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plumeria

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東京に帰ってから数日・・・2月になった。

紫音と花音は仁美さんと別れてからやっぱり不安定になって泣くことが多くなった。
その度に辛くなるのは判りきっていたこと・・・これが子供達を手放した結果なのだと受け止めるしかなかった。

離れで寝ることになってから、朝起きるとまず花音が泣きながら仁美さんを探して、紫音がそれを慰める事から始まる。
それが余りに酷かったから、朝ご飯を私達親子3人で食べようと思ったのを急遽美作さん達と一緒に食べることにした。

とにかく双子のストレスの軽減・・・新しい生活に慣れるまでは焦らずにいこうと話し合った。


「花音、ちゃんと話しただろう?お前達の本当のママは牧野だぞ?キライじゃないだろう?」

「・・・うん、つくしママは好き。でもぉ・・・」
「かのん、またきっと会えるから。泣いちゃだめだって」

「いいのよ、紫音。花音、仕方ないよね、これまで仁美ママに甘えてきたんだもん。淋しいのは判る・・・私だって淋しいもの」

「つくしママもさみしい?」
「ぼくたち、ちゃんとそばにいるよ、つくしママ」

「ほらほら!喋ってるとあきら君、遅刻するわよ?紫音も花音もしっかり食べなさい。そうじゃないと仁美ママも向こうで泣くかもよ?そうしたらいつまで経っても病気が治らないでしょ?!」

「「はーい!」」


美作さんと夢子おば様の力を借りて漸く双子は朝食に手を伸ばす・・・毎日少しずつだと言い聞かせて私もこの子達を見守った。


そしてその日の午後、美作邸に広島から小包が届いた。
私はそれが何なのか判らなかったけど、執事さんはそれが届いたらすぐに美作さんに連絡するように言われていたらしく、電話で知らせていた。

もしかしたら総に・・・西門に関係しているのかもしれない。
そう思ったけど、そこには立ち入らないようにしていたから美作さんにも聞かないことにした。


紫さんの本当の目的や想い、それは総が私に話してくれることだけでいい。
私はそれよりも紫音と花音に寄り添わなくてはいけない、そう思うから余計な部分には触れないって決めていたから。


「つくしママ~!見てぇ!雪がふってきたぁ!」
「えっ、本当?うわぁ・・・積もるといいねぇ!」

「つくしママ、つもったらいっしょにゆきだるまつくろう?」
「そうだね、そうしよう!沢山作ってお庭にかざろうね!」

「「うん!!」」


離れの窓から3人並んで空から落ちてくる雪に見惚れた。
ふわふわと頼りなく風の流れに舞いながら、私達の目の前を通って行く・・・1人で見ると心が凍えてしまいそうなのに、誰かと見るとこんなにも素敵なものだったっけ・・・。

だんだん庭が白くなっていくのを眺めながら、紫音と花音も遠くに居る仁美さんを思っていたんだろう・・・あのお屋敷の庭にも雪が積もっていたから。
だから暫くは何も喋らずに、落ちてくる雪に心を奪われていた。




***********************




「ご祝辞は東京都美術文化協会の会長様と、鷹司会長、それに江原物産のご隠居様にお願いしておりますので、後は総二郎様のご友人から何方か・・・」
「・・・・・・友人ねぇ」

「司君でいいんじゃないのか?出席で返事があっただろう」
「・・・・・・司・・・まぁ、あいつがしてくれるならな・・・」

「宝生家の方では聖林大学の学長様がご挨拶だそうですわ。英徳の理事長にもお願いしていますわよね?事務長、お返事はあったの?」
「はい、それは大丈夫でございます」


こう言う話をする時だけ抜糸を済ませたばかりの手が疼く・・・それを摩りながら親父とお袋、事務長の話を聞き流していた。

司に祝辞・・・絶対に無理だろう。
あいつは返事は出席だろうが来る気なんてない・・・そう思うがここではそんな事を言えなかった。

それなら類・・・司よりも無理だろう。
俺が半殺しの目に遭う・・・どう考えてもこの2人には絶対に頼めない。


そんな事ばかりを考えていたから、引き出物は京都の老舗和菓子屋から特注品が届くとか、披露宴後の支部宴会の流れはどうするとかの話は全然頭に入らなかった。
ここまで来てもまだ披露宴を中止にする事ばっかり考えてる・・・それを感じ取るから、お袋は俺と親父と紫の間でオロオロしていた。

紫はとにかく無言・・・親父とお袋の言葉に頷く意外、言葉を挟まずそこに座っていた。

隣のテーブルでは志乃さんと古弟子、それに薫が当日の裏方の動きを確認。その日、使用人の半分はホテルで披露宴に関する雑用をするから、薫は宝生との取り次ぎもしているようだ。
メモを取りながら真剣な表情で志乃さんの指示を聞いていた。


そんな時、俺のスマホにメッセージが入った。
あきらから・・・至急電話出来ないか、との文字を見て「急用だから」と席を立った。


そして誰もいない俺の茶室に入り、念の為そこで数分間人の気配を確認・・・誰も近寄ってないことを確信したらあきらに電話を入れた。


「・・・俺だ、どうした?」
『総二郎、もしかして西門か?話して大丈夫か?』

「大丈夫かどうかは判んねぇが話は聞ける。何があった?」
『先日亡くなった青田喜子の日記があるって話しただろ?それが今日うちに届いたらしい。勿論俺も会社だから見てないが総二郎、どうする?出てこられるか?』

「判った、どうせ2月の夜に仕事なんて入んねぇし、こっちの用が済んだら行く」
『俺は打ち合わせがあって7時ぐらいになる。それまでに来られるんだったら牧野と子供達の話を聞いてやれないか?双子が相当不安定になってて牧野も困ってるから』

「・・・そうか。じゃ、そうするわ」


電話を切ってまた親父達の所に戻り、その後も気の乗らない話し合いに取り敢えず参加。
夕方になってそれが終わったら「あきらの家に行く」と言い残し、不機嫌になったお袋を無視して車を美作に走らせた。


**


美作に着いたら門はすぐに開けられ、俺は駐車場に車を止めた。
そして玄関から入らずに庭に向かうとテラスのカーテンが開けられていて、部屋の中から夢子おばさんが手を振っているのが見えた。それに軽く頭を下げて応え、ほんの少し雪が積もってる庭を横切り離れに向かった。

離れのインターホンを鳴らすとパタパタとつくしの足音が聞こえる・・・あきらが前もって連絡していたんだろう、勢いよく開いたドアからつくしが飛び出してきた。


「おっ!なんだよ、いきなり・・・!」
「だって日光以来だから・・・お帰り、総!」

「そんなに日にちは経ってねぇっての!馬鹿だな・・・子供達は?」
「中に居るよ。少し拗ねてるかな・・・」

「拗ねてる?どっちが?」
「ふふっ、花音だよ。紫音と喧嘩したの。原因なんて些細な事なのよ、積み木が崩れたって・・・それだけなんだけど」


あきらの言ってた精神不安定・・・それも無理はない事だと、つくしの肩をポン!と叩いてリビングに向かった。

そうしたらそこには膨れっ面の花音がソファーに、平然とした紫音がラグの上に座って積み木で遊んでいた。そして俺を見るなり涙を浮かべたのは花音・・・ソファーから飛び降りて駆け寄り、片足にしがみついてわんわん泣きだした。


「どうした?花音」
「そうちゃ・・・パパ!だって、だって・・・ひとみママ、いないもん!やっぱりやだぁ!!」

「・・・ほら、抱っこしてやるから来い」
「うわぁ~~んっ!!」

今度は差し出した俺の両腕にしがみついて大泣き・・・抱きかかえると首を絞められるんじゃないかと思うぐらい力を入れられて、嬉しいけど苦しかった!
そのままこいつが座っていたソファーに座り、今度はそれを見ていた紫音にも手を伸ばした。
そうしたら紫音も積み木を蹴飛ばしてソファーをよじ登り、俺の左側に飛び付いて来た。

まるで蝉の大合唱かと思うぐらいの泣き方・・・でも、そんな姿も俺は初めてで何故か楽しかった。


暫く大声出して泣いてたら疲れたのか、すすり泣き程度におさまった。
だから抱き締めていた手を緩めて2人を両隣に座らせ、小さな肩を抱き寄せた。つくしはそんな俺達を少し離れた所から見ていて、ハラハラしてるのか顔が強張ってる。

「なぁ!俺、何も食ってねぇんだわ。簡単なものでいいから作れる?」
「あっ、うん・・・今、用意してるから待っててね」

「悪いな!」


この後つくしが晩飯の支度をしてくれている間に、俺は自分の事を子供達に聞かせてやった。





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