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plumeria

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「類君、おめでとう!来年は成人だって?いやいや、早いなぁ!」
「・・・ありがとうございます」

「これはうちの娘で理沙と言うんだが、君より2つ年下だ。良かったら後で話でもしてやってくれ」
「お誕生日、おめでとうございます、類様。木下理沙と申します、どうぞ宜しくお願いいたしますわ♡」

「・・・ありがとう。こちらこそ宜しく」


はぁ・・・この挨拶、さっきから何回やってるんだろう。そしてあと何人来る気?マジ、倒れそうなんだけど!

既に数え切れないぐらいの祝いの言葉と娘の紹介をされて、たった今聞いた名前ですら覚えられない・・・しかも、今日の為に練習した笑顔もそろそろ限界。
早く部屋に帰ってベッドに倒れ込みたい・・・頭の中では枕が俺を呼んでいる光景しか描けなくて、次々に来るジャガイモの事なんて考えることも出来なかった。

そんな挨拶も一区切りついたらやっと解放されて悪友の待つテーブルに向かった。


「・・・疲れた。帰りたい」

「だからここはお前の家だから帰るもクソもねぇって」
「よく頑張ったじゃん。最後に挨拶したお嬢、可愛かったな・・・名前、なんだって?」

「さぁ?覚えてない」

「おい、20秒前だぞ?覚えとけよ!」
「いや、聞いた俺が悪かった。類には無理だもんな・・・」


「・・・さっきのチビはこの会場には来ないのか?」

急に司がそんな事を言って、俺達は司の方に目をやった。
司は横目で睨むように会場のあちこちを見回して誰かを探してる・・・それが「さっきのチビ」って言い方だと牧野の事だとすぐに判った。
判ったけど、何故か俺は知らん顔して司が見てる方向とは反対側に顔を向けた。


「さっきのチビ?どっかのガキが来てたのか?」
「司が何処かの子供を気にするって全然ピンと来ないけど?どんな子だ、男?女?」

「・・・ここの使用人。チビでドジで声のデカい女だ。さっき廊下でこの俺に・・・・・・い、いや、何でもねぇ!」

「なーんで司が赤くなるんだよ」
「ここの使用人でチビでドジ?あぁ、つくしちゃん?」


あきら・・・余計な事をっ・・・!って思っても無視。
聞こえないフリしてシャンパングラスに手を伸ばした。だけど総二郎とあきらの悪ふざけは止まらない。司に牧野の事をあれこれと伝え始めた。


「あの子は牧野つくしちゃん。類の専属でここに住み込んでる女子大生だってさ!」
「そうそう。類にいろんなご奉仕するらしいぞ?羨ましいよなぁ~!」

「・・・類の専属?ご奉仕ってなんだ?!」

「使用人からのご奉仕って言えば1つしかねぇじゃん!しかも朝と晩だけらしいぜ?昼間は見逃すってところが解放感あっていいよなぁ!24時間管理されたらそれも鬱陶しいしな!」
「だな!朝は目覚めの・・・夜はおやすみの・・・そしてその前後にはお決まりの・・・・・・うん、浪漫だな!」

「・・・目覚めの?おやすみの?お決まりの?・・・なんだ?」

「馬鹿だな、司!!」
「キスとハグに決まってるだろ?!」

「・・・・・・・・・・・・」


・・・・・・・・・馬鹿じゃないの?そんなの本気にしてどうすんのさ!

って思ったのに、急に後ろから司にタキシードの襟元を掴まれ窓際にズンズン引っ張って行かれた!
当然途中で招待客は俺達を見るし、父さんと母さんは唖然とするし、ジャガイモ達は悲鳴をあげるしで会場内は騒然!慌てた総二郎達が「何でもないから~」って愛想笑いして俺達の後について来た!

そして窓際まで行くと俺を壁にドン!と押し当てて、顔の横には司の拳・・・目の前に立ち塞がる司の顔が凄く恐ろしかった!


「おいおい!それはヤバいと思うぞ、司!そりゃ男相手にやるもんじゃ・・・」
「いや、かなり面白い状況だとは思うけど今日は類の誕生日だ。それ以上動くなよ?司!」


よく言うよ!この状況を作り出したのはお前達だろう!と睨んだけど、完全に遊んでる。逆に何故か司は超ド真面目な顔して、壁につけてない手が俺の胸ぐらを掴もうとしたからバシッと払い除けた!

「・・・何すんの?司」
「類、お前がそんなヤツだとは思わなかった!」

「そんなヤツって・・・どんなヤツだと思われてもいいけど、総二郎達の話を信じてるの?」
「なに?!じゃ、嘘なのか?あのチビは類専属の使用人じゃねぇのか?」

「・・・確かに俺付きの使用人だけど毎朝毎晩そんな事するわけないだろ!なんなら1日代わってみる?お前だって耐えられないと思うけど?」

「か、代わる?」

「早朝から布団を引き剥がされ頭突きで起こされるし、食事中は真横から監視されるし、部屋は掃除してるのか破壊してるのか判んないし、勝手に色んな物置いていくし、酷い時は刃物向けられる・・・それでも良ければ俺の部屋で寝たら?さっきだって見ただろ?3億円のストラディヴァリ、放り投げたんだから」


そう言ったら漸く壁から手を離して今度は腕組みして悩み出した。
いや、だからどうして司がそこまで悩むかな・・・牧野で悩むのは俺の方だと思うけど?!

その後で余計な事を言った2人に顔を向けたら、此奴らはさっさと踵を返して会場の真ん中に消えて行った。



「類様、ごきげんよう。お誕生日おめでとうございます」

その時に俺に話し掛けてきた1人の女性。
薄いピンク色のカクテルドレスでふんわりと髪を纏めて・・・まぁ、美人なんだろうと思うけど、俺の真横に来て美しくお辞儀をした人が居た。

「・・・ありがとう・・・」


・・・不味い。名前が判らない・・・誰だ、こいつ。
見たことはあるような気がする。いや、確かに会った事はある。でも名前が思い出せない・・・。
だから、ありがとうの次の言葉が出ずに固まってしまった。そして司もこの時、俺を置いて総二郎達のところに行ってしまった。

完全に1対1・・・どうやって逃げようかと彼女から視線を外して考えていたら、今度は母さんが近寄ってきた。


「あら!明奈ちゃん。お久しぶりねぇ!」
「花沢のおば様、お久しぶりです。おば様、今日も素敵ですねぇ!」

「うふふ、明奈ちゃんも綺麗になったわ。今年から大学ですって?この後の件、宜しくね?!」
「・・・はい。頑張ります」


この会話で思い出した。
この子は仙道明奈・・・今日のチャルダッシュの伴奏を母さんが頼んだ子だ。
俺の横に来た母さんが背中を思いっきり小突いたから「いた!」って声が出ると、今度はドレスの中に隠したハイヒールで足を蹴られた!
「ちゃんと挨拶をしろ!」のサイン・・・気を取り直して仙道明奈に声をかけた。


「失礼、明奈さん。今日はどうもありがとう。それに伴奏を引き受けてくれたそうでお礼申し上げます。我儘な弾き方しか出来ないけどその時は宜しく」

「とんでもないです!光栄ですわ・・・私の夢でしたから」
「・・・は?夢?」

「類様のパートナーだなんて・・・明奈、本当に嬉しゅうございます」


俺のパートナー・・・いや、ただの伴奏者だからって言おうとしたら、また母さんにゴン!と足を蹴られた。
この人、自分の靴がどれだけ凶器なのか知らないんだろうな・・・先が尖ってるから凄く痛いんだけど。




パーティーの時間は順調に過ぎていって、とうとう俺のバイオリンの演奏時間が来た。
それを紹介するのは父さん。田村がバイオリンケースを持って入ったら、会場内は一際ザワザワし始めた。

「それでは今年も類から皆様への感謝の気持ちとして、バイオリン演奏をご披露させていただこうと思います。今年は少しイメージを変えましてモンティのチャルダッシュを、伴奏は仙道明奈さんにお願いしようと思います。
初めてこの場で合わせる2人ですので、どうぞ皆様、暖かい目で見守って下さい!」


この挨拶で会場内からは凄い拍手と歓声。
そして彼女は顔を赤くしながらバイオリン演奏者の横にあるピアノに近寄って来て俺に挨拶し、続いてまるで自分のピアノリサイタルかのように深々と会場内にお辞儀をした。
恥ずかしそうに「どうしましょう~」なんて言ってるけど、絶対に猛練習して来てるから自信はあるんだんろう。

ピアノに座るとその瞳がキラリと光った気がした。

そして俺は牧野が放り投げた・・・いや、愛用のストラディヴァリを手に持ち少しだけ音慣らしをした。


時間をかけても仕方がない。
そう思ってバイオリンを構えた時、会場1番後ろの扉から覗いてる牧野の姿を見付けてしまった。


でも何故かその隣には司・・・なんなんだ?あの2人はっ!




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2019/07/20 (Sat) 06:24 | EDIT | REPLY |   
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2019/07/20 (Sat) 06:41 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんにちは。

類君、見ちゃいましたねぇ~!
ちょっと司君と話すつくしちゃんにムカついてるかも?(笑)
落ち着いて演奏が出来ますように、祈っててやってください♡

おっ!そのお嬢サマも今後ね・・・ははは!何かやらかすかも、です!

バイオリンのいい動画があったら貼り付けときますね~!


そして、今回類君に意外な特技があることが判明(笑)
だんだん2人が近づいてきますからお楽しみに~♡

2019/07/20 (Sat) 11:35 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

あっはは!想像します?💦
怖いんですけどねぇ~!興味はありますが(笑)
でもこの2人、ソッチに疎いような気がしますけどね♡

そう言う展開も面白そうですね💦でもそうだと結構司君を書かないといけないですよね・・・・。
私の筆力では司君の良さが出ないので(笑)


今日は台風の影響で風が凄いです💦
夜も殆ど寝られなかった・・・そちらは晴れてるのかな?
梅雨寒だったり暑かったりで体調管理が大変ですが、充分気を付けてお過ごしくださいませ。

私は今日もミシンと闘います!(笑)
来週になったら落ち着くので臨時の話を再開しますね~!

2019/07/20 (Sat) 11:47 | EDIT | REPLY |   
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2019/07/22 (Mon) 07:36 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、おはようございます。

ふふふ、恋に疎い2人ですから気になってるのに自覚がないのですね(笑)
この曲は私が初めて聴いたときに凄く泣いたんですよね💦
辛い時期だったので(笑)この曲に慰めてもらったような気がして。
(いや、この話はComedyですが💦)

お嬢様・・・ふふふ、どうですかね?
激辛スパイスだと思っていただけるといいかな?(笑)


お天気・・・2日連続大雨警報でした。
夕方の散歩中には急に土砂降りになってびしょ濡れ(笑)久しぶりに走りましたよ💦

今も雨が降ってます。この雨が止んだら梅雨明け?・・・イヤだなぁ💦

2019/07/22 (Mon) 08:43 | EDIT | REPLY |   
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2019/07/22 (Mon) 10:13 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは!

あっはは!ちょっと~~💦
止めてよ!そんな所をドンとか、ギュッ!とか(爆)

今度はそっち?颯太と瑠那じゃないの?💦
塚地と瑠那(笑)完全に瑠那が負ける(笑)


このジャガイモ発言も実話です(笑)

バレエのリハーサルの時、目が悪い子がいたんですよ。
だけど舞台裏は薄暗いし、結構ドタバタ動くし同じ衣装だと仲間の顔が「見えない~!」って騒いでたんです。

その時に「全員ジャガイモ~!!」って叫ばれてみんなで大笑いしたことがあって。

うちの子供は「そうか!客席もジャガイモが見てると思えばいいんだ!」って言ってました。
旦那もお婆ちゃんも見に来てくれたのにジャガイモにされたんですね💦

思い出したので使ってみました(笑)

2019/07/22 (Mon) 10:23 | EDIT | REPLY |   

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