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plumeria

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「暫くしたらあきら君と仁美さんがここに戻って来ると思うから待っていなさい。本当に辛かったのはあなた達だって思うけど、うちも色々と大変だったの。あきら君なんて見てて可哀想だった・・・この度の件も自分に責任があるなんて言い出してね」

「美作さんに?そんな事は全然・・・!」

「・・・そうね、つくしちゃんには判らなかったかもしれないわ。あきら君にも不器用な部分があってね・・・」


つくしはこの夢子おばさんの言葉が判るような、判らないような感じで戸惑っていた。
でも俺には何となく判る・・・あきらがつくしに対する感情を上手く整理できなかったんだ。
限りなく恋愛に近い友情、友情だ思い込んでる恋愛感情・・・こいつを自分でも整理できない状態だったけど、仁美さんには安心を求めたんだ。

落ち着きのある仁美さんに甘えた・・・そして黙っていることが優しさだと思ったんだ。
それを否定はしないし、あきらが間違っていたとは言わない。ただ少しだけ見る方向がズレた・・・そのぐらいの事だったんだ。


「私は疲れたから自分の部屋に戻って食事も1人で済ませるわ。もうこれ以上の騒ぎはイヤだから、全員揃っても喧嘩なんてしないでよ?」

「・・・あぁ、そんな事にはならないよ」
「おば様!本当にごめんなさい・・・でも、ありがとうございました!」

「ふふっ、いいのよ。じゃあね」


相当草臥れたんだろう、あの夢子おばさんがヨロヨロしながら階段を上がって自分の部屋に戻って行った。




この後、牧野と一緒に屋敷に入ってリビングで待っていたら、あきらと仁美さんが1人ずつ抱っこして離れから戻ってきた。紫音の腕には福岡空港で買った土産の紙袋がぶら下がっている。
そしてテラスから中に入って来て、仁美さんは深く頭を下げていた。

その目は真っ赤・・・余程泣いたのか顔色は青白かったのに目元だけ真っ赤に腫れ上がっていた。
あきらが紫音を降ろしたが、まだ物足りなかったのか抱いてくれとせがむ。花音は仁美さんの腕から降りようともしなかった。必死に首にしがみついて「イヤだ!」って首を振る。

チクンと胸が痛むのは気のせいじゃない・・・さっきまでは俺とつくししか居なかったから纏わり付いていたが、あきらと仁美さんを見た瞬間その立場は逆転・・・それをすげぇ悔しく思った。


でも、牧野はニコニコしてる。
こいつはもう見慣れているからなのかもしれない・・・自分の子供が別の人間に抱きつくのを本当に幸せそうな目で見ていた。
そして横の俺が怖い顔してるのに気が付いて「怖がられるよ?」なんて言いながら小突いてきた。


「パパ!これ、ひよこさん!かわいいでしょ?」
「ママも食べてね?」

「あぁ、ありがとう・・・なぁ、紫音、花音・・・大事な話があるんだ。聞いてくれるかな?」

「だいじなおはなし?」
「おもしろいおはなし?」

「あはは・・・面白くはないかもしれないな。でも、これはお前達にとってすごく大事なことだから、難しいけどちゃんと聞いて欲しい。聞けるか?」

「うん!」「・・・わかった」


あきらの言葉に俺も牧野も呆然とした。
まさかもうここで言うのか?そう思って「あきら?!」って声を掛けたら、軽く頷かれた。
その時の目はすげぇ真剣・・・仁美さんと今まで話し合って決めたんだと判断し、俺とつくしも黙って双子の反応を見守ることにした。

そうは言っても3歳・・・この歳でどれだけ理解出来るのかは疑問だったが。


「今回どうしてこんな旅行をしたと思う?」

「え~?つくしちゃんとあそぶため?」
「うん!ママがそう言ったもん。つくしちゃんとあそんでおいでって!」

「じゃあどうして総二郎が行ったと思う?どうして4人でお泊まりしたか判るか?」

「わかんなーい!だってあのお兄ちゃんもそうちゃんの事は言わなかったよ?」
「きゅうにそうちゃんが来たんだよ?」

「・・・そうだな。それでさ、牧野と総二郎と一緒に居て楽しかったか?」

「「うん!!楽しかったぁ!!」」


その返事を聞いたらホッとする・・・でも、牧野はこの後あきらがどう言う風に説明するのかを恐れていた。膝の上に置かれた手がまた震えてる。だからそこに俺の手を重ねて震えを止めてやった。
そうしたら戸惑った目をして見上げてくる・・・「大丈夫だ」、ここでもこの台詞しか言えなかった。

仁美さんもあきらの横で比較的冷静な顔をしている。
何か覚悟を決めたようなさっぱりした目・・・紫音と花音をその目はしっかりと見ていた。



「実はな、ママは暫くこの家から居なくなるんだ。少し身体を壊したから田舎でゆっくりする事にしたんだよ」

「・・・え?ママ、いなくなるの?」
「どのくらい?ねぇ、どのくらい?こんどのパパのお休みにはかえってくる?」

「いや、すぐには帰って来られないんだ。次にいつ会えるかはまだ判らない」
「いやだ!!そんなのいやだ!」
「かのん、いっしょに行くぅ!」

「2人とも、大事な話って言っただろ?まだ続きがあるからよく聞いて?」


双子の反応は当然のこと・・・急に母親がいなくなると言われて紫音は怒りだし、花音は半泣き状態。仁美さんも目が潤んできたのか片手を口元に当てて噛み締めた唇を隠しているように見えた。

あきらは胡座をかいて座り、右手で紫音、左手で花音の手を握った。
双子にはさっきまでの笑顔はない・・・逆に不安になって2人とも口がひん曲がっていた。


「それでな・・・2人にパパとママがいなくても大丈夫かなって思って試してみたんだよ。2人ともよく頑張ったな」
「うん・・・だってつくしちゃんと会えるから」
「かのん、しおんが居たから泣かなかったよ?」

「・・・うん。それで・・・これまで黙ってたけどな・・・」


あきらの言葉が止まった。
いくら子供達がいない所で練習しても、いざ本人達の目を見たら言えなくなったのかもしれない。ギュッと唇を噛み締めて何度か俯いたり息を吐いたり・・・子供達もあきらのこんな姿を見たことはなかったんだろう、少し驚いてるようだった。

その時、説明を代わったのは仁美さんだった。
あきらの横に座って、真っ直ぐ子供達を見つめて言葉を出した。


「実はね・・・私達は紫音と花音の本当のパパとママではないの。あなた達の本当のご両親から預かってうちで育ててたのよ?」

「・・・ママ?・・・ママがママじゃないの?」
「ママはママだよ?かのんのママだよ?こっちはパパだよね?」

「うん・・・育てのパパとママなの。あなた達のご両親はね、つくしさんと総二郎さんなの」

「・・・つくしちゃん?」
「・・・そうちゃん?」

「あぁ、そうだ・・・お前達の母親は牧野で父親は総二郎・・・これは本当なんだ」

「「・・・・・・」」


双子は完全に固まった。
産みの親と育ての親と言われてもその区別なんて出来ない・・・なんの話をしているのか全然わかってないんだろうと思った。
でも俺達の方を振り返って見たり、あきらと仁美さんを見つめたりを繰り返し、「つくしちゃんがママ?」「そうちゃんがパパ?」って小さな声で呟いている、その姿は誘拐されていた時よりも可哀想に見えた。


「つくしさんもね、昔、身体を壊してあなた達を育てられなかったの。だからここで預かっていたのよ?そして総二郎さんにもお家の事情があってあなた達を引き取れなかったの。決してあなた達をキライで離れていたんじゃないのよ?」

「この度の旅行が本当の家族の時間だったんだ・・・それが楽しかったって聞いて安心した。これからは総二郎と牧野がお前達のパパとママだからな?でも、俺達もパパとママ・・・それはこれからも変わらない。お前達には2人ずつパパとママが居るって思ってくれないか?」

「パパがふたり?」
「ママもふたり?」

「そうだ・・・俺はこれからも紫音と花音のパパでいたい。本当のパパは総二郎になるけど、忘れないで欲しいからさ」
「ママも同じよ。暫くお屋敷から居なくなるけど本当のママが居てくれるから安心して身体を休めることが出来るわ。そしていつか戻って来た時にママって呼んで欲しい・・・そう思ってるわ」

「パパはパパだよ!ママもママ・・・変わらないよね?」
「でも、つくしちゃんをママって呼ぶの?」

「ちがうよ・・・つくしちゃんはつくしちゃんだよ?」
「そうちゃんもそうちゃん・・・パパは・・・パパは・・・」


違うよ・・・そいつはつくしの胸にはグサッと突き刺さったのかもしれない。
俺が持ってる手がビクッと震えた。

そして次の言葉なんて聞きたくないと思ったのか俯いて子供達から視線を外した。俺からも髪の毛で表情は見えなかったが、指先の震えと、俺の手の甲に落ちてきた雫で泣いてるのが判った。


「紫音、花音・・・いきなりだから吃驚するよな。それはパパも判るんだ。だけど本当の事だからちゃんと聞いて欲しい・・・いつかは総二郎の家で暮らすと思うから、それまでは・・・」
「やだぁ!!」


あきらがそう言った時、その手を振り解いて立ち上がったのは花音・・・その目からボロボロと大粒の涙を溢したから俺達は全員言葉を失った。


「パパなんてだいっきらい!ママもきらい!!
そんなこと言うみんな、だいっきらい!!かのん、ここの子だもん!!ばかぁ!!」

小さな身体はテラスから庭に消えて行った。
それは余りに突然で、俺達がすぐに動けなかったほど・・・そして花音を追いかけたのは紫音だった。





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