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「おはようございます。今日はお雑煮ですよ~」

つくしの声が今朝も明るく響く本邸・・・いつもの緊張感なんてなくてのんびりしていた。
今年は年始の挨拶も遠慮してもらい身内だけでのんびりする、親父がそう言ったから本当に口煩い奴等は顔を出さなかった。

それもこれも西門の正月を初めて迎えるつくしの為・・・連日の気疲れを気にして両親がそうしてくれたから。



西門の雑煮は関東に居るにも関わらず京風。

まったりとした甘味が特色の白味噌仕立てで、人の頭(かしら)に立てるようにと頭芋を、地に根を張るようにと祝い大根を加える。これは12月25日を過ぎないと手に入らない京野菜で、わざわざ毎年京都から送られてくる。
つくしは今年初めてそれを使ってうちの雑煮を作るってことで、年末から料理長にあれこれ指導を受けていた。

西門が京都にあった頃は八坂神社で行われる大晦日の「をけら詣り」でもらう「をけら火」で雑煮を作ったとか。
勿論ここではそんな事は出来ないから普通のコンロで作るけど。


そしてこの時の器も特別。
男は朱塗りで女は黒塗りの家紋付きの椀を出し、膳の高さもあぐらをかく男のものと正座する女のものとでは微妙に違う。男の膳の方が足が低く、これは俺が生まれた時に誂えて一生使うもの。
嫁に来たつくしのものは婚姻時に作られ、今年初めて俺の横に並ぶわけだ。


「まぁ、今年も美味しそう!料理長に味わっていただきたかったわねぇ、つくしさん」
「お口に合いますかどうか。お義兄様もお義姉様もどうぞ。陽斗君には難しいかな?」

「陽斗には私達が食べさせますわ。お気遣いなく、大丈夫よ」
「うん、つくしさんも朝からお疲れ様だね」

「では皆でいただこうか」


まずは親父が口をつけ、その後で全員がこの雑煮を食った。

雑煮の餅には丸と角があるが、京都は丸餅だったからそれを受け継いでいる。
丸い形が望月や鏡を模した縁起の良い形と考えられていたからだけど、餅をついてひとつひとつ丸めなくてはならない。でも江戸は当時人口が多く丸くする手間を省いたのだとか。
餅を大量生産し、板状にしてのし餅をつくり、それを切った切り餅が角餅の始まり。

そして澄まし汁が多いのにも理由がある。
武士の多い関東では『みそがつく=失敗し評判をおとす』として味噌仕立てではなく澄まし汁が好まれた。茶道は武士でも刀を持ち込ませない世界・・・だから今でも変わらず味噌を使う。

つくしに1つ1つ教えながら西門に染めていくのを、嬉しくもあり苦しくもあった。


もう少し自由なら楽だっただろうに・・・明るく振る舞うつくしの笑顔を有り難く思いながら背負わせる苦労も感じていた。



雑煮を食い終わったら今度は祥一郎家族と初詣に向かった。
嫁さんが幼い陽斗の手を引いて、兄貴が嬉しそうにその横を歩くのをつくしと後ろから眺めていた。


「・・・うふふ、いいわねぇ・・・子供ってそこに居るだけで幸せな気分になるね」

そう言いながら新しい着物に着替えたつくしが笑う。
上品な明るさの黄色地にさりげなく入った流水、そこに散りばめられた優しい「花の丸」の小紋。花を円=縁でつないでいる花の丸は縁起のよい文様として晴れの日に似合う着物だ。
首元が寒いからってショールを巻いて、それを持つ手が少し赤い。

今日も朝から1人で台所仕事してるから・・・そう思って右手を差し出すとキョトンとした顔で俺を見上げた。


「手・・・赤いから。冷えてるんだろ?」
「あぁ、これ?大丈夫だよ~、昔から慣れてるから」

「いいから。少しは温まるぞ?片手だけだけど・・・」
「総二郎の手が冷たくなるよ?」

「足して2で割るからいいだろ。俺から熱を奪っとけ」
「・・・くすっ、変な人」


そう言いながら冷たい手が俺の指を少しだけ持ったから、グイッと引き寄せてその指全部を絡めた。そうしたら「人が見るよ?」って慌ててるけど関係ない。
誰が見ようとこの手は俺のもの・・・こうして繋いで何処が悪い。

照れて真っ赤になるつくしを無視して神社に向かった。


もう二日だったから人はそこまで多くなく、俺達は並んで鈴を鳴らしてお参りし、その後は社務所でお守りを買った。
極普通に「家内安全」、その向こうにある「子授守り」をチラッと見ながらそれには手を伸ばさず、おみくじを引いて「中吉だった!」と喜んでた。


「中吉?大吉じゃねぇのかよ。そんなに喜んでんのに」
「うん!だって何事も真ん中っていいじゃん。総二郎は?」

「・・・大吉」
「あら!そりゃ今年もお仕事が順調なんだわ。良かった良かった!」

「どっちだよ・・・」
「あはは!やっぱり大吉が1番だよ~!今年は良いことがありそうだね~」


・・・おみくじの結果なんてどれでもいい。
俺の人生この先ずっと「大吉」だから・・・そう言ってやりたかったけど、照れ臭くて言えなかった。


隣では陽斗が引いたおみくじが「大吉」で兄貴が「凶」だったと大騒ぎ。
こっちは「安産祈願」のお守りを買って、嫁さんは嬉しそうだった。


「お義姉さん、早く帰ってチーズケーキ食べません?最近出来たお店のが美味しくてね~、お義母様にいただいたんですよ」
「あら、私大好き!早く帰りましょ」

「陽斗君、今度はお姉ちゃんが手を繋いであげようか?」
「・・・ママがいい~!」

「え~~~?そうなの?」

「つくし、お姉ちゃんじゃねぇだろ?おばちゃんだ!」
「いいの!そこはお姉ちゃんで!」

「・・・おばちゃんっていうんだよ?」

「え~~~~~?陽斗君まで~?」


「子供は正直だな」と兄貴と笑い、嫁さん達の背中を見ながら屋敷に戻った。





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2020/01/03 (Fri) 18:21 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは。

コメントありがとうございます。

そうそう、今日はお雑煮講座(笑)
因みに我が家は旦那の実家から言われてて、入れる具材は白菜と金時人参で、丸餅の澄まし汁です

昨日も今日も作りました・・・もうウンザリです💦

お餅は焼いて海苔で巻くのが好きです♡


相手の色に染まる・・・

そう言えば結納で真っ白な帯を貰いました。
その帯を好きな色に染めて下さいって言う意味らしいんですが(旦那の実家の考えね)、今でも真っ白です(笑)

だって・・・タダで染められないじゃん?
お金掛けてまで染めてもねぇ~(笑)その前に帯、使わないし。

2020/01/04 (Sat) 01:06 | EDIT | REPLY |   

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