FC2ブログ

plumeria

plumeria

その週の土曜日・・・いつもならもう少し寝てるのに今日は普通に起きた。
お昼前の11時20分、小豆島行きのフェリーに乗るから。それまでに神戸まで行かなきゃいけない。


「えっと、小豆島に着くのは・・・うわっ!14時40分?3時間以上かぁ・・・酔わないかな?薬持って行こうかな・・・」

スマホで調べながら小さな旅行の準備をその日の朝にしていた。
泊まると言ってもホテルに1泊、それに長谷川さんの実家に行くのもオリーブ畑の見学・・・改まった話なんてある訳じゃない。


私たちはそう言う関係じゃない。
確かにホッとする人だけど・・・一緒に居ても緊張しない「同じ世界」の人だけど。


でも目の前に出したのは持ってる服の中でも可愛らしい感じのものだった。
ピンクのワンピース?白いカーディガンにフリルのブラウス?いやいや、こんなのもう着られる歳じゃないし。
慌てて変えたのは水色のサマーセーターに白いパンツ。着替えに持ったのは白のTシャツにジーンズ、ベージュのカーディガン。柄もロゴも何もない、素っ気ない服。

それに帽子を持って小さなボストンバックを抱え、昨日買っておいた手土産のお菓子を持ってアパートを出た。



私の住んでいる場所から神戸までは電車で40分・・・フェリー乗り場に行くまでにコンビニでお昼ご飯を買って乗り込んだ。

フェリーの中は思ったより広くて綺麗で、仮眠しようと思えばそのスペースもあるし女性専用スペースもあった。
でも初めのうち、私は展望デッキで海を眺めながら過ごした。

周りに居るのは家族連れや恋人同士、友達同士って感じでワイワイ賑やか・・・それを背中に感じながら1人で海を見つめていた。

すぐ近くに仲の良さそうな2人組が来るとスッと移動するクセがここでも出てしまう。でも移動した先ではお父さんが子供を抱っこして白く光る波を見てる。
そのお父さんは全然彼に似てないのに想像してしまう・・・もしかしたらあの人にも子供がいるのかも。

いてもおかしくないぐらい月日は経ってる。
もし子供がいるのなら彼が誰かを愛したと言う事・・・それを頭から消してしまいたくて後半は女性専用スペースに逃げた。



小豆島の坂手港に着いたら長谷川さんが迎えに来てくれていた。
今日は彼も休みだからスーツなんかじゃない。私服だと体格が良いってことが良く判る・・・日に焼けた肌の色と赤いTシャツが、この人の性格を物語ってるみたいだった。

そして無邪気な笑顔で手を振ってくれる。周りの人に照れながら私も彼に手を振り返した。
まるで・・・恋人同士みたい。


「お疲れ!退屈だったでしょ?結構時間が掛かるんだよねぇ~!」
「いえ、海なんてあんまり行かないからずっと眺めてました。そこまで退屈しませんでしたよ?」

「そう?それなら良かった。牧野さん、その格好似合ってるね。パンツスタイルなんて初めて見たけどさ」
「えっ?あぁ・・・あはは!子供みたいでしょ?いい歳なのに」

「えっと・・・28歳だっけ?」
「今年で29歳・・・ヤバいですね!」


私ったら気が付かないうちに自分の歳まで話したんだ、なんて苦笑いだ。

そして彼の車で島内観光が始まった。
1番初めは港から割と近い「小豆島 オリーブ公園」と言う所に連れて行ってくれた。
ハーブ園やレストランがある大きな公園・・・空と海の青と白い雲、そして公園の緑が目の前に広がる解放感溢れた場所だった。そして目印が大きな「ギリシャ風車」。
小豆島と姉妹島提携を結ぶギリシャのミロス島との友好の証なんだそうだ。

ここにある喫茶店は長谷川さんがよく利用してるみたいで、店内に入ると店長さんだと思われる人と笑顔で挨拶を交わしていた。私もつられて軽くお辞儀をして、その人は海が見える窓際の席を案内してくれた。
「楽しんでくださいね」ってニコニコして言われると自分の立場を意識する・・・長谷川さん、私の事をなんて説明してるんだろう?


珈琲を飲みながら、ここで「小さな旅行」のスケジュールを聞いた。

「今はもう4時前だろ?だから『小豆島ふるさと村』って所だけ行って、少し遊んだらホテルに送ってあげる。明日はオリーブ園を見てもらって、その後に1箇所だけ連れて行きたい場所があるんだけど付き合ってくれる?」

「行きたい場所?何処ですか?」
「その時まで内緒!時間が限られるんだ。でも感動すると思うよ?」


・・・何だろう、思わせ振りな言い方。
でも深くも考えずに長谷川さんの言葉に頷いた。初めての場所だから土地勘がないもの・・・それにそこまで観光名所なんて調べていなかったから。


そして喫茶店を出て駐車場に向かってる途中、何かの中継だろうか、観光客の女性がインタビューを受けているのを見た。

何かの雑誌に載るのか旅番組の収録なのかな?
東京ではそんな光景もよく見掛けたなぁ、とその横を通り過ぎた。


予定通り「小豆島ふるさと村」と言う所に行くと、そこでは色んな体験が出来るみたいだった。
私は東京を出てからずっと大阪の小さな部屋で暮らしてて何処にも行ってない。だから少しずつ気分が浮上してきてここでは何故かはしゃいでしまった。

手打ちうどん教室に手延べそうめんの見学、島の特産品のお土産を買ったりウキウキした。
そして最後に体験したのが「ハーバリウム」・・・その綺麗な小瓶に引き寄せられて、自分でも作ってみることにした。

ハーバリウムとはプリザーブドフラワーやドライフラワーを専用のオイルに浸して、その花を楽しむインテリア雑貨。瓶の形は自分の好きなものを選んでいいって言われたからストレートで細長い瓶を選んだ。


選んだ花は雨の色をした薄いブルーの小さな花。
それをいくつも選んで瓶の中に入れた。そしてオイルを流し込んだら雨粒のような形になった。


あの日、窓を流れた雨の雫みたい・・・完成した瓶を見て、彼を待ち続けた2時間を思い出した。




***********************


<side総二郎>

「総二郎さん、スマホなんて見ながら食事をしないでちょうだい。どうせ見るならお見合い写真でも」

「は?馬鹿言ってんじゃねぇって。お袋だってテレビ観ながら食うじゃん、それと同じだろ?でも見合い写真は違う。あんな物見ながら飯が食えるかっての!」


今日もお袋から小言を言われながらの夕飯だったが、スマホを見続けてる俺をすげぇ顔で睨むから鬱陶しくなってそれをテーブルに置き、チラッとテレビに目をやった。

どこだか判んねぇけど風車がある公園で、然程可愛くもない女がインタビュー受けてる・・・何かの旅番組か?
日本なんて行ってない場所の方が少ないクセに、どうしてお袋はそんなものが好きなんだか、と呆れながらその画面を見ていた。

『お土産は何を買ったんですか?やっぱりオリーブですか?』
『えぇ!オリーブオイルとお醤油?有名なのがあるんですって!』

『島のパスタソースって言うのもあるんですよ?それで、この後はどちらに?』
『二十四の瞳のロケ地、そこに行きまーす!』


オリーブに二十四の瞳のロケ地・・・あぁ、小豆島ね。


「・・・は?」

喋ってる女の後ろ・・・そこを歩いた女の姿に目が止まった。
黒い髪にガリガリの身体、ってかあの歩き方・・・・・・この女、牧野じゃね?

この俺が見間違えるはずはない、今のは牧野だ!


「お袋!この番組なんてヤツで何処の局だ?!」
「えっ?!えーと・・・さぁ?何処だったかしら・・・」

「もういい!自分で調べる!」
「は?総二郎さん?!」


あのクソ馬鹿、そんな島に逃げてたのか!
俺は手に持ってた箸を放り投げて自分の部屋に戻った。そしてパソコンでテレビ番組の確認、それをしながらさっきの映像を思い出した。


・・・今、牧野の隣に男が居なかったか?






15614295930.jpeg
関連記事
Posted by

Comments 6

There are no comments yet.
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/07/30 (Tue) 11:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様、こんにちは。

忘れられる訳ないのですよ・・・。
忘れなきゃ、って思うほど過去に縛られている感じでしょうか?早く素直になって欲しいですね~。


どうでしょう?
総ちゃんにつくしちゃんの捜索を頼んでるから素直に「逃げた!」って言ったんじゃないかな?(笑)

あっはは!これは類つくですよ、類つく♡
総ちゃんはどうするかな?

でも見付けるのはやはり・・・彼でしょう♡(そうじゃなかったら読者さんに怒られる💦)

2019/07/30 (Tue) 12:02 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/07/30 (Tue) 12:40 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

麦猫様 こんにちは。

逃げる・・・そうですね、逃げるにも色んな意味があると思っています。

苦しくて嫌だから逃げる、大事に思うからこそ逃げる、大っ嫌いな人から逃げる、冷静になりたいから逃げる。


そしてその原因は大抵F4にありますよね。
何もかも持ってるからこそ気付かない人達です。
何も持ってないつくしちゃんとの差を考えさせられるのはこの逃亡期だったりします。

その部分をただの「逃げ」だと思われないようなお話しを書きたいと思っています。

2019/07/30 (Tue) 14:04 | EDIT | REPLY |   
-  
管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2019/07/31 (Wed) 09:26 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは!

うんうん、類君のお話だけど、絶対に反応するなら総ちゃんだろうと思っていました。
うんうん、いいのよ、もう判ってるから。

「西門家、テレビ観ながらご飯食べていいんですか?」って言われたらどうしようかと思ってました💦

そんなのダメでしょーー!って。
普通の家庭でもありますもんね。ご飯の時にテレビ消す家庭。
私もご飯食べながらテレビ見ない人なので(笑)


ここからいきなり総つくになったら読者さん、本気で怒るよね・・(笑)

2019/07/31 (Wed) 10:38 | EDIT | REPLY |   

Leave a reply