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plumeria

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飛行機が東京、羽田に着いたのは午後3時。

機内で転た寝をしていた双子は目を擦りながらふらふらしていた。
福岡で買ったお土産の袋は花音が手放さないから持たせていたけど、握り締めすぎてぐちゃぐちゃ・・・紫音は元々風邪気味だったからなのか軽く咳き込んでいた。

そしてロビーにいく途中通路で花音がぐずって泣き出して踞り、それを見た紫音まで足を止めて座りこんだ。


「大丈夫?もう東京だよ。もうすぐお家だからね」

「・・・もうあるけない・・・つくしちゃん、ふぇ・・・」
「かのん、がんばれ・・・っくしゅ!!」

「仕方ねぇな・・・ほら、来い!」


そう言いながら総が紫音を抱っこして、私が花音を抱っこして歩いた。

呼子だったらこの姿を人に見られても問題無かったけど、流石に東京だと気になる・・・チラッと総を見上げたけど、この人は気にもしてないようだった。
私の事は誰も判らないだろうけど総は何度もメディアに顔を出してる人だ・・・誰かが気が付いて騒ぎ出したりしないだろうか。


そう思ったら自然と総から少し離れて歩いてしまう。
すれ違う人が振り返って彼を見る度にバレたんじゃないかとドキドキする・・・そしてその人達の「イケメンパパだね!」って声が聞こえると私が照れてしまう。

総の肩越しに見える紫音がニコッと笑って手を振るから、私もそれに応えて手を振るけど、そんな事をしたら連れだって判るんじゃないかと悩んだり。
とにかくバクバクと五月蠅い心臓と、全身ぐったりして余計重たい花音を抱えて必死に総の後をついて行った。

もうすぐタクシー乗り場だって時には既に数十メートルも離れてて、振り向いた彼に「何してんだ?」って怒られた。


何とか騒ぎにならずに空港を出られたみたい・・・?
周りを見たけど特におかしな様子は無いし、総の名前も聞こえてこない。自分が1番挙動不審だなって思いながらタクシーに乗った。


総が運転手さんに告げたのは美作邸の住所・・・仁美さん、どうしてるんだろう?




*********************


<sideあきら>

もうすぐ双子が帰ってくる時間になって、俺は仁美の元に向かった。
このまま子供達に会わずにこの屋敷からいなくなることは出来ない・・・その方が双子の心に傷を残してしまうから。

それを仁美に告げるために離れのドアを開けた。

すぐに出てきたのは小夜で、仁美は奥の個室に閉じ籠もっていると教えられた。
昼食は全然食べてないし、それからは言葉も交わしていない。虚ろな目はあの時の牧野を思い出す・・・小夜は震えながらそう言った。


「ずっと付き添わせて悪かったな。少し休んで来い。暫く2人で話をするから」
「判りました。せめて何か飲むようにお話しいただけませんか?このままでは倒れてしまいますから」

「・・・判った。仁美の好きな紅茶でも作るよ」
「お願いします、あきら様」

小夜も殆ど寝てないんだろう・・・目の下にクマを作って窶れた顔をしていた。


小夜に言われた通り先にキッチンで紅茶をいれ、それにミルクを入れて仁美の好きな味にした。片手にそのカップを持って部屋をノックしたが今日も返事はない。
彼女の姿が想像出来るだけに、それを見ることに勇気が要る・・・少し深呼吸した後で「入るぞ」とひと言声を掛け、部屋に入った。


彼女の姿はすぐに目に入った。
いつも座る場所で俯いたまま顔も上げない。その横まで行ってテーブルに紅茶を置いた。

片手を差し出すと力なく顔を上げて俺を見る。儚げな目は今にも総てを閉ざしてしまうんじゃないかと思うほど弱々しかった。
俺の手を取ろうとはしないから、こっちから膝の上に置かれた手を持つと、その手は氷のようだった。

「こっちで紅茶を飲まないか?暖房が効いててもこんなに手が冷たい。何も食わないからだろう?」
「・・・・・・いいんです、もう・・・」

「何がいいんだ?ほら、立って・・・もうすぐ紫音たちが帰ってくるのに仁美がそんなんじゃあいつらが泣くぞ?」
「・・・帰ってくる・・・・・・もうすぐなんですか?」

「あぁ、昼頃福岡空港を出たはずだ。1時間40分しか掛からないから、羽田からタクシー飛ばしたら夕方にはここに着く。俺達の前に2人が戻って来るんだ」

「・・・そう、なのね」


立てと言っても身体に力が入らないから抱きかかえるようにして椅子に座らせ、その前に紅茶を差し出した。
「仁美の好きな味だ思うけど?」・・・そう言うと無表情のままカップに手を伸ばして両手でそれを包んだ。

小さなカップを持ち上げるのが精一杯みたいだったが、ひと口飲んだら小さく息を吐いた。
「美味しい・・・」と唇が微かに動いて真っ白だった顔に少しだけ赤味が差したような気がする。

もう1度飲んだら涙を浮かべて、また飲んだらそれが頬を伝って・・・最後まで飲んだらほんの少しだけ笑った。


「双子が帰って来たらちゃんとお帰りって声を掛けよう。面白かったかって聞いてやって、よく頑張ったねって言ってやろう・・・その言葉を楽しみにここに戻ってくると思うから」

「・・・出来ないわ。無理よ・・・だって私、つくしさんに会えない・・・もう会えないわ」

「牧野はそんなヤツじゃない。そう言うとまた仁美は誤解するかもしれないけどな。
何て言うのかな・・・恋愛感情じゃなくて、本当に牧野って不思議なんだよ。強くて優しくて前向きで・・・何にも持ってないように見えて、1番大事なものを持ってるんだ。
それは人を幸せにする笑顔と人を許せる心・・・俺はそう思ってる」

「人を許せる心・・・?でも、私のした事は無理よ・・・あんな酷い事・・・」

「でも怪我1つせずに助け出せた。それに紫音たちは何も知らない・・・その時点で牧野はなんの要求もないんだと思う。この前の謝罪とは別に、真実を話して本心から許しを請えばあいつは判ってくれると思う」


それでも仁美は首を縦に振らなかった。
美作の両親にもこれまでと同じ気持ちで向き合えない・・・それは変わらないと言ってこの家を出て行くことを許してくれと言い続けた。

自分は実家にも戻るつもりはない・・・外国に行き、見知らぬ土地で1人になり罪を背負って生きていく、そう考えているらしい。



「楽しかったんです。幸せだった・・・あの子達は本当に自分の子供だと思って愛してきました。でも、もう終わり・・・母親役は終わったわ」

「仁美に無理を言ってここに住まわせる気はない。だけど離婚は考えない・・・考えるんなら別の方法を考えるさ」

「あきらさん?そんな・・・私はもう、終わりにしたいのよ?!」

「離婚はしない。協議離婚は不成立だ。仁美が不満なら調停離婚で俺を訴える?」


俺の言葉に困った仁美の顔・・・それが凄く可愛く見えた。
だから座ってる仁美の横に行き、その疲れ切った身体を横から抱き締めてやった。

「お人好しすぎるわ・・・」って俺の腕の中で泣き出した彼女に、しばらくこの屋敷を出ることだけは許した。ただし外国じゃなくて日本にあるうちの別荘。
数人の使用人の同行と、それを自分の口で子供達に説明すること・・・それが条件だと言った。


「それとな・・・この機会に紫音たちに本当の両親の事を話そうと思う。牧野と総二郎・・・この2人が本当の親だって教えてやろうと思うんだ。そしていずれは西門の子供になる・・・小さくて理解出来ないかもしれないけど、今話せば西門に戻る時には落ち着いてると思うから」

「・・・大丈夫なんですか?西門家は・・・」

「それは今からだ。少しずつ調査は進んでるから意外と早くに総二郎の方もカタがつくかもしれない。あいつらと話し合って今後の事は決めないといけないけど、紫音と花音は本当の居場所に戻してやろう・・・な」

「・・・そうですね」



この後、仁美とずっと昔話をしていた。
赤ん坊だった紫音と花音の思い出、困ったこと、笑ったこと、泣いてしまったこと・・・それも全部楽しかったな、と言えば泣きながら笑っていた。
歯が生えた日、初めて言葉を喋った日、初めて立った日・・・それのどれも覚えていると仁美は誇らしげに言った。


そして窓から入る日差しが穏やかな色に変わる頃、屋敷に賑やかな声が響いた。


「パパァー!ママァー!!ただいまぁ!」
「何処にいるの?パパァ?ママァ?!おみやげかってきたよ~!!」


仁美の目から大粒の涙が溢れた瞬間だった。





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