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花沢家でバイトを始めて1週間が過ぎた。
1日の流れは大体掴めたけど、掴めないのはご主人様である花沢類の生態・・・いや、行動だった。

カーテン用のリモコンをピッ!と押して彼の部屋に朝日を注入!そして彼のベッド横に立って深呼吸1回。


「おはようございます、類様。起床時間です、起きて下さい」
「・・・・・・・・・」

「おはようございます、類様、お時間です、布団から出て下さい」
「・・・・・・・・・」

「ちょっと!聞いてます?]
「・・・・・・・・・」

あれから毎朝同じ時間に起こしに来るけど1回で起きることはない。
だけど布団を剥ぐことはヤバいと判ったからひたすら揺り起こした。
しかも両手でグイグイ押しても返事がない・・・最終的には一回転するぐらい身体を揺さ振ったら漸く不機嫌な顔が布団から出てくる。その根性には脱帽だわ!

「やっと出てきましたね?!はい、おはようございます!」
「・・・・・・💢」

「何なら反対側から回してあげましょうか?」
「・・・起きたって!」


そしてイケメンなくせにボサボサで起き上がるから、バスローブの袖を引っ張って洗面台の前に連れて行き顔を洗わせる。

「・・・あのさ、そこまでしなくても自分で出来るんだけど。はっきり言えば迷惑・・・子供じゃないんだから」
「子供の方がまだ短時間で終わらせます!類様、タオルで顔を拭いてから話して頂けます?床がびしょびしょになるじゃないですか!」

「・・・だって見てるから気が散る・・・」
「見なくても済むようにさっさと終わらせて下さい!もうっ、こんなに濡らして!」


長い脚を軽くペシ!っと叩くと渋々移動して部屋に戻り、それから超スローモーションで着替え始める。
あのモノトーンのクローゼットから取り出す服は毎日手前から・・・つまり全然自分では選んでなくて順番通りに着てるだけ。ただし一流品だし、この人だから何をどう選んで着てもサマになってる。

着替えた後にはこっちが赤面する程格好いい「花沢類」の完成。
それでも大欠伸して後ろ髪に寝癖が付いたまま・・・それさえ格好いいんだから神様は不公平だって思う。進が同じ事をしたら間違いなく後ろ頭を殴ってる。


そして時間になったらダイニングに連れて行く。
この時も私は後ろを歩かなきゃいけないのに気が付いたら追い越してる。

「ちょっと!もう少し早く歩けるでしょう?何のために長い脚を持ってるんですかっ!」
「ダイニング用に付けてる訳じゃない。単なる移動用だろ・・・それに骨格は俺が作ったわけじゃないし」

「イチイチ屁理屈を言わなくてもいいから!今は春休みだからいいけど、大学が始まったらどうするんです?」
「大学が始まっても同じに決まってるじゃん」

「冗談じゃありません!私は遅刻する訳にはいかないんだからキビキビ動いてもらいますから!」
「今でも充分キビキビしてるじゃん・・・」

「私じゃなくて類様ですっ!!」


そうよ・・・この人を1週間休みなく時間通りに大学に送り込んで、夕方も問題なく過ごせば1週間で5万円の臨時ボーナス!それを4週間続けたら20万円、休みの多い大学生だから8ヶ月通ったとして160万円、それを花沢類の卒業まで続けられれば480万円っ?!

凄い・・・凄すぎるわ!(まだ1週間しか働いてないけど)


頭でそんな事ばかり計算して歩いていたら、いつの間にかダイニングを通り越して玄関に向かっていた!驚いて駆け足でダイニングに入ったら、今度は加代さんが不思議な顔をして「類様よりこんなに遅いとは何事です!」だって。
それを見て鼻で笑った花沢類・・・なんて意地悪なのかしら!

それでも彼の顔を「諭吉」だと思うことにして、今日も綺麗な食卓を横から眺めていた。



朝のバイトが終わったら自分の部屋に戻って勉強。
入学したらすぐにあるって聞いてる英語の試験に備えて予め出されてる課題に取り組んでいた。

英徳大学の外国語学科は第一外国語に英語を指定されてる。それ以外の外国語を2つは履修しなくちゃいけない。どれを選んでもいいんだけど、私は絶対にフランス語だけは選択しないって決めていた。
あんな発音が難しいもの、私の人生に必要ない!そのぐらい全身で拒否ってた。

だって聞いていたらむず痒くなるんだもん・・・。


お昼ご飯の時間は花沢類に付き合わなくても良かったから、お散歩がてら近くのスーパーに買い物に行ったり、加代さんの手が空いていれば余分に作ってもらったランチでマナーの研修も受けた。
お辞儀の仕方、廊下の歩き方、返事の仕方・・・そこまでするの?ってぐらい細かい事を言われて頭がこんがらがった・・・。




********************




牧野が働き始めて1週間・・・ギブアップするどころかパワーアップしてた。

夕方になるとカタカタカタ、とカートの音がする。
そして3回ノックの後に「失礼いたします!」と元気よく叫んで牧野が隠れるぐらいの掃除用カートが入って来る。


「それではお掃除を始めさせていただきます!類様、後でベッドメイキングもしますから移動して下さい」
「・・・今から?」

「はい、今からです!たまには部屋から出て行って散歩でもされたらどうですか?一日中部屋だなんていい若い者が不健康でしょ?」
「・・・使用人に指図される覚えはない」

「指図してませんよ?提案してるんです。太陽の光を浴びて運動したら食欲も出るってもんです」
「何処のおばちゃんなの、あんた・・・」

「はい、外に出ないならソファーにどうぞ~!」
「だから指図すんなって・・・」


そう言った時にはもうガタガタ音を立ててモップを出して、俺の声なんて全然聞いてない。
その上鼻歌交じりでモップを掛けていく・・・こんなに楽しそうに掃除する人間を今まで見た事なんてなかった。

まぁ、何とかベッドメイキングは上達したみたいだし、バスルームのタッチパネルにも慣れたみたい。あれからは頭から水を被ることも無かったし。
それにしても声が反響するからってバスルームでも歌いながら掃除するの、音痴だから止めてもらいたいんだけど。


そして独り言が多い子だって言うのは判った。
姿は見えないけど何処かで必ず何かブツブツ言ってる。

「はぁ、凄いのねぇ!こんなの初めて見た!」・・・って何を見てるんだろう?
「うわっ!何これ!どうやって使うんだろう?」・・・って何を見付けたんだ?
「はぁ~!成る程ねぇ・・・こりゃ難しいわ!」・・・って何が判んないんだろう?そして俺には聞いて来ない。

こんなにも心の声が漏れていたら隠し事なんて出来ないんじゃないのか・・・俺は毎日本を読むフリをして牧野の行動を目で追っかけてた。


「あっ!類様、ちゃんと水あげてます?」
「・・・は?」

「これこれ!子宝弁慶草ですよ!えーっと・・・うん、土は湿ってるわね」
「・・・気になるなら自分の部屋に持って行けば?」

「え?だって2つ買ったから私の部屋にもあるんだもん。植物は喋らないけど愛情はちゃんと判るんだって。そっぽ向いたら枯れるんですよ?」
「そんな訳ないじゃん。光と水があったらそっぽ向いてても育つって」

「だめだめ!この子が元気になるように毎朝『おはよう』って声掛けてあげて下さいよ?じゃ、夕方の掃除が終わりましたから夕食時にお迎えに来ますね~!」


バタン!と閉められたドア。そして来た時と同じようにカタカタカタ・・・と、今度はカートの音が遠離る。


牧野が出て行った後のシーンとした部屋でポツンとソファーに座ってる俺。
これまでは何とも思わなかったのに、どうしてこの静けさに胸がザワザワするんだろう・・・?





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Comments 4

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2019/07/06 (Sat) 08:21 | EDIT | REPLY |   
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2019/07/06 (Sat) 11:38 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

あはは!花沢諭吉です♥
(こんな事書いたら怒られるんじゃないかと凄く心配・・・類つく作家さんに、ですけど💦)

そうですねぇ、楽しんでるんだと思います。
多分不思議で不思議で堪らないんでしょうね♥

この仕事っぷりでクビにならないのはどうなんだろう(笑)
きっと加代さん達も楽しんでるんでしょうねぇ~!

1番楽しんでいるのは・・・私です(笑)Comedyは気持ちが楽です♥

2019/07/06 (Sat) 14:35 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは。

あははは!そうそうイケメンだと寝癖も素敵で許せるのよ。

旦那だったら・・・って思うけど、旦那の場合既に注意もしません。
笑われるだろうなぁ・・・って思いながらそのまま(笑)

うんうん、花沢諭吉が480人・・・凄いよね💦
うちの娘も働かせて欲しいわ(笑)

2019/07/06 (Sat) 17:41 | EDIT | REPLY |   

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