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plumeria

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朝食が終わって部屋に戻ったけど、残りのバイト時間に牧野がチラチラ俺を見てる。
しかも凄く嬉しそうにニコニコと・・・こっちは魔が差してピアスホール開けたせいで気分が最悪なのに!


「あのさ・・・その間抜けな笑い方止めてくれる?ムカつくから・・・」
「え?!酷いなぁ、間抜けだなんて。多分耳が痛いからムカつくんですよ。痛みが引けば大丈夫ですって!」

「・・・誰のせいで・・・」
「えっ?!何ですって?!」


あんたがピアスなんかくれるからこんな目に遭ったんじゃん・・・ああーーっ!外したい!

『ピアスホールの完成には最低でも1ヶ月はかかるから。その間外すなよ?穴が塞がるぞ?』

総二郎がそんな事言ってたっけ・・・いや、もう塞がってもいいけど。
でもそうしたら「根性無し!」って言われるんだろうな・・・うん、根性無しでもいいけどさ。

外したくて外したくて指が耳に行く・・・でも少しでもそこを触ったら痛いような気がしてイライラする。だからカポッ!と耳を手で塞いでひたすら我慢していた。痛みが引くのが1週間って言ったっけ・・・それまで毎日これ?耐えられない・・・!

どうにかして意識を耳から離したいけどする事もない。
バイオリンの練習・・・いや、耳を使うのにそんな事も出来ない!勉強・・・いや、もっと出来ない。

そうしてるうちに牧野のバイト時間が終わったらしく、元気よくクリーニングを抱えて出ていった。



昼過ぎになっても気分が滅入ったままでベッドに倒れ込んでいた。
その時に聞こえてきたノック音・・・誰だろうとは思ったけど頭を上げるのも面倒で返事もしなかった。どうせ加代か田村が入って来るんだろうと思ったのに、「こんにちは~!」なんて惚けた言葉で入って来たのは牧野。

昼間はバイトじゃ無いから来るはずないのに、どうしたのかと思って身体を起こした。こいつが来たら無防備に寝てちゃいけないって学習したからだけど。
そして朝同様、ニコニコしながら近づいてきて、俺のベッドの横まで来た。
初めて見るミニスカート・・・そこから出てる細い足に目が・・・いや、そうじゃなくて。


「・・・・・・なに?」
「お散歩行かない?」

「・・・・・・は?」
「お散歩!そこで寝てるから耳が気になるのよ。外に出て気分転換しよ?私、この辺り知らないから教えて欲しいんだけど」

「・・・1人で行けば?」
「私は耳なんて痛くないもん。気分転換が必要なのは花沢類でしょ?さっ、行こ?!」


散歩・・・三歩じゃなくて散歩だよね?2時間半歩ける牧野との散歩って何処までなんだろう・・・?
そんな事を考えてる間にも牧野は窓から外を見て「いい天気~!!部屋に居るのが勿体ないねぇ!」・・・いや、勿体ないってそこで使う言葉なのか?

1度は立ち上がったけど・・・やっぱり気が乗らなくてソファーに座ろうとした瞬間、そこにバッ!と飛んで来て両手を広げて阻止された。だから、ここは俺の部屋だってのに💢
もう何を言っても無駄なような気がして、仕方なく部屋を出た・・・。



**



「きゃあー!花沢類、見て!チューリップが咲いてる!春ねぇ♡」
「・・・・・・3月だからね」

「あっ!あそこの家の玄関にすっごい大きな犬!!ねぇ、見て見て!なんて犬?!」
「・・・・・・フラットコーテッドレトリバー。あんたぐらいある犬だよ」

「乗ってみたいなぁ~」
「・・・・・・乗り物じゃ無いから」

「あっ・・・いい匂い♡この家の晩ご飯はカレーだね!」
「・・・・・・犬並みの嗅覚だね」

「すっごーい!見てぇ!もう桜が咲いてる~!」
「・・・・・・寒桜でしょ?ってか黙って歩けないの?」


屋敷を出てから当てもなくブラブラ・・・その途中に見える色んなものに牧野は全部反応して言葉を出した。しかも大声・・・通り過ぎた人が振り返るほど、両手までフル活用して質問してくるから他人のフリも出来やしない。
そして反応し過ぎるから歩いてても立ち止まる回数の多いこと・・・このまま無視して歩いていたら100メートル離れることも可能じゃないの?

それなのに「花沢類ーっ!」ってフルネームで叫ぶから仕方なく後戻りした。


「ねぇ!あそこに公園があるよ?休憩しない?」
「・・・・・・散歩って休憩がつくの?」

「いいからいいから!疲れたでしょ?行こう!」

疲れるのは身体じゃ無くて神経だけど、って思った時には俺のセーターの袖を持って公園の方に向かった。
マジ、なんなの?この強引さ・・・いくら勤務時間じゃないって言っても雇い主の自由時間を邪魔する使用人なんているわけ?
言いたいことは山ほどあるけど、何故か引き摺られて公園内に入った。

そして指さされたのはブランコ・・・まさかそれに座れと?


「早く早く!子供達が来たら退かなきゃいけないでしょ?今、誰も居ないからさ!」
「・・・・・・1人で座れば?俺はいい・・・」

「え?!汚くないよ?綺麗だよ?」
「そう言う問題じゃ無い」

ここでも「いいからいいから!」を連発されてブランコに座らされた。
遠くに居る親子連れがこっちを見てる・・・マジ恥ずかしいんだけど!って隣を睨んだら、牧野は子供そのものの笑顔でブランコを漕いでいた。


「もうすぐしたらここの桜も咲くねぇ!春っていいよね~、急に淋しい冬からパッと明るくなって色が増えるでしょ?」
「・・・・・・別に感じたこと無いけど?」

「そうなの?春って可愛い花が沢山咲いて、緑も綺麗になるでしょ?それに薄い色だった空も濃くなってくるし気分が良くならない?私ね、小学1年生の黄色い帽子と赤いランドセル見ると楽しくなるのよね~!」
「・・・・・・小学1年生?」

「うん!私の家は貧乏だったからランドセルも人のお下がりでヨレヨレだったの。だからあのピカピカのランドセルに憧れるのよ。自分に子供が出来たら絶対に新品を買ってあげるんだぁ!花沢類は男の子だからランドセル、黒だった?」

「・・・ランドセルなんてなかった。英徳は指定のものしかダメだから・・・」


その鞄の記憶もない。
春だからって浮かれて学校に行った事なんてなかったかもしれない・・・行ってもあいつらと一緒に居ただけで他に何の思い出もない。憧れ・・・何かに憧れたっけ?

ブランコに座って一生懸命小学部の時の思い出を辿ったけど・・・そこに出てくる自分は全部仏頂面の可愛くない子供だった。


・・・ってか、隣の牧野、ブランコ漕ぎ過ぎじゃないの?
スカートがヒラヒラしてるんだけど。

俺の座ってる位置からだと牧野が前方に行った時、僅かに太股が見える・・・でも、何も言えなかった。
・・・いや、言わなかった。



「うわーっ!花沢類、見て!オオイヌノフグリが沢山咲いてる!」
「きゃああーっ、あのパン屋さん、美味しそう!今度のお昼に買いに行こ!」
「可愛いーーっ!この家のベランダに小鳥が居るよ?」
「ねぇねぇ、あれは何の花かな?見た事ないなぁ!」

「・・・・・・・・・」


帰りもずっとこの調子・・・気分転換が出来たのは牧野だけじゃないの?



ぐったりして帰ったのは午後4時・・・実に2時間以上の散歩だった。
それなのに牧野は元気よく「もうすぐバイトだからまた来るねぇ~!」と自分の部屋に戻って行った。

そして耳はと言うと・・・屋敷に戻った途端ズキズキし始めた。散歩の時には確かに忘れていたのに・・・。
やっぱり消毒した方がいいのかと思ってあきらから貰った消毒液を持って来た。


『誰かにやって貰えよ、綿棒でクルクル穴の周りを撫でてもらえばいいし』


「・・・・・・・・・いや、自分でする。何かが起きそうだし」

総二郎の言葉は打ち消して綿棒に消毒液を付けた。そして鏡を見ながら・・・見ながら・・・・・・見ながらやろうとしてるのにどうしても触ってしまうからやりにくい。
「くそっ・・・」と、もう1回挑戦しようとしたら牧野がノックと同時に入ってきた。


「失礼しまー・・・あれ?類様、何してるんですか?」
「見たら判るだろ?耳の消毒・・・」

「へぇ!そうやってやるんだ!出来ました?」
「今からやるとこ。気が散るから少し黙ってて」

「難しいんですか?やりましょうか?」
「・・・・・・は?」

牧野にクルクル撫でてもらう・・・いや、自分でやるし!!
そう思ったのに牧野は掃除用カートをそこに置いて嬉しそうに俺の目の前にやってきた。そして手から綿棒を奪い取るともう1回消毒液を付けて「椅子に座ってください!」と。

仕方なく座ったら真横に牧野の身体・・・しかも胸が。
いや、黒いワンピースにエプロンもしてるから大きさなんて判らないけど・・・・・・は?!大きさ?!
何考えてんだ、俺!大きさって、大きさって・・・!

「類様、ちょっと失礼しますね・・・ここ触ったら痛いですか?」
「痛いっ!!耳朶は触らないで!」

「ごめんなさいっ!耳かきみたいに膝枕しましょうか?」
「膝枕?片耳下になるじゃん。痛いからダメ!(その前に膝枕の発想が不味いだろう!)」

「仕方ないなぁ・・・動かないでくださいよ?」
「・・・・・・ん」


目を閉じてても牧野の息遣いが伝わる距離・・・なんだ?このムズムズ感。
早く終わらせればいいのに!って思った瞬間、冷たい感覚が耳朶にあって、その後に牧野が耳にふっ・・・と息を吹き掛けた。


「・・・・・・・・・!!!!」
「あっ!耳かきと勘違いした!あっはは!ごめんなさい!」


「るーいー!!今度のパーティーの・・・・・・・・・」

その時にノックもせずに入って来たのは母さん・・・正面のソファーには俺が座ってて牧野が左側にピッタリくっついた状態。
きっと手に持ってる綿棒は目に入らなかっただろう。


「・・・・・・・・・・・・・・・失礼・・・」


「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・奥様?」




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<お知らせ>

リアル多忙につき「最後の雨」の公開を延期させて頂きます。
ご了承くださいませ。
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Comments 4

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2019/07/13 (Sat) 01:21 | EDIT | REPLY |   
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2019/07/13 (Sat) 08:20 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは。

楽しい散歩だったでしょう?
はい!ここでもフラットコーテッドレトリバー出ましたねぇ(笑)

誰か判ります?菊次郎です♡流石にボルゾイ飼ってる人は少ないだろうからこの子にしました♡

そして何気にこの類君・・・エロ要素があるみたいです(笑)
見てる見てる!!そして黙ってる(笑)

お母様も見たけど黙って帰る(笑)

どんな花沢家なんだ?!って感じになってますね!


リアル・・・そうなんですよ💦
コンクール衣装が来ちゃったんです・・・数枚ですけどこれは流石に気を遣うので💦
7月が大変になりました・・・嬉しいことですけどね(笑)

お気遣いいただき、ありがとうございます。

2019/07/13 (Sat) 19:07 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんばんは。

ふふふ、実は「ふっ」はご希望により追加しましたよ(笑)

これで良かったでしょうか?何気にイチャイチャっぽくなりましたかね?
うんうん、お母様も怒らないという事は・・・賛成派なんでしょうか?(笑)


最後の雨、申し訳ないですね💦
書いてるんですが、チェックしないとミスが多い人なので、それが間に合わなくて。
チェックしてもミスってるのにね💦

仕事が落ち着いたら再開しますね~!(暗い話だけど・・・)
お気遣いいただき、ありがとうございます。

2019/07/13 (Sat) 19:12 | EDIT | REPLY |   

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