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plumeria

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こんな話をしている時に鳴ったあきらからの電話。
何故か嫌な予感がして、親父達に断りを入れて電話に出た。


「・・・どうした?あきら・・・今はちょっと・・・」
『すまん、仕事中だとは思ったが牧野が病院に運ばれた!俺も今、向かってる途中だ!』

「はっ?どうしたんだ?何が起きた?!」


その声に両親と紫が俺の方に視線を向けた。
それは判ったがつくしの搬送だと言われたら気持ちを抑えることなんて出来ない。ガタン!と椅子から立ち上がり、スマホを耳に押し当てた!

『よく判らないが頭を強打して意識がないらしい。総二郎、判断はお前に任せる!うちの病院だから来られるならすぐに来い!』

「頭を強打?意識がないって・・・おい!あきら?・・・あきら!!」


あきらの電話はすぐに切られた。
病院は美作の・・・ってことはつくしが出産したあの病院か?!一体何処でそんな事に・・・子供達は一緒にいなかったのか?あいつらは大丈夫なのか?

後ろからお袋が叫んだ声を聞いたが、それに返事もせずに離れを飛び出した!
バイクに跨がり爆音を響かせて西門を出たのはあきらの電話を受けてから3分しか経ってなかった。

今日の運転もあの事故った日と似ている・・・そんな風に感じながら、警察に掴まりそうなスピードで夕方の都内をぶっ飛ばした!



そして病院に着くとバイクは正面に乗り捨て、急いで最上階の特別室に向かった。美作とは関係ない牧野だけど、絶対にここに入れられてると思ったから。
案の定、そこに行くと担当看護師に引き止められた。

「申し訳ございません!この先はご家族以外の方はご遠慮していただいております!」
「俺は美作から電話で呼ばれた者だ!退け、邪魔だ!!」

「ああっ!ちょっと・・・!」
「あんたと話してる時間はねぇんだよ!」


病室までそんなに離れていない廊下を足音も気にせず突っ走り、もう少しでドアに辿り着くって所で逆に内側からドアを開けられた。
そこから顔を出したのはあきら・・・!
そのあきらに体当たりしそうな勢いで足を止めたら「静かにしろ!」と怒鳴られた。


「はぁはぁ・・・つく・・・つくしは?目が覚めたのか?!」
「まだだ。でも中で紫音と花音が寝てるからそんな勢いで入られたら困る!ちょっとこっちに来い!」

「・・・!!何すんだ、あきら!」


部屋に入ろうとする俺の袖口を掴んでナースステーション前の談話室まで連れて来られた。
そこに「座れ!」と言われるから座ったが、そもそもこんな電話をしたのは此奴で、つくしが運ばれたのは事実なのに・・・!
ムッとして何度も部屋の方に目をやる俺に、今度は「落ち着け!」のひと言。

「落ち着けって・・・!意識不明の電話をしたのはお前だろう!何があったんだ?!」
「説明するから大声を出すな。それに検査結果だと脳震盪だ。まだ目を覚ましてないが恐らく問題ないって話だ。出血も骨折もしてないそうだから意識が戻って会話次第で退院できるらしいから」

「・・・そうか。でも顔だけ見てきていいか?」


そう言うとあきらは頷いた。
だからひと目だけつくしの顔を見ようともう1度病室まで行き、静かにドアを開けた。


つくしのベッドの横には小夜が座ってる。
そしてすぐ傍の簡易ベッドで紫音と花音が目の周りを赤くしたまま眠っていた。

つくしは青白い顔をして目を閉じている・・・何処かで擦り剥いたのか左腕には包帯が巻かれていた。
布団から出されている右腕には点滴・・・見る限りでは命に関わる装置なんて付けられてなくて、普通に寝ているかのようだった。


「私が傍に居たのに申し訳ありません・・・西門様、お許しください」
「いや、まだ何も聞いてないから。それに目が覚めたら問題ねぇんだろ?」

「多分・・・ドクターのお話だとそうなんですが、頭なのでそこはまだ・・・」
「大丈夫だろう。根性だけはあるし、此奴らを残して消えたりしねぇから」

「はい。私もそう思います・・・」


つくしの頬を軽く撫でた後、こっちも泣いた後だと判る紫音と花音の顔も覗き込んでからあきらの所に戻った。

そこで今度は屋敷で起きた事の説明を受け、それには流石に何も言えなかった。花音から「キライだ」と言われた・・・それは相当なショックだったと思う。
それでも自分の身体を張って花音を助けたと聞いて、またその場には居てやれなかった自分が情けなかった。


「紫音と花音の話を聞いたら、牧野が花音を叩こうと手をあげたらしい。勿論叩いてはいないが、それが花音には怖かったんだろうな・・・」

「叩く事には反対だが、その前の花音の態度が悪かったのなら叱るのは当然だ。自分が親だと思えば尚更だ・・・でも、まだ何処かで仁美さんの存在を気にして自分と比べてるんだろうな」

「かもしれない。でも早過ぎたとは思わないんだ。これ以上遅かったらもっと大変だったはずだ」

「父親として俺が傍にいれば、叱るのは俺、甘えるのはつくしって場所になったんだろうにな・・・」

「・・・焦るな。まだ動き始めたばかりだ」


ここで、あきらには今日の西門で起きた事を話した。
紫の口から出た事件の流れ、その後の行動、岩代や宝生、西門の爺さん達の隠蔽工作と紫が茶碗に拘った理由・・・俺への想いとそれを悪気なく操ったうちの先代の小細工。

今度はあきらが呆然としていた。


「やっぱり総二郎の事を・・・それにしても先代、余計な事を・・・!」
「うちには男しかいなかったから扱い方が判らなかったのかもな。ガキだからその場だけ機嫌取れば喜ぶと思ったんだろう。もしかしたら本当に宝生家とうちの誰かの縁組みを考えたのかもしれねぇし」

「凄い執念だな・・・」
「あぁ・・・俺、今日初めて紫の本当の声を聞いた気がする」

「これからどうなりそうだ?」
「判んねぇ・・・話合いの途中にお前の電話が入ったから」

「そうか・・・でも、今夜はここにいるんだろ?」
「勿論だ。目が覚めた時に誰かが居ねぇと泣くだろ?」

「・・・なんか心配だな」
「馬鹿言え、病院じゃなにもしねぇよ」


最後には巫山戯てそんな台詞も出たが、お互いに報告が終わったら病室に戻った。



**



部屋に入ったら丁度双子が目を覚ましたばかりで、俺とあきらを見たら花音は小夜の後ろに隠れた。

そしてほんの少しだけ顔を出してはすぐに隠れ小夜を困らせてる。
だから俺がすぐ近くまで歩いて行き、嫌がって小夜にしがみつく花音を抱きあげた。そして紫音をあきらに頼んで、花音だけを連れて病室を出た。


向かったのはここの屋上。
もうすっかり夕日が落ちて辺りは薄暗かった。
真上には星も見える頃・・・花音はションボリして俺の首に縋りついてたが、ベンチがあったからそこに座らせた。

小さな身体を曲げて、細い手足をピッタリくっつけて・・・今にも泣きそうな感じだったからひょいっと抱えて俺の膝に座らせた。そして後ろから両手を回して花音を包み、そうしたら俺の腕を小さな手が握り締めた。


「・・・・・・・・・」
「花音・・・全部聞いたぞ?」

「・・・・・・・・・」
「紫音のパズル、そいつをバラバラにして気持ち良かったか?」

「・・・・・・ううん」
「だろ?でも、何かを壊したかった・・・そうなんだな?」

「・・・・・・・・・ん・・・」
「今度からそうなったら思いっきり庭を走って、思いっきり大きな声を出して叫べ。心の中に溜め込んだもんを声にして外に出すんだ。そうしたらすっきりする・・・そして何にも壊さなくて済むぞ?」

「・・・・・・・・・やだ。そんなのできない・・・きかれたらこまるもん」
「ははっ!つくしママキライ!ってか?」

「・・・・・・・・・」
「本当にキライか?」


花音は俺の両腕を持ち上げてモゾモゾ動き、今度は身体を反対に向けて抱きついてきた。
2月の夕暮れだ・・・相当冷える。だから俺のコートで花音を包み、こいつの背中を抱え込んだ。

こんな話してるのに胸の上が暑いぐらい・・・小さな暴れ姫の吐く息は俺の身体を温めた。


「・・・なぁ、花音。大人の勝手で淋しい思いさせてごめんな。でもつくしはお前の事が大好きだぞ?好きだから叱るんだ。キライだったら叱らないんだぞ?」
「・・・・・・ホントに?すきなのにしかるの?」

「あぁ、悪い事をしたら叱るのは親の仕事、仁美ママと叱り方が違うだけだ。うん・・・確かに叩かれるのは嫌だってのは判る。それは俺からもつくしにちゃんと話しておく。でも、しちゃいけない事を知らないで大きくなったらダメな人間になるからな」
「・・・・・・うん」

「さっきの話だけど、叫ぶ言葉を変えてみな?」
「かえるの?」

「そう。つくしママキライって叫んだら花音も嫌だろう?仁美ママに会いたい、とかさ」
「・・・でも・・・」


小さいながらに少しは気を遣ってるんだろうか・・・いや、まだ判らねぇだろう。
もしかしたら仁美さんの名前を出したらつくしが悲しそうな顔になるのを感じ取ってるのかもしれない。それがどうしてなのか、この歳では理解出来ないから花音達も戸惑うのか。

子供に馴染みの無い俺にもその辺は全然判らない。
これも親としての勉強ってやつか・・・プライドや意地なんて全部捨てて真っ正面から向き合わねぇと、途中から親になんてなれないのかもしれない。

茶席作るより難しいのかもな・・・でも、手放せねぇけど。


「つくしは怒らねぇぞ?きっと花音が淋しくなったら抱き締めてくれる。今みたいにな・・・」
「・・・そうちゃんパパ」


「つくしママの事、キライか?」
「・・・・・・すき」

「そっか。じゃ安心だ・・・目が覚めたらきっと笑顔を見せてくれる、だから大丈夫だ」
「・・・うっ・・・うわあああぁーーん!!」



甘やかすだけじゃ駄目だし、押し付けるのも駄目だ。でも、何かで此奴らが行き詰まった時にはすぐに抱き締めてやりたい。
泣きじゃくる花音の小さな背中を摩りながら、早く此奴らと同じ場所で暮らさないと・・・そう思った。





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