命」・・・頼りなげで軽くて、でも温かくて愛しい「宝物」。

くすっ・・・つくしによく似てる。
俺によく似た女の子じゃなかったね、なんて言いながら新しい家族に初めてのキスを贈った。

そしてつくしの胸の上にも赤ん坊を置いて、彼女はわんわん泣いて生まれたての我が子に頬を寄せた。


「つくし・・・本当にありがとう。あんたもこの子も俺の宝物だからね」
「・・・うん、類・・・傍に居てくれてありがとう・・・」




**




「そうなの~!!男の子だったの~!!早く見に来てね、パパ!うんうん、待ってるから!」

母さんが父さんに連絡する歓喜の声。

「えぇ、無事に産まれましたよ。はい、つくしも問題ないわ・・・男の子です・・・えぇ、良かったわ」

牧野のお義母さんが宮崎に出産報告。

『専務、無事に産まれましたぁ!私によく似た女の子でしたぁ!間に合って良かったぁ!専務、仕事を中断してくれてありがとうございます~!!』

女児出産を報告してくる号泣の藤本。

『もう凄く可愛いんですよ!我が子のようです~!今度からちょくちょく様子を見に来ますので宜しくお願いします~!』

3匹の仔犬と対面した笹本の満足気な声。


それが20時・・・結局、琥珀と藤本の奥さんとつくしの出産日が同じ。つまりこの先毎年誕生日が同じって事になった。
まぁ、いいけどね・・・目出度いことだから。
それよりもクタクタのつくしが寝てるんだからそっとしてくれればいいのに。


特別室に戻ってきたつくしは大仕事を終えたから安心して爆睡・・・俺の手を握ったままスヤスヤと寝息をたてていた。

もうすぐしたら父さんもやって来て、きっとここで大泣きだろう。
早く2人きりになりたくて、賑やかな女性3人組みを苦笑いで見ていた。





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2019/06/14 (Fri) 01:14 | EDIT | REPLY |   
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2019/06/14 (Fri) 07:07 | EDIT | REPLY |   
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2019/06/14 (Fri) 10:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは。

はい♥跡取り誕生でございます♥目出度いっ!!
名前は・・・今回出ませんでしたね💦明日かな?(読者さんに聞くなよ💦)

同じ頃に出来たお子様なので、お誕生日も一緒にしてみました(笑)


そのお土産(笑)
画像見ただけでお腹いっぱいでしょ?

実際の大きさを見てみたいもんです。宮崎・・長いこと行ってないなぁ・・・。
大分までは結構行くんですけどねぇ。

因みに私、苺大福が無理なんです💦
苺とあんこは別けて欲しいタイプなんですよね💦だからちょっと無理かも(笑)




2019/06/14 (Fri) 13:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは!

おおおーっ!おめでとうございます(笑)
プリン(笑)抹茶プリンじゃないですよね?

そう言うものもあるんですねぇ・・・特注なのかな?売ってるんですか?

まさか・・・ビオラ様が食べてお祝い?(笑)まぁ、それも有りですが♥


ほほぅ!そんな袋入りのがあったんですか?紅芋タルトは何となく判るけど・・・(笑)
もう一つの味の想像が出来ません。

ちなみにガジュマルって言うバウムクーヘンの味も想像出来ません・・・美味しいのかしら(笑)

2019/06/14 (Fri) 14:05 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんにちは。

はい!生まれました~!
もうこれまでに何回もお産のシーンを書いたので(笑)
毎回同じだなぁと感じながらですが、やっぱり生まれた後のパパの疲れた時を書くのが好きです(笑)

今回は男の子♥

名前は・・・・・・気が付くかなぁ、皆さん(笑)気が付いてくれると嬉しいけど。


もうすぐラストです♥
ドタバタの花沢家ですが、最後まで応援、宜しくお願い致します!

2019/06/14 (Fri) 14:11 | EDIT | REPLY |   

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