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plumeria

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紫音と花音は喋り疲れて総の腕に寄り掛かってウトウトし始めた。
「もう寝かせようか」と、声を掛けて奥の間に敷いてあるお布団まで抱きかかえて行き、そこで1つのお布団に2人を寝かせた。

「おやすみなさい」って声が聞こえたのかどうなのか・・・2人はあっという間に寝息をたて始めた。


「・・・寝たな」
「うん・・・私もこうやって見るのは初めて・・・」

「・・・ガキだな、やっぱ」
「ふふっ、3歳だからね・・・」


あどけない顔でスゥスゥ寝息をたててる双子を総は真上から愛おしそうに見ていた。
花音の髪の毛が口元にあるからって静かに手を伸ばして退けてやり、その後でそっと髪を撫でたり・・・その時に花音が「ん・・・」って目を擦ったら慌てて引っ込めて。

紫音は片手が布団から出てるから私が中に入れてやると、そのまま疼くまって花音の方に身体を向けた。
今でもこんなにくっついて寝るんだって思うと笑いが出た。産まれた時には病院のベッド、別々だったのにね・・・。

美作さんと仁美さんを恋しがって泣かれたらどうしようかと思ったのに、それもなくて少しホッとした・・・それが正直な気持ちだった。


「・・・つくし」
「ん?あっ・・・ダメだよ、子供が起きるよ?」

「起きねぇだろ?これだけ爆睡してんのに」
「あっ・・・んっ」


今度は総が私を抱き締めてキスをする。
目の前には双子が寝てるから目を開けられたらどうしようと焦るのに、安心したのと凄く嬉しいのとで私はすぐに彼を受け入れてしまった。

ザラリとした感触・・・生温い総の舌が私の歯列を舐めるように動いていって、唾液の混ざり合う音が静かな部屋に響く。
そのうち浴衣の上から総の大きな手が胸を揉んできて、塞がれた唇から声が漏れ始めた。
「右手・・・縫ったばかりなのに」って唇が離れた時に呟いたら「左手も器用だから・・・」だなんてにっこり笑って・・・!

そして総の手がスルッと浴衣の中に入って来たとき・・・「失礼します」、と女将さんの声が聞こえた!!


「うわあぁっ!総、離れてっ!!」
「・・・・・・💢!」

吃驚し過ぎて「離れて!」って叫んだ割りには自分から総を突き飛ばし、急いで乱れた浴衣を直した。総は着崩れてなんかなかったから、ブスッとした顔で立ち上がると部屋の入り口まで行ってくれた。

・・・・・・心臓に悪い!焦った・・・!


双子は全然目を覚まさない。それを確認したら広間の方に戻った。

女将さんは総の後に付いて入って来て、私達の前に座った。
こんな時間に「旅館の女将の挨拶」である訳がない・・・今回の事件についての説明を求めに来たんだとすぐに判った。とてもお客さんに対して向ける目じゃなかったから。


「お泊まりいただいてるのに失礼かと思うけど、ここは許してくださいな。それで、一体何がどうなったの?吉本さんは今何処にいるんだい?」

「女将さん、本当にご心配掛けました。それに総てが片付いてからじゃないと来ないでくれって言われたのに連れて来ちゃってごめんなさい・・・」
「申し訳ありません。他に泊まっても良かったのですが、彼女を助けて頂いた旅館をどうしても見てみたかったものですから」

「いや、それはさっきも聞いたから・・・子供達は何処でどうしてたの?」


女将さんの質問に、総がゆっくり説明を始めた。

吉本さんが指定した「思い出の場所」・・・私にプロポーズした港がその場所だと思ってそこに行くと彼が現れ、総がその間に加部島の家を探し当てて子供達を発見。
縛られたりとかの暴力は全然受けていなかったから、比較的元気で機嫌も悪くなく、自分たちは旅行に来てる程度の感覚で古い家であの人が私を連れて帰ってくるのを待っていた・・・そう言うと「馬鹿な男だねぇ!」と、以前の彼を知ってるだけに悔しそうだった。

そこには時限式の発火装置が作ってあって、最悪思い通りにならなかった場合は家に火をつけるつもりだったみたいだと話したら身体を震わせていた。


「彼の怪我はその時に窓硝子を割って侵入した時のものなんです。まだ3歳だし、どうやら鍵を開けられないように小細工されてたみたいで・・・」
「港での状況は彼女に持たせた無線で確認はしていたんですが、子供達の心に出来るだけ傷を残さないようにと・・・それだけを考えて必死でしたので」


「そうですか、そうだったんですか・・・なんて恐ろしい事を・・・!子供達に何もなくて良かった・・・はぁ・・・!」

両手で顔を覆って泣き出した女将さんの背中を摩りながら「ごめんね」と何回言ったことか。
こんなに年老いた人に心配掛けて申し訳ない・・・楽しい宿泊じゃなくて申し訳ないと、何回も謝った。


「西門さん・・・でしたね?」
「はい」

「・・・あなたの家がどのようなものなのかなんて私にはどうでもいい事なんですよ。どのぐらい大きくて、そのぐらい歴史があって、どのぐらい敷居の高い家なのかは存じませんが、この子の事は本気・・・なんですね?」

「勿論です。その為にここまで来ました。牧野も子供達もきちんと西門に迎えるまで闘います」

「そのお心に変わりはないと、この老婆に誓えますか?何があってもこの子を幸せにすると約束してくれますか?」

「お約束します。女将さんに私の事を信じて頂くのに時間が掛かるとも承知しています」

「絶対に、絶対に泣かせないと・・・!」
「女将さん、落ち着いて?私は彼を信じてるんだから」


身を乗り出して総を問い詰める女将さんの身体を押えて、今度は「大丈夫だから」と繰り返した。そんな私を涙目で見上げて悲しそうにするけど、私が笑顔を見せると「判ったよ・・・」って座り直してくれた。
そんな女将さんに総は両手を畳につけて一礼。流石、そう言う所作は綺麗で真摯な姿勢が伝わってくる・・・だから女将さんも何も言わなくなった。


「・・・それでは今日はごゆっくりお過ごしください。明日、帰る前に西門さんにはお見せしたいものがあります」

「・・・は?今ではなくて?」
「帰る時で結構。それと・・・コホン!」

「・・・・・・?」

「ここではお立場を弁えてお休みください!そう言う事は・・・許しません!」

「・・・ぷっ!」
「・・・・・・・・・マジで?」


そんなの、総には通用しないと思うけど?




*********************


<sideあきら>

「警察が来る前に・・・お別れしましょう、あきらさん」

仁美は美作家に傷をつけたくないと判断したんだろう・・・そんな言葉を出してきた。
それには首を振り、今後の事はもっと冷静に話し合おう、そう言えば表情はまた曇ってしまった。


「仁美の気持ちは判る・・・美作の事を考えての事だろうけど、それは気にしなくてもいい。極秘で進めるからこの家で事件が起きたなんて公には知られないはずだ」

「・・・・・・でも私の気持ちは変わりません。あきらさんに優しくしてもらう資格なんて私にはないのよ」
「そんな資格なんて俺は求めてない。納得するまで話さないと嫌なだけだ」

「子供達は知らなくても私の罪は消えません・・・もうこれまでと同じような気持ちで過ごせないわ。そうなったらあの子達は私の変化に気がつくわ」
「何もかも決めつけて話すんじゃない。確かにこうなったら・・・」



その時、離れに吉本到着の連絡が入った。
同時に警察も屋敷に着いたと・・・それを聞くと仁美の方が先に席を立ち、離れを出た。


数人の警護担当者に付き添われ逃げる隙も与えられなかっただろう、吉本はすっかり気力を失って、汚れた格好のまま呆けた感じでフロアに座らされていた。
俺の後ろにはお袋と帰宅してきた親父、その後ろに仁美が立っていた。
そして極秘に呼んだ警視庁の人間数人・・・誘拐事件として被害届を出し、今後は身柄をそっちに引き渡すためだ。


「・・・馬鹿な事をしたな、吉本。こんな事をして牧野と幸せに暮らせると本気で思ったのか?」
「・・・・・・・・・」

「あいつに惚れたって気持ちは判るが、無理矢理人の心を動かそうとするなんて4年前と変わらないじゃないか!そのせいでどれだけのものを失ったのか判らなかったのか?!」


「・・・もう2度と会わない、それでいいだろう。あの時は彼女が逃げたっきりだったから気持ちに踏ん切りが付かなかった・・・それだけだ」


吉本は全然俺と顔を合わせようなんてしなかった。
虚ろな目でフロアを見つめ、ボソボソと小さな声で囁くようにしか声を出さなかった。

そしてここで警察が今回の事件の始まりから簡単に確認し始めると、屋敷を突き止めて彷徨いたことはすぐに認めた。
この先からは仁美との関わりになる・・・彼女は覚悟したように少し前に出てきて、自分にも警察から事情を聞かれるのだと思い込んだようだった。

それには総て正直に答えよう・・・そう言う目をしていた。

親父もお袋もそんな仁美に目を向けたが庇えるものじゃない・・・口を真一文字に結んで再び視線を吉本に移した。


「吉本渉、この度の犯行動機は判ったが、当日の協力者は?」
「・・・そんなヤツは居ない。俺は1人で計画を立てて適当に見付けた女に金を渡してトイレから子供を連れ出したんだ」

「全部1人で企てたのか?」
「あぁ、そうだ・・・誰にも計画は話してはいない。探すんならあの女を捜すんだな。トイレから子供を連れて来たヤツ・・・名前も聞いてないし顔も覚えてないけど」


警察の捜査担当者は顔を見合わせて、「詳しい事は署で聞こう」と吉本の両脇を抱え込んだ。
それを見て仁美が一歩出たのを押えたのはお袋。「でも・・・」と、小さく呟いた仁美に首を横に振って制止した。

引き摺られるようにしてリビングから出て行く時、吉本はチラッと仁美の方に向き直って、初めて俺達と目線を合わせた。


「奥さん・・・屋敷を彷徨いて怖い思いさせたんだって?俺の目的はあんたじゃなかったからさ。2度とこの周りには現れないから安心してくれ。すまなかったな・・・」


吉本はこの場では仁美を共犯だと言わなかった。
だが、この後の捜査でどうやって辻褄を合わせる気なのだろう?それも東京に連れて来られる間に考えていたんだろうか。

ただでさえ小柄な吉本が一層背中を丸めて小さくなって、捜査員に囲まれて玄関から連れ出された。


仁美はそれを泣きながら見ていた。
そうなっても自分の罪は消えないと・・・そんな涙だった。





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