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plumeria

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紫音と花音はその後、私達4人に囲まれて空港で買ったお土産を配ってくれた。

その時に少し恥ずかしそうに「はい、つくし・・・ママ」って紫音がお菓子を手の平に乗せてくれて、花音は「はい!そうちゃんパパ!」って、急に元気になって総の手にもお土産を乗せた。

私は「ありがとう、紫音」って、初めて『君』を付けなかった。それにまた照れて仁美さんの背中に隠れた。それを美作さんが「こら!」って怒ると「だってぇ~」って笑ってる。
花音も私をジッと見るから「おいで、花音」・・・そう言うと、この子は嬉しそうに駆け寄ってきた。そして私の横に座り美味しそうにお菓子を頬張った。

総もこんなお菓子なんて好きじゃないのに頑張って食べてる。
美作さんと総の間に座った紫音は、また呼子の海の話を楽しそうに話していた。


それは絶対に夢見ちゃいけないと思っていた光景・・・まさかこんな形で実現するとはって自分でも不思議な感じだった。


でも判ってる・・・この子達はまだ完全に受け入れた訳じゃない。

本当に私が母親だと切り替えた訳じゃない。
さっき温室で総が2人に話していたようにゆっくりじっくり・・・私達はこれからがスタートであって「家族」になるには相当な時間が掛かるんだ。

焦っちゃいけない。
毎日少しずつ・・・確実に前に進めばそれでいいんだ。



いい加減はしゃぎ疲れた双子は、懐かしいリビングのラグの上に寝そべって転た寝を始めた。花音は仰向けに大の字で、紫音は丸まって踞るようにして眠っていた。
それを見て美作さんが総を誘って1人ずつ抱きかかえ、子供部屋へと運んでいった。

この時、リビングには私と仁美さん・・・彼女は再び私に謝罪の言葉を出してきた。


「つくしさん・・・本当にごめんなさい。私がとんでもない事をしてしまったから予定外に母親を譲るような事になってしまって・・・無責任だと思われるでしょうね」

「・・・仁美さん、さっきも言った通りです。事件のことは忘れる努力をしましょう?確かに大人の私達には難しいことだけど、いつまでも引き摺ったら誰も幸せになれないって思うんです。
自分の間違いに気が付いたんなら十分反省して、逆にもっと強くなって頑張らなきゃ・・・言葉では簡単に言えるけどそれも難しいって判ってます。でも、頑張って欲しいんです・・・美作さんの為にも」

「・・・でも許される事ではありません」

「それならあなたの苦しみを作ったのは私です。それは私も謝らなきゃ・・・ごめんなさい」

「止めてください!あなたが謝らないで・・・悪いのは私です!弱すぎる私です・・・あきらさんを信じなかった私の罪です」

「・・・じゃあこれからは信じてあげますか?」
「・・・え?」


そこまで話した時、足音がして男性2人が戻って来た。
美作さんが総の怪我を馬鹿にして笑い、総はその時の自分の奮闘ぶりを大袈裟に話したりして。この2人からはそこまでの緊張感は感じられない・・・まるで学生の時のように幼馴染みの会話をしていた。


新しい紅茶が用意され、お手伝いの人達を全員遠ざけて、これからの話が始まった。
その前に仁美さんから総にももう1度謝罪があり、彼は殆ど私と同じ言葉を出していた。憎むべきは人の弱さにつけ込んだ吉本さんの行動であり、むしろこれまで子供達を育ててもらう中で仁美さんに不安を与えてしまったことは申し訳ない・・・と。

何よりこうなるまで何も知らなかった自分には、それ以上に罪があると言っていた。


「まぁ、言わせてもらえばあきらが悪いんだよ。学生の頃からやたらつくしに甘いからこんな事になるんだぜ?思わせ振りな態度だろ?余計なお節介だろ?そういうの全部纏めてお前が反省しろ!」

「総二郎に言われなくても反省してるって・・・でも、それ以前の話を言わせてもらえば元々は西門のせいじゃないのか?総二郎さえもう少し上手くやりゃ牧野も4年前に泣かずに済んだと思うんだけどな!」

「・・・そ、そうかも」
「だろ?それに今となっちゃ居てくれて嬉しい存在だが、避妊しなかったのはお前だ!」

「・・・確かに」
「総二郎は我慢って文字を知らないからな!まさか今回も子供達の前で・・・ってことはないよな?このゴタゴタの最中に弟妹が出来ました、とか言わないよな?!」

「それは大丈夫、ちゃんと考えた!」
「・・・お前等・・・!」
「そ、総っ!余計な事は言わないの!!」

わざと場を明るくしようとする2人が可笑しくて私はクスクス笑ってしまったけど、やっぱり仁美さんの表情が変わることはなかった。



「それで今後の事なんだが・・・」

ガラッと声のトーンを落として、美作さんが今後の話を切りだした。


「俺達もさっき離れで自分達の事を決めたばかりだから、具体的には何も決めて無いんだ。でも子供達に話してしまったからグズグズ先に延ばすのも良くないと思う。かと言って急に明日仁美が居なくなるって言うものストレスだ。
今月最後の土曜日・・・その日に那須に仁美を連れていこうと思うんだが、牧野はどうだ?」

「那須にはどのぐらいいるつもりなんだ?誰とも交流を持たないのは逆効果じゃないのか?」
「美作さんは時々会いに行くんでしょう?」


総と私がそう聞くと2人は顔を見合わせた。
この2人もまだそこまで話合いは出来ていなかったのか、美作さんの「行ってもいいの?」って言葉に仁美さんが首を傾げたりして。


「・・・でもあきらさんが私に会いに来るのをお義母様が良く思わないでしょうから・・・」
「どうだろうな・・・そうでもないともうけど」

「それに会えるって思えば甘えになります・・・私は自分を試してみたいんです。1人になってすっきりするのか、やっぱり・・・あきらさんと一緒に居たいのか。周りに誰も居なくなったら本当に私に必要なものが見えてくるんじゃないかって思うんです。
だから暫くは会わない方がいいと思うの・・・こんな言い方でごめんなさい、あきらさん」
「いや、構わない。正直に言ってくれてありがとう。その答えがある意味楽しみでもあり恐怖でもあるけど」

「・・・私もです。我儘を許してくれてありがとう」


「何となく答えは見えてるけどな」って総が私に耳打ちする・・・それにはうんうん、と頷いてしまった。

そのぐらい美作さんと仁美さんの間には優しい空気が流れてる。
今回の事は2人にとっても「見えない壁」を壊すきっかけだったんだろうか・・・。


「でも、美作さん・・・私は急にあの子達を引き取って鎌倉で暮らせないよ?仕事もあるし、日中また小夜さんに頼むの?」
「俺のマンションに住むか?西門の奴等が知らない物件もあるし。近い方が何かと便利じゃね?仕事は新しく探すとか・・・」

「いや、それは不味いだろう。言われたくないだろうけどお前には嫁さんが居る状態だ。それなのに都内のマンションに入り浸るような事はマスコミがすぐに嗅ぎ付ける。お前はメディアにも良く顔出してるから隠せないぞ?」

「じゃあどうするの?」


美作さんは少しの間考え込んで・・・それから自分の考えを口にした。


「牧野には逗子の研究所を辞めてもらって美作の・・・うちの屋敷に住まわせたらどうだ?」
「・・・えっ?!」
「つくしをここに?」

「あぁ、そうだ。もし屋敷内が気になるならさっきの離れでもいい。あそこでも充分普通の生活が出来るし邪魔は入らない。日中はリビングや庭で、双子の慣れてる場所で遊ばせて夜は親子で暮らす・・・どうだろう」

「・・・いいかもしれませんね。兎に角外遊びが好きな子達ですからいきなりマンションは退屈かもしれませんし」


私と総は顔を見合わせた。
それが良い方法なのかどうか・・・すぐに返事が出来なくて困惑した。


確かに総のマンションは危険だろう。
私と子供達の事が西門にバレてしまうのは時間の問題。そうなったら総の不貞行為で立場は一気に悪くなる。
それに今度は子供達を西門に奪われるという、妊娠した時から恐れていたことが起きるかもしれない。

でも、ここに居たらいつまで経っても仁美さんを待ち続けるんじゃないのか・・・それが不安だった。


「急激な環境変化は紫音と花音にとっていいとは思えない。お袋も協力してくれるし、安心できる場所で少しずつ自分たちの居場所が牧野と総二郎の傍だって判ってくれれば1番良いと思うんだが・・・」

「・・・そうだな。ここなら俺が顔を出しやすいし西門が踏み込まない。何より俺は自分の事を片付ける時間が必要だ」

「・・・総」
「心配するな」



また色んな事が動き始める。
紫音と花音、仁美さんも新しい暮らしが始まる。

私も数年間暮らした鎌倉を離れて都内に戻り、総は自分の家との闘いが始まる。


これが全部未来の幸せに繋がりますように・・・そう願った。





<第三章 激情 終>





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