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今日も冷たい雨の朝・・・私は彼の腕の中で目を覚ました。

隣で寝てるのは花沢類。
少し伸びた前髪が顔を半分隠してて、それが私の方を向いてて起きた瞬間にドキッとする。
こんな至近距離で目を開けられたら心臓が止まるかもしれない・・・そんな風に思っちゃうほど綺麗な薄茶の瞳の彼。

この人が目を覚ます前にそっとベッドを抜け出してキッチンに向かった。


「・・・流石梅雨だね。一晩中降ってたのかしら・・・少し寒いな・・・」

私はパジャマのままそこで珈琲を淹れて、簡単な朝食を作る。
この生活はもう半年前から・・・私の誕生日から続いている。


今日の私は遠い昔の幼い恋を思い出していた。



**



彼等と出会ったのは英徳学園に入学した時だった。
1つ上の学年で兎に角目立つ4人組み・・・その中でも1番静かだった花沢類に一目惚れした。

初めのうちは見るだけの存在だったこの人達とひょんな事から喧嘩を始め、それがエスカレートして学園中を巻き込む大騒動にまで発展した。
4人組みの代表、道明寺とは出会えばいつも罵り合い、時には叩いたり殴ったり・・・まるで子供のような喧嘩をした。
西門さん、美作さんは面白がって私達を笑ってたけど花沢類だけが嫌そうにそれを見てた・・・そして何度か彼には助けてもらった。

助けられる度にドキドキして、少し触れた指先だけで気持ちがバレるんじゃないかって思った。


でも、彼には想う人が居るって聞いたから、自分の気持ちを封印して忘れようと必死だった。
同時に正反対の性格の道明寺にも惹かれた。この人とは何故か素直にぶつかることが出来たから、家だとか立場だとかを考えずにそのうち恋人・・・になった。
その時に私を見る花沢類の瞳には気が付かないフリをして。

そう・・・見なかったことにして。


そんな恋は長くは続かなかった。
道明寺は情熱的で見た目に反して一途な人だった。そして男らしく頼もしかった・・・力強い腕は私をどんな敵からも守ってくれるって思った。

でも、最後には「家」に勝てなかった。
私も夢中でその恋にしがみついた。でも、限界だった・・・あと、もう少しって言う所で彼の手を離したのは私。


『あなたのような女が司の為に出来ることは2度と目の前に現れないこと、それだけよ。司の将来にとって障害でしかなく、ガラクタと同じ・・・そのうち処分されるだけよ』


彼のお母さんの言葉は私の心臓のド真ん中を射貫いて粉々にした・・・それを修復できなくて道明寺の「俺を信じられねぇのか!」って言葉を無視して別れた。
信じられない訳じゃなかった・・・ただ、闘う力が残ってない、それだけ・・・だった。


だからこんな恋は2度としないって誓った。
次に「彼」の家に拒否されて同じような言葉を出されたら立ち直れない・・・恋人になんてなってないのにそんな事を考えて、私は自分から距離を置いた。

道明寺家と私の事はすぐに周りにバレて「ざまあみろ!」って言う生徒達の声は毎日私の耳に入った。
でも残った3人はいつも私を守ってくれようとする・・・その中で花沢類の視線は私にとって苦しいだけだった。


これ以上想いを寄せちゃいけない・・・雑草は「あの世界」では生きていけない。
初めての恋は私を凄く弱い人間に変えてしまった。



彼等が卒業した後の1年間、その殆どを1人で過ごした。
そして英徳を卒業したら私は大学に進学せずに就職した。

英徳学園卒とは言え一般家庭の私には大企業なんかへの紹介は無く、道明寺を怒らせたことで何処にも行き場はなかった。だから自分で見付けた小さな会社の事務・・・それでも自分には丁度いいって思ってた。

これであの人達と全然違う世界で生きていける・・・私に似合う世界で頑張れる、そう思っていた。
連絡を取りたがる花沢類や西門さん、美作さん、桜子・・・この人達には一切行き先を教えなかった。住所も変えて電話番号も変えて、私は「私の世界」に戻った。




『牧野さん、悪いんだけどこれを木本商事に持って行ってくれる?急ぐらしいんだけど誰も手が空いて無くてさ』

それは入社して5年も経ったある日、社長さんに言われて持たされた「商品サンプル」。
それを依頼してきた会社に届ける事になって、雨が降ってる中、バスに揺られてその会社に向かった。

木本商事は高層ビルが建ち並ぶオフィス街にあって、美作商事も花沢物産もその近くにあった。
その頃の私は勿論花沢類とも連絡なんて取ってなくて、彼が今どうしてるのかなんて知らなかった。でも日本の花沢物産に入社してるのなら3年目のはず・・・後継者の彼はそれなりの役職について頑張ってるだろう。

しかも黙って姿を消した私の事なんてもうなんとも思ってないかもしれない。
逆に会えば怒られるかもしれない。

それよりもフランスに居る可能性の方が高い・・・だから気にせずに窓の外の雨を見ていた。



『それではこちらがサンプルですので宜しくお願い致します。何かありましたら営業の安藤の方にご連絡をお願い致します』
『お天気が悪いのに申し訳ありませんでした。助かりました』

『いえ、契約成立になるとこちらも嬉しいです。ご検討、宜しくお願い致します』


木本商事で商品を手渡し、私はその場ですぐに向きを変えて自分の会社に戻るバス停に向かった。
でもその時に急に酷くなった雨と風。傘を差す方が危険だと感じるような雨になって、私は小走りでバス停近くの喫茶店の軒下に避難した。


『うわっ・・・最悪!なに、この雨・・・今日、こんな予報だったっけ?あ~あ!制服がびしょ濡れ・・・寒っ!』


その時、バシャバシャと凄い水飛沫を上げて同じく軒下に駆け込んできた男性・・・突然の雨にこの人も濡れてしまったんだろう、営業鞄を頭に乗っけて今にも私に体当たりしそうな勢いだった!

『あっ、失礼!』
『いえ、急に降りましたもんね・・・え?』

『・・・はぁ、驚いた。車を使えば良かった・・・・・・あれ?』


その人はさっきまで頭に浮かんでいた人・・・花沢類だった。



彼も私を見ると驚いたように目をまん丸くさせて、ハンカチでスーツを拭こうとしていたのに手を止めてしまった。
全然変わらない明るめの髪に薄茶の瞳・・・少しだけシャープになった顔のライン。私の中の花沢類は18歳のままだったから、大人っぽくなった彼を見た私の心臓は正直だった。


『・・・・・・牧野?もしかして・・・牧野?』
『う、うん・・・花沢類・・・だよね?どうしたの?こんな雨なのに走ってたの?』

『・・・・・・牧野、あんたどうして・・・』
『え?あぁ、ごめんね、長いこと行方眩ましちゃって。あは、は・・・ちゃんと働いてるから心配しないで?』

『・・・心配するな?』
『・・・げ、元気してるから…だから』

『馬鹿!!・・・心配するに決まってるだろう!』


『・・・・・・ごめん、花沢類』


びしょ濡れの手が私の手首を掴んで、雨宿りしていた喫茶店に放り込まれた。
そこには殆どお客さんが居なかったから一番奥のテーブルに引っ張っていかれ、中半強引に座らされた。


『痛いって!もうっ・・・そんなに力いっぱい掴まなくても・・・』
『・・・そうでもしないと逃げるから』

『花沢類がそんなに乱暴な人とは思わなかった!』
『・・・本気だから』

『・・・えっ?本気って・・・』
『あんたの事を何年間も必死に探したんだ。どうしてももう1度会いたかったから・・・だから出会った時は本気で怒ろうと思ってた』


2人共が髪の毛まで濡れてて、2人共が泣きそうな顔して、そして時間が止まったかのようだった。


1日だって思い出さない日は無かった。
休みの日には一日中この人の事を考えて過ごした。

元気だろうか、何処に居るんだろうか、幸せだろうか・・・そればかりを思いながら空を流れる雲を見つめた6年間だった。


出された珈琲が冷えきってしまうぐらい時間が経ってから、私達は自分の事を話し始めた。




**



「・・・あれ?珈琲が冷めちゃった。花沢類、まだ寝てるのかな?」

キッチンのシンクに縋ったまま両手で抱えていた珈琲カップ・・・いつの間にかその熱が体温と変わらなくなってしまった。
そして部屋を覗いてみると・・・まだ大きな天使は眠ったまま。


雨降りだからそれが子守唄にでもなってるんだろうか。
それでも今日は平日でお互いに出勤日・・・流石に起こさないといけない時間になっていた。

「くすっ・・・仕方ない。寝坊助は治らないか!」


私は珈琲を淹れ直して、彼の元に向かった。






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類君のシリアス短編です。
本日から偶数日を予定しています。
(遅れたらごめんなさい💦)
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Comments 8

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2019/06/24 (Mon) 11:21 | EDIT | REPLY |   
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2019/06/24 (Mon) 12:49 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

久しぶりのシリアスですね💦怒られそうな気がして怖いんですけど。

まぁ・・・確かにハピエンの女ですので(笑)
こう言うつくしちゃん、あんまり読者さんは好きじゃないって判ってるんですけどね💦
弱気でダメダメな彼女も私は嫌いじゃないんです。

まぁ、大らかな気持ちで読んで下さい(笑)


私の所はまだ梅雨じゃないです~💦
雨が降りません・・・梅雨、好きなんだけどなぁ・・・。
紫陽花の方が先に終わってしまいました。

去年は雨物語書いたら早々に梅雨明けして驚いたんだけど、今年はその反対・・・なんでかなぁ💦

2019/06/24 (Mon) 14:59 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは!

あっははははは!1話目から?

あのねぇ・・・短編でしょ?入れにくいのよ・・・でも、実はあるのよ(笑)
最近ずっと類君がComedyだからそういうの入れなかったんだけど、ちょっと書いたのよ(笑)

そのうち出てくると思う・・・変態類君♡

2019/06/24 (Mon) 15:01 | EDIT | REPLY |   
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2019/06/24 (Mon) 15:22 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様・・・(笑)

言っとくけどそれもある意味「短編用」ですから💦
期待しちゃダメよ?(笑)

少しだから・・・ホントに少しだけね💦

2019/06/24 (Mon) 16:41 | EDIT | REPLY |   
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2019/06/24 (Mon) 16:49 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

るいか様、こんばんは!

ぶははははは!!そうよ、たまには類君でもシリアスを書くのよ💦
最近巫山戯た類君しか書いてないから、真面目なのを書きたかったのよ(笑)


総ちゃんは・・・もう少しで終わるはず?

私が事件をこれ以上起こさなければ終わる・・・と思う。うん・・・。
半年以上書いてるからねぇ・・・(笑)


おおっ!花沢城!!
明日は楽しみにしててね!(笑)←意味わかるかな?

絶対に読んでね!!宜しく~♡


なんか時々フランスの怖いニュース見るけど、今は何処かしら?
身体と世の中に気を付けてね💦

お話しも頑張ってるよね~!
子育てもお仕事も大変なのに尊敬しちゃうけど、無理だけはしないように~💦

2019/06/24 (Mon) 21:35 | EDIT | REPLY |   

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