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まだ薄暗い中で目が覚めたら、私の手を持ったままの総がベット脇に伏せたまま眠っていた。
それを見た時には何が起きたのか判らなかった・・・でも身体を動かそうとしたら全身が痛い。あちこちズキズキして何処かには包帯の感触もある。

背中に鈍い痛みが走る・・・足首を捻ったのかしら、熱っぽい。
頭の奥が痛いような、それよりも腕がヒリヒリする。擦り剥いたのかしら・・・?何処で・・・どうして?

何が起きたんだっけ・・・思い出そうと目を閉じたら、花音が階段から落ちそうになった場面を思い出した。


・・・あぁ、そうだった。

あの時に夢中で花音を受け止めて自分が階段を踏み外して落ちたんだ・・・それで頭を打って気を失ったんだ。
夜中に目が覚めた時には総しかいなくて、お医者様達がすぐに来て色々質問していったっけ。

うん・・・ちゃんと覚えてる。大丈夫・・・大丈夫。
紫音と花音も心配ないって夜に聞いたわ。良かった、ちゃんと覚えてる。


自分の記憶がある事にホッとして身体を動かそうとしたら、総がビクッとして目を覚ました。そして半開きの目で私をジーッと見て・・・そのうちムクッと起き上がった。
随分疲れてるみたい・・・何度も頭を振って目を擦る彼に申し訳なくて、その手を握った。


「おはよ・・・具合どうだ?気分悪くないか?」
「うん、大丈夫。おはよう、総・・・もう少し寝てていいよ?まだ早いから・・・」

「何時だ・・・5時半か。ふぁ・・・流石に眠い・・・つくしもまだ寝とけ・・・」
「・・・うん」

「・・・何処か痛いか?」
「え?あぁ・・・あはは、あちこちね。でもそんなに酷くない・・・身体は頑丈なのよ」

「・・・そっか。じゃ・・・少しならいいか」
「・・・は?」


何が「少しならいいか」なのかと思ったら、総は私のベッドの布団を捲ってその中に入って来た!そして横から抱き締めるように寝て、幸せそうな笑顔をしてた。
本当言えば腕も足も打ち身が酷くて、少し動かしても痛いのに・・・でも、総のこの顔を見たら「退いて」なんて言えない・・・。
私も彼の腕枕に埋もれるようにして、布団とは違う温かさの中で目を閉じた。


うん、大丈夫・・・この人の事も全部覚えてる。
それが嬉しくて堪らなかったのに、まだ身体が怠かった私も彼の寝息を聞きながらまた眠ってしまった。



「コホン!」と聞こえた誰かの咳払い・・・薄く目を開けて見上げたら、看護師さんが真っ赤な顔して両手を腰に当てていた。それに怖い顔・・・どうしたのかと思ったら、私の横で総が気持ちよさそうに寝てた!


「あっ!これは・・・痛っ!」
「・・・だから付き添いなんていいって申し上げましたのに。そちらの方は目を覚まされないんですかね?!」

「ご、ごめんなさい!総、起きて・・・総ったら!」
「・・・・・・ん?」


総も寝惚けた顔して目を擦りながら顔を上に向けた。
そこで驚いて飛び上がるかと思ったら、何食わぬ顔して「もう朝か・・・」って。怒られてるのに気にもしないでもう1度枕に頭を落としたから、とうとう看護師さんの雷が落ちた!

「ここはそういうホテルではありませんよ!」・・・そんな恥ずかしい言葉をフロア全体に聞こえるように言わなくても・・・!


その後はブスッとしてベッド脇の椅子に移ったけど、朝の簡単な検査があるからそこからも移動させられて気分は最悪。恐ろしい顔して隣の部屋で待機していた。
朝食は総の分まで用意してもらい、やっとここで少し気分は回復したみたい。食べ終わったら洗顔や歯磨きをするのを彼に支えてもらった。


「それではもう1度診察しましょうね」

その診察の始めは昨日の夜と同じくヒアリング・・・でももう少し詳しく聞きたいと言われた。それには総が居ても問題ないからと、彼は椅子に座って真剣な表情で私たちを見守っていた。

聞かれることは事故当時の状況・・・思い出すのは辛かったけど、その時の花音の動きや使用人さんとぶつかった時のこと、私が駆け寄るまでの時間や紫音の事を話すとお医者様は軽く頷いて「宜しいでしょう」と。
その後も1人で歩かされたり、片足で立てるかどうかだったりの検査をし、痛みのある箇所を確認された。

少しだけ外の光が眩しいと言えば「もう少し経てば落ち着くでしょう」と言われ、結果は「大きな問題はない」とのことだった。


「階段を落ちたにしては骨折も無くて良かったですが、打ち身が酷いので暫くはあちこちが痛いでしょうね。少し歩行バランスが悪いので夕方までこちらで休んでもらって、もう1度午後に検査をして改善が見られれば帰られて宜しいですよ」

「はい、ありがとうございます」

「でも2~3日は安静に・・・ご自宅でも無理はしないで下さい。いいですか?」

「・・・は、はい」

その言葉は私にじゃなくて総に向かって言ったお医者様・・・何を意味してるか判ったから全身が火照った。



**



その後、総が昨日西門であった事を話してくれた。

紫さんの事・・・その悲しい過去を初めて聞いて驚いた。
そして総の事を恨んでいると聞いていたのに、実は恋していたと・・・私よりもずっと前から紫さんは総に恋い焦がれていたと聞いてショックだった。
大好きになった人が居るのにそんな出来事が・・・それがどれだけ彼女の人生を狂わせたのかと思うと、微妙な立場の私でも涙が溢れた。

そして総のお爺様・・・京都の先代という人の話もこの人を悲しませたのだろう。
それを話す時の総は苦しそうに見えた。だから自然とお互いの手を握る・・・微かに震える指先を2人同時に絡ませながら、家元達と交わした言葉も聞いた。


「可哀想な人・・・これからどうするのかしら」

「先ずは俺達の関係の見直しかな。紫は西門を潰そうと思ったと言った・・・それが本心かどうかは判らないけど、親父には衝撃的な言葉だっただろう。それでもこの婚姻関係を維持するかどうかは疑問だな」

「私は西門の出した答えを待つしか出来ない。だけど、その人にもこれ以上の苦しみは味わって欲しくないな・・・」

「俺は初めのうち紫に恐怖と憎悪しか持たなかった。だけど今は少し違う・・・あいつも自由になればいいと思う。騙された約束の桜貝になんか縛られずに、新しい世界を見付けて欲しい・・・そう思ってる」

「そうだね。その薫さんって人にもね・・・」

「そうだな。あの2人がこれからも姉妹のままで居られればいいけどな。同時に反省もしてくれればいいと思う・・・紫の行動のせいで泣いた人間も罪を背負った人間も生まれたんだ。
そして西門を継ぐ俺も同じだ。先代達の隠し事でこれだけの惨事が続き、しかも見付かってねぇ人間も居る。事件の発端はそいつだけど、せめて親元に返してやりてぇな」

「・・・うん」



まだ少しだけ太陽の光は眩しかったけど、総に支えられて窓から病院の中庭を見下ろした。
何にも咲いてない淋しい花壇・・・裸のままの木は桜だろうか、寒そうな姿で真下に見えた。

その時、その中庭を真っ赤なコートの女の子が元気よく走ってきた。そして「あっ・・・」って思った瞬間、通路の真ん中で転けて大泣き。すぐに紺色のコートの男の子が走って来て抱き起こした。
泣きじゃくる女の子の膝を摩ってやり、次には小さな手を広げて抱き締めてあげてる。

泣き止んだ女の子はまた向きを変えて走り出し、男の子はそれを追い掛けた。


「紫音ーー!花音ーーー!」

そう呼ぶと愛おしい2人が空を見上げるように顔をあげた。
花音は凄く嬉しそうに両手を振って「つくしママだーー!」、紫音は真面目な顔して花音を置いて走り出した。

「あっ、しおん、まってーー!」、と花音の声が庭に響く。その後ろから小夜さんが笑いながら現れた。


「くくっ、もうすぐ喧しくなるな!」
「本当だね。でも花音、全然懲りてないのね?ホントにもうっ・・・」

「お前にそっくりなんだよ。つくし・・・ほら、今のうちに・・・」
「・・・総」


冷たい風が病室に吹き込む中、総は私を抱き締めて優しいキスをくれた。


辛く長かった「冬」が終わろうとしてる・・・。
もうすぐ「春」が来る予感がする。





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2019/07/28 (Sun) 14:46 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

まりぽん様、こんばんは。

そうですよね~。
誰かが何処かで止めれば何でもなかった事なのに、全部が悪い方に向かった過去・・・それを背負わされた紫ちゃんもそのせいで引き離された総ちゃん、つくしちゃんも気の毒な事ですよね。

そのお陰で本当の親から離された双子ちゃん・・・救いなのはこの双子ちゃんが明るいことでしょうか?(笑)

紫音と花音を書くことが今の私の楽しみです♥
これからエンドまで、沢山双子ちゃんの可愛いところを書いていきますね!

(よしよし、ほんわかして来たぞ♡( ̄∇ ̄))

2019/07/28 (Sun) 20:34 | EDIT | REPLY |   
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2019/07/29 (Mon) 09:39 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんにちは。

可愛いでしょ?
怪我人なのに抱っこして寝るんですよ?ふふふ、看護師さんドン引きですよね♡
点滴交換しなかったの?ってコメントきたらどうしようかと思ってました(笑)

検査中、除け者にされて怒る総ちゃん(笑)子供かっ!!


えっとね~・・・多分無いと思うんですよ。
めっちゃプチならあるんだけどね・・・暑い時はあまり気分が乗らないんですよね・・・。

書くと自分の心拍数が上がるから健康に良くないんで。
だって去年、ホントにあの後(コラボのね)2回、倒れましたからね(笑)

健康1番です・・・はい!

2019/07/29 (Mon) 12:09 | EDIT | REPLY |   
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2019/07/29 (Mon) 13:10 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは!

ええっ!そんなに先でもいいの?
夏はいいの?

浴衣も水着もいいの?へぇ、そうなんだ・・・(類風に)

2019/07/29 (Mon) 22:35 | EDIT | REPLY |   
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2019/07/30 (Tue) 00:14 | EDIT | REPLY |   
plumeria  
Re: タイトルなし

パール様、こんばんは(笑)

爆笑!!頑張ってみるね♡(#^_^#)

2019/07/30 (Tue) 00:18 | EDIT | REPLY |   

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