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牧野と一緒に暮らすようになってから初めての秋。
彼女は編んだこともないのに毛糸を買ってきた。

生成り色でフワフワの柔らかい糸・・・そして編み物の本を一冊抱えて得意気に言った。


「愛情たーっぷりのあったかいセーター編んであげるから待っててね!」


うん、待つのは全然構わないけど編めるの?って言葉は飲み込んだ。
だって料理も掃除も完璧だったけど、牧野の編み物なんて見た事なかったし、本を顰めっ面で読んでる時点で怪しいよね?
指を折って何数えてるのか知らないけど、沢山あるデザインの中から選んだのは1ページ目・・・つまり、一番簡単なものだったみたい。

俺は面白くて見てるだけだったけど「よしっ!」って腕まくりして、30分経っても毛糸は1段目から進まなかった。

「えっと・・・あーしてこーして・・・ここを引っ掛けて・・・あれ?」
「・・・ぷっ!」

「笑わない!類、貴方のものを編んでるのよ?」
「うん、待ってる。寒くなった着られるんでしょ?」

「・・・た、多分ね!」


まずは「編み目記号」から覚えた方がいいんじゃないの?ってその本を覗き込んで思った。
でも、これに夢中になったら俺の横に来てくれない。指でつんつんしてもパシッ!って叩かれて無視・・・。
だから後ろから抱き締めて無理矢理棒針を奪って・・・ついでに唇も奪っちゃう。

そんな感じだったから1年目の冬は後ろ身頃しか出来ないまま春になった。



2年目の秋、今年こそは!って、今度はラベンダーカラーの毛糸を買ってきた。
そしてデザインは少しだけ進歩して鹿の子編みってものにするらしい。でもよく聞いたらこの編み方だと少しぐらい「誤魔化せる」とか・・・それはどうなの?って思ったけど、やっぱり面白いから黙って見ていた。

去年よりは少しだけ速い手つき。でも、数センチ編んだら急いで本を確認。
また指を折って何かを数えて頭を捻ってる。くすっ・・・ホントに表情が豊かだよね。


「類ー!ねぇ、手を横に出して?」
「手?こう?」

そう言って牧野にボディタッチしたら「何すんの!」って叩かれた。
だって間違えてないし。言われた通りに横に出したらあんたの身体があっただけじゃん?

「そうじゃなくて腕を伸ばして!長さを確認するんだから」
「長さ・・・そうやって測るのが正解?」

「いいのよ、セーターなんて小さくなかったら着られるでしょ?はい、腕!」
「はいはい」


今度は腕を横に伸ばしたら、自分が編んだヤツを当てて「よしよし」って・・・そんなに適当でいいの?

牧野は嬉しそうに編み続けたから楽しみに待ってた。
もしかしたら今年は出来るのかな?って思ったから邪魔もせず、俺がココアを入れて「頑張れ」って言うと、頬を真っ赤にしてVサイン出してた。


そしてもう冬も半分過ぎた頃「出来たぁ!」って言うから着てみたら・・・腕が短かった。

「ありゃ?類、腕が伸びたの?」
「多分伸びてない。あはは!ちんちくりんってこう言う時に使うんだよね?」

「ちんちくりん・・・酷いっ!」


ほら、もうすぐ桜が咲いちゃうね・・・ってことで、2年目のセーターは牧野の来年用になった。



3年目の秋、また凝りもせずに買ってきた毛糸。今度はネイビーブルー・・・実は濃い色の方が「誤魔化せる」んだそうだ。
毎年誤魔化すことを考えてるんだね?って笑ってしまった。


「今回は絶対に失敗しない!もっと大きくすればいいんでしょ?」
「そうじゃなくて先にサイズを測って編むんじゃないの?」

「だって参考身長のところ、類と変わんないんだよ?」
「参考でしょ?」

「おかしいなぁ・・・本の通りに編んでるのに・・・」


うん、そうなんだけど。
その人の癖によって目が細かくなったり緩くなったりするんだってよ?ほら、本のここに書いてあるじゃん?
だから「着る人のサイズを測りましょう」・・・これ、基本だと思うんだけど?

わざとそのページを開いて見せたけど無視・・・牧野の目はいまだに覚えていない編み目記号に釘付けだった。
でも面白いから今年も黙って腕を伸ばして、牧野は何回も編み掛けの腕部分を当てては「もう少しか・・・」を繰り返した。


「出来たぁ!!類、着てみて?今年は冬の間に終わったわ!」
「・・・うん!ありがと・・・・・・・・・あれ?」

「・・・あれ?類、背が縮んだの?」
「ううん、逆に1センチ伸びたけど?」


どうしてだろう・・・今年のセーターは腕が丁度いいのに丈が長い。俺のお尻まですっぽり隠れた。
そしてこれも牧野用、「腕が長めのニットワンピース」になった。



4年目の秋、ベビーブルーのフワフワしたのが今年の毛糸に選ばれた。
でも、牧野の手が止まってばかり・・・今年に限って俺のセーターがいつまで待っても形にならない。

もう編み目記号も覚えたのに。
本を見なくても編めるようになったのに、ため息ついて俺の背中に縋ってる。

どうしたんだろう?そう思って抱き締めたら泣き出すし。


「どうしたの?無理して編まなくてもいいよ?秋は毎年やってくるよ?」
「・・・・・・・・・そうじゃないもん」

「何があったの?俺、何かした?」
「・・・・・・何もしてないけど、わかんないけど涙が出る・・・」

「・・・おいで、牧野。そういう時は俺の腕の中が1番・・・そうでしょ?」
「・・・ん」



その原因はすぐにわかった。
判った途端、牧野は毛糸に手を伸ばして嬉しそうに編み出した。

俺の膝の中に座って楽しそうに手を動かして、今年は「腕伸ばして」なんて言われなかった。


そうしてフワフワの毛糸で出来たもの・・・ベビー用のおくるみと帽子。
俺のセーターは今年もお預けだったけど、きっと来年はお揃いで編んでくれるんだろう。


くすっ、今から楽しみだね。






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明日の11時も類君のSSがあります♡
総ちゃんのを3話公開するので合わせました(笑)
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Comments 8

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2019/10/01 (Tue) 11:22 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは!

あっはは!それいいね!!
だってそうしたら逃げられないしね~♡

最終的には要らなくなるんだろうけど(類君が動けないから)

脱ぎ着しやすいようにネックと裾は広めだよね♡いやん!想像しちゃった♡

2019/10/01 (Tue) 11:25 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/01 (Tue) 12:07 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/01 (Tue) 12:23 | EDIT | REPLY |   
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2019/10/01 (Tue) 13:04 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

麦猫様 こんばんは。

コメントありがとうございます。

あら、挫折したんですか?(笑)
私は若い頃は旦那に嫌がられるほど編んでいました。今ではもう編みませんけど💦

旦那ではないですが、私の兄が「手編みは重たい」ってよく言ってたんですよ。
気持ちが重たいのかと思ったら、ホントに重量として重たいらしく、私も自分で編んだ物を持ったら重たかったです(笑)

それ以来やめました。
(買った方が安いってのもあります)

脳内変換(笑)ははは!楽しそうですね~♡

2019/10/01 (Tue) 19:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

私も今は編んでいませんね~。
凝り性なので昔は一冬に10着ぐらい編んでましたよ(笑)
旦那が恥ずかしがらずに来てくれたので調子に乗って。

最近それを見付けたら虫にやられていたので捨てちゃいましたが、懐かしかったですね。


もうこの先も編まないだろうなぁ~・・・。

私もつくしちゃんと同じで超適当に編む人で、旦那は短めのセーターばかり着ていました。
今考えたら申し訳なかったな、と(笑)

2019/10/01 (Tue) 19:06 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

はい!めげずに毎年チャレンジ、毎年失敗です(笑)

類君のセーターだと毛糸玉、凄く沢山用意しなくちゃダメでしょうねぇ~♡
その光景を黙って見てる類君が可愛いでしょ?♡

今からシリアスは話を書いていくので少しでもラブラブなSSを(笑)
これで許してくれないだろうか、類君・・・。

2019/10/01 (Tue) 19:44 | EDIT | REPLY |   

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