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社会人1年目の大晦日の昼・・・そんな時に電話が鳴った。

掛けてきたのは大学卒業前の牧野。
どうしたんだろうと思ったら・・・『花沢類、暇?』だった。

どうせ暇だよ・・・悪かったね、って思うけど顔はニヤけてる。
でも、それを気付かれないように素っ気なく「だから、何?」って答える俺。


『あのさ・・・初詣行かない?』
「初詣?何処に?」

『うちの近所の八幡様なら混まないと思うの!お願い、付き合って?』
「・・・・・・寒いじゃん」

『ダメ?ねぇ、ダメ?・・・・・・そっかぁ・・・じゃあもう1回道明寺に・・・』
「行くよ。何時に迎えに行けばいい?」


司の名前を出すなんて卑怯だよ。
いつからそんな事言うようになったの?って怒ってるけど、ベッドから飛び起きて服を選んだ。
どのくらい寒いか判らないからロングコート出して、中に着るセーターは牧野の好きな生成色。マフラーも巻かなきゃ怒るから引っ張り出して、ジーンズもお気に入りを出した。

初詣・・・実は初めてだったりする。



約束の時間の23時、牧野のアパートの前に車を停めた。
正確に言えば20分前・・・何故か落ち着かなくて屋敷を早くに出てしまったから。

いつもは電気が消えてるこの辺りも、流石に今日は部屋の灯りが点いてるところが多い。それを見ながら牧野の部屋の電気が消えるのを待っていた。

まだかな・・・って思っても15分前。
そろそろかな?・・・って首を伸ばしても10分前。

足が冷えてきた・・・マジで寒いって身体が震えても5分前・・・そうしたらやっと部屋の電気が消えて牧野が降りてきた。


「花沢類、待った?ごめんね~」
「いや、今来たとこ。場所教えて?」

「車じゃなくて歩いて行くんだよ?」
「えっ!こんな時間に歩いて行くの?」

「そうだよ~、そんなに遠くないから大丈夫だよ。私、カイロ貼ってるし。花沢類にも持って来たよ、カイロ」
「・・・・・・・・・」


カイロ?って首を傾けたけど、牧野は嬉しそうに「コートの前、すぐに済むから開けて?」って言った。
この寒いのに路上でコートを?って思ったけど、言われたとおりにボタンを外したら、いきなり牧野が俺に抱きついてセーターの背中側を捲って何かを素肌にペタ!って貼った!!


「うわぁっ!!なっ、何すんの?!」
「だから貼るカイロだよ。温かいんだよ~?最初だけヒヤッとするけどね」

「驚いた・・・あんた、この寒いのに何するのかと・・・そ、それにいきなり抱きつくから!」
「あはは!だって後ろ向いて背中出して?って言えないじゃん。気にしない気にしない!さ、行こう?」


気にするよ・・・抱きつかれたら抱き締めたくなるじゃん。
ほんの少し牧野が触れた背中・・・既に熱を持っていた。


真っ白い息を吐いて2人並んで歩いていたら、あちこちから人が集まってきた。
みんな凄く着込んで、それでも楽しそうに笑いながら同じ方向に歩いてく。
隣の牧野はそこまで厚くないコートだけ・・・暗くても判るほどほっぺたを赤くして両手に息を吹き掛けていた。


仕方ないなぁ・・・怒られるかと思って巻いてきたマフラーなのに、あんたの方がそんなに薄着で。

自分の首からそいつを取って、牧野の首に巻いてやったら慌てて「花沢類、風邪引くよ?!」だって。


「どっちがだよ。あんた見てると寒すぎ!」
「あはは!マフラー丁度洗ったんだよね。そうしたら乾かなくてさ、巻いたら逆に冷たくて!」

「もう言わなくていい。聞いてるとホントに寒くなる」
「・・・あっ」

「どうした?」
「・・・くすっ、花沢類の匂いがする・・・」


どうしてそんな事言うんだろうね、この子は。
そう言って俺のマフラーの中に顔を埋めて笑われると、そのマフラーにジェラシー・・・くそっ!って思ったら首が寒くてくしゃみをした。

「ほら!風邪引いた!」
「いいからあんたが巻いてな。俺はカイロで温かいから」

「ホント?半分こにしようか?」
「馬鹿だね・・・どれだけ身長差があると思ってんの?」

「あぁ、そうか!忘れてた!」



大きな鳥居を潜って境内に入ったらまだ新年には30分もあるのに人が沢山居た。
そして真夜中とは思えない賑やかさで出店もある。牧野は新年になってからお参りしたいからって甘酒を配ってくれるところに座ってそれを貰った。

酒と言ってもアルコール分は殆ど無い。だから牧野は「温まるねぇ」なんて言いながら両手でコップを抱えてた。
俺も苦手じゃ無いけど甘すぎる・・・そんな事は言えずに牧野の隣でそれを飲んだ。


「よし、5分前!行くわよ、花沢類!」
「・・・初詣って闘いなの?」

「そんな事は無いけど、鈴が鳴らせるところに行かなきゃ!端っこに流されたら鈴に手が届かないのよ?花沢類、私から離れないでね?」
「ん、掴まえててあげる」


本人の許可が出てるんだからいいよね?って事で、牧野の腕を掴まえて参拝者の中に入り込んだ。
これで混んでないの?って思うほどの人・・・いつの間にこんなに集まったんだろう。周りを見たらお爺ちゃんにお婆ちゃん、小さな子供もいて亀の歩みで進んでる。
牧野は「離れないでね?」の言葉とは反対に俺の手を振り解く勢いで前に行こうとするし、突然後ろから元気なおばちゃんがぶつかって来るし、酔っ払ってるおじさんが俺達の間に割り込んでくるし!

えっ?えっ?って驚いてるうちに俺の手は全然知らない人を掴んでた。


「牧野?!牧野・・・牧野ーーっ!?」

「花沢類、何してるのー?!流されちゃったの?」


・・・背が高くて良かった。
牧野は既に俺から10メートルぐらい前を歩いてて、俺は隙間の無い人混みに無理矢理突っ込んで漸く牧野を掴まえた。

これが初詣・・・もっと厳かなものだと思ってたのに、意外と根性と体力が要るんだと知った。



「こんな思いまでして初詣したいの?」
「ん?あはは、だって~、お正月だもん。1年の始まりだよ?」

「何処に居ても新しい年は始まるのに・・・」
「花沢類らしいなぁ!あっ、私達の番だよ?はい!ここを持って鈴を鳴らすんだよ?」

「・・・・・・鳴らすの?」
「うん、行くよ?せーの!!」


何とも言えない籠もった鈴の音・・・それでも牧野は鳴らし終わったら両手を合わせて真剣な顔で祈ってた。
だから俺も並んで・・・チラッと牧野の顔を見た。

「・・・・・・になれますように」


・・・なんて言ったんだろう?
肝心な所は聞こえなかったけど、とにかく俺の人生初の「初詣」が終わった。





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Comments 4

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2020/01/01 (Wed) 09:51 | EDIT | REPLY |   
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2020/01/01 (Wed) 10:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは。

コメントありがとうございます💦

止めてよっ!元旦からそんなの持って来ないでっ(笑)
想像したら寒くなったじゃない💦

路上よ?そんなの無理無理っ!通報されちゃうわよ~!

今年は可愛い路線でいくって決めてるの。
だから当然・・・減らすわよ?(笑)ふふふふふ・・・

2020/01/01 (Wed) 11:55 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

コメントありがとうございます。

おおっ!忙しいお正月だったのですね?お疲れ様です~。
私は本日が忙しいです💦
午後からおせち詰めて実家に戻るので、いつも31日はのんびりで元旦が忙しいです(笑)


お正月のお話は・・・ふふふ、類君は可愛らしく、総ちゃんは真面目なお話です。
つくしちゃん、小悪魔なスタートでしたね❤
でも、最後には・・・むふふ、です♡

楽しんでいただけたら嬉しいです~!

2020/01/01 (Wed) 11:58 | EDIT | REPLY |   

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