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パーティーが行われる大広間の入り口で、西門さんと美作さんは先に会場に入って行った。
直後に聞こえる悲鳴・・・何が起きたのかと思ったら彼等がお嬢様達に囲まれてるみたい。開いてるドアからチラッと見たらカラフルなジャガイモ達が2人の周りに見えた。

旦那様、奥様と花沢類は全員が揃ったら中央のドアから入場すると言われ、すぐ傍の控え室で待機中。
そこでは旦那様もブラックタキシードで渋く決めてるし、奥様はシャンパンゴールドのドレスで全身が宝石みたいだった。

いやいや、息子の誕生日にお母さんがそこまで?って思うのは私だけかしら。
しかも歳は知らないけど背中が開き過ぎじゃないの?って私が隠したくなるほど色っぽかった。


「間もなく時間でございます。お支度は宜しいですか?」
「お客様も数名遅くなられるようですが、殆どお揃いですわ」

田村さんと加代さんがそう言ってきて、私も今からは裏方のお手伝いだと言われた。
新人だから会場には入らず、お料理の準備や食器、グラスの補充が殆ど。この時間でも届く花束やプレゼントの整理もあるし、招待客の出入りの案内や、会場外で休んだりするご年配のお世話等々。
数時間のパーティーの裏方は戦場だと先輩達から聞かされていた。


「そうか。じゃあ行こうか、類」
「うふふ、今年も華やかねぇ!類、バイオリンの準備も出来てるの?」

「あ・・・部屋に忘れてきた。取ってくる」
「それなら私が行きます!クローゼットの中にあるバイオリンでしょ?」

「・・・・・・落とさないでよ」
「やだなぁ!バイオリンぐらい平気ですよぉ!」


急いで彼の部屋に戻ってクローゼットに入り、その奥の一際豪華な楽器収納庫から頑丈なケースを取り出した。
「うわっ!意外と重いっ」、とは声に出たけど持てない訳じゃない。両手でガッチリ抱えて急いで階段を駆け下りた。
そして会場横の廊下を通過して、もうすぐ控え室って所まで来た時、急に曲がり角からヌッ!と出てきた男性に全身で体当たりしてしまった!


「きゃああぁーっ!」
「・・・ってぇ!!」

その拍子にバイオリンのケースは廊下に落っことすし、自分は尻餅ついて腰を強打して悶絶・・・!「あたたた!」と腰を摩ってると、目の前に黒い革靴が見えた。
その靴を辿って目線をあげていくと・・・そこには初めて見る男性が鬼みたいな顔して私を睨んでいた。

「あっ、申し訳ございません!大丈夫でしたか?いたたた・・・」
「・・・なんだ、てめぇ」

「は?私はここのバイト・・・いえ、使用人です。ごめんなさい、まさか人が出てくるなんて思わなくて・・・」
「・・・この俺にぶつかって座り込んだまま謝ってんのか?ムカつく女だな!」

「・・・えっ?あっ、申し訳ないとは思うんですけど、こ、腰がっ・・・すみません、手を貸して下さいます?」
「はぁ?!なんだと?!!」


いや、自分でもヤバいとは思ったのよ・・・でも、打った腰が痛すぎて立ち上がれなかった。
オマケに足まで捻ったみたい・・・それで片手を出して救いを求めたら、逆に凄い声で怒鳴られた!

でも自分じゃ立てない・・・「お願いします~」ってもう1回頼んだら、私の手首を思いっきり掴んで凄い力で引き上げられた!

「きゃああああーっ!」
「喧しい!!助けろっつったのはてめぇだろうが!」

立ち上がったのはいいけど、ドスッ!と何かに当たった。でもなんだか凄くいい匂い・・・そう思ってパチッ!と目を開けたら真っ暗な世界だった。あれ・・・?ここは何処?

顔をあげたら・・・さっきの鬼の顔が目の前に?!

私がぶつかったのは彼のタキシードだったみたい。
この人も私が抱きついてるからなのか固まって目がテン・・・私と彼の顔は実に近かった!



「何やってんの?司」

声が聞こえた方に顔を向けたら花沢類が凄く不機嫌な顔で立ってる。そして「司」って呼ばれたこの人も彼を見てる。
もしかしたらこの人がもう1人の友達なんだろうか、そう思った時には花沢類が私達の真横まで来ていた。


「いつまでそうやってんの?牧野、バイオリンは?」
「・・・はっ!そうだった、申し訳ありません!」

司って彼から飛び退いて自分の足元を見たらバイオリンケースが転がってて、あと数センチで踏みつけるところだった。
いやいや、踏みつけるのは時計だけで充分!って思いながら急いで拾い上げたけど、流石に今回は花沢類に見られてる・・・恐る恐る振り返ったら、案の定彼の顔はヒクヒク引き攣ってた。

ついでに司って人もまだ固まってる・・・私を抱き留めていた手がそのままの形で、何故か真っ赤な顔をしていた。


「司、いい加減現実に戻ったら?会場に総二郎達来てるよ」
「・・・はっ!うおっ?!なんだ、こいつ!!」

「・・・・・・今頃?この子はうちの使用人。お前と似てて凄くそそっかしいんだよ。いいから会場に行きな」
「使用人・・・使用人のクセに俺に抱きついたのか!!」

「違いますっ!助けてって言っただけなのに力一杯引っ張られたんですっ!だから吃驚して止められなかったんですってば!」
「なんだと?俺に刃向かうのか!」

「刃向かってるんじゃなくて事実を言ったんです!でも確かにぶつかったのは私が悪いので謝ります・・・申し訳ありませんでした。えっと、失礼ですがお名前は?」


お名前は?と聞いただけなのに再び鬼の形相。
この時に初めて真っ直ぐこの人を見た。クリンクリンの癖毛だけど凄く格好良い。なんて鼻が高いんだろう・・・花沢類もそうだけど、この人も日本人離れした彫りの深さで羨ましいっ! それに耳に光る赤いピアス、それが凄く似合っていた。

思わず見惚れてジーッと顔を見てると、またまた表情が変わって、真っ赤なまま眉がひん曲がった!
くすっ、怖いけど面白い人なのかも?


「・・・こいつは道明寺ホールディングスの跡取りで幼馴染みの道明寺司。怒らせると怖いから気をつけな。
因みにバイオリンも気を付けて扱ってくれる?こいつに何かあったらあんたの給料、一生分でも弁償出来ないから」

「へっ?バイオリンが?」

「このストラディヴァリ、3億だから」


「・・・・・・・・・」


えっ?!私、さっきまで3億円を抱っこして歩いてたの?



**



やっとお客様が揃って旦那様が奥様、花沢類を従えて大広間に入っていった。
私はそれを1番後ろのオープン状態の扉の外で、他の使用人と一緒に拍手しながら見ていた。

何処から来るのか知らないけどスポットライトが花沢類を照らしてる。
私があんまり見た事もない、余所行きの表情で会場の真ん中を歩いてる。まるでそれは映画のワンシーンみたいで現実味がない・・・何故だろう、私には羨ましいとは思えなかった。


これが普通の家庭のバースデーパーティだなんて信じられない。
こんなに豪華で贅沢で華やかで・・・楽しいかどうかは別だけど、こんな世界もあるんだなぁって思いながらみんなの祝福を受ける彼を見ていた。

一応頑張って笑顔作ってる・・・凄く下手くそな笑顔だと思うけど。
旦那様も奥様も嬉しそうにお客さん達と話してるけど、それはなんの会話だろうって思ってしまった。


「よし!牧野さん、ここからは厨房と会場の往復ばっかりよ!行きましょう!」
「はいっ!頑張ります!」


まぁ、いい・・・私には関係ない世界だ。
こんな世界のバースデーパーティーだなんて私は一生参加しないと思うもん。

お誕生日会は大好きな人に囲まれて、小さなテーブルにケーキ乗っけてロウソク吹き消して、心のこもったプレゼントもらって「HappyBirthday」を歌ってもらうのが1番!
ドレスもタキシードも大き過ぎる花束も要らない・・・そう言いながら振り返って花沢類の姿を確認した。

西門さん、美作さん、道明寺さんと話してる。
その少し離れた所に綺麗なジャガイモ達がいる。


そして彼がチラッと私がいるドアの方に顔を向けたら、耳のピアスが光ったのが見えた・・・。


「牧野さんは慣れてないから厨房から大広間横の控え室までの運搬係ね!」
「はいっ!!」

「ドンドンお料理が出来てるはずよ!みんな、気合い入れて働きましょう!」
「「「はいっ!!」」」


うん、私にはこっちの方が似合ってる。
今日は臨時収入のある日だ・・・だから花沢類の事は考えずに頑張ろう!

まだこっちに視線を向けてる花沢類に背中を向けて、私は私の仕事場に戻った。




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2019/07/19 (Fri) 00:37 | EDIT | REPLY |   
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2019/07/19 (Fri) 07:09 | EDIT | REPLY |   
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2019/07/19 (Fri) 13:39 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんにちは!

そうですよね~💦毎度誰かにぶつかってますね、つくしちゃん!
今回は司君ですが、このお話の司君は可愛い感じにしてみました♡

いや、この先も書けるかと言われれば困るのですが(笑)
でもまぁ、パーティーの時ぐらいは4人揃って・・・が、いいかな?って思ったので。

司君の反応・・・さて、どう言うことなんでしょうね?
そして類君もちょっとムッとしてる辺り・・・ははは!変化が起き始めても鈍感類君でしょうか?


はい、色はどんどん増えていきますよ♡
次は何かな?

2019/07/19 (Fri) 15:10 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

えっ!!それは恐い(笑)
でもどうなんだろう・・・ビビりっぽいと思ってるので全身麻酔とかしそうな気がするのは私だけ?(笑)

痛かったら総ちゃんが危ない💦でも頼まれたら喜んで開けそうだけど(笑)


ふふふ、惚れましたよね。
一目惚れシーンですもんね!曲がり角ドスン!って。
でも普通は男が「大丈夫?」って助け起こして女の子がキュン!ってなるんだけど💦

まぁ・・・いいか!!(爆)

2019/07/19 (Fri) 15:16 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは。

ほほほ、可愛いでしょ?私の(数少ない)司君にしては。
いつもすっごく酷い男になってるので、今回は可愛くしました~!!
(実はまた忘れていたので慌てて書き足したんだけどね)

ははは!3億円を踏む女💦
いや、踏みそうになる女💦
どっちにしても怖いですよね・・・でもそんなもの普通に部屋に置いてる男💦それも怖いわ~!

もうすぐ3億円の演奏会で御座います。お楽しみに~!



2019/07/19 (Fri) 15:22 | EDIT | REPLY |   

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