FC2ブログ

plumeria

plumeria

-
「パパなんてだいっきらい!ママもきらい!!
そんなこと言うみんな、だいっきらい!!かのん、ここの子だもん!!ばかぁ!!」

「花音!待て、花音!」


心の準備が出来てない時に始まった説明・・・そして拒絶されることを恐れていた私はそれが的中して身体が動かなかった。
美作さんが花音を呼んだけど、動きの速い花音が庭に飛び出て行くのを誰も止められなかった。

そんな時にすぐに後を追いかけたのは紫音で、姿の見えなくなった花音を追い掛けて薄暗い庭の中に消えて行った。

「おい!ヤバいんじゃねぇか?外に出て行ったら・・・」
「いや、外には出られないから大丈夫だ。でも冷え込んでるから連れ戻さないと風邪引くな」

「・・・まさか今日話すと思わなかったぞ、あきら!」
「悪い。でももう仕方なかったんだ・・・仁美がこの屋敷を出るのは本当だから」

顔をあげたら仁美さんも苦しそうな顔で庭を見ていた。
そして美作さんの言葉で私達の方に向き直り、子供達が傍に居なくなったから改めて謝罪の言葉を告げられた。


「つくしさん、西門さん・・・この度は本当に申し訳ありませんでした。何度謝っても許していただけないことは判っています・・・それでも言わせて下さい。ごめんなさい・・・あなた達の子供さんを危険な目に遭わせたこと、お詫び致します。
いくら吉本に事実を聞かされたとしても、あきらさんを信じていれば問題なかったはずなのに・・・私の弱さなんです。本当にごめんなさい」

「いや、2人に何かがあったら話は別だが無事だったから・・・つくしももうこれ以上は・・・だろ?」
「・・・正直言えばまだ複雑です。凄く驚きましたし信じられなかった・・・仁美さんを信用していたから嘘だと思いたかった・・・。
でも落ち着いて考えたら、私もあなたに沢山の負担を掛けたんだって・・・それこそ凄い重荷を背負わせたんだって感じました」

「つくしさん・・・」

「総の言う通り、子供達が無事に戻ったので吉本さんの事は忘れます。仁美さんももう言葉にしないでください」


私の言葉に項垂れた仁美さんの背中を美作さんが撫でてあげる。
この2人の話合いは穏やかな方向に進んだんだと判った。そしてさっき子供達に話したことを説明してくれた。


「仁美は離婚するって言い張ったんだけど俺はそれを受け入れられないと言ったんだ。でもここで暮らせないという仁美の気持ちも判る・・・子供達と使用人は仁美の関与を知らないけど、両親は知ってるからな。顔を会わせたくないのは当然の心理だと思う。だから落ち着くまで那須にあるうちの別荘に仁美を住まわせることにしたんだ」

「那須に・・・本当にそうするんですか?仁美さん!」
「・・・たった1人でか?それで落ち着くのか?余計不安になるんじゃ・・・」

「不安にもあるだろうし心細いだろうがこれは俺達で話し合った結果なんだ。この屋敷から離れてこれまでのことを冷静に考えたいってことと、もう一つ理由があるんだ」

「もう一つ?なんだ?」

「・・・総二郎、お前は急いで紫とのことを終わらせないといけないだろう?出来るなら披露宴の前に片付けたい、そう言ってたよな?それが上手く行けば紫音たちを西門に連れて行くことが出来るかもしれない。英徳の幼稚舎に入れるつもりならもう1年と少ししか残ってないし、美作で登園させてたのが急に西門になるのは余計な噂を生む。無邪気な子供達の言葉って意外と容易く人を傷付けるだろう?そんな思いはさせたくない。
それに3歳であの反応なんだ・・・今以上成長したらあの子達は余計に美作から離れられなくなる、だから話そうと思ったんだ」

「その為には私があの子達にすぐ会える環境ではない方がいいと話し合いました。西門さんはもう少し時間が掛かるかもしれないけど、つくしさんはこれからずっとあの子達と一緒に住んで新しい絆を作るべき・・・そう考えたんです」


紫音と花音の幼稚舎だなんてまだ考えてもいなかった。
そのうち、なんて思っていたけどそうじゃない・・・もう色んなことが目の前に迫って来ていたんだと初めて感じた。

これが母親とは言え一緒に居ない私に足らないところ・・・それを思い知って情けなかった。


「とにかく2人を探しに行こう。何処かに隠れてるんだろうから」
「そうですね、紫音がいるから大丈夫だと思うけど」

この後私達は庭に出て、逃げた双子を探しに行った。




*************************




「花音!!紫音、何処だ!!」
「花音、出ておいで!紫音、返事してぇ!」

4人で庭に出て子供達の名前を呼んだけど、何処からも返事がなかった。
まだ1月の夕方・・・気温はかなり低くて、それじゃなくても風邪気味の紫音は咳き込まないかと心配だった。

テラス前の庭には双子の気配はない。
いつも遊んでいる中央の庭にも姿は無く、もしかしたら玄関から屋敷の中に戻ったのかと思ったが何処にもいなかった。
ただこんな事件が起きた後だから用心深い美作邸は正面の門にも裏門にも守衛が出ている。そこから誰も出ていないと言われた。


「もしかしたら・・・あそこかしら」

そう言ったのは仁美さんで、俺達に温室を指さした。
そこは夢子おばさんの育てている花専用の温室・・・双子はよくその中で遊んでいたらしいし、休憩出来るスペースもあると言われた。

そこに4人で向かって、静かに中に入った。

「花・・・」
「しっ!・・・声が聞こえる・・・」


名前を呼ぼうとしたつくしを制して俺達は耳を澄ませた。奥の方から泣き声が聞こえる・・・それと同時に紫音の声も聞こえてきた。
そっと近づくと温室の真ん中にあるベンチで花音が不貞寝して泣いている。その横に踞った紫音が慰めているようだった。
あきらも仁美さんも黙ってその様子を見守った。つくしも自分の口を手で覆って、片手は俺の腕を握り締めた。


「えっ・・・えっ・・・ぐずっ、うぇ・・・」
「かのん、もう帰ろうよ・・・パパたちがしんぱいするよ?」

「かえんない!!もう知らない!うわぁ~ん!!」
「・・・かのん、泣いちゃダメ。ぼくがいるから泣かないでよ、ね?」

「だって、パパがパパじゃないって言った!ママがママじゃないって言ったもん!そんなのイヤだもん!」
「パパはパパのままだって言ったよ?ママもだよ?」

「じゃあどうして本当のパパとママじゃないって言うの!」
「・・・それはわかんないけど・・・でも、つくしちゃんとそうちゃんだよ?かのんも好きでしょ?」

「・・・・・・すき・・・だけど」


紫音は自分でもよく判ってないけど、自分が兄だと思うから頑張ってるんだ・・・泣いてる妹を助けようとしてるんだろうな。
転がって顔をあげない花音の横で、背中に手を当てて一生懸命話し掛けてる。

あれは仁美さんやあきらの真似なんだろう・・・そうすることで花音が落ち着くと判ってるんだ。
ここは大人の言葉よりも子供同士の方がいいんだろうか、そう思って4人共が固唾を呑んで見守った。


「ママはもうママじゃないの?ねぇ、しおん、ママは本当にいなくなるの?」
「さっき言ったじゃん、なんとかのママって・・・本当のママがつくしちゃんで、ママは・・・えっと」

「ママは1人だよ?」
「ぼくたちには2人いるんだよ。ママとつくしちゃん・・・2人がママになるんだよ」

「双子だから?」
「えっと・・・そうじゃないけど、つくしちゃんが病気だったからママになれなくて、こんどはママが病気になったからつくしちゃんに戻って・・・あれ?」

「じゃあさ!パパはそのままでもいいじゃん!」
「そ、それはぼくに言われても・・・あっ!ママとパパはセットなんだよ。で、つくしちゃんとそうちゃんがセット、だからじゃない?」

「わかんない~!!うわぁ~んっ!!」
「かのん、泣かないで!ぼくはずっといるんだから!」



・・・すげぇ胸が痛かった。

あんなに小さいのに必死に妹を慰める紫音の姿・・・突然の事にこんがらがって泣き続ける花音。
大人の俺達のことなんてどうでもいい。今はこの子達の行き場のない苦しみを取っ払ってやりたい・・・そう思ったら自然と足が一歩出ていた。


「総・・・?」
「ん?あぁ、任せてくれなんて偉そうなことは言えないけどさ、少し話してくるわ」

心配そうなつくしをあきらと仁美さんに頼んで、俺は1人で双子の所に向かった。
鬱蒼とした植物を掻き分けてベンチまで近づくと、その足音で振り向いた紫音・・・花音に「そうちゃんが来たよ」って言うと、花音もムクッと起き上がった。

そしてこの子達を目線を合わせて座った。


「・・・・・・驚いたか?」

「・・・・・・うん」
「そうちゃん、本当にパパなの?」

「あぁ、そうだ。お前達は俺の子供・・・って言っても一緒にいなかったんだから、紫音と花音がパパじゃないって思っても不思議じゃない。それは仕方ないって思ってる」

「・・・本当のパパならなんで・・・」
「そうちゃん、今までどうして会いに来てくれなかったの?」

「ん~、それを言われるとすげぇ難しいな。でもな確かな事は1つある。お前達の本当のママのつくしが大好きで、それでお前達がこの世に産まれたんだ。だけど大人ってややこしくてさ、仕事でつくしに会えなくなったんだ。
そしてつくしも俺の仕事を気にしてお前達の事を言わなかったから、俺も紫音と花音の事を知ったのは最近だ」

「えっ?知らなかったの?」
「パパなのに?」

「ははっ、悪い!でもな、初めて会った時、実はすぐに判った・・・つくしの産んだ子供だってすぐに判ったんだ。それで許してくれねぇか?」

「・・・しおん、どうする?」
「知らなかったんなら・・・仕方ないの?」


この子達が大きくなったら・・・大人の恋が判るようになったら全部教えてやってもいいが、今は誤魔化すしかなかった。
だが誤魔化しちゃいけない部分はどんなに小さくても話さないといけない。理解出来ないことも判っていたが、こっちも必死だと伝えるには同じ高さで話さないと・・・そう思って真っ直ぐ双子の目を見つめた。


「今度は育ててくれたママが病気になったんだ。だからこれからは俺達が紫音と花音を幸せにしなきゃって事で本当の事を話したんだ。でも俺もパパって呼んでもらえるほどお前達の事を知ってる訳じゃない。紫音と花音もそうだろう?
だからさ、これからゆっくり時間をかけて仲良くならねぇか?俺とつくしとはこれからだけど、あきらと仁美さんを忘れろなんて言わない。ずーっと覚えてていいんだ。この先も甘えてもいいし、遊んでもいい。仁美さんの身体が治れば2人と会ったっていいんだ」

「ママに・・・会える?」
「お別れじゃないってことだよね?」

「あぁ、勿論だ。俺とつくしもこれから親ってもんになるんだ。だからあきら達に助けてもらって、4人でお前達を育てる・・・そんな感じだ。どうだ?少しは判ったか?」


「・・・わかんないけど・・・でも、でも・・・」
「えっと・・・ぼくたちにはパパとママが2人でいいの?」

「あぁ、そうだ。紫音、花音・・・俺にもお前達の事を沢山教えてくれよ。少しでも早くパパってもんになりたいからさ」

「「・・・うん、わかった!」」


どのくらい先になったら真実を話せるんだろう。
その頃はきっとつくしは西門にいて、この子達はあの屋敷に新しい風を送り込んでるかもしれない。

その頃は俺も胸を張って父親だと言えるようになってるだろうか・・・。


「じゃあ部屋に帰ろうか?土産のひよこ、食うんだろ?」

「うん!しおん、かえろう!」
「あっ、かのん、待って!」


そうして走り出したら見付けたあきらと仁美さん・・・双子は思いっきり抱きついていた。

俺はつくしと手を繋いで4人を後ろから見つめていた。
早くあんな風に歩きたいと、そんな夢を胸に抱きながら・・・。





d61a6515ab6e8116832c3eecb9688163_t.jpg
関連記事
Posted by