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桃栗3年 柿8年 柚子の大馬鹿18年・・・ったぁよく言ったもんだ。


牧野に「西門に来い!」って言った時、あいつはしれっと言いやがった。

「西門さん家って堅苦しいじゃん?それにお花ばっかり植えてるけどさ・・・私、実の生るものがいいんだよね~」
「実の生るもの?そいつもあるぜ、梅だけど」

「梅干しかぁ~、好きだけど沢山食べられないしね!」

いや、梅干し用じゃなくて茶花にするんだって。
西門印の梅干しなんて高級すぎて誰の口にも入らねぇだろうよ、そう言うとケラケラ笑ってた。

って、何か?実の生るものが庭にあればこいつは嫁に来るのかって?


仕方ねぇから庭師に頼んで種から育てた果物の苗木を数本、南側の庭の隅に植えてやった。
そうしたらそいつの世話をしに来るようになって、ついでに茶を習い始めた。

いやいや、うちは茶道の宗家なんだから茶に本気を出せよ!って言えば「実が生ったらね!」なんて訳の判らねぇことを言いやがる。

「あら、つくしちゃん!美味しいお菓子があるわよ?」と、お袋に呼ばれてどっかに消える。
「おぉ、つくしちゃん、将棋の相手をしてくれんかな?」と、親父に呼ばれてどっかに消える。
「あら、牧野様、ケーキがありますわよ?」と、志乃さんに言われてどっかに消える。
終いには事務長に頼まれてパソコンで何かのデータを打ち込む始末。

まったく・・・何奴も此奴も俺の気持ちは無視しやがって!
俺はもう1歩進みたいってのに、全然前に進みやしねぇ!


おかげで足踏みして3年目。
庭の苗木も俺達の背丈ほどに成長し、ほんの少しだが実を付けた。


「うわぁ!!本当に桃と栗が生ったぁ!」

「って事は・・・西門の紋付、着る気になったか?」
「・・・・・・・・・うん!」


そんなこんなで牧野が嫁に来たのは次の年・・・その年には無花果と温州みかんが実を付けた。
そして南の果樹園はつくしの担当となって、俺の花畑を随分侵食しやがった。


翌年には葡萄が紫色の実を付けた。
それを嬉しそうに収穫するつくしの腹はふっくら・・・それなのに梯子に登ると言いだして庭師の爺さんを困らせた。

その次の年には林檎が赤い実を付けた。
つくしの足元にはベビーカーに乗せられた誠太郞・・・手を伸ばして赤い林檎を収穫するつくしに声援を送ってる。

その次の年には梨が黄緑色の実を付けた。
その時には誠太郞は危なっかしく木の根元で遊んでて、つくしの腹はまたデカくなってた。


そんなこんなで1番始めに苗木を植えてから8年目、まるで諺を守ったかのように柿がオレンジ色の実を付けた。


「うわぁ!やっとだぁ!本当に時間が掛かるんだねぇ・・・よし!これで干し柿作ろう!」
「おい、それもいいけどそろそろ本格的に茶を点てねぇか?次期家元夫人がいつまで経ってもろくな茶が点てられなかったら弟子に笑われるぞ?」

「・・・あはは!柚子に実が生ったらね!」
「なんだそりゃ!」


大笑いしながら干し柿を作るつくしの横には暴れん坊の誠太郞と今年産まれた湊美(みなみ)・・・俺にそっくりな美人だ。


それから秋になると西門ではつくしの果物が沢山実を付け収穫作業は弟子達も総出で大忙しだ。

桃のコンポートが子供達のおやつになり、栗きんとんを料理長が毎年喜んで作っていた。栗羊羹は茶会でも使われ客達は俺の茶よりつくしの栗羊羹が狙いだという噂まで・・・。
そして無花果のジャムを作ったら評判になって地方支部への贈り物になったし、温州みかんを丸ごと使った大福も子供達に人気だった。

葡萄はジュースにムースにゼリーにと姿を変えて婦人会の茶話会で大人気。つくしは葡萄の苗木を追加注文したぐらいだ。
そして林檎はジュースにアップルパイ。つくし専用のオーブンは休む暇もない。

梨は冷やしたのをそのまま縁側で齧り付く・・・俺はこれで充分だ。


子供達が小さい頃は一緒に遊びながら収穫し、そのうち面倒になったらつくしが1人で収穫していた。誠太郞も湊美も母親が作ったデザートは少しも残さねぇのに薄情な奴等だ。
だから時々俺が手伝って「つくし果樹園」で汗を流してた。


「あとはどれを採るんだ?」
「そうねぇ、もう葡萄は全部採り終えなきゃね。今年は栗が良く出来てるわぁ!」

「どうすんだよ、こんなに育てて・・・商売すんのか?」
「あはは!門の前で売ろうか?総二郎が売れば数分で売り切れるよ?」

「ばーか!誰がそんな事するかよ!」
「だってさぁ~、私がここに住むのに何か理由が欲しかったんだもん。何にも出来ないからさ・・・」


「・・・つくし?」
「なーんて、もう10年以上前の事だけどね!」


30歳をとうに過ぎてるのに幼い顔で、少しだけ日に焼けた頬で大口開けて笑って・・・「今じゃここは私の庭だ!」って腰に手を当てて偉そうにしていた。



茶も作法も出来ないからイヤだって思ったのか?
花を育てて茶花を生けるのも怖かったのか?

だからこんなに果物育てて自分の仕事にしたって?自分の居場所を作ったって?


マジ、馬鹿なヤツ・・・そんなもの作らなくても俺の横が指定席だったのに。
エヘン!と威張って俺の横に座ってれば、誰も文句なんて言わねぇのに。

年柄年中世話して回って、実ができたら自分にじゃなくて誰かの為に全部使って・・・そうしないとこの家に住めなかったのか?



「馬鹿じゃねぇの?そんなに恐ろしい家かよ」
「あはは・・・あの時は怖かったのよ」

「みんなと仲良くしてたじゃねぇか」
「うん・・・でも半分は無理して笑ってたかなぁ~」

「なんで俺に言わねぇの?」
「総二郎に話したらみんなにバレるじゃん」


「今は・・・どうなんだ?」
「今かぁ・・・ははっ、やっと私の一部になったかな。無理もなくなった・・・うん、本当だよ?」

「不器用なヤツだな・・・時間掛かりすぎだっての!」
「あとは・・・柚子、だね!」


「茶も点てろ。俺の嫁なんだから」
「・・・はい!お師匠様、明日から頑張ります!」



桃栗3年 柿8年 柚子の大馬鹿18年・・・本当にあの日から18年後、つくしの柚子に実が付いた。
そしてつくしの腹はその時もふっくらしてた。


年明け、誠太郞と14歳離れた3番目の子供が俺達の所にやってくる。


「お母さーーん、少し休んだら?湊美と俺が栗拾うから」
「ほらほら、無理しない!お腹の子供が驚くよ?お母さん!」

「はーい!じゃあ後は宜しく~!」



茶室にまで響く声に俺は笑う・・・そんな実りの秋の話。






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Comments 6

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2019/09/30 (Mon) 13:01 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

あらら!私、全然自信なくて、こんなお話しでいいんだろうかと思ったのですが(笑)
意外にも良かったのかしら♡

本当に1話完結が苦手なので、どう始まってどう終わったらいいのかさっぱりです。
空様はこの1話って言うのが本当にお上手・・・尊敬しています。

今年の冬は少しこのSSに挑戦して行こうかと思ってます。
連載控えめで(笑)

実は明日も類君と総ちゃん、両方SSがあります。類君のSS、追加しちゃった♡
ふふふ、楽しんでいただけたら嬉しいなぁ~♡

2019/09/30 (Mon) 18:56 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/30 (Mon) 22:51 | EDIT | REPLY |   
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2019/09/30 (Mon) 23:11 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは♡

ホントに・・・どうしちゃったの?
どうしてそんなに真面目になっちゃったの?

確かにエロ要素はない話だったけど、それをエロコメントに持って行くのは得意のはずなのに(笑)

もしかしたら、お話しが可愛かったかしら♡

あはは!梨はそのまま💦
何となく梨を囓る総ちゃんが想像出来たんですよ(笑)柿だと甘いかな、と。

うふふ、辛抱強い総ちゃんの18年♡
何歳だ?って計算はしないようにね~♡

2019/09/30 (Mon) 23:58 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

みわちゃん様、こんばんは。

コメントありがとうございます。
そうなんですよ、実は「柚子の18年」って言葉もあるんですって。

本当に18年も実が生らないのかと言うと、実際はもう少し早く生るそうです。
今は肥料とかいいのがあって結実の時期も早いんだそうです。それでも15年程度は掛かるらしいですよ?

類君のお話し・・・はい、ありがとうございました。
巫山戯て書きましたが、思いの外喜んでいただけて嬉しかったです(笑)

えぇ、次がね・・・ははは、もう笑えないって思ってたら公開されちゃった💦
どうしましょう・・・困ったわ(笑)

でもラストはグイン!と明るく持って行くぞっ!と気合いだけ・・・どうぞ宜しくお願い致します。

2019/10/01 (Tue) 00:04 | EDIT | REPLY |   

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