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plumeria

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「いくら類様のお友達がいいと仰っても立場というものがあります。今度からあのような事はしてはいけませんよ?」

パーティーが終わってから加代さんと田村さんに呼ばれて軽くお説教された。
私の姿は色んな人に見られていたし、ドアに立ってた田村さんの部下の人から睨まれたぐらいだから当然報告されている。
いや、確かに使用人の立場でありながら堂々と聴いていた・・・それは事実だから怒られても仕方ない。

私は花沢類の演奏のショックもあって自分でもよく判らない気分だったから、柄にもなくションボリ・・・。
その姿を見て二人はため息交じりに顔を見合わせ「今回はこのぐらいで」と言ってくれた。

そして最後に言われたのは花沢類のお友達のことだった。


「道明寺様は日本だけではなく海外でもご活躍されている方です。あまり目立つような事をして変な噂がたてばあちら様にもご迷惑です。些細な事でもこの世界はすぐにあれこれ言われてしまうのですから気を付けなさい」
「・・・はい、申し訳ありませんでした」

「まぁ、どちらかと言えば道明寺様が牧野さんを引き止めていたらしいので、あなたも身動き取れなかったかも知れなせんがね。西門様も美作様も類様のご親友です。揉め事のタネは拾わないように」

「・・・は?揉め事のタネ?」
「いえ、何でもありません。本日は朝から晩までご苦労様でした。最後に類様にご挨拶して戻りなさい」

「畏まりました」


揉め事のタネを拾って揉め事の花が咲いたらどーすんのよ!なんて思ったのは心の中だけ。
私は何度も頭を下げて花沢類の部屋に向かった。



「はぁ・・・どうしよ」

このドアをノックするのに何でこんなに緊張してるのか・・・大きくスーハーしてから右手を挙げて、ドアをノックしようとしたらガチャ、とそのドアが内側から開いた!


「うわああぁっ!!吃驚したっ!」
「・・・・・・それは俺の台詞。驚いた・・・」

「本当に驚いたんですか?全然判んなかった!リアクション薄っ!」
「・・・・・・むっ💢」

「はっ・・・失礼しました!で、どちらへ?」
「・・・さっき弾いたバイオリンを大広間のピアノの横に置いたまま忘れたから取ってくるだけ」

「はぁっ?!3億円を置きっぱなしにしたんですか?!すぐに行かなきゃ!」


どうして私が走るんだか・・・3億円が泣いてる気がして凄く焦った!




************************




俺が行こうとしたのに「3億円が!」って叫びながら背中を向けた牧野・・・その後ろ姿に手を伸ばしたけど、俺の手が届く前にもう階段を駆け下りていった。

はぁ・・・どうしてそんなに慌てん坊なんだか。
さっき転けた時に足を軽く捻ったみたいだったから危ないと思ったのに・・・。


吹き抜けから覗いて見たら、ほんの少しだけ脚を引き摺りながら大広間の方に向かって行くのが見えた。
焦ったってゆっくりだって屋敷の中なんだからストラディヴァリは逃げたりしない。俺はゆっくり階段を降りて、あいつが消えて行った廊下に向かった。

そしてもう誰もいなくなって照明も落とした大広間に入ったら、牧野がピアノの周りをウロウロしてるのが月明かりで見えた。
ここは広間の壁に電気のスイッチがあるような造りじゃない。隣の控え室に空調やら照明全部のスイッチがあるから牧野には判らなかったんだろう。

ただ、ピアノのある場所にはステージ用のスポットライトとダウンライトのスイッチがある。暗闇の中で白いエプロンが行ったり来たりするのを見て、何故かクスッと笑ってしまった。


「類様ーー!何処に置いたんですかぁ?」
「丁度あんたの背中側。そこのカーテンの横に照明のスイッチがあるから」

「あっ、ホントだ!全然見えなかった!類様のクローゼットみたいだったわ」
「・・・・・・・・・」


そのスイッチを入れたらピアノを中心に、さっき俺が立っていた場所がパッと明るくなった。そうなればピアノの近くのバイオリンケースなんてすぐ目に飛び込んでくる。

「・・・あっ!あったぁ!」
「そりゃあるでしょ。置いたんだから」


まるで宝物を見付けたみたいに嬉しそうにバイオリンケースを持って、パタパタと俺の所に戻って来た。
その時、彼奴らから聞いたことを思い出して牧野に聞いてしまった。そんな事どうでもいいって思ったのに・・・。


「牧野、泣いたんだって?」
「えっ!誰がバラしたんですか?道明寺様ですか?西門様・・・美作様ですかっ?!」

「・・・みんなが言ってた。どうしてそんなに泣いたの?」
「どうして?・・・う~ん・・・・・・」


しまった!聞くんじゃなかった・・・もしかしたら欠伸が出たって言うんじゃ・・・?
そのぐらいの事は言いそうだし、牧野に音の区別が出来るなんて思わない。恐らく俺のヤル気10%の音と100%の音の違いも気が付かないと思うんだけど。

表情には出してない自信があったけど、牧野が返事を考え込んでる間中心臓がドキドキしていた。


「どうしてかなぁ・・・バイオリンの音が私には人の声って言うか歌みたいに聞こえたって言うか・・・すーって身体に入ってきたんです。そこで私の体温を上げて出ていくの。その瞬間に身体が震えて気が付いたら涙が出てたんですよね。
他の人のバイオリンは聴いたことないけど、多分今日の演奏より良いものは巡り会わないんじゃないかなぁって思ったら、嬉しいのに悲しくなった感じ・・・いや、違うか?」

「・・・今日よりも良いものはない・・・それ、褒めてるの?落としてるの?」

「めっちゃ褒めてるじゃないですか!私の知ってる限り1番上手かったんですよ?」
「だって他の演奏家、知らないんでしょ?」

「・・・そ、そうだけど!」


ま、いいか・・・欠伸が出たんじゃないのなら。

この会話の後、牧野がチラッとピアノを見た。そしてゆっくり近づいて鍵盤の蓋を持ち上げて・・・嬉しそうにポーンと1音だけ響かせた。
まさか・・・弾けるとか言わないよね?


「・・・奥様、ピアノお上手なんですね。凄く吃驚しました」
「あぁ、あの人は国際コンクールとかに出る人だったからね」

「あぁ、それで!ピアノが良かったから感動したのかも!!」
「・・・・・・むっ💢」

「類様はピアノは弾けないの?」
「・・・・・・どうして?」

「道明寺さんが習ってたって言ったから」
「・・・・・・・・・・・・弾けるし」


どうしてここで司の名前が出るんだ?
確かに彼奴ら全員ピアノは弾けるけど、司は小学部でやめて、総二郎はその前にやめて、あきらが唯一中等部までやってたぐらいじゃん!何かのピアノ曲を最後まで弾ききれるかって言われたら無理なはずだし。
この歳まで弾いてるのは俺だけ・・・って言っても年に数回だけど。


そんな彼奴らに対抗心燃やした訳じゃないけど、牧野に「弾けないの?」なんて言われたら・・・弾くしかないだろ!

俺は牧野から貰ったバイオリンケースを彼女に突き返してピアノに向かった。
牧野は「はっ?!今から?」なんて言いながらドアの方を見て大慌て。でも俺に火を付けたのはあんただから!


「何でもいい?」
「・・・でも、怒られますよ?」

「俺が弾くんだから怒られない。あんたが弾いたら騒音で怒られるだろうけど」
「た、確かに・・・」

「・・・多分知ってると思う。Merry Go Round of Lifeってやつ」


クラシックのピアノなんてきっとピンと来ないだろうから、アニメで知られてるこいつにした。

3拍子の「ワルツ」・・・イメージは題名の如くメリーゴーランド。
元々はアップテンポの曲だけど俺はゆっくり弾くのが好きだったから、そこはオリジナルで。特に1拍目をゆっくり弾くことで、少しもたついた感じが動き始めのメリーゴーランドに思えるから。

その弾き始めで牧野は「あっ・・・」って小さな声を出したから、知っていたんだろう。
俺が弾きながらチラッと顔を見ると嬉しそうに笑っていた。

それで何故か俺の気分も少し上昇・・・実は久しぶりのピアノで指が全然回らないんだけど。


前半のワルツから後半に移ると少しテンポが変わってくる。
符点4分音符がある小節は少し気取って、そして3連符で下りてくるメロディは優雅に・・・4拍子の部分はワルツの休憩時間、会話を楽しむイメージで。
そしてラストは力強く、でも歓びを表現する感じで弾き終わる・・・!

何度かミスってしまったけど、気分はまずまず・・・そしてここで牧野は拍手をしてくれた。
誰もいない大広間だからその音が良く響く。誰かが来るかもしれないのに、お構いなしに大袈裟な拍手をくれた。


「すごい、すごい!!この曲大好きなんです!すごーーーいっ!」
「・・・少しミスったよ」

「そうなんですか?でも私にはそれも含めて全部感動しました!うんうん、すっごーーーく良かった!」
「・・・そお?」

「はいっ!道明寺さん達もこのぐらいの腕前なんですか?」

「・・・・・・・・・」


そこ、一緒にするわけ?
やっぱりムカッとしたから、牧野からバイオリンケースを奪い取ってさっさと自分の部屋に戻った。




fruit-2806572__340.jpg
Merry Go Round of Lifeのピアノソロです。よかったら聞いてみて下さい♥




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2019/07/23 (Tue) 07:28 | EDIT | REPLY |   
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2019/07/23 (Tue) 09:54 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

ビオラ様 こんにちは。

そうですね(笑)
何故かみんなに気に入られたようです♥
類君、早くしないと盗られちゃうぞ?って感じですね~!

無表情無感情どころかめっちゃ感情的な類君(笑)
ははは!気が付くのはいつでしょう?
身体は正直になってるようですが、心がイマイチ天邪鬼ですね!

少しクラシックから離れた曲ばかり選んでみました♥
また音楽シーンが出てきたら・・・って言う本人が苦手分野ですが、頑張って探しますね~!

2019/07/23 (Tue) 13:55 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんにちは。

あっはは!急にアニメになっちゃった!
この曲、好きなんですよ~♥

子供が家でバーレッスンする時にジブリ音楽を使っていたので久石さんのCDも沢山あります♥
ナウシカの曲で回転したり、このワルツで畳をボロボロにされ、もののけ姫でストレッチしてましたね~。

懐かしいわぁ(笑)

で、類君にピアノ(笑)
しかも練習しないのに上手・・・そんな馬鹿なーーーっ!って思った人も多いことでしょう(笑)
まぁまぁ、そこはね・・・妄想なのよ♥

こうなったら類君が琴を弾いてもいいのよ。三味線でもいいわ!
実は夕日に向かってトランペット吹いてもいいのよ(笑)
今度はハープでも弾かせてやろうか、などと考えたりします。

いや、書かないけどね💦


で、最後は怒って帰る類君(爆)
えぇ、いい感じからお笑いに持って行くのが好きです(花沢城かいっ!)←りおさんにあげたヤツの雄叫び部分は私♥


綾小路麗華!!私も見た(笑)
凄い形容してましたね、私💦自分で吃驚しました(笑)怖いわぁ!

2019/07/23 (Tue) 14:06 | EDIT | REPLY |   
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2019/07/23 (Tue) 21:11 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

シナモン様、こんばんは。

同感です。それは総ちゃんでしょう。

そして先ほど実は○○、書こうかと思って三味線に変えました(笑)
イメージは大事だよね・・・。

2019/07/23 (Tue) 22:36 | EDIT | REPLY |   

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